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ウクライナの悲劇は、独立後オルガル匕が国の富を独占してしまったこと。 烏賀陽 弘道 [ユーラシア・西]

烏賀陽 弘道 @hirougaya 2023;0721 https://twitter.com/hirougaya/status/1681999176849317888


ウクライナの悲劇は、独立後オルガル匕が国の富を独占してしまったこと。上位50人の富裕者がなんとGDPの半分近くを独占している。貧富の差がどれだけ激しいかわかる。オルガル匕はこうして得たカネを海外の匿名企業を通して外国不動産などで隠してしまう(資金洗浄)ので、税金も払わない。これだけのカネがウクライナ経済のために使われていたら、とため息が出る。 統計は世界銀行より


ウクライナの悲劇はXXew.jpg

イゴール・コロモイスキーというオルガルヒが作ったウクライナ最初の民間銀行「プリヴァト・バンク」は同国の小口預金の40%を持っていた。同行はコロモイスキーが55億ドルを横領してアメリカで資金洗浄し、2018年に中央銀行が査察に入って同行の金庫がほぼカラであることを発見するまで国民のカネを盗み続けました。ウクライナ中央銀行はやむなく公的資金で55億ドルを補填、プリヴァトバンクは国有化された。これは当時のウクライナの年間国家予算の3分の1という巨額でした。
 2023年のコロモイスキーはアメリカの資産を凍結されて入国禁止ながら、逮捕も起訴もされず、今はスイスのジュネーブにいます。
このコロモイスキーの所有するテレビ局が放送した「国民のしもべ」というドラマシリーズが大ヒット、主演俳優は大統領選に当選します。それがゼレンスキーです。つまりゼレンスキーのパトロンがコロモイスキーでした。
ウクライナ紛争ード.jpg
得票率75%で当選したゼレンスキーでしたが、2021年秋には隠し資産がカリブ海のオフショア国にあることがバレて、支持率が20%に急落。次の選挙では落選確実と言われていました。
【参照 https://www.bbc.com/japanese/58784715 】
ところがその3ヶ月後にロシアが軍事侵攻してきたので、ゼレンスキーはたちまち世界的な英雄に。
ロシアが国境付近で大軍事演習を始めたのは、ゼレンスキーが隠し資産スキャンダルでヨレヨレになつていたころです。軍事演習で脅せば屈服する、攻め込んでもすぐに逃亡して首都キエフ(キーウ)を占領できると思ったのがプーチンの誤算でした。ゼレンスキーがキエフに踏ん張り、ウクライナ国民はロシアへの抵抗で団結した。
2014年の第一次ウクライナ戦争では、ロシアはクリミア半島の無血占領に成功しています。現地のウクライナ軍は抵抗するどころか寝返ってしまった。2022年の第二次ウクライナ戦争でも同じように楽勝と思ったのもプーチンの慢心でした。
実は2014年に始まるドネツク・ルハンスクのウクライナからの分離独立を求める民兵の武装蜂起とウクライナ政府軍の内戦は、ロシアのクリミア半島占領に「便乗」したような形です。ですからプーチンにとっても想定外ではなかったか。それが証拠に、プーチンは2022年まで2州を国家承認しません。
ロシアにすれば、内戦にせよロシアとの戦争にせよ、ウクライナで軍事紛争がグジグジと小規模でも続けば、NATOは加盟を認めません。戦争に引き摺り込まれるからです。ウクライナの非NATO化はロシアのレッドラインですので、休戦と戦闘再開を繰り返す「紛争の常態化」がロシアには戦略的に望ましいシナリオになります。
おそらくウクライナはイスラエル・パレスチナのように「なんだかわからんがいつもモメてる国」として軍事紛争が常態化するでしょう。ゼレンスキーはじめウクライナの閣僚も、この戦争は「数年から数十年」「短距離走ではなくマラソン」とそれを肯定しています。
 ちなみにコロモイスキーはただのオルガルヒではありません。正式にドニプロ州の知事に任命され、なんと15000人の私兵を自分のカネで組織して正規のウクライナ軍として認めさせています。当時のウクライナ陸軍の即応戦力は6〜9000人と言われていましたから、正規軍より私兵の方がデカかった。
 財力、正規の権力、そして私兵軍隊を持ったコロモイスキーを例えるなら、戦前中の中国を分裂させていた「軍閥」(war lord)に近い。いわばウクライナという国の中にコロモイスキー王国というもう一つの国がある「二重権力」状態になった。
正当な主権国家の定義は「正統な政府は一国に一つだけ」が絶対ですので、当時(2018年ごろ)のウクライナはすでに分裂状態、主権国家として体をなしてないというのが適当です。
 コロモイスキーは知事に任命されて私兵軍隊を組織したあたりは熱烈な反ロシアで「プーチンは統合失調症のチビ」とかボロクソ。しかし自分の子飼いのゼレンスキーが当選するとコロリと態度を反転させ「ロシアに頼めばすぐに100億ドルくれてワルシャワ条約に入れてくれる」とか無茶苦茶なことを言い出します。ゼレンスキーは当選した途端にコロモイスキーを裏切ってオルガルヒ退治に乗り出した。
ウクライナが食い物にされ、世界最貧国のままなのは、こんなオルガルヒがうじゃうじゃいたからです。
このへんのウクライナ・オルガルヒの話をいま本にまとめています。(こっそり初めて発表)

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イタリア文化事典ー2011 [ユーラシア・西]

ZT2639697.jpgイタリア文化事典 
日伊協会 /監修 
イタリア文化事典編集委員会 /編
  出版者 丸善出版 
出版年 2011.12 
ページ数 21,899p 大きさ 22cm
ISBN 978-4-621-08429-8


新潟市立図書館収蔵 中央ホンポート館2階 R/293.7/イタ/


内容紹介 イタリア半島の歴史・政治・経済・文化に加え、衣・食・住など日常生活も含めてイタリア社会を総合的・多角的に捉えた事典。「都市・地域・自然」「美」「食べる」「創る」といった11分野に分け、関連写真と共に紹介する。

「イタリア文化」を切り口として様々なテーマを『中項目主義(1〜4頁)』で解説するスタイル。日伊協会・イタリア文化会館の協力も得て、ビジュアルで面白い事典。イタリアの歴史、地理、政治、経済、文化、さらには、衣・食・住など、日常生活のあらゆる面を総合的にかつ多角的に紹介。  


もくじ


1.「イタリアと日本」は 天正少年使節等の日伊の交流の歴史など12項目

2. 「都市・地域・自然」は 各都市の紹介 グランドツアー アグリツーリズムなど40項目

3. 「魂」は イタリアの国民性、イタリア人の無常感、カンパニリスモ(地方主義)、移民の闇と光、宗教の変遷、時間感覚、教皇、ルネッサンス、児童文学など33項目

4. 「美」はエトルリアから、ローマ、ルネサンス等の美術 映画の歴史 建築など52項目

5. 「歌う(オペラ・カンツォーネ)」は、オペラについて、モーツァルトに隠されてしまったイタリアの音楽家たち、カント(イタリア民謡) など42項目

6. 「食べる」は、ルネサンス貴族の食卓、イタリアの調味料、おばあちゃんの味,米,穀類や豆類の料理など21項目

7.「暮らす」では、農業等の自給率、学校制度、不動産事情、子どもの本の世界、医療と老人問題、犯罪白書、格差社会、余暇、イタリア語とは、イタリア方言など26項目

8. 「創る」は デザインやファッションの歴史、オリベッティズム(オリベッティ社のあるイヴレーアは世界遺産) 、薬草文化にみる医学史、 ガリレイなど45項目

9.「集まる」は、協同組合、貧困層、市民運動、秘密結社など13項目

10.「治める」は、あらゆる政治制度の実験国、都市国家と外国支配、ムッソリーニとファシズム、現代イタリアの歴史(赤い旅団とかマーニ・プリ―ティ) イタリアの政治など35項目

11.「不思議」は、ナポリの地下迷宮、イタリア人の家計簿、カステル・デル・モンテ、国民投票など21項目


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女性たちのフランス革命--2022.01 [ユーラシア・西]

81tKXGU7iPL.jpg女性たちのフランス革命 
原タイトル:Les femmes et la Révolution
クリスティーヌ・ル・ボゼック /著, 藤原 翔太 /訳  
出版年 2022.1
出版者 慶應義塾大学出版会
ページ数 208,10p  大きさ 20cm
ISBN 978-4-7664-2794-3
新潟市立図書館収蔵 亀田館 NDC分類(9版) 235.06

著者紹介

クリスティーヌ・ル・ボゼック(Christine le Bozec)
1947年生まれ。歴史学博士(ルーアン大学)、フランス革命の専門家。

訳者
藤原 翔太(ふじはら しょうた)
1986 年生まれ、島根県出身。2016 年トゥールーズ・ジャン・ジョレス大学博士課程修了(フランス政府給費留学)、博士(歴史学)。現在、福岡女子大学国際文理学部准教授。
目次
はじめに
 第Ⅰ部 フランス革命前夜の女性たち
第1章 女性とサロン―――014
 サロンの精神/伝統の継承者たち/権威か、社交界の慣例か
第2章 女性の権利と従属―――028
 妄想にすぎなかった一八世紀の女性の権利/フェミニズムの先駆者/女子教育
第3章 自立へのほんのわずかな可能性―――043
 女性画家/一八世紀の女性作家/女優、ダンサー、歌手/大勢の家庭教師と教師/華々しく成功した二人の女性経営者/限界/女性たちの両義的な反応/反乱の先頭に立つ女性たち
 第Ⅱ部 革命期の女性たち
第4章 革命の舞台に飛び込む女性たち―――060
 一七八九年以来の革命への参加/女性たちが表舞台に立った一七八九年一〇月五日と六日/様々な運動形態/連携した集団行動へ/喜ばれるも不十分な成果/女性たちのほど遠い一体性
第5章 一七九三年春と夏に絶頂を迎える急進的運動―――078
 女性革命運動の組織化と急進化/女性運動の現場/一七九三年九月の動揺/不安視されるアンラジェ
第6章 一七九三年秋、反撃される女性たち―――095
 最前線/ジャン= ピエール= アンドレ・アマールの演説/当座の措置/軍隊からも排除される女性たち/女性から取り上げられた芸術/職業からの排除の典型例/逆説的で曖昧な態度をとる当局/問題の裏側/革命の道徳厳格主義的ブルジョワ化
第7章 闘い続ける女性活動家―――177
 一七九三年一一月から一七九四年七月二七日まで、たえず要求し続ける女性たち/女性たちと徒党の闘争/いらだちと失望/テルミドール派国民公会と共和暦三年の冬/一七九五年冬/一七九五年四月から五月にかけての事件/フロレアルの危機で先頭に立つ女性たち/共和暦三年プレリアル一日(一七九五年五月二〇日)事件の首謀者たる女性たち
 第Ⅲ部 公共生活から排除される女性たち
第8章 暗い未来―――136
 鎮圧/あらゆる分野での後退/女性教師の例外/総裁政府期に戻ってきた「きらびやかな」女性たち/総裁政府期の「サロンの女主人」
第9章 問題の両義性―――153
 進展と行き詰まり/弱い動員力にもかかわらず、不安を喚起し、動揺させた理由/教育の闘い/オランプ、たえず、依然として/古くから続く抑圧/革命に対する女性たちの激しい抵抗/突然の停止の衝撃
第10章 停滞と後退の三〇年  一七九九~一八三〇年―――171
 ボナパルトと民法典/法律で定められた不平等/妻と母親/存続するも厳しく監視されたいくつかのサロン/女性たちと復古王政/復古王政期に活躍した女性たち/七月革命前夜の変化
おわりに―――189
註---193
訳者あとがき―――203
文献案内―――ⅴ
フランス革命関連年表―――ⅱ
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内容紹介  本書は、始点を1770年、終点を1830年とし、その間の移り変わりを辿った。「自由・平等・友愛」の社会を目指したフランス革命は女性たちにとって何を意味したのか。これまで注目されていなかった農民、教師、経営者、芸術家など、政治に覚醒した市井の女性たちの「リアル」を明らかにする。
パンと武器のために立ち上がれ!
「自由・平等・友愛」の社会を目指したフランス革命は女性たちにとって何を意味したのか。
政治に覚醒した市井の女性たちの「リアル」を明らかにする
フランス革命期の女性といえば、マリー・アントワネット、オランプ・ド・グージュ、ロラン夫人、テロワーニュ・ド・メリクールなどがよく知られている。しかし本書の主役は、これまで注目されていなかった、多様な職業(教師、芸術家、企業経営者……)を営む民衆層の女性たちである。
彼女たちの多くが革命運動の中に引き込まれていくことで、女性の社会的・政治的解放に向けてのかつてない議論を呼び起こした。市井の女性たちがパンの不足と高騰に抗議したことなどが契機となり、教師や芸術家や労働者たちが社会の反発に遭いながらも自由と平等を求めて政治運動に参加の契機となった「女性運動としてのフランス革命史」を描きだす。
======================================

革命以前、サロンの主宰者や画家・女優など一部の仕事など限られた場での活躍のチャンスがあったものの、全体としては女性の権利は制限されていた。それがフランス革命で一変する。革命の表舞台に立つ女性も現れ、女性のみの組織が結成されたり、女性も参加可能な組織などが生まれていく。投票権からの排除などがあったものの、「離婚」を法的に認めさせるなど一定の成果を勝ち取っている。ただ、以前からの慣習などにとらわれる女性も少なからずいたため「一体性」を持ち得なかったこと、直接民主制を志向したため、ジャコバン派・山岳派モンタニャールMontagnard。に忌避され弾圧が強まっていく。
また、日本では、ナポレオンが皇帝になった点を批判したとしても、トータルとしては英雄として持ち上げられることが多いが、この民法典の部分を読むと「ナポレオン民法典」などによる女性への圧迫されられている。
こういった流れを描きながら、必ずしも著名ではない女性たちの活動が浮き彫りにされるのが本書の大きな特色だ。

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図説 中世ヨーロッパの商人 (ふくろうの本/世界の歴史), 2022年刊 [ユーラシア・西]

91sfkdPBV8L.jpg図説中世ヨーロッパの商人
著者 菊池 雄太 /編著
出版 河出書房新社
 ふくろうの本
出版年2022.2
ページ数127p
大きさ22cm
ISBN978-4-309-76312-5
新潟市立図書館収蔵 坂井輪館 NDC分類(9版)672.3
内容紹介
イタリア商人とハンザ商人、交易するヴァイキング、徒弟の修行、市場や商館での取引、危険に満ちた旅路、多彩な商品…。才覚と技術とネットワークでヨーロッパを切り拓いてきた商人たちの実像に迫る。
 市場や商館での取引、多彩な交易品の数々とそれらを運搬するための危険に満ちた旅路、商人の一生……様々なトピックから、中世ヨーロッパの商人の歴史と実像に迫るビジュアルガイド。
【目次】
はじめに――商人とは何者なのか(菊池雄太)

第一章 商人ヴァイキングの時代――初期中世の交易ネットワーク(小澤 実)
◆ ヴァイキングの拡大と商業空間
ヴァイキング以前のユーラシア西部/ヴァイキングの拡大と交易地/船舶
◆ ヴァイキングの商い
イスラームと西欧の銀/ヴァイキングの商品/オリエントの奢侈品
◆ ヴァイキングによる商人の安全保障

第二章 旅する商人 (菊池雄太・小野寺利行)
◆ 商人の保護と商業拠点の発展
◆ ギルドと商旅団
◆ 商人居留地の発展
ノヴゴロド/ロンドン/ブルッヘ/ベルゲン
[小コラム] ハンザ(菊池雄太)

第三章 都市における商人 (柏倉知秀)
◆ 都市商業の発展
◆「もの書き商人」の登場
◆ 商人のキャリア
◆ 商人の浮沈
[コラム] シャンパーニュの大市(花田洋一郎)
[コラム] 内陸ハンザ都市の雄 ケルン(谷澤 毅)
[コラム] 中世のイタリア商人(徳橋 曜)
[小コラム] 商業の新たな形態と商都ブルッヘの興隆(菊池雄太)
[コラム] レンガ・ゴシック建築と商人家屋(柏倉知秀)
[コラム] 商人の食事(柏倉知秀)
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第四章 交易の現場から (菊池雄太)
◆ 会社組織
◆ 交易の開始
◆ 商品の輸送
◆ 港湾にて
◆ 商人屋敷での実務
◆ 市場と取引所
◆ 小売り
◆ 金融
◆ 保険
[小コラム] 内陸水路交通の改良(菊池雄太)
[コラム] 海賊(柏倉知秀)
[コラム] 多様な貨幣(菊池雄太)
第五章 さまざまな取引商品 (菊池雄太・小野寺利行)
◆ 毛織物
◆ 香辛料
◆ 穀物
◆ 魚類
◆ワイン
◆ビール
◆ 毛皮
◆ 琥珀
◆ 蜜蠟
[コラム]製塩都市リューネブルク(斯波照雄)
第六章 新時代に向かう商人たち (菊池雄太)
◆ 商業の新時代
◆ 変容する交易システムと会社組織
◆ いかにして時流に乗るか
◆ 世界をまたにかける近代商人たち
[小コラム]アムステルダムの発展とオランダ商人(菊池雄太)

おわりに――商人の中世と現代(菊池雄太)
あとがき(菊池雄太)
著者について
菊池雄太(きくち・ゆうた)編著
グライフスヴァルト大学(Dr.phil.)。立教大学経済学部准教授。専門はドイツ経済史。
著書にHamburgs Ostsee- und Mitteleuropahandel 1600-1800。

小澤実(おざわ・みのる)著
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。立教大学文学部教授。専門は西洋中世史・北欧史・史学史。編著に『北西ユーラシアの歴史空間』、共訳書に『ハンザ』など。

小野寺利行(おのでら・としゆき)著
明治大学大学院博士後期課程単位取得退学。明治大学文学部非常勤講師。専門は中世ドイツ-ロシア商業史。共著に『北海・バルト海の商業世界』、共訳書に『ハンザ』など。

柏倉知秀(かしわくら・ともひで)著
中央大学大学院商学研究科博士後期課程修了。徳山工業高等専門学校教授。専門はハンザ史・商業史。共著に『北海・バルト海の商業世界』、共訳書に『ハンザ』など。

タグ:ヨーロッパ
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ウクライナを知るための65章・・2018年刊行 [ユーラシア・西]

91NIuBc7NnL.jpgウクライナを知るための65章

 編著 服部 倫卓 /ハットリ みちたか  
 編著 原田 義也 /ハラダ よしなり  
出版者 明石書店
 エリア・スタディーズ  番号1 169
出版年 2018.10
ページ数 408p
ISBN 978-4-7503-4732-5
県立図書館収蔵本  NDC分類(9版) 302.386
内容紹介 ウクライナの自然環境、歴史、民族、言語、宗教、芸術、文化…。研究者をはじめ、現地の情勢に詳しいマスコミや企業、官公庁勤務の執筆者らが、様々な面からウクライナの魅力を紹介する。現代ウクライナの諸問題も取り上げる。
服部倫卓※ 1964年生まれ。一般社団法人ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究所副所長。
原田義也※ 1972年生まれ。厚生労働省社会・援護局援護・業務課調査資料室ロシア語通訳。
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◆目次
はじめに
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I ウクライナのシンボルと風景
第1章 「ウクライナ」とは何か――国名の由来とその解釈
第2章 青と黄のシンボリカ――ウクライナの国旗・国章・国歌
第3章 多様な自然環境――森林、ステップ、そして海
第4章 高い科学と技術の水準――スキタイからITまで
第5章 世界史の舞台としてのウクライナ――交流と紛争の舞台裏
第6章 「森の都」キエフとドニプロ川――「ルーシ諸都市の母」はいかにして生まれたか
第7章 多様で錯綜した西ウクライナ――ハリチナー、ザカルパッチャ、ブコヴィナ
第8章 ウクライナ文化揺籃の地となった北東部――シーヴェルシチナ・スロボジャンシチナ・ポルタウシチナ
第9章 ドンバス地域――政治・経済変動の震源地
【コラム1】帝政ロシア時代のイギリス資本によるドンバス開発――炭鉱と軍需産業のルーツ
第10章 クリミア――変転極まりない歴史
第11章 オデッサ――「黒海の真珠」の光と影
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II ウクライナの民族・言語・宗教
第12章 民族・言語構成――スラヴ、ゲルマン、ロマンスからテュルクまで
第13章 ウクライナ人――その人類学的素描
第14章 ロシアにとってのウクライナ――西欧に近いエキゾチックな辺境
第15章 ウクライナにおけるポーランド人――支配者からマイノリティに転換した1000年
第16章 ウクライナとユダヤ人の古くて新しい関係――恩讐の彼方に
第17章 ウクライナ語、ロシア語、スールジク――進展するウクライナ語の国語化
♯ウクライナ語の簡易表現♯
第18章 ウクライナ、ルシン、レムコの多層的な関係――国家の隙間に生きる人々と言葉
第19章 三つの正教会と東方典礼教会――交錯するキリスト教世界
第20章 ウクライナ人ディアスポラ――遠い祖国への熱き想い
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III ウクライナの歴史
第21章 スキタイ――黄金に魅せられた騎馬民族
第22章 キエフ・ルーシとビザンツ帝国――ウクライナの前史
第23章 コサックとウクライナ――ウクライナ独立を求める戦いの始まり
【コラム2】コサックの伝統・文化――ウクライナ人はコサックの一族?
第24章 リトアニア・ポーランドによる支配――大国の狭間における自主の萌芽
第25章 ロシア帝国下のウクライナ――「小ロシア人」から「ウクライナ人」へ
第26章 ハプスブルク帝国下のウクライナ――多民族国家の縮図ガリツィア
第27章 第一次世界大戦とロシア革命――帝国の崩壊と独立闘争
第28章 大飢饉「ホロドモール」――ウクライナを「慟哭の大地」と化した「過酷な収穫」
第29章 第二次世界大戦とウクライナ――「流血の大地」を生んだ7年間
第30章 シベリア抑留とウクライナ――ユーラシア大陸を横断した日本人捕虜
第31章 ソ連体制下のウクライナ――雌伏の時を経て独立へ
第32章 あの人もウクライナ出身――文学者、芸術家、政治家
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IV ウクライナの芸術と文化
第33章 国民詩人タラス・シェフチェンコ――ウクライナ民族の魂
第34章 ウクライナを愛した女性たち――民族と国家のはざまで
第35章 現代文学――現在ウクライナで読まれているジャンルや作品
第36章 ロシア文学とウクライナ――言語、民族、トポスの錯綜
【コラム3】レーピン絵画の中のシェフチェンコ――ウクライナに共感したロシア知識人たち
第37章 ウクライナの祝祭日――伝統の復活と変わりゆく伝統
第38章 伝統工芸の復活――ピーサンキとウクライナ刺繍
【コラム4】ゲルダン――ウクライナの衣装を彩るビーズ細工
第39章 ウクライナ料理へのいざない――ボルシチはロシア料理にあらず
第40章 サブカルチャー、ポップカルチャー――若者文化とアイデンティティの探求
第41章 映画の中のウクライナ――オデッサの階段、ひまわり畑、愛のトンネル
第42章 現代ウクライナにおける日本文化の受容――ステレオタイプを超えて
【コラム5】ウクライナにおける日本語教育事情――学習者の多様化と今後の課題
第43章 ウクライナのスポーツ事情――ブブカ、シェフチェンコ以外の有名選手は
第44章 傷だらけのウクライナ・サッカー――深刻な財政難と客離れ
第45章 ウクライナ観光の見所と魅力――世界遺産からチェルノブイリまで
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V 現代ウクライナの諸問題
第46章 独立ウクライナの歩みの概観――東西の狭間で苦悩
第47章 ウクライナの憲法・国家体制――大統領・議会・内閣・地域
第48章 オレンジ革命――ウクライナ民主化の夜明け
第49章 ユーロマイダン革命(尊厳の革命)――「脱露入欧」の夢と現実
第50章 ドンバス紛争――「ドンバス人民の自衛」か「ロシアの侵略」か
第51章 ウクライナとクリミア――ロシアによる併合に至る前史と底流
第52章 ユーロマイダン革命とクリミア――内部から見たクリミア併合の真相
第53章 ウクライナ経済の軌跡――荒波に翻弄され乱高下
第54章 ウクライナの産業と企業――変わらぬオリガルヒ支配
第55章 ウクライナのエネルギー事情――市場改革と対ロ依存の狭間で
第56章 今日のウクライナ社会――生活水準が欧州最低レベルに落ち込む
【コラム6】今日のウクライナの世相――闇の中を彷徨うウクライナ
第57章 チェルノブイリ原子力発電所事故――放射能汚染と健康被害の実態
【コラム7】チェルノブイリを観光する――ユートピアとダークツーリズム
第58章 ウクライナの軍需産業――中国や北朝鮮との繋がりも
第59章 ウクライナの軍事力――紛争に直面し整備が急務に
第60章 ウクライナの欧州統合――ウクライナの国造りに向けた戦略
第61章 ウクライナ・ポーランド関係――歴史問題に揺れる両国
第62章 ウクライナとNATO――遠い加盟への道のり
第63章 ウクライナの対ロシア関係――深まる一方の不毛な対立
第64章 日本とウクライナの外交関係――基本的価値の共有からさらなる関係強化へ
第65章 日本とウクライナの経済関係――乗用車輸出が最大のビジネス
おわりに


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不思議の国ベラル-シ・・2004年刊行 [ユーラシア・西]

不思議の国ベラル-シ261791.jpg不思議の国ベラル-シ
   ナショナリズムから遠く離れて

著 服部倫卓 /ハットリみちたか  
出版年 2004.3
出版者 岩波書店
ページ数 224,16p
ISBN 4-00-024623-2
県立図書館収蔵本 NDC分類(9版)  302.385
著者紹介  服部 倫卓(ハットリみちたか)
1964年,静岡県生まれ.東京外国語大学外国語学部ロシヤ語学科卒.青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了(国際政治学修士).1998年4月から2001年3月まで在ベラルーシ共和国日本国大使館専門調査員.2004年現在,(社)ロシア東欧貿易会・ロシア東欧経済研究所 調査役.
共著に,『CIS:旧ソ連空間の再構成』(国際書院,2004年)がある.

内容紹介
ヨーロッパの中心にある不思議な国,ベラルーシ.数々の歴史的建築物に恵まれながら,古都や史跡は訪れる人もないまま廃虚と化し,偉人を称揚するでもなく,民族語であるベラルーシ語にいたってはその命運すら危ぶまれている…独裁国….周辺諸国の強烈なナショナリズムがつとに知られるなか,ひとりナショナリズムを真っ向から「公式に」否定しているのがベラルーシなのです.
その一方でベラルーシはソ連解体後,唯一国民が「入超」の国,しかも民族的にベラルーシ人以外の人たちが,それぞれの出身国の民族的くびきから逃れてやって来ています.あるいは「民族主義が失敗」したベラルーシこそ,「民族共存の楽土」なのか? けれどもそうした寛容の美風をもったまま,この21世紀を生き抜いていけるのか?ベラルーシの生き方は,民族とは何か,国家とは何なのかを私たちに鮮烈に問いかけずにはおきません.
■著者からのメッセージ
 我が国の論壇には,ナショナリズムを過激に否定すればするほど進歩的だというような風潮,ありますよね.でもそれは,ナショナリズムの「成功例」しか見ていないからではないでしょうか.ちなみに,この場合の「成功」というのは,人間を幸福にするという意味ではなく,ナショナリズムが盛り上がるという意味です.確かに,ナショナリズムは時に盛り上がりすぎて,災厄をもたらします.
 それでは,逆にナショナリズムの「失敗例」を目の当たりにしたら,どうでしょう.少なからぬ国民が独立を悪夢と受け止め,隣国(ロシア)に吸収されることを願っている国.大統領がナショナリズムを自己否定し,民族主義者を弾圧している国.そう,この本で紹介しているベラルーシという国が,まさにそれなのです.ベラルーシは「ナショナリズムに関する究極の問い」だと言えるかもしれません.
 かく言う私も,もともとはナショナリズムについてもっぱら否定的で,とくにベラルーシ・ナショナリズムとは距離を置いていました.それが今では…….民族・国民を「想像の共同体」と呼んだのはB.アンダーソンですが,私は本書でベラルーシという対象と格闘することで,想像の所産にすぎないはずのナショナリズムがいかにして人間の心をとらえるのか,身をもって体験したような気がします.ベラルーシという「愛すべき例外」と出会わなかったら,このようなことはなかったでしょう.私の不思議体験を,一人でも多くの読者に分かち合ってほしいと願っています.

タグ:ロシア
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戦争に巻きこまれた日々を忘れないー日本とアフガニスタンの証言 [ユーラシア・西]

アフガン919RiiGH5CL-縮.jpg戦争に巻きこまれた日々を忘れない 

副タイトル1 日本とアフガニスタンの証言
著者1 長倉禮子 /著, レシャ-ド カレッド /著  
出版年 2016.7
ページ数 115p
大きさ 21cm
出版者 新日本出版社

ISBN 978-4-406-06038-7
新潟県立図書館収蔵 NDC分類(9版) 319.8

内容紹介
アフガニスタン出身でイスラム教信者の医師が祖国の悲惨な状況と戦争による悲劇を、キリスト教信者である日本の神学研究者が日本の戦時下の生活と空襲の体験を語り、それぞれの立場から日本国憲法と平和への思いを伝える。

十五年戦争下、空襲で悲しい体験をした少女。戦争が庶民に何をもたらすか、今だからこそ伝えたい――クリスチャンでもある彼女の思いに共感したムスリムの医師は、大国の侵略で傷ついてきた祖国アフガニスタンの歴史と現状を語る。「殺し、殺される」日本という状況に、歴史の教訓を等身大の目線で伝えるコラボレーション。

著者紹介
長倉禮子 ;ナガクラレイコ 1936~2016年。元山梨県立女子短大教授。神学研究者。著書に『ジョン・ヘンリ・ニューマンの文学と思想―影と幻から真実へ』(2011年、知泉書館)、訳書にジョン・ヘンリニューマン著『ニューマン枢機卿の黙想と祈り』(2013年、同前)など。静岡市内で私設図書室「ガレリア布半」を運営、戦争展などを開いてきた。

レシャ-ド カレッド; رشاد خالد パシュトー語:Reshad,Khaled 英語
アフガニスタン出身。1950年カンダハル生まれ。1969年日本に留学後、76年に京都大学医学部卒業。医師免許を取得、82年に日本に帰化し島田市でレシャ-ド医院を開業している。アフガニスタン支援の「カレーズの会」を主宰。著作に『知ってほしいアフガニスタン 戦禍はなぜ止まないか』(2009年、高文研)。

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知ってほしいアフガニスタン 
アフガン51IHvsNe4pL.jpg副タイトル1 戦禍はなぜ止まないか
著者1 レシャ-ド カレッド /編著  
出版年 2009.11
出版者 高文研
ISBN 978-4-87498-430-7
新潟市立図書館収蔵 西川館 /302.2/シ/ 
内容紹介
祖国の惨状に心を痛め、医療・教育ボランティアに献身してきた日本在住のアフガン人医師が、アフガニスタンの現状と、この実態を生んだ歴史的経緯について述べる

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現在のイスラエルがある土地に住んでいた人々は、アジア産の果物やスパイスを3500年も前から口にしていたことがわかった。 [ユーラシア・西]

中東、現在のイスラエルがある土地に住んでいた人々は、アジア産の果物やスパイスを3500年も前から口にしていたことが、歯石の分析でわかった。論文が「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。


などより覚書

農作物。01.jpg
歯の表面に蓄積される歯垢が石灰化した歯石は、人類の進化の過程を研究する学者にとっては宝の山である。
歯石を調べるというアイデアは1980年代からあった。古代のDNAやバクテリアからタンパク質まで、さまざまなものが歯石に閉じ込められている。研究者たちがしっかり読み取れるようになったのは、強力な顕微鏡検査法と正確な遺伝学的分析がほんの10~15年前に可能になってからである。それまでは、歯の化石標本が新たに発見されると、博物館や研究室では歯石を除去していた。
歯石から研究者たちが、食べていた動物や植物とマイクロバイオーム(ある環境にいる微生物のまとまり)からDNAを分析する。「マイクロバイオームを調べることで、ネアンデルタール人が日常生活の中でどんなものに触れていたかが分かります。どのような病気になり、どのような薬で治療していたかもです」(オーストラリア、アデレード大学の微生物学者ローラ・ウェイリッチ氏)
肉食のネアンデルタール人と草食のネアンデルタール人ではマイクロバイオームが違っていて、現代人のマイクロバイオームはそのどちらとも全く違う。
ネアンデルタール人の歯と歯石。01.jpg
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究では、青銅器時代中期から鉄器時代初期(紀元前1500年~1100年頃)の遺体十数体から、化石化した歯垢を採取、分析。結果、バナナ、鮮やかなオレンジ色のスパイスであるターメリック、ゴマ、大豆の痕跡が見つかった。南アジアおよび東アジア原産の作物であり、これまでは、古代地中海地域の人々の食卓とは無縁のものと考えられてきた。これまで、ニワトリ、黒コショウ、バニラなど実に様々な食材が、はるか遠くのインドやインドネシアから輸入されていたことがわかっている。今回の発見は、こうした遠隔地との交易をさらに裏付けるものだ。

ゴマの種は、紀元前1400年頃に埋葬されたエジプト王ツタンカーメンの墓からも見つかってはいるが、大半の研究者は、ゴマが現在のイスラエルがある土地レバントの料理に広く使われるようになったのは、ずっと後の時代になってからだと考えていた。それが青銅器時代中期から鉄器時代初期(紀元前1500年~1100年頃)にまで溯った
「考古学的な記録においては、スパイスとオイルはほぼ目に見えない存在なのです」「歯石のおかげで、本来であれば何の痕跡も残さずに消えてしまう経済的価値の高い食物を見ることができます」(米ハーバード大学および独マックスプランク人類史研究所に所属する古生物学者クリスティーナ・ワリナー氏)。その食物とはつまり、希少なゴマや大豆油、バナナのような珍しい植物のことだ。研究者らは新たな手法を用いて、歯石からより多くのタンパク質を取り出し、見つかったものと植物タンパク質のデータとを比較して一致するものを探す時間を多く費やした。
バナナの熟成を促すタンパク質が歯石から見つかった50代の男性の「墓は非常に質素であり、エリート層のものであることを示す証拠はありません」「この男性がまさか、初めてバナナを食べた王様だということはないでしょう」「私たちは、古代の人たちが地元で食物を調達し、宝石などの特別な品を遠い土地から輸入していたと考えがちです」「ところが青銅器時代(紀元前1100年頃)でさえ、彼らは現代人と同じように、世界各地から食物を輸入していたのです」(ドイツ、ルートヴィヒマクシミリアン大学ミュンヘンの考古学者フィリップ・シュトックハマー氏)

栽培種のバナナには種子がなく、柔らかい果肉はすぐに腐敗してしまうから、生のバナナの果実ではなく、長い運送期間にも耐えられる乾燥させたバナナチップスを輸入し人々は食べていたと考えられる。
この男性が実は運んできた隊商・キャラバン(ペルシア語カールヴァーン:Karvan、英: caravan)や船乗り、あるいは貿易商であったかもしれない。

青銅器時代が非常にグローバルであり、世界は中国から地中海に至る長距離貿易によってつながれていたという近年の認識を裏付ける
今回の発見となってる。
「今では、少なくとも紀元前2世紀以降、作物が長距離を運ばれていたことを示す証拠はたくさんあります。ここからは、小規模な社会が広大なネットワークの一部として動いていたことがわかります」(イスラエル、ハイファ大学のジンマン考古学研究所所長アイレット・ギルボア氏)
01.jpg
古代の市場の想像図。店先には、地中海東部全域で育つ小麦、キビ、ナツメヤシのほか、
南アジアで採れるゴマ油の入ったビンや、ターメリックが盛られた器が並ぶ。

タグ:中東
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文明史から見たトルコ革命―アタテュルクの知的形成 – 2020 [ユーラシア・西]

71pZQTKXbTL.jpg文明史から見たトルコ革命―アタテュルクの知的形成  – 2020

M・シュクリュ・ハーニオール(M. Şukru Hanioğlu)【著】
新井 政美【監訳】/柿﨑 正樹【訳】
みすず書房(2020/03発売)
サイズ 46判/ページ数 312p/高さ 20cm
ISBN 978-4-622-08885-1
2020年3月2日発行
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館 二階、/227.4/ハニ/
価格 ¥4,400(本体¥4,000)
内容説明
イスラム圏初の世俗国家を建設したアタテュルク。近代西洋の理念に則る建国という壮大な社会実験は、成功したのか?西洋と東洋の狭間から歴史を読み直す。エルドアン現大統領の政策とアタテュルクとの関係を論じた訳者解説を付す。
約600年存続したイスラム帝国オスマンは、第一次世界大戦での敗北を受け1922年に消滅した。列強の干渉を退ける独立戦争を経た翌年、近代的国民国家として発足したトルコ共和国はイスラムと決別してゆく。この一大革命を主導したケマル・アタテュルクは建国の父として崇められ、「ケマリズム」「アタテュルク主義」というイデオロギーが形成されるまでになった。それは次第に影響力を減じながらも、今もトルコの公式イデオロギーであり続けている。
建国に際してアタテュルクは、科学主義、理性崇拝、世俗主義といった近代西洋の理念を礎として、言語から服装まで徹底的な改革を断行した。本書はそのアタテュルクが、西洋のどのような書物を読み、どのような学説を支持し、どのような影響を受けて自らの建国思想を形成したのかを追究するものであり、これまでにない角度からアタテュルク像を描く。さらに、ヨーロッパ発祥の近代文明史にトルコ革命を位置づけることで、近代西洋に裏から光をあてるという、注目すべき試みにもなっている。徳川幕藩体制から明治の近代国家へと、性急な近代化を成し遂げた日本との、興味深い共通性も浮かび上がってくるだろう。
オスマン帝国近代史研究の第一人者による、現代トルコの起源を知るための必読書。
目次
第1章 世紀末のテッサロニキ
第2章 「武装せる国民」―あるオスマン将校の誕生
第3章 青年トルコ人の科学主義
第4章 諸戦争から世界大戦へ―英雄の登場
第5章 イスラム共産主義?―トルコ独立戦争
第6章 世俗的共和国
第7章 ナショナリズムとケマリズム
第8章 トルコと西洋
著者等紹介
M・シュクリュ・ハーニオール(M. Şukru Hanioğlu)
1955年イスタンブルに生まれる。プリンストン大学教授。トルコ歴史協会名誉会員。青年トルコ人運動を中心としたオスマン帝国近代史研究の第一人者
新井政美[あらいマサミ]
1953年、東京に生まれる。1976年、東京大学文学部東洋史学科卒業。1984年、同大学院東洋史専攻博士課程修了。大阪市立大学文学部助教授(史学教室)、東海大学文学部助教授(文明学科・西アジア専攻)、東京外国語大学外国語学部教授などを歴任。東京外国語大学名誉教授。トルコ歴史協会名誉会員。オスマン帝国史、トルコ近代史専攻。
著書 Turkish Nationalism in the Young Turk Era (Leiden: E.J.Brill, 1992; Tansel Demirel訳、Jon Turk Donemi Turk Milliyetciligi. Istanbul: Iletism, 1994)、『トルコ近現代史――イスラム国家から国民国家へ』(みすず書房、2001)、『オスマン帝国はなぜ崩壊したのか』(青土社、2009)、『憲法誕生――オスマン帝国と明治日本 二つの近代』(河出書房新社、2015)など。
訳書 ジェム・ベハール『トルコ音楽にみる伝統と近代』(東海大学出版会、1994)、監訳書 ハーニオール『文明史から見たトルコ革命』(みすず書房、2020)。
柿﨑正樹(かきざきマサキ)
1976年生まれ。テンプル大学ジャパンキャンパス上級准教授。2002年、中東工科大学(トルコ)政治行政学部修士課程修了。2015年、ユタ大学政治学部博士課程修了。博士(政治学)
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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ライシテから読む現代フランス =伊達 聖伸/著 -- 岩波書店 (岩波新書 新赤版 1710)-- 2018. [ユーラシア・西]

ライシテから読む現代フランス

ライシテ.jpg副タイトル 政治と宗教のいま
著者 伊達 聖伸 [だてキヨノブ]  
出版者 岩波書店
シリーズ名 岩波新書 新赤版  1710
新書判/ページ数 3,243p/高さ 18cm
ISBN 978-4-00-431710-4
出版年 2018.3
県立図書館収蔵 NDC分類(9版) 316.2
内容紹介
数々のテロ事件を受け、政治と宗教、共生と分断のはざまで揺れているフランス。国内第二の宗教であるイスラームとの関係をめぐり、2017年大統領選挙の主要争点ともなったライシテについて論じる。
数々のテロ事件を受け、フランスはいま、政治と宗教、共生と分断のはざまで揺れている。国内第二の宗教であるイスラームとの関係をめぐり、二〇一七年大統領選挙の主要争点ともなったライシテとは何か。憲法一条が謳う「ライックな(教育などが宗教から独立している、非宗教的な、世俗の)共和国」は何を擁護しうるのか。
目次
序章 共生と分断のはざまのライシテ
(揺れる共和国―テロ事件と大統領選挙から;なぜ、いまライシテなのか)
第1章 ライシテとは厳格な政教分離のことなのか
(分離から承認へ;右傾化と治安の重視;同性婚反対運動とカトリック ほか)
第2章 宗教的マイノリティは迫害の憂き目に遭うのか
(シャルリ・エブド事件からヴォルテールの『寛容論』へ;カラス事件とプロテスタント;ドレフェス事件とユダヤ人 ほか)
第3章 ライシテとイスラームは相容れないのか
(ヴェールを被る理由、被らない理由;フェミニズムとポストコロニアリズム;「原理主義」と括られる潮流 ほか)
終章 ライシテは「フランス的例外」なのか
(ライシテを「脱フランス化」する;日本のライシテ)
著者等紹介
伊達聖伸[だてキヨノブ]
1975年仙台市生まれ。フランス国立リール第三大学博士課程修了(Ph.D.)。上智大学外国語学部フランス語学科准教授。フランスやケベックのライシテ(政教分離、世俗主義)を研究しています。著書に『ライシテ、道徳、宗教学』(勁草書房)、『ライシテから読む現代フランス』(岩波新書)など。訳書にフェルナン・デュモン『記憶の未来』(白水社)、フランソワ・オスト『ヴェールを被ったアンティゴネー』(小鳥遊書房)など。
伊達聖伸 / Kiyonobu Date ツイッター
『ライシテから読む現代フランス』では、フランス史のなかで、プロテスタント、ユダヤ、ムスリムが順に差別の焦点になってきたことを論じている(第2章)。ムスリム差別が相対的に後景化するとき、次はアジア系が矢面に立つかもという予感はあった(書いてないけど)。
ヨーロッパのアジア系差別とムスリム差別は構造的に似ていて相関的。フランス映画『最高の花婿』には、ユダヤ人とムスリムの言い争いを中国系が取り持とうとするが、「俺たちは分かり合えるが、おまえのことは分からん」と返される場面がある(映画自体はハッピーエンド)
ただし、私が言いたいのは、フランスの普遍主義は、そういうスケープゴートとしての「他者」を作ってきた一方で、そのような排除の流れを鋭く批判する精神もきちんと形作ってきたということ。
さらに言えば、そのようなに排除の流れを鋭く批判する普遍主義は、フランスや西洋の専有物ではない。フランス革命の理念を掴んで、その欺瞞、端的に言えばフランスの植民地主義を批判することのできた日本人の筆頭に来るのが、中江兆民だと思っている。
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タグ:フランス
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