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スマート農業の導入で、機械代は増え、人件費は減り、利益は下がった。 [農から見つめる]

労力軽減に貢献 利益マイナスるb.jpg


スマート農業実証プロジェクトは、ロボット農機やドローン(小型無人飛行機)などの先端技術を現場に導入し、効果を明らかにする。「農業労働力確保緊急支援事業」と連携して実施。2019年度に全国69地区から始まり、現在148地区で実証中だ。

労働力不足の解消に向けたスマート農業実証(令和2年度補正)



 中間報告は初年度の水田作での効果を分析した。大規模、中山間、輸出の3類型に分け、代表事例で労働時間の削減率や経営収支を示した。

 労働時間は、慣行と比べてシーズン合計で10アール当たり0・2~1・9時間減り、人件費を削減できた。特に、ドローンを使った農薬散布は平均81%減、自動水管理システムは同87%の減少と、削減効果が大きかった。ドローンによる農薬散布は、ホースを人の手で引っ張る作業がないため、疲労の軽減効果も見られた。

 一方、経営面では10アール当たりの機械・施設費が54~261%増加。スマート農機を追加投資したことが響き、利益は慣行より同3000~2万8000円下がった。同省はまだ初年度の成果であることから、農機の扱いの習熟や利用面積の拡大で効率は上昇するとしている。


 生産者からの意見として「社員のモチベーションが上がった」「新規就農者でも熟練技術者並みの精度と時間で作業が可能になった」など、コストに反映されないメリットも指摘されている。


《今後は、地域の実情に即して、効果的なスマート農業の導入につながるよう、

・スマート農機の能力に見合った適正な活用面積の見極めや、初期投資の影響を緩和するためのシェアリング等の可能性

・商流全体を視野に入れた物流コストの低減や高付加価値化の取組

等について検証していきます。》と農業実証プロジェクトを進める。

今後はスマート農業活用の適正面積を見極めた経営モデルの作成などを検討する。


 最終的な実証成果は2021年春から取りまとられる。

 

支援 現場視点で  九州大学大学院農学研究院・南石晃明教授の話


 スマート農業の導入で労働時間が減り、経費が増えることは、現場の感覚からも、われわれの数学モデルからも予想された。収支が悪化しては生産者としては経営が成り立たない。

 スマート農業は農的生活を楽しみたい若者や兼業農家など、なじまない経営もある。農業は多様であり、全ての現場への普及を前提とすべきではない。

 どんな経営者が何の機能を必要としているかを見極め、現場の声を基にした導入コスト削減や政策支援が必要だ。


日本農業新聞11月17日記事、覚書

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朝鮮半島の地力維持ーー土壌 [農から見つめる]

朝鮮半島は先端から中国大陸との付け根まですべて、それを造っている岩石は花崗岩となっています。

 日本の北海道では富良野一帯、東北では福島県の白河付近、関東では丹沢一帯、愛知県では矢作川流域、そして山陽新幹線沿線では白く見える山のほとんどが、この花崗岩地帯です。

花崗岩02.jpg
 花崗岩はどんな岩石かというと、白い結晶の中に黒い粒が見える岩石で、それぞれしっかりした形の粒が集まっている感じです。

硬いこの岩石も、風化するとボロボロになって白い砂状になります。この砂状に風化した花崗岩も、気温が高く、多くの雨にさらされると、その中の鉄分が次第に酸化して褐色から赤褐色になってきます。この結果、朝鮮半島では、最南端のプサンから海寄りに行くと赤い土になります。

空から見た韓国02.jpg

空から  関祐二 撮影

岩石の主成分はケイ酸、アルミニウム、鉄の3つですが、このうちのケイ酸の含有量によって性質、植物にとっての栄養のあり方などが異なります。岩石はケイ酸含量が少ないと、石灰、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、その他の微量要素が多くなる傾向があります。
ケイ酸含量(二酸化ケイ素:SiO2・シリカ)45%以下の超塩基性岩は含有率の極端に高いマグネシウム(Mg ) 、極端に低いカルシウム(Ca ),カリウム(K ), リン(P)で、隔離分布種や固有種、極端に低い植被率など、古くから特殊な植生で知られている。ケイ酸含量52~45%は塩基性岩は、石灰、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、その他の微量要素各種栄養がたいへん豊富に含まれている。
ケイ酸含量65~52%は中性岩、ケイ酸含量が多い・含量65%以上は酸性岩と、定義されています。
花崗岩は、ケイ酸含量71~76%ほどあり、典型的な酸性岩です。
花崗岩から出来る土は、微量要素各種栄養が少なく不足する、水分保持能力もたいへんに小さい土と云えます。花崗岩地帯の植物生育量、農業生産力は低く、現代日本でも水田の米反収・10a当たりの収量の平年の全国平均は530kg位ですが、花崗岩地帯の水田は7俵(420kg)ぐらいの年も珍しくないようです。畑では有機物を十分に与えて、かなり手を掛けないと思うような収穫は望めないようです。
朝鮮半島の岩石は基本的に花崗岩であるということは、半島全体がすべて栄養分の乏しい岩石で出来ているということになり、それから出来る土も栄養のないものということになります。この花崗岩が物理的・機械的風化・温度変化による岩石自体の膨張・収縮,岩石の割れ目にしみ込んだ水の凍結・融解による膨張・収縮などでボロボロになるが、変質して粘土を生成する化学的風化が低い、土としての熟成が弱いという傾向が、韓国の北部へ行けば行くほど強くなります。この難しい傾向は北朝鮮に行けばさらに強まります。
韓国の気象庁が2012年1月に発表した、「北朝鮮気象30年報」によると、D.P.R. Korea・北朝鮮の年平均気温は8.5度で、南の韓国は12.5度、日本は15度。この気候から推測できることです。
成田から中国の瀋陽行の飛行機に乗ったことのある方なら、窓から見る北朝鮮の風景がいかに緑のない殺風景なものかを知っているでしょう。

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朝鮮半島の地力維持ー半島の降雨 [農から見つめる]

日本列島 と朝鮮半島の相互雨蔭作用ー鈴 木 秀 夫-1976   より覚え書き

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/85/6/85_6_342/_pdf

太平洋からの風が吹く時には、朝鮮半島は日本列島の蔭になつてあまり雨が降らず、その反対に大陸から冬の季節風の吹走時に、九州は朝鮮半島の蔭になるために雪がほとんど降らない。毎日の天気図の上で、一つの低気圧が中国からやつてきて朝鮮をすぎ、日本を通つて東方海上に抜けるのを見る時、一見同じような天候推移を朝鮮と日本が経験するかのごとくであるが、実は、少くとも雨の降り方には相違があり、そのため近距離にあつても両方の気候環境はかなり異なつている。

ソウルbig_232850.jpg

서울ソウルでは、夏季における雨の集中が著るしい

降雨量のピークが、梅雨前線あるいは秋雨前線と呼ばれるポーラーフロント・寒帯前線(かんたいぜんせん)の通過によるっておこる。ソウルがほぼその北上の限界に近いために一つのピークになっているものである。注目点は、대구大邱テグ、부산釜山プサン、福岡、東京などはいずれも二つのピークを持っていて、ソウルは、ほとんど一つのピークとなって、夏以外には、ほとんど雨が降つていない点。

日本列島 と朝鮮半島の相互雨蔭作用ー鈴 木 秀 夫-1976-p2.jpg

中緯度/30~60度/の低気圧は前線を伴うことが多いから、低気圧接近によって前線性の雨も降る。日本の場合、多くは低気圧の中心に向って移流する空気が山地をのぼって起す地形性降雨が主体となる。熱帯性低気圧・台風の日本への降雨はすべて地形性降雨が主体であり、中心部の上昇気流による雨というのはとくに認めることはできない。
朝鮮半島の西の黄海海上にある場合、(第2図、第3図)、朝鮮半島に雨があまり降らない。全体としては、朝鮮半島は日本列島の蔭になり、関門海峡を吹き抜けた風によつて、蔚山、釜山などで部分的に降水が多くなるところがある。
低気圧が大陸・中国からやってきて朝鮮半島を横切って東へ抜けた場合(図4)低気圧には前線性の雨も伴うから、降水が0にならないけれども、低気圧前面の南東気流による地形性降雨が主体で、そこには、第2図の台風の例でみたように、南東部に日本列島の雨蔭作用を認めることができる。
以上、巨大な水の供給源である太平洋からの南東気流の卓越した時、その風は余り朝鮮半島に雨をもたらさない。
日本列島 と朝鮮半島の相互雨蔭作用ー鈴 木 秀 夫-1976-p地図.jpg
しかし、朝鮮半島は南に向って大きく開いている。ここから、太平洋気団よりも一層湿潤な赤道気団が大陸とフィリピンの問を抜けて湿舌として侵入、時期は夏で、その時、梅雨前線はソウルか、もう少し北にまで達していて、そこにその湿舌が乗りあげて、豪雨をもたらす。
主として太平海気団が関与する東京の梅雨とくらべて、ソウルの梅雨チャンマと呼ばれるの雨量が多いことは、これによる。
IV. 冬の雨についてーー朝鮮半島の方から日本に向つて風の吹く場合
西高東低が発達し、前線の通過もなく、24時間以上北西の季節風が吹きつづいて場合(図5)。黄海からの水蒸気による朝鮮半島の西岸に降水おそらく雪 ―がひと冬に数度程度ある。ソウルの冬は無降水がしばしば。済州島の西岸、五島列島、薩摩半島に降水がみられる。
朝鮮半島の蔭から五島列島、薩摩半島が脱してる。
黄海からの水蒸気を含んだ北西の風は、関門海峡を抜け四国の西部の愛媛県宇和島付近に降水をもたらすことがある。朝鮮半島の蔭の東側の限界は、山口県の中部にある。
V. 要約と結語
以上、日本列島と朝鮮半島は、相互に雨蔭作用を及ぼしていることが疑いない。この雨蔭作用は前線性降雨および南から湿舌の侵入以外のほとんどすべての雨に関係している、その総和として、朝鮮半島における、雨の著るしい夏季集中という結果になっている

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朝鮮半島の地力維持ー半島の自然 [農から見つめる]

朝鮮半島は中国大陸と同じく中国地塊に属する安定大陸(安定陸塊)で、先カンブリア時代※には原型が出来上がっていたと考えられる。非常に古く安定した大地のため、日本列島に比べて地震が非常に少なく、また済州島を除いて火山も稀である。西側南部と対馬海峡側の海岸線はリアス式海岸になっている。
※先カンブリア時代、肉眼で見える大きさで硬い殻を持った生物の化石が初めて産出する5億4,100万年以前の期間
NASA 2006年1月29日05:10撮影
798px-N_Korea_sat_image.jpg
半島は西朝鮮湾と東朝鮮湾に挟まれた北緯39度線よりやや北方で最も狭まって
最狭部より北方は黄海沿岸部を除いて海抜1000メートルを越える狼林山脈等の山地や蓋馬高原が卓越
黄海に面した西側は平野が多く
日本海(東海)に面した東側はや太白山脈をはじめ多くの山地がそびえており、平地は非常に少ない。

朝鮮半島の気候は、北部は亜寒帯から寒帯であり、地球上における同緯度の他地域と比較しても、高地を除いて世界で最も亜寒帯が南下している地域である。また山地も多いため夏も冷涼で冬の寒さは非常に厳しい
南部は温暖で湿潤な温帯で夏は蒸し暑く、一方で冬は緯度の割りに寒冷である。
降雨に続く

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ノート「激増する窒素は地球に何をもたらすのか」‐京都大学・木庭 啓介‐2018年4月 [農から見つめる]

激増する窒素は地球に何をもたらすのか


京都大学 生態学研究センター 木庭 啓介 教授

未踏の領野に挑む、知の開拓者たち vol.49 2018年4月25日 掲載

立大学附置研究所・センター会議 発行


森林の窒素循環03.jpg森林で吸収しきれないほどの窒素が降り続けるとすれば、今後環境にどのような影響を及ぼすのか。過剰な窒素は、植物にダメージを与え、それがさらなる悪影響を及ぼすと懸念されている。窒素が大量に降り注ぐと、土壌中の微生物が土壌有機物を盛んに分解するようになる。その結果、森林が本来吸収できたはずのCO₂が土壌から大量に出てしまう。

また土壌中の微生物によるメタン(CH₄)の吸収量が窒素添加によって減少する。つまり、大気中の温室効果ガスを森林が吸収する能力が低下する。さらに、余った窒素から一酸化二窒素(N₂O)が生成・排出される。N₂OはCO₂の300倍の温室効果を持つだけでなく、オゾン層をも強力に破壊するガスである。窒素過剰は温暖化を促進するおそれがあるのだ。


さらに、森林で利用しきれない窒素は、渓流水を経由して下流域に流されていく。これは下流水域の富栄養化をもたらす。ここでの富栄養化とは、水中でリンと窒素が増えることを指し、プランクトンの異常繁殖を引き起こすと考えられるものである。すると、そのプランクトンの死骸を分解するために水中が酸素欠乏状態となり、生物が生きられなくなるといった水環境の悪化につながる可能性がある。

問題はほかにもある。硝酸イオンが高濃度で混入している水を、乳児や高齢者が誤って飲んでしまうと、硝酸イオン(実際には亜硝酸イオン)が血中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬がうまく行われなくなる。そのため赤ちゃんの肌が青みがかる「ブルーベイビーシンドローム」を引き起こすことがある。これを防ぐため、WHOの飲料水水質ガイドラインでは窒素濃度を一定以下に抑えるよう推奨している。しかし、たとえば日本でも一部の地域で、この推奨値を超える窒素が地下水で計測されたケースもある。


求められる窒素クライシスへの対処


アメリカの穀倉地帯や中国そして東南アジアなどの発展途上国では、農作物の成長を促進するために大量に窒素肥料が散布されている。これらが海に流されることにより、海は汚染される。アメリカではミシシッピ川下流域の沿岸地帯では、富栄養化による酸欠状態のため魚介類が死に絶える「デッドゾーン」が増えている。

米国南部ph上空から見たミシシッピ川の河口.jpg
上空から見たミシシッピ川の河口。川から流れ込む水は肥料を含んでおり、藻類の異常繁殖を引き起こす。

「リンや窒素は、あらゆる生物が必要とする元素であり、これまでは自然の中で生産と消費のバランスがうまく取れていました。そこに窒素が人工的に大量投下されたため、自然のバランスが明らかに崩れ始めています。今後、窒素過剰が与える影響は予測不能です。まず取り組むべきは、森林をはじめとして、窒素の量がどのように推移しているのかを正確に把握しておくことです」

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ノート「植物(作物)-微生物-土壌の複雑なネットワークのデジタル化」 [農から見つめる]



1840年にリービッヒが「植物は無機物で栄養を吸収する」という「無機栄養説」を提唱した。「あらゆる植物の栄養源は腐植のような有機物ではなく、炭酸ガス、アンモニア(または硝酸)、水、リン酸、硫酸、ケイ酸、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどの無機物質である」と、植物の栄養は無機態元素が主であると唱えた。この説を礎に化学肥料の発明など近代農業が発展した。
鉄アルミナ系の触媒を用いて、空気中の窒素と水素を20 MPa、500℃ 以上の高圧高温の環境に於いて超臨界状態で反応させてアンモニアを合成する化学的窒素固定、この手法は1906年にをドイツのハーバー ・Habeとボッシュ・Boschが開発した。(ハーバーは本法の業績により1918年にノーベル化学賞を受賞、ボッシュは本法を応用した高圧化学反応の研究により1931年にノーベル化学賞を受賞した。)窒素化学肥料が開発され、施された。
1960年から2000年にかけて世界の農地面積はほぼ一定であったにもかかわらず、世界人口は倍増しました。その間に窒素化学肥料の使用量は8倍になっていることから、窒素化学肥料の開発は、人口増加や食料増産に大きく寄与した。
一方で、過剰な施肥により農業由来窒素が引き起こす環境汚染や土壌の劣化など弊害が表出、顕在している。
窒素循環image4-1.jpg
2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された国際社会共通の目標の「持続可能な開発目標(SDGs、エス・ディー・ジーズ)」。その達成に向け、資源循環プロセスの中でいかに土壌の豊かさを維持しつつ、新たな原料や食料となるバイオマス(生物由来の資源)を持続的に生産していくかが喫緊の課題である。
環境低負荷型の農業を実現するために、農業生態系をトータルで理解する必要が有る。農業生態系は植物と微生物と土壌が複雑に関係しており、これまでの解析では農業環境の実態を部分的にしか解明できませんでした。
近年、解析技術の進展し、農業生態系を構成する植物-微生物-土壌の各階層を網羅的にデジタル化することが可能になり、相互関係を統合的に解析することが、原理的に実現可能となりました。共同研究グループは、農業生態系の植物-微生物-土壌の複雑なネットワークのデジタル化に成功し、これまでは熟練農家の経験として伝承されてきた高度な作物生産技術を科学的に可視化できるようになりました。
グループは、千葉県八街市の経験に基づく優れた生産技術を持つ篤農家が実践している有機農法に着目しました。その圃場では、耕起した畑をビニールマルチで数十日間覆うことにより、土壌中の病害虫や雑草種子を死滅させ、農薬を使わずに良好な土壌環境を維持する太陽熱処理が実施されている。太陽熱処理では、滅菌や雑草防除とともに作物の生育促進効果が認められているが、その要因は未解明でした。そこで、同じ圃場内において異なる農法、すなわち化学肥料もしくは堆肥を施肥して太陽熱処理有無の4種類の試験区を設置し、それぞれの試験区においてコマツナを栽培し、解明に取り組んだ。
2020U0609、農業-図1 マルチオミクス解析2_fig1.jpg
太陽熱処理(本試験では5週間実施し、毎日の土壌温度を合計すると1000℃を超えた)は、土壌物理環境を大きく変化させた。太陽熱処理は土壌全体の細菌でなく、作物の根圏に生息する細菌の種類に門レベルで大きく影響を与えていた。特に植物の成長促進に関与する根圏細菌としてパエニバシラス属とシュードモナス属が太陽熱処理により多くなる。
化学肥料、堆肥によらず太陽熱処理は、コマツナの収量をおよそ1.7倍に増加させた。
一方で、コマツナの他の形質(植物地上部の全代謝物、葉の形、光合成活性、糖度、酸度、葉の色素、病害、食味)に有意な違いは検出されなかったことから、太陽熱処理は同等の品質を維持した上で、コマツナの収量を増加させることが分かりました。また、翌年も太陽熱処理による成長促進効果が確認されました。
アンモニア態および硝酸態窒素である無機態窒素の濃度は、太陽熱処理の有無で有意な違いはありませんでした。したがって、前述のリービッヒの無機栄養説では、今回の太陽熱処理による成長促進効果を説明できない。
太陽熱処理によって誘導された有機物と根圏細菌叢の相互作用の最終産物としての、検出された有機態窒素が植物の成長を促進させていることが示唆された。
有機農法の一つである太陽熱処理により植物根圏に特徴的な細菌叢が形成され、土壌中に蓄積する有機態窒素が作物の生育促進に関与していることが見いだされました。
本研究成果は、化学肥料に頼らず有機態窒素を活用することで、持続可能な作物生産が可能であることを示しており、環境共存型の新しい農業に向けた持続的な作物生産、「持続可能な開発目標(SDGs、エス・ディー・ジーズ)」の実現に貢献すると期待できます。

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洪水と水害をとらえなおす: 自然観の転換と川との共生 (著)大熊 孝 – 2020/5/28 [農から見つめる]

洪水と水害をとらえなおすDL.jpg洪水と水害をとらえなおす:

自然観の転換と川との共生   

大熊 孝 (著)
出版社: 農文協プロダクション 
ISBN-13: 978-4540201394
発売日: 2020/5/28
河川工学の泰斗が、日本人の伝統的な自然観に迫りつつ、今日頻発する水害の実態と今後の治水のあり方について論じ、ローカルな自然に根ざした自然観の再生と川との共生を展望する。大熊河川工学集大成の書。
━━━━「農業文化マガジン『電子耕』」 第412号  より
編集に関わらせていただいた大熊孝先生の新刊『洪水と水害をとらえなおす─自然観の転換と川との共生』完成しました。大熊先生からこの本の構想をうかがったのが昨年の6月。完成まで1年ちかくかかった格好になります。
洪水は自然現象ですが、水害は社会現象です(洪水があってもそこに人間が住んでいなければ水害にはなりません)。この洪水と水害の関係性を中心に論じられたのが本書です。
本書の読みどころは3つあります。
(1)2000年代に頻発するようになった大規模水害(2004年新潟・福井水害、2011年紀伊半島・相野谷川水害、2015年利根川水系鬼怒川破堤、2016年岩手県小本川川水害、2018年岡山県倉敷・小田川水害、2019年台風19号広域水害等)の検証と今後の治水のあり方への提言
(2)民衆の自然観が近代国家の自然観に押しつぶされていった歴史についての考察
(3)新潟でのNPO活動(新潟水辺の会)にもとづいた新しい「都市の自然観」「地域の自然観」の創造と、自然と共生する都市の復活の提唱
オビの推薦文を記します。
高橋裕(東京大学名誉教授)洪水と水害を論ずれば当然ながら立ち向かう大波──伝統と近代化の相克──それを見事に泳ぎ切った著者ならではの快著。確固たる歴史観と地域特性の理解なくしては到達できない。
内山節(哲学者)民衆の自然観を破壊していった近代国家の自然観。本書は、それを見据えながら川と人間の関係を問い直す大熊河川工学の集大成である。
目次
1 川と自然を私はどう見てきたのか
(日本人の伝統的自然観・災害観とは、近代化のなかで失われた伝統的自然観、小出博の災害観と技術の三段階)
2 水害の現在と治水のあり方
(近年の水害と現代治水の到達点、究極の治水体系は400年前にある―堤防の越流のさせ方で被害は変わる
今後の治水のあり方―越流しても破堤しにくい堤防に)
3 新潟から考える川と自然の未来
(民衆の自然観の復活に向けて―自然への感性と知性をみがく、自然と共生する都市の復活について―新潟市の「ラムサール条約湿地都市認証」への期待)
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大熊孝(オオクマたかし )
新潟大学名誉教授・水の駅ビュー福島潟名誉館長・NPO法人新潟水辺の会顧問・日本自然保護協会参与・(公財)こしじ水と緑の会理事。1942年台北生まれ、高松・千葉育ち、1974年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士)、新潟大学工学部助手、講師、助教授、教授、附属図書館長を経て、2008年新潟大学名誉教授、同年新潟日報文化賞受賞。専門は河川工学・土木史、自然と人の関係、川と人の関係を地域住民の立場を尊重しながら研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
関連図書
技術にも自治があるL.jpg
五泉市立図書館収蔵 
技術にも自治がある
副書名 治水技術の伝統と近代
著者名 大熊 孝∥著
叢書名 人間選書
叢書番号 253
出版者 農山漁村文化協会
ページ数 293p
ISBN  4-540-03107-4
出版年 2004.2
もう一度自然と人間との関係を豊かにすることを念じ、自然をどう考えたらいいのか、技術をどう扱ったらいいのか、川と人との関係を中心に「技術の自治」とは何かを考察する。既発表の論説・論文を加筆・修正して再構成。

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「コロンブスの不平等交換」第5章 先住民の悲劇―疫病 の補遺 [農から見つめる]

コロンブスの不平等交換=作物・奴隷・疫病の世界史
著者名  山本 紀夫 [ヤマモト ノリオ]
ISBN 978-4-04-703592-8 新潟市図書館収蔵亀田館 NDC分類(9版) 209.5
内容 

アメリカ大陸からはトウモロコシ・ジャガイモ・トウガラシなどがヨーロッパに運び込まれ、ヨーロッパからはサトウキビや小麦・牛・馬や天然痘、はしか、インフルエンザなど作物・家畜・疫病がアメリカ大陸に持ち込まれた。新旧両大陸交流は「コロンブスの交換」と呼ばれ、後の歴史に与えた衝撃は計り知れない。農学者が迫る。

その目次、第5章 先住民の悲劇―疫病  の補遺


アジア・アフリカ大陸に生息する旧世界サル(狭鼻猿類)のほうが感染症に対して強いようなイメージがあります。南北アメリカ大陸に生息する新世界ザル(広鼻猿類)、約1億年以降後になって、アメリカに渡ったサル類と考えられていてる新世界ザルは比較的隔離された状況で熱帯、亜熱帯の樹林に生息しているのに比べて、旧世界ザルの方がヒトとともに広域に分布し、多くの病原体に触れて、感染症の選択圧に耐えてきた、生き延びたからでしょう。
ヒトでも新大陸に旧大陸の人類が乗り込んだ時(大航海時代以後)、天然痘、麻疹、風疹・・などの感染症で新世界の文明が滅んだことがあります。

文明ダウンロード.png
今治獣医学部の吉川泰弘・獣医学部長の人獣共通感染症学授業、資料より

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越後蒲原平野の成立ちと開発 ・・2019年3月の講演会「越後平野の地盤と防災」から② [農から見つめる]

2019年3月の講演会「越後平野の地盤と防災」・(鴨井幸彦 理学博士)などを基に、越後蒲原平野の成立ちと開発を纏める。  http://daichinokai.sakura.ne.jp/oitatchi/oitatchi97.pdf

約7,000年前になると、ヒプシサーマル(最温暖期)と呼ばれる最も暖かい時期で、海水が一番内陸まで侵入し「縄文海進」高頂期とも云われる。1万年前ごろに始まった地球軌道の変化≒日射量≒熱量増大に起因する温暖化で、現在より湿潤で年平均で1~2℃気温が高く、地球的には緯度が高いほど年平均気温の上昇が顕著に現れ、基本的に低・中緯度ではあまり変化が無かった。北極付近では4℃以上、。熱帯ではサンゴ礁で見ると1℃に満たない程。地域的には現在サハラ砂漠の広がる場所は緑の植生が広がっていた。アメリカ中西部は砂漠に近い状態であった。南アメリカのアマゾン周辺では気温が上がり、乾燥化した。
再考・地球温暖化論2017_2019.jpg
海面は今より3~5メートル高くなる「縄文海進」で、海水が一番内陸まで侵入し、海水域は吉田~燕付近にまで達していたと考えられています。入り江状に水が入り込んできて、内湾になっていく、地理的に内湾状になったところに、荒川、胎内川、加治川、阿賀野川、信濃川、新川が会津や長野の山地上流から海へ土砂を運んでくる。新砂丘I-4と新砂丘IIの砂丘砂には,特有な結晶面に囲まれている角閃石,シソ輝石が多く含まれており,阿賀野川上流域の沼沢火山の紀元前3,400年頃の噴火噴出物が運ばれ、砂丘砂に供給されたと推定されてる。
その砂を日本海の沿岸を流れる海流が押し上げ岩船から豊栄、亀田、角田浜の海底に細長く砂の高まり(砂州・さす)をつくる。海底の砂州は徐々に厚く大きくなり海上に姿を現し、砂州・砂嘴(さし)となり、海岸線をより海側に沖に造り成長させる。水面上に出た砂が強い季節風で吹き飛ばされる。内陸側へ運ばれ丘をつくる。それが発達して1万年以降に砂丘になったのが新砂丘。越後平野の砂丘は、風の作用によって岩石の細片、砂、粘土、火山灰などが運搬され、堆積してできた地層の風成層(ふうせいそう)だけからなる学問的砂丘でなく、砂層の地形的高まりを総称して「砂丘」と呼んでいる。
潟の成り立ち _ -002.jpg
砂の色やその性質から、内陸側、出来た順に新砂丘Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに類別され、更に新砂丘Ⅰは1から4、Ⅱも1から4、Ⅲが1から2に細分されて、合計すると10列の新砂丘列になる。砂丘に含まれる木片等の有機物や砂丘間低地の腐植土に含まれる放射性炭素14を利用する年代測定で、新砂丘Ⅰは約7,600~4,800年前、Ⅱは約4,600~1,400年前、Ⅲは約1,800~900年前とされる。
越後平野の地盤と防災-図7.jpg

最初に形成された亀田砂丘の新砂丘Ⅰ-1、その数メートルほど高くなっている丘頂部には、特に、蔵岡・笹山から横越村駒込・亀田町袋津へと連なる通称山通(やまどおり)と呼ばれる砂丘には、縄文時代前期(紀元前4,000年)の城山遺跡、紀元前3,000年の砂崩遺跡、紀元前2,000年の日水遺跡など縄文時代の遺跡が多数点在している。
doki.jpg
 新砂丘Ⅰ-1の砂丘列の内側、上流側、山側に古塩津潟(紫雲寺潟しうんじがた)・古福島潟・古白根潟などの海水〜汽水の潟湖(せきこ)ができた。  続く

タグ:水郷
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越後蒲原平野の成立ちと開発 ・・2019年3月の講演会「越後平野の地盤と防災」から① [農から見つめる]

2019年3月の講演会「越後平野の地盤と防災」・(鴨井幸彦 理学博士)などを基に、越後蒲原平野の成立ちと開発を纏める。  http://daichinokai.sakura.ne.jp/oitatchi/oitatchi97.pdf


新潟砂丘の果たした 3つの役割は,①砂丘ができたことで越後平野の形・大きさが決まったこと。②海岸沿いに厚い砂の地盤を形成し,生活の基盤となる土地を用意したこと。③排水の障害となって内陸側に湿原や潟を多く形成した。これは干拓による広大な水田の開発を可能にし,今日の穀倉地帯の基盤を作ったともいえます。
新潟砂丘は縄文時代の前期以降, 7000年前からできはじめ, 2000年前くらいにまでに大体の形が出来上がりました。歴史時代を通じて長岡など上流はあまり大きく変化していません。平野は砂丘の内側の窪地を埋めるようにしてできました。
 約20,000年前は最終氷期最盛(最寒冷)期の非常に寒い時代で、北アメリカや北ヨーロッパに、現在の南極大陸でみられるような厚い氷(大陸氷河)が発達しました。そのため水分が陸に移った分、海水が減り、世界的に海水面が100メートルあまりも下がったため、海岸線は現在よりもずっと沖合にあった。
このころの越後平野は、広い扇状地性の河原だったと考えられる。

潟の成り立ち _ -801.jpg
この寒い1万年よりも前の時期にできた砂丘を古砂丘(こさきゅう)というが、県内では上越市の北西寄りの大潟区、新潟県西部に広がる高田平野の北部平野が日本海と接する部分にある潟町砂丘の埋没基層部が古砂丘。
越後平野22989.jpg一般的に日本の砂丘は古砂丘があって、その上に1万年くらい前(完新世)からできた新砂丘が2層式で乗る。潟町砂丘は、標高マイナス30m上下にある固結粘土(泥岩)層の上に固結砂の古砂丘が乗って、埋没している。古砂丘の埋没上面は推定標高マイナス10~20m、その上に更に砂の2層の新砂丘が乗っている。
越後平野には古砂丘は確認されていない。新砂丘しかない。新潟型砂丘とも言われる越後平野の特徴である。やがて寒冷な氷期が終わって間氷期に入り、約15,000年前ころからだんだんと暖かくなり陸の氷が溶けて海水が増え、海水面はしだいに高くなってくる。約7,000年前には、ヒプシサーマル(最温暖期)と呼ばれる最も暖かい時期で、海水が一番内陸まで侵入し縄文海進高頂期ともいう。
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続く

タグ:水郷
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