SSブログ
国家医学・帝国医療・看護学 ブログトップ
前の10件 | -

富裕国に看護師とられ医療崩壊 長州新聞第9098号 [国家医学・帝国医療・看護学]

富裕国に看護師とられ医療崩壊

国際看護師協会(ICN International Council of Nurses


 ハワード・キャットン会長

「富裕国が経済力を濫用して貧困国から看護師を引き抜き、彼らを長期にわたってその国に依存させ、南半球諸国の保健医療制度の成長・発展を阻害している」


コロナ前でさえ、OECD(経済協力開発機構)38ヶ国の看護師総数の約16%(約152万人)が外国出身たった。受入れ・移住先は多い順にアメリカ、ドイツ、イギリス。送り出す側はフィリピンやインド、ポーランドが多く、コロナ禍で、最近ではケニアやウガンダ、ナイジェリアといったアフリカ諸国からの移民が増えているという


自国の看護師の半数以上が国外に移住してしまった国はジャマイカ、リベリアなど中南米やアフリカ中心に二〇力国にのぽっていた。


IMG_20240410_1-b.jpg

nice!(0)  コメント(0) 

病が分断するアメリカ--平体 由美/著 -- ⑵要約 [国家医学・帝国医療・看護学]

病が分断するアメリカ   公衆衛生と「自由」のジレンマ 
  平体 由美 (ヒラタイ ゆみ)/著
出版者 筑摩書房 ちくま新書 番号1 1744  ページ数 222頁
  出版年 2023.8
目次に沿って要旨・要約
はじめに
第1章 そもそも公衆衛生とは何か
 一般に国が豊かであれば、国民の健康度は高くなる。国民の所得が高ければ十分なカロリーと栄養バランスのいい食事がとれるし、税収が安定的に高まれば上下水道やごみ処理などのシステムを維持できるからだ。
 公衆衛生システムは、近代国家が整備してきたさまざまな制度と絡み合いながらそれぞれの国家や地域で充実してきた。年齢・居住地・収入を把握する人口管理、新しい病が発生した時の疫学調査研究、住民に行動変容を説得する広報・教育、そして行動制限を徹底させるための強制手段などが、公衆衛生システムを支えている。
(公衆衛生の三要素
;数を数えることの諸問題 ほか)
第2章 「自由の国」アメリカ―個人の選択と公衆衛生管理の相克
 平均寿命(2020年)は、日本84・62歳、カナダ81・75歳、イギリス80・9歳に対して、アメリカは77・28歳だ。1000人当り乳児死亡率(同)も、日本の1・8に対して、アメリカは5・4だ。また20歳以上の糖尿病患者の割合(2021年)は、日本6・6%、イギリス6・3%に対し、アメリカは10・7%だった。新型コロナ感染症(今年7月現在)では、アメリカの感染者数は1億人以上、死者は116万人と、いずれも世界一
 都市スラムに住む貧困層――黒人やヒスパニックについては・・疲労が蓄積し、安価な高カロリー低栄養食品で腹を満たす食事になりがちで、それによって肥満が増える。貧困層ほど肥満が多く、それは糖尿病や心疾患などの病気につながる。そして子どもの頃に形成された食習慣は、成長してからの健康度を左右する。
「アメリカの非都市部――西部山岳地帯やステップ地帯、南部農村地帯、北部のかつての工業地帯(ラストベルト)など――における貧困は、概して都市スラムの貧困以上に深刻である」
 ガスや電気を欠き、衛生上不可欠な清潔な水を得るのも困難で、全米で少なくとも140万人が屋内の水道設備(シンクやシャワー、水洗トイレ)を持たずに生活している。彼らが利用する井戸の23%で、健康被害が懸念されるヒ素、硝酸塩、ウランなどが検出されている。後進国状態である。
第3章 ワクチンと治療薬―科学と自然と選択肢
  1 疫学転換とワクチン
  2 天然痘ワクチンと19世紀アメリカ社会
  3 反ワクチンの戦い
  4 COVID-19下のワクチン開発と接種
第4章 病の社会格差―貧困層を直撃する社会制度
 国民皆保険制度がないアメリカでは、貧困層は基準を満たせば医療扶助制度メディケイドを利用でき、コロナに感染して1週間程度入院した場合、メディケイドでは自己負担額は1500㌦程度だが、
そうでない低所得層の無保険となりコロナ感染し1週間程度入院した場合なら7万㌦(約1029万円)をこえる。無保険者は2700万人ほど存在している。
 国民が払う税金の多くは軍事費(圧倒的な世界1位)に注ぎ込まれて軍産複合体を潤わせる一方、国民生活に不可欠な医療や公衆衛生の費用は削られる
この非都市部は、小麦やトウモロコシ、野菜、果物、食肉、水産などアメリカの食料生産を担っているだけでなく、加工工場のほとんども支えているという。また、天然資源の採掘や一次加工、製造業の一部もここが担っている。だからこの地域が衰退することは、アメリカが食と工業製品の生産地を失うことを意味する。
それはと、貧困や病気を「自己責任」といって突き放したところで、回り回ってその社会の維持すら困難にしてしまうということだ。 
第5章 社会の分断―「マスク着用」が象徴するもの
  1 「スペイン風邪」とマスク
  2 COVID-19下のマスク要請
  3 政治化するマスク着用

nice!(0)  コメント(0) 

病が分断するアメリカ--平体 由美/著 -- 筑摩書房 -- 2023.8 [国家医学・帝国医療・看護学]

病が分断するアメリカ   公衆衛生と「自由」のジレンマ 
  平体 由美 (ヒラタイ ゆみ)/著
出版者 筑摩書房 ちくま新書 番号1 1744  ページ数 222頁
  出版年 2023.8
ISBN 978-4-480-07571-0

新潟市立図書館収蔵 内野館 /498/ヒ/

著者紹介 平体 由美 (ヒラタイ ゆみ)
:1966年生まれ。東洋英和女学院大学国際社会学部教授・学部長。専門はアメリカ史・公衆衛生史。国際基督教大学大学院行政学研究科修了。学術博士。著書に『連邦制と社会改革――20世紀初頭アメリカ合衆国の児童労働規制』(世界思想社、2007年)、『医療化するアメリカ──身体管理の20世紀』(共編著、彩流社、2017年)、『社会科学からみるSDGs』(共編著、小鳥遊書房、2022年)などがある。

62fd1b16940.jpg

内容紹介

 コロナ禍のアメリカは、迅速な疫学調査とワクチン開発がなされたにもかかわらず、世界で最悪の死者が出た。ワクチン接種に当初から反対が根強く、マスク着用では国が分断された。アメリカの公衆衛生が抱える深刻なジレンマ―国民の健康と自由な活動という背反する価値のどちらを優先するかをめぐって、どんな論争があったのか。20世紀初頭以来の公衆衛生史を繙きつつ、社会・地域・人種などの格差により分断されているアメリカの問題を探る。そうすることによって、日本社会が抱える諸問題との比較が可能になり、アメリカ社会の成功と失敗から学べることが見えてくる。

目次

はじめに

第1章 そもそも公衆衛生とは何か

(公衆衛生の三要素
;数を数えることの諸問題 
健康教育の光と影
行動制限の影響
/機構の整備と迎用
第2章 「自由の国」アメリカ―個人の選択と公衆衛生管理の相克
  1 アメリカの自由のイデオロギー
    「抑圧」が可能にした自由/自治・権力肥大化の回避・選択肢の存在
  2 公衆衛生政策に対抗する自由の「論理」
    慣れと読み替えの繰り返し/新しい病気の出現と繰り返される抵抗
  3 自由のイデオロギーと政治制度
    奴隷解放のロジック/通商権限と食肉検査法
  4 連邦と州の役割の相克ー州際通商を規制する連邦、住民の健康管理を統括する州
    一九世紀末の倹疫と隔離/COVIDー19と連邦政府/ニューヨーク州の対策
第3章 ワクチンと治療薬―科学と自然と選択肢
  1 疫学転換とワクチン
  2 天然痘ワクチンと19世紀アメリカ社会
    アメリカにおける種痘の広がり/大然痘ワクチンとはどのようなものだったか
  3 反ワクチンの戦い
    ジェイコプソン対マサチューセッツ判決(一九〇五)/二〇世紀の反ワクチンー
  4 COVID-19下のワクチン開発と接種
    飛行機の時代の感染症/前例のない速さで開発されたCOVIDー19ワクチン/COVIDー19ワクチン義務化をめぐる議論/黒人はなぜワクチン接種に消極的だったのか
第4章 病の社会格差―貧困層を直撃する社会制度
  1 国の豊かさと健康
  2 社会経済的地位と健康
    貧困と病/社会経済的地位(SES)への注目
  3 顧みられないフロンティア
    見過ごされる非都市部の貧困/非都市部の健康リスク
  4 COVID-19と社会経済的地位
    都市エッセンシャルワーカーの苦闘/非都市部の医療崩壊/公衆衛生に不都合な「自由」
第5章 社会の分断―「マスク着用」が象徴するもの
  1 「スペイン風邪」とマスク
    「スペイン風邪」/他者への配慮、自己防衛/反マスク連盟-マスクは効果なし、かえって不潔
  2 COVID-19下のマスク要請
    CDCの勧告/州政府の動向/反マスク法とレイシャル・プロファイリング
  3 政治化するマスク着用
    政治の分極化とマスク/マスクは緋文字か?
おわりに
    「物語」とコミュニケーション/公衆衛生システムが支えてきた健康
あとがき
主要参考文献
はじめに  要約に続く


nice!(0)  コメント(0) 

疫病の古代史 ー2023年刊行ーー③ [国家医学・帝国医療・看護学]

疫病の古代史 天災、人災、そして  著者 本庄 総子  ホンジョウふさこ
 吉川弘文館  出版年月日 2023/07/21

著者 本庄総子さんの本書紹介
 吉川弘文館「本郷」№167の「疫病と救済」より虹屋ツルマキが要約 続き
  ベストの悲惨さを伝えるための定型表現として・・・

8ef4084-縮.jpg

 息子は父を見捨てた。そして夫は妻を、妻は夫を見捨てた。

 ・・・多くの者が見放されてそのまま餓死した。
(石坂尚武<編訳>『イタリアの黒死病関係資料集』<刀水書房トウスイショボウ 二〇一七年>第六章マルキオンネの『フィレンツェ年代記』)。

 

 これは古代日本で疫病が発生した時に現出した光景とまったく重なり合う。このほか独り死を迎えようとする人々が、自分はまだ生きているといって救いを求める衝撃的な言葉も伝えられている。

 この地獄のような状況を前にして、敢えて病人看護を肯定する倫理観は単純な良心だけでは成り立たない。この倫理観は、自らの身の安全が必ずしも保証されていない中で生じるものであるだけに、そこには葛藤も伴う。それでも疫病発生時に、敢然と病床に立ち会おうとする人々は存在した。現代のコロナ禍における医療従事者の方々のご尽力が記憶に新しい。 

 中世ヨーロッパの場合、キリスト教の司祭が、死に立ち会ういう職業上の必要により病人と接触していた。そのため彼ら疫病被害にも遭いやすかったとみられている。医師の職業倫理は発展の途上にあったが、彼らもまたしばしば疫病の犠牲となったという。

 日本古代の場合、医師の職業倫理に相当するものがあった様子を窺うことは難しい。彼らが医師としての教育課程で身に付けるのは医療の理論と技術であった。天平八年 (西暦七三六年。天平の大疫病が一時的収束を迎えていた時期 )の正税帳シヨウゼイチヨウ という財政帳簿では、国医師という医務官が任国である薩摩国を頻繁に巡回しているので、職務上の必要から病人に接触することは多かったのかもしれない。

 では、日本古代において、身の危険を顧みず、他人の看護をした人々はいなかったのだろうか。例えば、政府が褒賞を出して看護を推奨することはあった。拙著のなかでは他にも憶説を述べているが、その当否は読者諸賢にご判断いただきたい。

 


nice!(0)  コメント(0) 

疫病の古代史 ー2023年刊行ーー⓶ [国家医学・帝国医療・看護学]

疫病の古代史 天災、人災、そして  著者 本庄 総子  吉川弘文館  出版年月日 2023/07/21

著者 本庄総子さんの本書紹介
 吉川弘文館「本郷」№167の「疫病と救済」より虹屋ツルマキが要約

Nakifudo_Engi_Abe_no_Seimei-1280x720-縮.jpg


今回、 拙著『疫病の古代史—天災、人災、 そして一』では、日本古代における疫病発生と密接に関わる社会構造上の特徴として、王都への人口の集積、食料生産体制、思想・文化という三項目から説明を加えた。最後の思想・文化の部分は、私が従来はとんど挑戦してこなかった分野であるため、なお迫求すべき点を多く残している不十分なものだが、病人の看援と 遺棄という正反対の現象が、どのような思想的葛藤を伴いながら併存したのかを描写することに努めた。
 病人の看護は、その社会の弱者救済がどのように実現されていたのか、という課題と切っても切り離せない。日本古代史においては、社会の圧倒的多数を占める弱者たちが、どのように相互扶助の単位を形成し、機能させていたのか、という問題をめぐって、さまざまに議論されてきた。論者によって差異はあるものの、古代という、国家による扶助が十分に行き渡らない時代に、近親・近隣間での相互扶助が重要であったという見方は共通認識であろう。そのため、病人看護の主体として近親などが高く評価されるとともに、病人の遺棄は近親なき者、身寄りのない者の悲劇として描かれがちであった。
 確かに、平常時であれば、近親による病人看護は広く行われていたであろう。しかし、こと疫病発生時においては、近親看護という基本的相互扶助が往々にして崩壊した。古代の諸史料は、疫病に倒れた近親を家に残したまま他所へ避難する人々の様子を活写している。残された病人は、水の一滴すら病床に連んでくれる者がないまま餓死することになったという。無論、感染した近親を看護する者もいたであろうが、それは当たり前のことではなかったのである。
  こうした状況において政府が持ち出したのが、儒教的な近親規範と、仏教の応報観念であった。前者は近親者は助け合いなさいというもの、そして後者は、良い行い=看護をすれば良いことが起こるものなのだから、感染を怖れる必要などないというものである。人々が愚かだから感染を怖れて病人を見捨てるような惑いに陥るのだと断じてもいた。
 はじめ、この政府見解を見た時には首を傾げた。近親者の遺棄は苦渋の決断でもあったろう。防疫に限界のあった時代である。疫病から物理的に離れる以上に有効な選択肢があっただろうか。そんなことを考えていると、政府が人々を愚民と断じたのは、ひどく一方的な綺麗事であるように感じられたのである。
 しかし、勤務校を同じくするドイツ史がご専門の渡邊伸先生より、中世ヨ—ロツパで大流行したペストについていくつかのご教示をいただくうちに、少し異なる考え方もするようになった。
 このベストの悲惨さを伝えるための定型表現として、たとえば次のような史料が残されている。
続ける

nice!(0)  コメント(0) 

疫病の古代史 ー2023年刊行ーー① [国家医学・帝国医療・看護学]

疫病の古代史  天災、人災、そして
著者 本庄 総子  ホンジョウふさこ
吉川弘文館  歴史文化ライブラリー 573
出版年月日 2023/07/21
判型・ページ数 4-6・216ページ
ISBN 978ー4642059732



疫病の流行により多くの人命が失われた古代。それは単なる自然災害だったのか。
藤原四兄弟が全滅した天平の大流行をはじめ、奈良・平安の都を繰り返し襲った事例を読み解くと、都市環境、食料生産体制、文化や倫理など、当時の社会の構造的問題がみえてくる。
疫病対策や死者数の実態に触れつつ、ヒト社会の「隣人」ともいうべき疫病の姿に迫る。

61fRg-vyVeL.jpg

目次
疫病から古代の社会を考える―プロローグ
蘇民将来(そみんしょうらい)伝説のリアリティ /出土した蘇民将来礼 /疫病史観で終わらない疫病史のために
疫病へのまなざしと二つの大疫病
 疫病という概念
  疫病とは何か/疫病の原因いろいろ/疫病の語釈と定義/歴史に残る疫病/疫病報告制度/報告制度の後退/疫病観測手段の変化
 奈良時代の大疫病
  未曽有の事態 /疫病の正体 /天平七年の疫病流行 /一時的な収束 /楽観と復興策 /行政の停滞 /疫病の再来と遣新羅使 (けんしらぎし)/天平九年の疫病流行 /犠牲者はどのくらいいたのか
 平安時代の大疫病
  大疫病の再来 /第二波の到来 /疫病の正体
 大疫病の共通点
  新種の脅威 /海外から流入する疫病
古代疫病流行の仕組み
 都と疫病
  疫病はどこから /京と畿内の死亡率 /京から伝播する疫病 /家族から切い離されて /運脚(うんきゃく)たちの食料不足 /帰国できない運脚たち /運脚と調邸 / 京での日雇い労働 /疫病を運ぶもの
 【運脚・・律令時代,調や庸の貢納品を都まで運んだ農民。正丁(せいてい)の農民の義務で,食料は自弁。実際に京まで運ぶ者以外は,運脚の行旅の費用を負担した。】
 疫病と農業
  飢餓が起こす疫病 /古代日本の季節感覚 /流行する時期 /コメの生産時期 /あまねく支給される田/ 田租の徴収と備蓄 /コメ中心の経済 /コメ依存とそのリスク /コメ社会の「持続可能性」 /コメ以外の裁培とその限界 /疫病が起こす飢餓/耕作不能の田の増加
 信仰と感染の観念
  禊の文化が疫病を防ぐ ? /穢れの忌避と疫病の関係 /経験的な感染の観念 /疫病回避の方法 /生存戦略としての防疫 /防疫と倫理 /病人を追い出す貴族たち /穢れを理由に追い出す /貴族と「下人」
疫病の時代相と人々の向き合い方
 奈良時代の疫病
  流行の波 /人口は減ったのか
 桓武朝の転機―疫癘間発
  遅延する復興 /桓武天皇の方針転換 /負の遺産を受け継いだ平城天皇 /止まぬ疫病 /疫病頻発の時代へ
 古代における疫病対策
  政府の通達した対策 /薬の禁止と食料給付 /食料給付の実効性 /農業と分権 /勧農と復興 /交通路での祭り /二つのオオエ山 /神仏への祈り /接触の自粛 /免疫の活用 /食を求めて /祈りの向かう先 /霊の仕業か、神の仕業か /故実を参照する
人間社会と疫病の姿―エピローグ
 菅原道真の漢詩にみる疫病 /古代の疫病流行の特徴 /稲作社会が抱えたりスク /現代社会と疫病
 
あとがき
参考文献
続ける

nice!(0)  コメント(0) 

世にも危険な医療の世界史ー2019 [国家医学・帝国医療・看護学]

71a-tO+F.jpg世にも危険な医療の世界史

原書 :Quackery(直訳;名知ったかぶり、はったり、いんちき、いかさま、大ぼら;いんちき医療)
著者 リディア・ケイン / ネイト・ピーダーセン   
訳者 福井 久美子   
出版者 文藝春秋
出版年 2019.4
大きさ 20cm  ページ数 15p 427p
ISBN 978-4-16-391017-8
新潟市立図書館収蔵 中央ホンポート館1階ほか /490.2/ケイ/
内容紹介 梅毒患者は水銀風呂に入れ! 泣き止まない子どもにはアヘンを! 瀉血、ロボトミー、食人、ストリキニーネなど、科学を知らない人類が試みた、ぞっとする医療や、詐欺まがいのインチキ療法の数々を紹介する。
・リンカーン……水銀入りの頭痛 薬を服用、重金属中毒になって症状はさらに悪化
・ダーウィン……強壮剤としてヒ素を飲み続け、肌が浅黒くなるもやめられない
・ヒトラー……猛毒ストリキニーネでできた整腸剤を9年間服用し、危うく致死量に
・エジソン……コカイン入りワインを愛し、ハイになりながら徹夜で実験を重ねる
・モーツァルト……体調不良の最中2リットルもの血を抜かれ意識喪失、翌日死亡
・ルイ14世……生涯に2000回も浣腸を行ない、フランスに浣腸ブームをもたらす
【目次】

■  第一部 元素

  第1章 水銀――始皇帝に愛された秘薬
  第2章 アンチモン――嘔吐で強制デトックス
  第3章 ヒ素――パンにつけて召し上がれ
  第4章 金――輝かしい性病治療
  第5章 ラジウムとラドン――健康“被曝”飲料ブーム
トンデモ医療1 女性の健康編

■ 第二部 植物と土

 第6章 アヘン――子どもの夜泣きはこれで解決
 第7章 ストリキニーネ――ヒトラーの常備薬
 第8章 タバコ――吸ってはならない浣腸パイプ
 第9章 コカイン――欧州を席巻したエナジードリンク
 第10章 アルコール――妊婦の静脈にブランデーを注射
 第11章 土――死刑囚が挑んだ土食実験
トンデモ医療2 解毒剤編

■ 第三部 器具

 第12章 瀉血――モーツァルトは2リットル抜かれた
 第13章 ロボトミー――史上最悪のノーベル賞
 第14章 焼灼法――皮膚を強火であぶる医師
 第15章 浣腸――エジプト王に仕えた「肛門の守り人」
 第16章 水治療法――それは拷問か、矯正か
 第17章 外科手術――1度の手術で3人殺した名医
 第18章 麻酔――一か八か吸ってみた
トンデモ医療3 男性の健康編

■ 第四部 動物

 第19章 ヒル――300本の歯で臓器をガブリ
 第20章 食人――剣闘士の生レバー
 第21章 動物の身体――ヤギの睾丸を移植した男たち
 第22章 セックス――18キロの医療用バイブレーター
 第23章 断食――飢餓ハイツへようこそ
トンデモ医療4 ダイエット編
■ 第五部 神秘的な力
 第24章 電気――内臓を刺激する感電風呂
 第25章 動物磁気――詐欺医師が放ったハンドパワー
 第26章 光――光線セラピーで何が起きるか?
 第27章 ラジオニクス――個人情報ダダ漏れの“体内周波数”
 第28章 ローヤルタッチ――ルイ9世の白骨化した腕
トンデモ医療5 目の健康編
トンデモ医療6 がん治療編

nice!(0)  コメント(0) 

ナイチンゲ—ルーー向野賢治 こうの・けんじ [国家医学・帝国医療・看護学]

福岡記念病院感染制御部長 向野賢治 こうの・けんじ

今ではあたりまえのように、清潔な病院環境が保持されている。しかし、ナイチンゲールが活躍する【1850年代】以前のイギリスの病院はそうではなかった。

当時の病院はひどく不潔であり、常に強烈な悪臭が漂っていた。ひとつのベッドに二人の患名か寝ているのは普通で、さまざまな患者が汚い病棟に、ごちゃ混ぜに収容されていた。患者の体が清拭されることはなく、マットレスも濡れていて、リネンも交換されなかった。トイレの不足から床には尿がしみついていた。窓は閉め切られていて、病院内の臭気は吐き気を催すほどだった。そのため香水が撒かれていた。医師はハンカチで鼻をつまんで回診していたという。看護師は教育を受けてなく、病院に住み込み、大酒飲みで、素行も悪かった。

20180121-3-縮.jpg
一九世紀当時は手袋、マスク、ガウンなどの個人防護具はまだ通常使用されてなかった。にもかかわらず、ナイチンゲールは彼女自身の体験から、そして研究者のような観察眼とデータの蓄積を元に、病院感染対策の基礎を教示する『看護覚え書』を出版した。
『私は他に良い言葉がないから看護 nursing という言葉を使う。看護とは、これまで与薬とか湿布を貼ること以上の意味はなかった。看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを適切に用いること、食事を適切に選択し管理すること——これらすべてを患者の生命力の消耗が最小となるように整えることを意味すべきである。』
看護の第一原則は、屋内の空気を屋外の空気と同じくらい清浄に保っことである。
これはナイチンゲールの『看護覚え書』の「換気と暖房」の項の最初に出てくる言葉である。
『看護覚え書』が刊行されたのは、ー八五九年である。細菌が発見され、それら病原微生物によって感染症が引き起こされるという概念が確立されたのは、その約二〇年後である。
 「看護の第一原則は換気である」ということではないか。換気を行って空気を清浄に保つことは空気感染対策の柱であるから、「看護の第ー原則は空気感染対策である」とも言いかえることもできる。看護とはまず換気を良くすること(空気感染対策)であると言っているわけである。
IMG_20221028_071119.jpg
フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale、1820年5月12日 - 1910年8月13日)

nice!(0)  コメント(0) 

ナイチンゲール 「空気感染」対策の母-2022;10月刊行予定 [国家医学・帝国医療・看護学]

「空気感染」対策に尽力した真の先駆者
ナイチンゲール  「空気感染」対策の母
 向野賢治 こうのケンジ
藤原書店 機 №366 より
IMG_20220921_083-縮.jpg

nice!(0)  コメント(0) 

脚気ー小説「奏鳴曲 北里と鷗外」より㈡  [国家医学・帝国医療・看護学]

奏鳴曲 北里と鷗外  著 海堂 尊 カイドウたける 文藝春秋 社刊行
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4163915005  新潟市立図書館収蔵

内容紹介   4章 p062
 人類が最初に対処法を見つけた伝染病は天然痘だが、原因菌は発見されていなかった。
 つまり近代医学は「理由は不明だが、経験則で見出した有用な予防法」から始まったのだ。
 天然痘は、水疱が内蔵に広がり肺損傷を起こす。致死率は高く三割が死亡する。
 天然痘予防法の種痘を確立したのはエドワード・ジェンナーだ。
 英国の田舎の開業医だったジェンナーは、農場勤務の女性に牛痘に罹ると天然痘に罹らないという言い伝えを教わり、一七九六年五月十四日、八歳の少年に牛痘を接種した。少年は典型的な症状が出た後に回復し以後、天然痘に罹らなかった。
 その結果を王立協会に報告するが無視され、一七九八年から一八〇〇年に三冊の小冊子論文を自費で刊行したため、ようやく英国アカデミーは彼の業績を認めた。
03-625x.jpg
 幕末の動乱期、軍備と医学は手を取り合い西洋化を進めた。そして日本の医学は、種痘と共に近代化した。最初に導入された西洋医学が、「種痘」だったのである。
「種痘」とは「天然痘=痘瘡」の、弱毒生菌によるワクチン接種による予防法だ。
 牛痘の膿に含まれるウイルスは長旅の間に感染力を失い、なかなか日本に伝わらなかった。だが嘉永二年(一八四九)、蘭医モーニケがバタビア(インドネシアの首都ジャカルタのオランダ領時代の呼称。)から長崎に痘苗をもたらした。
その一部を京都の蘭医、日野鼎哉が入手し、福井の笠原良策と大阪の緒方洪庵に分苗する。
(大阪の薬種商、大和屋喜兵衛が世話方になり資金援助して、子供の腕から腕へと牛痘苗の植え継ぎを行う除痘館と西日本を中心にワクチンを分与する分苗所を作る。分苗所の数は49年11月から5カ月後には西日本を中心に64カ所に達した。)

翌々年十月に福井にも除痘館が設置された。
江戸では皇漢医の医学館が足を引っ張ったため、遅れること七年後の安政五年(一八五八)洋方医八三名の私的拠金により「お玉ヶ池種痘所」が設立された。
 種痘普及により皇漢医は衰退し、西洋の兵学や武器が知られ。蘭学は倒幕連動と結びつく。[[現代の内科医領域でも衰退したのだろうか??]]
 明治四年に種痘所は廃止され、明治六年三月、欧米から帰朝した長与が文部省医務局長に任命された時に、牛痘種継所を設立した。[[廃止されていた明治4~6年の間の種痘は誰が誰の負担で行ったのだろうか]]

 種痘は衛生行政の柱となり以後、牛痘種継所の所長職は弘田長、中浜東一郎、北里柴三郎という、日本の衛生学の勃興を支えた面々に受け継がれていく。
 日本の衛生学は、内務省衛生局、陸軍軍医部、東京大学医学部が三つ巴で絡み合い、天外に向けて伸びていく。各々の頂点にいたのが北里柴三郎、森林太郎、緒方正規だ
 その三名が一堂に会した明冶十一年四月のこの日は、日本の衛生学か生まれた日だ、と言っても差し支えないだろう。
 続く

nice!(0)  コメント(0) 
前の10件 | - 国家医学・帝国医療・看護学 ブログトップ