SSブログ
農から見つめる ブログトップ
前の10件 | 次の10件

「越後蒲原平野の開発と浄土真宗の展開を考える―長谷川伸」を近世の環境と開発 ・ 2010から② [農から見つめる]

近世の環境と開著者 根岸茂夫 /編, 大友一雄 /編, 佐藤孝之 /編, 末岡照啓 /編  

出版年 2010.12  出版者 思文閣出版

県立図書館収蔵 /210.5/N62/

から

第二編 開発と景観・生活・生業
中世~近世初期、低湿地における「村」の形成過程――越後蒲原平野の開発と浄土真宗の展開を考える―― 長谷川伸/著  117頁~143頁
松ヶ崎堀割の決壊の調べ。
阿賀野川の堀割新潟市北区のWebページなどより
江戸時代以前、砂丘に遮られて荒川河口から信濃川河口までの間に、日本海に直接流入する河川はありませんでした。そのため、人々は常に水との闘いを余儀なくされていました。
 新発田藩は、紫雲寺潟干拓や福島潟開発を目論み、行いました。この工事には、新潟湊の水位の低下を心配する新潟町の猛反対がありました。そのため、増水分だけを流す堀とすること、堀割が破壊されたらすぐに復旧すること、湊として使用しないことなどを条件に実施されました。
 阿賀野川を松ヶ崎で全長は約690m、平均幅約54mで掘り割り、日本海に直接流す工事を享保15年(1730年)に行いました。翌年・1731年の春の雪解け水・雪代洪水で堰は破壊され、幅が約5倍・270mに拡大し、掘割りが阿賀野川の本流と化してしまった本流となってしまいました。この結果、阿賀野川の水位は4尺(約1.2メートル)も下がりました。
、島見前潟は美田となり、福島潟周辺にも広大な干上り地ができたといわれます。以後、阿賀野川右岸の開発は急速に進展することとなり、葛塚をはじめ多くの村が成立しました。反面、新潟湊への水量増加のための工事や用水の確保のための新江用水の開削など多くの負担を背負うこととなりました。

nice!(0)  コメント(0) 

耕すことの弊害--ミミズの農業改革2- 農地ではミミズが「沈黙」するー㊦ [農から見つめる]

耕すことの弊害--ミミズの農業改革2- 農地ではミミズが「沈黙」する  より覚え書

707.jpg

 有機農業の畑でもミミズが少ない

 実際に、農業で土壌を耕すとミミズにとってどのような影響かあるのだろうか?主にヨーロッパとアメリカで得られたデータをまとめたブリオネスとシュミットの報告によると、保全的な管理として不耕起を採用した場合、耕起区に比べて約二倍の数のミミズが生息し、体重を合わせると3倍にもなった(図2)。
 日本の畑地ではロータリー耕といって小型の刃を高速で回転させ、土を細かく砕く耕うん方法か好まれている。ヨーロッパやアメリカではプラウ耕といって大きな鋤で土を反転させる方法が主流である。プラウ耕ならまだミミズもいくらかは切断されずに生き残るかもしれないか、ロータリー耕はほぽ皆殺しであろう。
 農家は畑を耕すことで雑草を減らしたり、種子や苗の植え付けの作業を容易にしたり、堆肥や肥料を土に混ぜたりしている。ロータリー耕で整地した農地はまるで試合前の甲子園球場のグランドのように滑らかに土か整えられている。その農地の仕上がりをみてうっとりするような満足感を感じることもわかるような気がする。まさか、わざわざミミズのことまで考えて農地を管理している人はほとんどいないだろう。
 有機農業は自然にやさしいと言われているか、土壌動物にとってはやさしくない。図3は、慣行栽培(晨薬も化学肥料も使う)とそれらを使用しない有機栽培とで農地や農地周辺のさまざまな生物の多様性を比較したものだ。
11月-003図3-01.jpg
 この研究によると、有機栽培の農地では慣行栽培の農地に比べると多様性が上がる動物群が多く、農地の作物以外の植物の多様性も上がっている。しかしよくみると、分解者はほとんど差か無い。ここでの分解者にはさきほど説明したよりなミミズやダンゴムシ、ヤスデといった有機物を食べる動物と、微生物が含まれる。この研究の有機栽培は耕している畑でのデータであった。横浜国立大学や松沢さんの畑での結果でも明らかなように、有機截培でありても耕すだけで土壌牛物は大きなダメージを受ける。
 農家にとって知らないほうがよかったのかもしれないが。ロータリー耕によってミミズ以外に微生物や他の土壌動物も死んでいるのだ。
 もうおわかりだろう。有機農業は化学肥料や農薬を使わないので、地球や自然にやさしい(やさしいってどんなことだろう?)とされているが、耕す農業はどんな農業でもミミズや他の土壌動物、微生物にはまったくもってやさしくない。有機農家の中には、ミミズがいるとキャベツの中に入ってきて、そのまま出荷すると消費者に嫌われるので邪魔だとか、未熟な堆肥を使うとミミズが増え、それを狙ってモグラがくるので迷惑だといった感想を述べる方もいる。そんな懸念には。自信を持って答えられる「ご心配なく、耕せばミミズはいなくなります」。少なくとも私たちが普段目にしている野菜や穀類を栽培するような晨地の土にはミミズがあまりいない、と思ってよい。
耕すことの弊害
 土壌生物は、土の構造と機能を維持するために欠かせない。逆に、一般に耕うんは土壌劣化につながると考えられている。過度な耕うんは土壌団粒を破壊するためだ。
 土壌団粒とは、鉱物や有機勧の破片が植物や微生物が分泌する多糖類などによって結合したものである。団粒を拡大すると微小な有機物と粘土鉱物が結合している。さらにこれらが複数結合すると大きな粒子となる。このときに、塊の中に隙間が生じる。多孔質の粒子は、粒子内の狭い隙間に強い力で水分を保持し、粒子間では水が速やかに移動できる。すなわち、保水性と排水性が両立する。園芸資材として販売されている鹿沼土のような材料は、粒子の中に隙間があるので、自然にできた団粒と同様、すぐれた保水性と排水性を持つ。
 この団粒の形成に、土壌生物が関わっている。ミミズのような動物が落葉を食べるとき、落葉だけでなく土も一緒に食べる。ミミズは歯や骨のような硬い組織を持たないので、落葉を粉砕することができない。そのかわり厚い筋肉の塊である砂嚢を持っている。そこで、砂嚢で土の粒子とともに食べた落葉を混合することで細かくしているのだ。ミミズの糞はさきほど述べた微小な粘土と有機物の結合に比べると極めて大きいが、落葉と土を混合することで粘土と有機物の結合を促進する。ミミズ糞の中で、最初のうちは弱い結合状態にある粘土と有機物が、時間がたつと強く結合するようになる。このような団粒は水に浸しても粒子が壊れることがないので、耐水性団粒と呼ぼれる。
ミミズの、体を通って糞になると二mm以上の大きさの団粒になるようだ。ミミズは小さな生き物だが、毎日体重とほぼ同じ量の土と落葉を食べ。せっせと糞として排泄している。そのほとんどが耐水性団粒として土壌に集積する。
不耕起・草生の地面は三割から四割かミミズ糞起源の団粒であると推測できる。もちろん、時間と共に団粒が崩壊してより細かい土壌粒子に戻るわけだが、一定数のミミズがいることで団粒の割合が維持されていると考えることができる。
 トラクターによる農地の耕うんはこのような団粒を物理的に破壊する。団粒が壊れて細かい粒子が多くなった畑地土壌に雨が降ると、表流水とともに土の粒子が流れてしまう。雨が降ったあと近所の畑から道路に土が流れ出てくるのを見たことがないだろうか。
 多くの農家も一般の方も、農業で基本とされている耕うん(耕起)がミミズをはじめとする土壌生物にとって脅威であると知ると驚く。しかし、森林も自然の草原もその土のあり方を想像してほしい。自然界の土壌は、農地のように頻繁に耕うんされることはない。むしろ、暗くて狭いが快適な土壌環境は、本来耕うんのような撹乱とは無縁できわめて安定したものなのだ。
 短期的には効平的な農業を可能にするために、農薬と耕うんで土穣が化学的にも物理的にも無生物に近い状態に変えられる。しかしその一方で、土壌生物が消えることで土を維持するさまざまな循環が途切れる。そして土は、少しずつ劣化し始める。
 農薬の化学的影響が広く知られ、有機農業が試みられているが、耕うんも土壌に大きな影響をもたらす。ほとんどの農地では、今もミミズたちは沈黙しているのだ。

nice!(0)  コメント(0) 

耕すことの弊害--ミミズの農業改革2- 農地ではミミズが「沈黙」するー㊤ [農から見つめる]

耕すことの弊害--ミミズの農業改革2- 農地ではミミズが「沈黙」する  より覚え書


土は数億年かけて作られ。常に変化し統けている複催な構造物であり、地球上にしかないものだ。砂と落ち葉をただまぜただけでは土はできない。・・土には「構造」があり、さまざまな作用が働くことで維持されている。具体的には岩石が風化したものに、生物が長い時間をかけて作用してできたものか土である。・・研究する学問分野は多岐にわたり、・・微生物から植物、動物まで多様な生物が土に棲み、影響を与えあっている。私たち人も艮い時間をかけて土を変えてきた。
数億年に渡って続いてきた土と動物の”共生関係”に対し、機械と肥料を使って土を制御する経験は100年ほどしか積まれていない。両者の違いを知るには、、ミミズが土の中で何をしているのか追跡する必要かあるだろう。

みみずimage-10.jpg

 沈黙の春
 農薬か昆虫を悉く殺し、春になっても鳥の餌がなく、鳴く鳥がいない、音のしない沈黙の春が訪れる。レイチェルーカーツッの『沈黙の春』の一節
 農薬には動物(主に昆虫)を殺す殺虫剤、微生物(主に真菌類)を殺す殺菌剤、そして雑草を殺す除草剤かある。
殺虫剤は葉や実を直接食べたり、吸汁したりする昆虫やダニ類を殺すために開発された。第二次世界大戦中の化学兵器の転用であるともよく言われる。当初は毒性か強く、対象とする害虫以外にも、害虫を食べる昆虫、哺乳類、鳥、爬虫類、そして農薬を散布する農家に深刻な影響を与えた。
 カーソンか気づいたのは、有機塩素系の農薬が食物連鎖の中で餌となった生物よりもそれを食べた捕食者の体に濃縮する(生物濃縮)ということであった。「生物濃縮」は、体内に入った汚染物質か容易に排泄されないために、濃度の低い餌をとりっづけているだけでも長期的には食べた捕食者の体内で濃度が上がることで生じる。有機塩素系農薬は脊椎動物の脂質に多く残留し、最終的には猛禽類の繁殖率を低下させるほどの影響かあった。
 農薬の開発は、非標的生物への影響を抑えつつ、害虫と言われる標的生物をいかに殺すかの歴史である。しかし、毒性が低い農薬を開発しても、実際に環境中に放出されると当初想定されたよりも多くの負の影響が発覚することを繰り返してきた。そして、いつのころからか農地には作物以外の生物の影を見なくなっていった。
 キャンパスの不法試験地
 農薬を撒くと土中の生物に影響があるが、土を耕すことも大きな影響がある。これまで、私は何箇所かで耕す区画と耕さない区画を設けて試験栽培を行ってきたが、一度耕した土にはなかなかミミズがやってこなくなる。
 つまり、耕されて死亡率が上昇することがミミズの減少の理由ではない。それならば、彼らはすぐに戻ってくるはずだ。耕されることで土壌構造が変化すること、それから雑草のような植物がなくなることか、長期間にわたりミミズにとって棲みにくい環境にしているようなのである。

 楽園に聞入した研究者
 地面を耕すことで、ミミズ以外の土壌生物にも影響かあるのだろうか。
もうひとつの事例でみてみよう。愛知県新城市で福津農場・・ここは地質学的には蛇紋岩の影響を受けた土壌で、土壌層の厚さは薄く、礫が多い。耕作者・松沢さんはこのような土地では耕すことで土が悪くなると考え、独白の不耕起農法を開発されてきた。
 水田は不耕起ではないが。畑と果樹のまわりの作物は不耕起・草生の状態で栽培されている。・・松沢さんは地面に倒れた雑草をかき分けて、野菜の苗を植えたり、種子を蒔いたりして栽培をされているのだ。
松沢さんか不耕起で長年管理された畑にはクモの仲間やミミズなど一四群もの多様な土壌動物が棲息していたことかわかる。
 簡単にどのような土壌動物が生息していたかを説明すると、クモの仲間は捕食者で、地表を歩き回って餌をとる種や地面付近に小さな網をはる種がいる。ムカデも捕食者で体節か多数あり、体節ごとに一対の脚がある。アリは他の動物も食べるか植物の種子も食べる。コウチュウ目の成虫にはミミズを食べる種や植物の種子を食べる種など実に多様な種が含まれる。ハサミムシは尾端か鋏になっている昆虫で捕食者だ。カメムシは植物の師管液を吸う昆虫であるが、土壌性のカメムシもいる。ウチュウ目の幼虫はコガネムシの幼虫のように作物の根を食害する害虫もいるが、土壌中で他の無脊椎動物を食べる捕食者も含まれる。腹足類はカタツムリやナメクジのことだ。等脚類はダンゴムシの仲間のことで、落葉を食べている。土の中には多様なハエの幼虫がいて落葉などの有機物を食べるが、一部は植物の双葉などを食害する。ヨコエビは湿った土壌に住むエビに近い節足動物でやはり有機物を食べる。ヤスデはムカデに見た目がそっくりだが、体節に二対の脚があり、ムカデと違ってゆっくり歩き、有機物を食べている。
 三〇年以上耕したことのない土壌に棲んでいた土壌動物のうち、撹乱【耕起】を受けるとムカデや腹足類や等脚類がいなくなり、全部で八群に減少した。採取された動物たちの体重をまとめて量り一平方メートルに換算してみると、松沢さんの畑にはもともと二二・六グラムいたのか、撹乱を受けて五分の一以下の三・九グラムに減ってしまった。大切に管理されてきた畑の土の一角を、研究のために、トラクターでではなくハンドショベルで少し掘り返しただけである。その周りには土壌生物がたくさんいる。にもかかわらず、耕した場所の土は土壌動物にとっては棲みにくくなってしまうということかわかった。
 有機農業の畑でもミミズが少ない
 実際に、農業で土壌を耕すとミミズにとってどのような影響かあるのだろうか?主にヨーロッパとアメリカで得られたデータをまとめたブリオネスとシュミットの報告によると、保全的な管理として不耕起を採用した場合、耕起区に比べて約二倍の数のミミズが生息し、体重を合わせると3倍にもなった(図2)。
 日本の畑地ではロータリー耕といって小型の刃を高速で回転させ、土を細かく砕く耕うん方法か好まれている。ヨーロッパやアメリカではプラウ耕といって大きな鋤で土を反転させる方法が主流である。プラウ耕ならまだミミズもいくらかは切断されずに生き残るかもしれないか、ロータリー耕はほぽ皆殺しであろう。
 農家は畑を耕すことで雑草を減らしたり、種子や苗の植え付けの作業を容易にしたり、堆肥や肥料を土に混ぜたりしている。ロータリー耕で整地した農地はまるで試合前の甲子園球場のグランドのように滑らかに土か整えられている。その農地の仕上がりをみてうっとりするような満足感を感じることもわかるような気がする。まさか、わざわざミミズのことまで考えて農地を管理している人はほとんどいないだろう。
 有機農業は自然にやさしいと言われているか、土壌動物にとってはやさしくない。図3は、慣行栽培(晨薬も化学肥料も使う)とそれらを使用しない有機栽培とで農地や農地周辺のさまざまな生物の多様性を比較したものだ。
続ける


nice!(0)  コメント(0) 

猪・鉄砲・安藤昌益-「百姓極楽」江戸時代再考--いいだもも--1996 [農から見つめる]

猪・鉄砲・安藤昌益41TKGGXA0QL.jpg猪・鉄砲・安藤昌益ー「百姓極楽」江戸時代再考
 いいだもも /著  
出版年 1996.3
 農山漁村文化協会  人間選書 №  192
ページ数 270p
大きさ 19cm
ISBN 4-540-95105-X
県立図書館収蔵 NDC分類(9版) 210.5
内容紹介
徳川治下の平和の下での鉄砲の農具化、米一元価値から鎖国下における多元価値への移行などが生んだ江戸時代を再考。左翼思想家特有の文体で、20世紀の大量生産社会で安藤昌益に触れる事の重大さを説く。
世界史的にも例のない270年の平和を維持した江戸期日本。石高制による米生産の強制による飢饉との闘いや、衣料・灯火革命などの変化に巧みに対応し、近代日本の基礎を築いた逞しい農山漁村民の生活と役割を活写。
目次
第1部 猪飢渇としての東北大飢饉
第2部 「徳川ノ平和」下の鉄砲による耕作
野生動物管理学からみた野生動物の現状-o05-b.jpg
第3部 米食日本人はなぜ肉を食べなかったのか
第4部 石高制社会のコメ一元論から多様な多元価値文明へ
著者紹介 いいだもも 1926年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。著書に「アメリカの英雄」「戦後史の発見」「核を創る思想」「社会主義の崩壊と資本主義の破局」など多数。
参照
人口縮小社会における野生動物管理のあり方 日本学術会議 令和元年(2019年)8月1日


nice!(0)  コメント(0) 

温暖化が進み深刻な供給不足を起こす恐れがある白菜やキャベツのルーツはどこ?㊦ [農から見つめる]



 十字花植物のアブラナ科植物は3,700種以上338属以上が知られ、アブラナ属は「植物界の犬」と呼ばれるほど変種が多く、昔から生物学者や栽培農家を驚嘆、困惑させてきた。

これらは元をたどればアブラナ属のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)またはヤセイカンラン(Brassica oleracea)というたった2種の野草から生まれた変種だ。

白菜やキャベツのルーツ.jpg
 アブラナ属の多くは寒冷気候に適しており、温暖化が進みこうした植物は深刻な供給不足を起こす恐れがある。19世紀にアイルランドのジャガイモ飢饉を引き起こしたジャガイモの疫病への耐性をつけるために、野生のイモの遺伝子を使った品種が開発されたことがある。原産地に生育する原種は遺伝的に多様だから、病気に強く、味が良く、干ばつや暑さに強い品種を開発するために、原産地で新たな遺伝子が探される。
 2021年公表の研究では、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)はパキスタンとの国境に近いアフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈周辺が原産であることが示された。3500~6000年前に、この地方で最初に栽培化された野菜がカブだった。後に、品種改良によってターサイ、チンゲンサイ、ラピニなどの葉物野菜や、食用油の原料となる種子、インド料理に使われる香辛料用の変種が現れる。
ヤセイカンラン(Brassica oleracea)に関する同様の研究は、200点以上のサンプルを分析した結果、ギリシャとトルコに挟まれたエーゲ海とその周辺に浮かぶ島々が原産地である可能性が高いとされた。
 研究者たちは人間や自然の脅威によって絶滅してしまう前に、今回特定されたアブラナ属の原産地で一刻も早く種子を集めて保存すべきと警鐘を鳴らす。ヒンドゥークシュで採取されたブラッシカ・ラパの種子が世界のシードバンクにほとんど入っていないことを懸念する。今後も気温が上昇し続ければ、山に自生する植物は標高の高い方へと移動するしかない。やがて頂上まで到達すれば、後は生息域が狭まるばかりだ。
一方のヤセイカンランの場合、原産地とみられる島々での個体数が少なく、問題はさらに深刻だろうと、メーブリー氏も言う。ヤセイカンランを研究するチームは、クレタ島やキプロス島など地中海の島々へ行って種子を採集する予定だったが、新型コロナウイルスによるパンデミックのため中止せざるを得なかった。今は、2022年に渡航できるようになることを期待している。
研究者は、原産地以外にも遺伝的多様性が豊かな場所で野生の植物を採集・保存すべきだと話す。野生に育つ種はしばしば、雑草とみなされて根絶したほうが良いとアドバイスされることがある。「これらの作物にどんな未来が待ち受けていようと、全ての種を保存する必要があります。全ての品種、その遺伝子の多様性、近縁種も、絶滅から守らなければなりません」

nice!(0)  コメント(0) 

温暖化が進み供給不足を起こす恐れがある「植物界の犬」白菜やキャベツのルーツはどこ?㊤ [農から見つめる]



 十字花植物のアブラナ科植物は3,700種以上338属以上が知られ、アブラナ属は「植物界の犬」と呼ばれるほど変種が多く、昔から生物学者や栽培農家を驚嘆、困惑させてきた。でんぷんが豊富な根菜、巨大な房を付けるブロッコリーにカリフラワー、アフリカから米国へ渡り、南部料理の定番となったコラードグリーン。

そしてカブやチンゲンサイ、ハクサイ、コマツナなどバラエティに富んだアジアの青菜。ビタミンやその他の栄養を豊富に含むアブラナ属の野菜は世界中で売られている。

また食用油として広く使用されているキャノーラ油は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)から作られる。

これらは元をたどればアブラナ属のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)またはヤセイカンラン(Brassica oleracea)というたった2種の野草から生まれた変種だ。

白菜や-ブラッヂカ・ラバ.jpg
ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)
 アブラナ属の多くは寒冷気候に適しており、温暖化が進みこうした植物は深刻な供給不足を起こす恐れがある。たとえば韓国の研究者は、国民食であるキムチに使うハクサイが、暑さと干ばつの両方に弱いという研究結果を発表した。
商用由・キャノーラ油の原料は世界中で栽培されているセイヨウアブラナで(世界の食糧供給にはこちらのほうが影響は大きいかもしれない)低温に合わなければ、花芽を形成し種子・油種ができない。
 気温が上昇し、干ばつや洪水が増え、既に一部の地域では作物の収穫量が打撃を受けている。これまで数十年にわたって減少してきた世界の飢餓人口は、再び増加傾向にある。
19世紀にアイルランドのジャガイモ飢饉を引き起こしたジャガイモの疫病への耐性をつけるために、原産地に野生するイモの遺伝子を使った品種が開発されたことがある。原産地に生育する原種は遺伝的に多様だから、病気に強く、味が良く、干ばつや暑さに強い品種を開発するために、原産地で新たな遺伝子が探される。
アブラナ属は、特徴の多様性が、原産地の特定を困難にしている。飼い犬が野良犬化するように、栽培されているアブラナ属の植物も簡単に「フェンスを飛び越えて」野生に戻ってしまう。黄色い花を咲かせるアブラナ属の植物は、沿岸の草地や道端、畑など、世界のいたるところに生えている。日本にはイヌガラシ、ナズナ、エゾスズシロなど野生種、欧州から麦類に混じって伝わったアブラナ奈良時代に伝来したカラシナが河原や空き地、路傍等に生育して交雑している。
 西ヨーロッパから東アジアにかけて、自分たちの土地こそアブラナ属の原産地だと考える人は多く、チャールズ・ダーウィンも、イングランドの海岸に自生するものがヤセイカンランの祖先ではないかと考えていた。
今後、地球温暖化が加速すると、これらの野菜は暑さや干ばつ、病気など、かつてない危機に直面する可能性がある。原産地に生育する原種は、他とは比較にならないほど遺伝的に多様だ。これを利用して、気候変動に強い新たな品種を開発すれば、来るべき食糧難への備えとなるだろうと、原産地・原種探しに注力される。
新たな研究が、4月30日付で学術誌『Molecular Biology and Evolution』で公表された。世界中のシードバンク(種子の保存施設)やその他世界中に存在する種子コレクションから集められた400点以上のサンプルを使ってゲノムの一部を解析し、そのDNAデータと言語学者や考古学者の助けも借りてカブなどアブラナ属の作物に関する古い文献や、古代集落の遺跡で見つかった遺物も調べた。
「一つの物語を様々な側面から調べる、探偵のような仕事でした」
総合した結果、ブラッシカ・ラパは、パキスタンとの国境に近いアフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈周辺が原産であることが示された。3500~6000年前に、この地方で最初に栽培化された野菜がカブだった。後に、品種改良によってターサイ、チンゲンサイ、ラピニなどの葉物野菜や、食用油の原料となる種子、インド料理に使われる香辛料用の変種が現れる。
ヤセイカンラン(Brassica oleracea)に関する同様の研究は、200点以上のサンプルを分析した結果、ギリシャとトルコに挟まれたエーゲ海とその周辺に浮かぶ島々が原産地である可能性が高いとされた。
続く

nice!(0)  コメント(0) 

森林飽和--2012;07 [農から見つめる]

植生景観amed.jpg森林飽和 
副タイトル1 国土の変貌を考える
著者1 太田猛彦 /著  
出版年 2012.7
出版者 NHK出版
シリーズ名 NHKブックス  1193
一般件名 森林‐歴史 , 林業‐日本 , 治山‐歴史
ページ数 254p
大きさ 19cm
ISBN 978-4-14-091193-8
新潟市立図書館収蔵 中央 2階産業 Map /652.1/オオ/
内容紹介
緑の木々に覆われた山を歩きながら、私たちは、そこが五十年前にはげ山であった姿を想像できるだろうか?
山の地肌が消え、土砂崩れが減り、川から砂がなくなる―これら二十世紀におきた変化は、日本史上初のものだった。変化は副作用をもたらす。サルやクマの人里への出没、海岸の道路を崩壊させる“砂浜流失”、そして花粉症。各地で起きる問題の根源に山地の変化があることを見抜き、土砂の流れを分析して私たちの誤った思いこみを次々と覆す。自然環境と災害について発想の転換を迫る提言の書。

著者紹介
太田 猛彦  オオタ タケヒコ 1941年東京生まれ。東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。東京大学名誉教授。FSCジャパン議長。専門は森林水文学・砂防工学・森林環境学。著書に「森と水と土の本」など。

nice!(0)  コメント(0) 

植生景観史入門--2012;04 [農から見つめる]

植生景観史aMf.jpg植生景観史入門

百五十年前の植生景観の再現とその後の移り変わり
著者名1 原田 洋 /著  
著者名2 井上 智 /著  
出版者 東海大学出版会
出版年 2012.4
ページ数 13,157p
大きさ 21cm
ISBN 978-4-486-01932-9
新潟市立図書館収蔵 中央 2階自然 Map /472.1/ハラ/
内容紹介
鎌倉・横浜・箱根を主な対象に、古地図、古写真、古文書などから明治期における植生景観を再現し、現代までどのように変遷してきたかを植生図によって探る。
目次
第1部 明治期の鎌倉・横浜・箱根の植生景観を探る(写真と絵図から明治期の植生景観を探る;古文書から明治期の植生景観を探る;横浜の原植生を探る)
第2部 明治期から現代までの植生景観の変遷を探る(過去の植生を紐とく資料;地図と写真を活用して植生図を作成する;各地の明治期から現代までの植生景観の変遷を探る)
植生景観史cKCLz縮.jpg
植生景観史QQQd縮.jpg
著者等紹介
原田洋[ハラダ ヒロシ]
1946年静岡県三島市に生まれる。1969年横浜国立大学教育学部卒業。1975年横浜国立大学環境科学研究センター助手。1988年学術博士(北海道大学)。1989年横浜国立大学環境科学研究センター助教授。1997年横浜国立大学教育人間科学部教授。2011年横浜国立大学大学院環境情報研究院教授
井上智[イノウエ サトシ]
1969年埼玉県長瀞町に生まれる。1993年横浜市立大学文理学部卒業。横浜市入庁、水道局水質試験所勤務。1999年下水道局水質管理課勤務。2005年資源循環局資源開発室勤務。2009年環境創造局環境科学研究所勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

nice!(0)  コメント(0) 

アフリカを中心に甚大な農業被害をサバクトビバッタ。 [農から見つめる]

アフリカを中心に甚大な農業被害をもたらしているサバクトビバッタ。エチオピアやケニアなど西アフリカからインドにかけて大量発生している。1日の移動距離は最長で130キロに達し、移動しながら農産物などを食害する。

エチオピア東部とソマリアでは11月中旬、広範囲に頻繁な降雨でバッタ繁殖の好条件が整った。両地域では現在、ホッパーと呼ばれる幼虫が群れを形成している。一部の群れは、強い南風で既に紅海を横切り、イエメンの内部からサウジアラビア南西部に移動した。12月末には群れの本格的な移動が始まり、エリトリア、スーダン、ケニアなどに飛来する恐れがある。
b90c769fe5f9d04b05e51c54efb2bfd3.jpg

適切な防除対策を講じないと、食料不安人口が350万人増え3900万人の可能性があると、国連食糧農業機関(FAO)はしている。被害が最も大きいエチオピアなどで監視・防除を強化するには新たに4000万ドル(約41億円)が必要だとし、各国の支援をFAOは呼び掛けている。
日本農業新聞12月20日 https://www.agrinews.co.jp/p52713.html

nice!(0)  コメント(0) 

スマート農業の導入で、機械代は増え、人件費は減り、利益は下がった。 [農から見つめる]

労力軽減に貢献 利益マイナスるb.jpg


スマート農業実証プロジェクトは、ロボット農機やドローン(小型無人飛行機)などの先端技術を現場に導入し、効果を明らかにする。「農業労働力確保緊急支援事業」と連携して実施。2019年度に全国69地区から始まり、現在148地区で実証中だ。

労働力不足の解消に向けたスマート農業実証(令和2年度補正)



 中間報告は初年度の水田作での効果を分析した。大規模、中山間、輸出の3類型に分け、代表事例で労働時間の削減率や経営収支を示した。

 労働時間は、慣行と比べてシーズン合計で10アール当たり0・2~1・9時間減り、人件費を削減できた。特に、ドローンを使った農薬散布は平均81%減、自動水管理システムは同87%の減少と、削減効果が大きかった。ドローンによる農薬散布は、ホースを人の手で引っ張る作業がないため、疲労の軽減効果も見られた。

 一方、経営面では10アール当たりの機械・施設費が54~261%増加。スマート農機を追加投資したことが響き、利益は慣行より同3000~2万8000円下がった。同省はまだ初年度の成果であることから、農機の扱いの習熟や利用面積の拡大で効率は上昇するとしている。


 生産者からの意見として「社員のモチベーションが上がった」「新規就農者でも熟練技術者並みの精度と時間で作業が可能になった」など、コストに反映されないメリットも指摘されている。


《今後は、地域の実情に即して、効果的なスマート農業の導入につながるよう、

・スマート農機の能力に見合った適正な活用面積の見極めや、初期投資の影響を緩和するためのシェアリング等の可能性

・商流全体を視野に入れた物流コストの低減や高付加価値化の取組

等について検証していきます。》と農業実証プロジェクトを進める。

今後はスマート農業活用の適正面積を見極めた経営モデルの作成などを検討する。


 最終的な実証成果は2021年春から取りまとられる。

 

支援 現場視点で  九州大学大学院農学研究院・南石晃明教授の話


 スマート農業の導入で労働時間が減り、経費が増えることは、現場の感覚からも、われわれの数学モデルからも予想された。収支が悪化しては生産者としては経営が成り立たない。

 スマート農業は農的生活を楽しみたい若者や兼業農家など、なじまない経営もある。農業は多様であり、全ての現場への普及を前提とすべきではない。

 どんな経営者が何の機能を必要としているかを見極め、現場の声を基にした導入コスト削減や政策支援が必要だ。


日本農業新聞11月17日記事、覚書

nice!(0)  コメント(0) 
前の10件 | 次の10件 農から見つめる ブログトップ