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温暖化が進み深刻な供給不足を起こす恐れがある白菜やキャベツのルーツはどこ?㊦ [農から見つめる]



 十字花植物のアブラナ科植物は3,700種以上338属以上が知られ、アブラナ属は「植物界の犬」と呼ばれるほど変種が多く、昔から生物学者や栽培農家を驚嘆、困惑させてきた。

これらは元をたどればアブラナ属のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)またはヤセイカンラン(Brassica oleracea)というたった2種の野草から生まれた変種だ。

白菜やキャベツのルーツ.jpg
 アブラナ属の多くは寒冷気候に適しており、温暖化が進みこうした植物は深刻な供給不足を起こす恐れがある。19世紀にアイルランドのジャガイモ飢饉を引き起こしたジャガイモの疫病への耐性をつけるために、野生のイモの遺伝子を使った品種が開発されたことがある。原産地に生育する原種は遺伝的に多様だから、病気に強く、味が良く、干ばつや暑さに強い品種を開発するために、原産地で新たな遺伝子が探される。
 2021年公表の研究では、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)はパキスタンとの国境に近いアフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈周辺が原産であることが示された。3500~6000年前に、この地方で最初に栽培化された野菜がカブだった。後に、品種改良によってターサイ、チンゲンサイ、ラピニなどの葉物野菜や、食用油の原料となる種子、インド料理に使われる香辛料用の変種が現れる。
ヤセイカンラン(Brassica oleracea)に関する同様の研究は、200点以上のサンプルを分析した結果、ギリシャとトルコに挟まれたエーゲ海とその周辺に浮かぶ島々が原産地である可能性が高いとされた。
 研究者たちは人間や自然の脅威によって絶滅してしまう前に、今回特定されたアブラナ属の原産地で一刻も早く種子を集めて保存すべきと警鐘を鳴らす。ヒンドゥークシュで採取されたブラッシカ・ラパの種子が世界のシードバンクにほとんど入っていないことを懸念する。今後も気温が上昇し続ければ、山に自生する植物は標高の高い方へと移動するしかない。やがて頂上まで到達すれば、後は生息域が狭まるばかりだ。
一方のヤセイカンランの場合、原産地とみられる島々での個体数が少なく、問題はさらに深刻だろうと、メーブリー氏も言う。ヤセイカンランを研究するチームは、クレタ島やキプロス島など地中海の島々へ行って種子を採集する予定だったが、新型コロナウイルスによるパンデミックのため中止せざるを得なかった。今は、2022年に渡航できるようになることを期待している。
研究者は、原産地以外にも遺伝的多様性が豊かな場所で野生の植物を採集・保存すべきだと話す。野生に育つ種はしばしば、雑草とみなされて根絶したほうが良いとアドバイスされることがある。「これらの作物にどんな未来が待ち受けていようと、全ての種を保存する必要があります。全ての品種、その遺伝子の多様性、近縁種も、絶滅から守らなければなりません」

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