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人間の尊厳を回復する力の台頭--台頭するアフリカ諸国を支えるものー長周新聞 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

長周新聞 2023年11月6日 第9035号 より


人間の尊厳を回復する力の台頭  台頭するアフリカ諸国を支えるもの


 西アフリカのマリ、ブルキナファソ、ニジェールで、2020年からあいついで軍事クーデターか起こり、旧宗主国のフランス軍が撤退に追い込まれている。また、昨年2月以来のロシアのウクライナ侵攻をめぐり、国連総会緊急特別会合でのロシア非難決議には、アフリカの26ヵ国が反対および棄権に回った。現在のパレスチナ情勢にさいしても、イスラエルの歴史的な占領政策を批判 している。

 グローバルサウスの一員としてのアフリカ諸国が、みずからの主張をよりいっそう明確に表明するようになっている。アフリカ研究者の論考から、その背景を考えてみた。

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マリ 2020年 フランス軍を 撤退させる

 マリ(旧フランス領スーダン)では2020年、青年将校が軍事クーデターを起こし、フランス軍に撤退要求を突きつけた。民衆は新政権を支持するデモをおこなった。その結果、フランス軍は昨2022年8月、マリから撤退した。

 隣国のブルキナファソで昨2022年誕生した青年将校らによる新政権も、フランス軍に撤退要求を突きつけた。フランス外務省は10月、同国から撤退すると発表した。

 さらにフランスのウラン鉱山があるニジェールでも、今年7月の軍事クーデターで親欧米政権が倒された。数千人の反フランスデモが起こり、フランス軍が撤退した。

 明治学院大学名誉教授の勝俣誠氏は、1970年のアルジェリアを皮切りに、四〇年余りアフリカ大陸に通い続けた。勝俣民は最近の西アフリカの事態を、「アフリカから大英帝国か去った後も、軍事や貿易、文化で絶大な影響力を及ぼしてきたフランスの支配が決定的に弱体化した」と見ている。


 冷戦期にフランスは、米国主導の世界支配を支えるところから、アフリカの旧植民地に軍事基地を置いて地域の憲兵の役割を果たし、ソ連に接近する国に対して武力介入をいとわなかった。とくに2011年のリビア内戦では、フランスNATO軍が空爆を開始してカダフィ政権を崩壊させた。


イスラエルを追放
アフリカ統一機構の活動  台頭するアフリカ諸国を支えるもの
 このときアフリカの五五ヵ国が加盟するアフリカ連合(AU 前身はアフリカ統一機構)は、即時停戦と戦争当事者間の交渉仲介役を果たそうとしたが、フランスに無視され、その結果カダフィ政権下の大量の武器がサハラ砂漠以南に流れ、イスラム武装勢力のテロ活動を助長し民衆が長期に苦しむことになった。そこから大国の内政干渉に抗う民族主義が台頭した。
 また、ロシア非難決議に対する反対・棄権は、アフリカ諸国が自国の利益を第一に考えるようになったことの反映だ。というのも欧米の対ロシア制裁が本格化するにつれ、アフリカ諸国がロシアからの輸入に大きく依存する食料、燃料、肥料などが高騰し、2008年の食料暴動を想起させる事態になった。このときアフリカ連合・AUが動き、ロシアから必需品輸出再開の確約を得ている。
 こうしたAU(アフリカ連合)の積極的な活動は、アパルトヘイト体制を終焉させた南アフリカが加盟したことも大きいという。南アはアフリカ統一機構の悲願だった植民地解放の原点に戻ることを主張。AUのオブザーバー資格を得ていたイスラエルを今年2月、資格停止・追放に追い込んだ。
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欧米アグリビジネス 農業国だが「飢える構造」  群がった欧米の植民地支配に抗し
アフリカは多くが農業国だが、「アフリカの年」といわれ十七ヵ国が独立した1960年以降も、深刻な飢餓に苦しまなけれぱならない状況が続いてきた。その背景には欧米の押しつけた不平等な「飢えの構造」かある。これも勝俣氏か、著書『新・現代アフリカ入門』(岩波新書 新赤版 1423)のなかで詳しく展開している。
 アフリカは今日でも「飢餓大陸」と呼ばれ、その悲惨な状況は大手メディアも報道する。しかし、なぜそうなっているかの突っ込んだ検証はないままだ。
 たとえば日本でも大々的に報じられた1984年のエチオピアの飢餓は、餓死者が百万人と推定されるが、それは大干ばつと内戦、エチオピア政府の政策的失敗といった複数の要因か相互作用して事態が深刻化した。アフリカの飢餓はすぐれて平和問題ともいわれ、歴史的な英仏の植民地支配が複雑に関係している。
 この飢餓問題の解決といって欧米から持ち込まれたのが「緑の革命」たった。これは1960年代までのモンスーン・アジアの経験をアフリカに持ち込んだものだが、農薬や化学肥料の大量投入と水の大量消費で地力が劣化し、ただでさえ脆弱なアフリカの自然環境をさらに悪化させた。
 問題は、「緑の革命」を持ち込んだのが、欧米のアグリビジネスだったことだ。彼らは欧米大企業が製造する農薬・化学肥料や特許権を持つ種子をセットでアフリカ諸国に売り込むために、飢餓キャンペーンをおこなった。その結果、アフリカ農民は外国の技術と投入材に振り回され、自分たちが蓄積してきた技術や品種を放棄せざるを得なかった。その経験からアフリカでは、「すべての国と国民が自分たちの食料と農業政策を決定する権利を持つ」という「食料主権」の考え方が広かっている。
 もう一つが、ワシントン・コンセンサスによる債務奴隷化である1980年以降二〇年間にわたって、IMFと世界銀行はアフリカ諸国に巨額の構造調整融資をおこない、アフリカ諸国はその借金の返済のために、欧米債権国が要求した大幅な輸入自由化と輸出の振興策を採用した。その結果コーヒーやカカオ豆、木綿、落花生などの輸出換金作物の生産か最優先されることになり、増大する都市人口をまかなう自前の食料生産は放棄せざるをえなくなった。
 IMF・世銀は、貸したカネを取り戻すために換金作物への融資には熱心だったが、アフリカ人が消費する食料への投資には消極的だった。それどころか、食料は国際市場から安く輸入すれば、アフリカ人の賃金は低く抑えられ、より安く輸出品が作れると考えていたし、それは殼物メジャーや遺伝子組み換えメーカーの意向に沿っていた。
 その矛盾か爆発したのが2008年の世界食料危機であり、食料価格の高騰をきっかけにアフリ諸国で大規模な暴動がおこった。
 勝俣氏は、アフリカ諸国はこうした経験をへて、残酷な略奪をくり返す欧米諦国を見限り、BRICSや中国の「一帯一路」に接近しているのだとのべている。それは、欧米の植民地支配によって人間の尊厳を奪われてきたアフリカ人たちの歴史的な権利回復運動に見える。搾取も貧困も戦争もない社会を求める気持ちがいかに強いかである。
南アフリカ、ANCアフリカ民族会議 関連本
ウクライナ侵攻とグローバル・サウス 著者: 別府 正一郎 集英社新書
南アフリカを知るための60章  峯 陽一 編著  明石書店
新・現代アフリカ入門  勝俣 誠 著 岩波新書 新赤版 1423

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麻薬マフィア対策 メキシコからの通信 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

 田中道子  エル・コレヒオ・デ・メヒコ大学院 教授


 メキシコというと、治安が悪く麻薬マフィアの縄帳り争いで殺偽が絶えないという印象が定着している。市民の自衛組織の指導者や、地方自治体と麻薬マフィアのつながりを指摘した記者の殺害など、ほとんど毎週のこと。
 世界一の麻薬市場米国と3152kmに及ぶ国境を接するメキシコは、主として南米やアジアから持ちち込まれた「物」の中継基地として機能してきた。第二次世界大戦に戦場での応急処置に必要なモルヒネ生産のために北部シナロア州で芥子栽培が推奨され、戦後も麻薬マフィアの影響下に芥子やマリファナの栽培が続いてきた。
(シナロア州 スペイン語: Estado de Sinaloa)
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 最近ではアジアなどで生産された鎮痛剤用一次加工物を、強力で有害な覚醒剤「フェンタニル Fentanyl」に仕上げる加工場が出来るようになり、さらに国内市場特に年少者の開拓に様々な手が使われている。(フェンタニルはヘロインよりも最大50倍、モルヒネよりも100倍強力とされている。2022年1年間だけで米国麻薬取締局DEAが押収したフェンタニルは4500キロ以上に上っている。)
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 マフィア間の対決を避けるべく、歴代PRI党(革命体制党)政権下で暗黙の棲み分けがなされてきた。二〇〇〇年に腐敗まみれのPRIに代わって国民の期待を担って政権に就いたPAN党(右派国家行動党)初代フォックス大統領もマフィアと談合し、「薬用」大麻加工販売の利権で富を得た。二〇〇六年PAN二代目大統領に就任したカルデロンは、選挙不正を隠蔽し、政権の正統性を保つために、不準備なまま対麻薬マフィア戦争宣言をしたが、実際はシナロア州を根拠地とする麻薬カルテルと組んで、その他のカルテルを掃討したに過ぎなかった。そのアレンジを主導したのが、カルデロン政権下で公安省長官か務め現在米国の法廷で判決を待っている、ヘナロ・ガルシア・ルナ。
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 反対派州知事はじめ地方自治体の中には、マフィアの援助で政権に就いた者もいる中で、武力による正面突破に加えて、マフィア予備軍の貧困層青少年向け社会政策・教育技術収得助成・文化スポーツ推進を重点に全国に展開してきたが、いまだに状況は困難だ、


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リバタリアンとは何かー藤原書店「機」1月号№358記事 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

711gDZ3sinL-縮.jpg藤原書店「機」1月号№358 記事「リバタリアンとは何か」より

課税への反発
江崎道朗(えざき・みちお)
リバタリアン自体、弟二次世界大戦前時期のFDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)のニュディール政策に対する反発から生まれているものです。だから、社会制度あるいは連邦政府の肥大化に対する危機感という問題があるんですね。
 現実の話としては、ルーズヴェルトの時代なんて、周辺地域には警官もいないし、役所もないし、政治家もいない。田舎には、すべて自給自足でやっている人たちがいっぱいいる。そういう人たちに政府がどうのこうの言ったところで、そもそも政府との接点がまったくないわけです。
 政府との接点がなくて、自分の身は白分で守るしかないし、自分で水を汲むしかないし、食い物も自分で調達するしかないし、道路を敷くにしたって直すにしたって自分でやるしかない。何も政府の恩恵などこうむっていない人たちが山ほどいて、だから、政府なんか別になくていいんじやないの、という話です。
 それなのに、ニューディールという形でルーズヴェルト政権が都市労働者向けの社会保障などをどんどん進め、そのツケを増税という形で農民たちに回す。俺たちは何の恩恵も受けていないのに、どうして都市労働者のために金を出さなきゃいけないのか、ということになる。
 政府が税金という形で取っていく。そこには、俺は何の恩恵も受けていないし、みたいな話が、違和感として、やはりものすごく大きくある。
 アメリカにはそういう空気がある。これに対して日本の場合は、江戸時代からある程度お上が全体をやってくれている。でしょう。税金はしっかり取るけれども治安維持やインフラ整備などにっいてもお上がある程度はしてくれる。
 そういうことがアメリカにはなかったニューディール政策のころは本肖になかった。連邦政府自体がほとんど機能していなかったんです。それなのにFDRが、連邦政府主導でインフラ投資、失業者支援などを大々的に実施し、その費用を税金として取り立てた。「こんなもの、一体誰が負担するんですか」という話です。何で俺たちが負担しなきやいけないのか、と
日本人は本質的にリバタリアン  渡瀬裕哉(わたせ・ゆうや)
僕は、日本人は本質的にはリバタリアンだと思っているんですね。論点がいくっかあります。
 たとえば、少し前に、「老後はお金がいくら必要ですか?」「2000万円です」という話がありましたね。これは、本当に日本人が、お上意識が強くてリバタリアン意識がゼロだったら、本人の貯金は要らないはずなんですよ。すべて政府に依存しているはずなので。
 政府はやはり信用できないから自分で貯蓄している。増税に対しても反発は強い。そういう意味では、日本人はリバタリアンなんだろうなと思っています。
  ただ、アメリカのリバタリアンのように、積極的に、政府は要らない、解体しろ、とは言わない。けれども、政府が介入してきた時だけ抵抗する、という意味で考えれば、日本人にはリバタリアン的な部分かあると言えるでしょう。
 あと、これはよく言われる話なのですが、政府が指導しなければ日本人は公共財を提供しない人だちなのか、ということがあります。これも日本人には当てはまりません。たとえば、大阪では淀屋橋や心斎橋などの名称が残っていることからもわかるように、地域の豪商が社会インフラの整備に取り組みました。つまり民間の人々の努力でインフラが提供されたということです。
 日本人は、政府が何もしなければ本当に必要な公共事業などは自分たちでやる傾向があるのです。おそらく、アメリカ人よりも日本人のほうが目の前の現実に合わせて柔軟なのですね。     
 面白いのは司法制度への介入の是非です。日本には今、民法と刑法がありますが、リバクジアンには、刑法をあまりいいものだとは思わない考え力もあります。刑法というのは別にそれか執行されたところで被害者への補償がなされるわけてはないからです。民刑分離の否定ですね。財産権上、関係がないということです。
 誰かが殴られたとします。殴った人を刑務所に入れたところで、殴られた人は何も回復しないのではないか、ということです。むしろ、刑務所に入っている犯罪者の生活を税金で面倒をみることになる、二重の被害が生じているじゃないかというのかリバタリアンの考え方です。全郎補値に一元化するべきだということです。
宮脇淳子(みやわき・じゅんこ)
補償の方がいいといいということすね。脱線しますが、モンゴルに代表される遊牧民の法律なんて、今のことは詳しくないけど、少なくとも昔は全部そうです。こういう刑罰は馬何頭に相当するとかね。殺人ですら、思い切り財産の話に入るのよ。刑務所がないんだもの、収監するのは無理なんです。モンゴルにあるのだから、リバタリアンだけの考えはない、ということでしょう。

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世界の多様性-1983&1999ー2008 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

世界の多様性jpL.jpg世界の多様性
副書名 家族構造と近代性
原書名 :La diversité du monde  1983&1999 付:家族類型の分布図(1枚)
著者 エマニュエル・トッド /[著]
荻野 文隆 /訳 
出版者 藤原書店
出版年 2008.9
ページ数 556p大きさ 22cm
ISBN 978-4-89434-648-2
新潟市図書館収蔵 豊栄館 /362/ト/

2新潟県立図書館収蔵 /362/To17/


内容紹介 

意識的なイデオロギー以上に、無意識に働く家族をめぐる規制とタブー。宗教・無意識と近代性の連関を見るウェーバーやフロイトの慧眼を、非西洋中心主義的に捉え直し、家族構造から各地の多様性に迫る。

家族構成の分析を通して、世界像と歴史観を一変させる革命的著作。


目次

第三惑星―家族構造とイデオロギー・システム
(民主主義と人類学
;七つの家族類型
;共同体型
;権威主義型 ほか)


世界の幼少期―家族構造と成長
(成長への文化的アプローチ
;家族構造と識字化
;近代性の諸次元―識字化の社会的帰結)


著者紹介 エマニュエル・トッド 1951年生まれ。ケンブリッジ大学歴史学博士。パリ政治学院を卒業。国立人口統計学研究所資料局長。著書に「帝国以後」「経済幻想」「移民の運命」など。


訳者 荻野文隆[オギノふみたか]

1953年生まれ。東京学芸大学教授。フランス文学・思想。パリ第三大学文学博士

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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女性から描く世界史ー17~20世紀への新しいアプロ-チ [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

女性から描く世界史 

4585221425.jpg 17~20世紀への新しいアプロ-チ
著者1 水井万里子 /編, 伏見岳志 /編, 太田淳 /編, 松井洋子 /編, 杉浦未樹 /編  
出版年 2016.3
出版者 勉誠出版
一般件名 女性‐歴史 , 世界史‐近世 , 世界史‐近代
ページ数 15,289p
大きさ 21cm
ISBN 978-4-585-22142-5
県立図書館収蔵 NDC分類(9版) 367.2

内容紹介
今日まで描かれてきた世界史の中に、女性たちの姿をくっきりと見出すことは容易ではない。世界史の研究・叙述の新たな方向性が検討される現在、「女性とともにある」世界史の叙述は可能なのか。東南アジアから、アジア諸地域、ヨーロッパ諸地域、中南米までを視野に入れ、中心をずらし、女性から描く新しい世界史叙述、史料の制約が前提となる、世界各地の女性のライフイベント比較史異文化接触地域における女性たちの可視化、という3つのアプローチから、世界史の中に女性を見出すための新たな方法を探る。
内容一覧
タイトル 著者名 ページ
東南アジア女性はどう描かれてきたか  太田淳/著  3‐17
近代インドネシアにおける民族主義の展開と「混淆婚」  弘末雅士/著  18‐33
オランダ領東インドにおける婚姻規定の歴史的変遷  吉田信/著  34‐50
近世ケ-プタウン女性の家財運用 杉浦未樹/著  51‐74
近世オランダ都市女性の経済的機会  ダニエラ ファン デン ホイフェル/著  75‐97
オスマン帝国の女性と教育  長谷部圭彦/著  101‐114
ジェンダ-史としての植民地朝鮮教育史  金富子/著  115‐127
スペイン領メキシコの相続制度に関する諸問題  伏見岳志/著  128‐144
ムスリム女性の財産獲得  阿部尚史/著  145‐166
近代市民法の成立と女性の財産権  三成美保/著  167‐179
境界を表象する  村尾進/著  183‐205
人の移動と境界の場の男女関係  松井洋子/著  206‐219
イギリス東インド会社の初期インド植民都市建設と女性  水井万里子/著  220‐237
「境界」を考える  和田郁子/著  238‐254
英領インドにおける〈植民地的遭遇〉と女性たち  水谷智/著  255‐273

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「過剰な伐採」資源の枯渇と環境の悪化かな?北米の1000年前の都市カホキアはなぜ衰退? ? [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

ナショジオ 2021.05.02記事などより



米国の古代都市「カホキア Cahokia 」現在の米国イリノイ州セントルイス郊外にある世界遺産・15㎢、マウンド Mound とよばれる墳丘が120も残されている。この町はミシシッピ川の氾濫原にあった。今から1000年ほど前に、メキシコより北の北米大陸で最大の人口、町の中だけで1万5000人、周辺部に1万5千と合わせて3万人ほどまでに急成長した。しかし、数百年後には人口が減りはじめ、1400年ごろには誰も住まない場所になってしまった。
 どのように誕生し、どうやって急成長を遂げたのか、そしてなぜ人がいなくなり廃墟と化したのか、考古学者たちはその謎に挑み続けてきた。

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 1993年、南イリノイ大学エドワーズ校の研究者、ニール・ロピノット氏とウィリアム・ウッズ氏が、カホキア人が町の東側にあった高地で伐採を行ったため、浸食や洪水が起き、トウモロコシなどの収穫が減少したり居住地が浸水したりし、環境の悪化によって滅びたという仮説を提唱した。提唱したロピノット氏は「カホキアは一夜にして衰退したのではなく、ゆっくりと滅びていったのです。人々が去っていった理由はわかりません。政治的な権力争いや戦争、あるいは干ばつや疫病かもしれません。まったくわからないのです」と述べてる。

 資源の枯渇と環境の悪化によって社会が滅びるという考え方は、ここ半世紀ほどで説得力のある説として頻繁に使われるようになった。環境および生態系の破壊を意味する造語、「エコ ecology 」と「ジェノサイド(大虐殺)genocide 」を組み合わせた合成語「 ecocide エコサイド」とも呼ばれている。エコサイド説は、実際にそうであったかどうかにはよらず、過去の問題をすべて環境危機によるものと見てしまう。現在の文明でも起きつつあると恐れているから、その傾向がある。フランス国民議会(下院)は、エコサイドを違法とし、最高で禁錮10年と罰金450万ユーロ(約5億9000万円)を科する法案を賛成44票、反対10票で2021年4月17日には可決してる。
 
 米イリノイ大学の地質考古学者、ケイトリン・ランキン氏は、川のそばでマウンド墳丘があった低地、過剰伐採説では洪水が起きていたはずの場所を調査した。場所の土壌で洪水による堆積物は見つからず、カホキアの繁栄期を通じて安定していたことがわかった。
 その結果を受けて、ランキン氏はこの過剰伐採説だけでなく、カホキアが環境の変化によって滅亡したという前提仮設そのものを疑うようになった。「ヨーロッパ人がやってくる前には、北米に住んでいた人々は、放牧や集約的な耕作はしていませんでした。平原で暮らしていた北米の先住民たちは、ウシ科の動物バイソンを持続可能な程度に狩っていた。先住民的な視点や慣習で環境に触れていた」しかし、「ヨーロッパ人がやってきて、ウシ科のバイソンをすべて撃ち殺してしまいました。」
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「できる限りのものを搾取するというのが、西洋の資源に対する考え方です。先住民の文化は、それとはまったく違うのです」 カホキア人がたくさんの木を切ったのは事実だろう。砦と考えられているものを建てるために、たくさんの木が使われていた。しかしヨーロッパ系の米国人たちのように、持続不可能となるような伐採をしていたとは限らない。

米セントルイス・ワシントン大学の人類学者で、ランキン氏の論文を査読したトリストラム・キッダー氏は、「人間は、すべてを説明できる一つの原因を求めがちです。そのほうが、問題を簡単に解決できるように思えるからです」。 単純化とは、カホキア人が木を切ることをやめてれば、すべてがうまくいっていたかもしれない、というような考え方だ。現在の例に当てはめれば、私たちが電気自動車に乗り換えさえすれば、すべてがうまくいくようになるかもしれない、ということになる。しかしキッダー氏は、現実ははるかに複雑で、その複雑さと向き合うことが必要だと言う。
 「物理学では、環境を整えて実験すれば、探していた答えを得ることができます。しかし、考古学ではそうはいきません」現場に出かけていって発掘を行わなければ、何も見つけることはできない。とランキン氏は話す。
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タグ:北米
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熱狂する「神の国」アメリカー2016.6刊行・文春新書 1081 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

熱狂する「神の国」アメリカc746483.jpg熱狂する「神の国」アメリカ 

副タイトル1 大統領とキリスト教

著者1 松本佐保 /著  

出版年 2016.6

出版者 文藝春秋(発売)

シリーズ名 文春新書  1081

ISBN 978-4-16-661081-5


県立図書館収蔵 NDC分類(9版) 192.53

内容紹介

現在でもアメリカの信仰心はヨ-ロッパよりもはるかに高い。建国以来、独自の発展を遂げてきたアメリカのキリスト教は、政治にどのような影響を与えてきたか。大統領選との関係からアメリカの精神構造を探る。

出版社内容情報

宗教票の争奪戦といわれる大統領選。狂信的な福音派の影響力、最大の浮動票・カトリックの変遷。神国アメリカの宗教地図を俯瞰する。キリスト教信者は大統領をどう選んできたか。2016年大統領選を占うのに最適な一冊!


目次

第1章 アメリカの宗教地図

第2章 カトリックの苦闘

第3章 米国カトリックの分裂

第4章 ピューリタンから福音派へ

第5章 一九八〇年、レーガン選挙委員会

第6章 キリスト教シオニスト

第7章 ブッシュ大統領とキリスト教右派、その後

第8章 福音派メガチャーチ体験


著者等紹介

松本佐保[マツモトさほ]

1965年神戸市生まれ。名古屋市立大学人文社会学部教授。専攻は国際関係史(イギリス、イタリア、バチカン政治・外交・文化史)。88年聖心女子大学文学部歴史社会学科卒業。90年慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。97年英国ウォーリック大学社会史研究所博士課程修了。Ph.D.取得。その間イタリア政府給費留学生としてローマのリソルジメント研究所に研究員として滞在(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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崩壊した「中国システム」とEUシステムー2019ー の関連「中国システム」とは?その① [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策

荻野文隆編 F・アスリノ ほか

藤原書店


この本の結びに荻野文隆が記すには、「フランスがEUに飲み込まれて消滅する脅威と日本が中国システムに巻き込まれて消滅する危惧はともに現実のものである。」「極めて攻撃的な軍拡と外交を強行している中国の独裁体制に組み込まれていくことの脅威を真剣に受け止めなければならない事態が今日の東アジア情勢だと言わなければならない。」とある。
もっと詳しく本文にあるかと見てみたが、管見なのだろうが発見できなかったので、他の本を見て「中国システム≒極めて攻撃的な軍拡と外交を行っている独裁体制」を考えてみた。
軍事戦略入門 ド.jpg① 軍事戦略入門 =アントゥリオ・エチェヴァリア/著 -- 創元社 (シリーズ戦争学入門 ) -- 2019.12 
アントゥリオ・エチェヴァリア氏の紹介
「米陸軍大学戦略研究所研究員、・・。米陸軍で20年以上の勤務経験を有する一方、プリンストン大学で博士号(歴史学)を取得。軍事戦略について実務・学術の両面から造詣が深く」
より【米中の抑止戦略】 073頁
=冷戦の終結以降、米国とその同盟国、そして中華人民共和国は、西太平洋地域において多種多様な抑圧を実践してきた。
中国は、東シナ海および南シナ海における他国の海軍艦艇の行動を拒絶ないしは制限するよう、陸上配備型の対艦弾道ミサイルと巡航ミサイルを数百発[現在では数千発。]も配備し一種の直接抑止を実施してきた。中国の意図は、自らの核心的利益とみなす地域における外国の干渉を防止することにあるため、中国はこの戦略を「対介入」あるいは「周辺防衛」であると考えているであろう。
 対照的にペンタゴンの見解では、こうした中国の戦略は、当該地域の同盟国に払大抑止を提供する米国の能力を阻害することから、「接近阻止・領域拒否(A2AD)」ということになる。
中国の対介入戦略は、近代的な航空・ミサイル技術を用いるだけでなく、中国が「政治戦」と呼ぶものも含んでいる。それは、いかなる干渉行為の合法性も否定すること(法律戦とも呼ばれる)や、介入に反対する世論の動員、そして心理戦をともなう。それに応じて、米国とその同盟国は、西太平洋地城における中国および北朝鮮の艦艇の行動を制限する独自のA2AD戦略の採用を検討している。この西側の対抗措置が実施されれば、結果としては環大平洋地峨に沿って航空・ミサイル防衛圏が重複する状況となるであろう。==

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独裁者はこんな本を書いていた 上下ー2019.10 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

独裁者はこんな本を書いていた8上52.jpg独裁者はこんな本を書いていた  上下

= 原タイトル:The infernal library ・地獄の図書館
著者 ダニエル・カルダー /著, 黒木 章人 /訳  
出版年 2019.10
出版者 原書房
ページ数 上 303p 下 240,13p
大きさ 20cm

ISBN 上 978-4-562-05703-0
下 978-4-562-05704-7

新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館2階
 上 /313.8/カル/1 下 /313.8/カル/2
新潟県立図書館収蔵 上 /313/Ka29/1 下 /313/Ka29/2

内容紹介

「人類史上最悪の本」を実際に読んでみた!

20世紀の悪名高き独裁者たちは、何を読み、何を執筆したのか。
レーニン、スターリン、ムッソリーニ、ヒトラー、毛沢東、フセイン、金正日ほか、東西20人以上の独裁者の著書を網羅し解説する。『国家と革命』『わが闘争』『毛主席語録』など誰もが知る独裁者の著書の解説だけではなく、辛口書評を気にしていたヒトラーや、政治家よりも作家として優れていたムッソリーニ、ヒストリカル・ロマンスを執筆していたフセインなど――入手可能な限りすべての文献に目を通した著者が、独裁者の知られざる一面と文才を暴き、長年の定評さえも痛快に覆していく。


本書は〈独裁者文学〉についての研究書だ。
独裁者文学とは、独裁者自身が執筆したか、もしくはその名が冠された〝聖典〟の総体のことだ。つまり本書は人類史上最悪の本についてまとめた本だということになる。   (「はじめに」より)

上 

目次

はじめに 〈独裁者文学〉の伝統

第1部 独裁者たちの聖典
1 レーニン・・「国家と革命」
2 スターリン
3 ムッソリーニ
4 ヒトラー・・「わが闘争」
5 毛沢東・・・「毛主席語録」


独裁者はこんな本を書いていた5下3.jpg下 下は、異形の独裁者たちと括りカトリックの独裁者2人、頭脳破壊マシン3人、 中東からの試み3人と15人以上。辛口批評を気にしていたヒトラーや、ロマンスを執筆していたフセインなど、独裁者の知られざる一面と文才を暴く。


目次

第2部 異形の独裁者たち

1 小悪党たち
2 カトリックの独裁者たち
 アントニオ・サラザール(ポルトガル)/フランシスコ・フランコ(スペイン)

3 頭脳破壊マシン
 ホルローギーン・チョイバルサン(モンゴル)/クレメント・ゴットワルト(チェコ)/ヨシップ・ブロズ・チトー(ユーゴスラヴィア)

4 中東からの試み
 ムスタファ・ケマル(トルコ)/ガマール・アブドゥル=ナーセル(エジプト)/ムアンマル・アル=カッザーフィ(カダフィ)(リビア)

5 死者の書
 金日成(北朝鮮)/エンヴェル・ホッジャ(アルバニア)/ブレジネフ(ソ連)

6 もう一冊の『緑の書』  ルーホッラー・ホメイニー(イラン)


第3部 崩壊と狂気の時代
1 真夜中の超退屈な庭で
2 北朝鮮 ―金正日のメタフィクション
3 キューバ ―究極のおしゃべり野郎、その名はカストロ
4 イラク ―サッダーム・フセインのヒストリカル・ロマンス
5 ポスト・ソ連 ―ツァラトゥストラ同志
6 トルクメニスタン ―すべてが終わった時代の本


第4部 終わりなき死

 終幕

謝辞
主な参考文献


著者紹介

ダニエル・カルダー (Daniel Kalder) 1974年スコットランド生まれ。作家、ジャーナリスト。旧ソビエト連邦諸国を旅する。エスクワイア誌、ガーディアン紙などに寄稿するほか、BBCラジオ向けにドキュメンタリー番組を制作。


黒木章人[クロキふみひと]翻訳家。

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崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策ー2019その参 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策
荻野文隆編 F・アスリノ ほか
藤原書店
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出版社からのコメント
米ソ冷戦の崩壊からほぼ30年を経た2019年、アメリカを軸とした地球規模でのグローバル化の時代を経験してきた世界は今や、大きな方向転換を開始している。
米ソ冷戦の終結のあと進行したグローバル化の時代が終わり、国民経済の強化とともに、国民社会の主権と民主主義の奪還のための新たな時代に向かおうとしている。
そんな文脈の中で、フランソワ・アスリノの過去12年に及ぶ「人民共和連合」の運動は、フランス並びにヨーロッパ統合の現状を理解する上で極めて的確な分析を提供してくれる。
さらには、緊縮財政と消費増税というデフレ化政策によって破壊されてきた日本社会が、未だにその負のスパイラルからの脱却が全く見通せない現状の構造を理解する上でも多くの示唆を与えてくれるものである。
(荻野文隆)
筆者プロフィール
●荻野文隆(おぎの・ふみたか)
1953年生。東京学芸大学特任教授。フランス文学・思想。パリ第三大学文学博士。共著に『他者なき思想』『来るべき〈民主主義〉』(藤原書店)『多言語・多文化社会へのまなざし』(白帝社)『パリの街角で(音声ペンで学ぶフランス語入門)』(両風堂)他。訳書にトッド『世界の多様性』(藤原書店)他。
●フランソワ・アスリノ(Francois Asselineau)
1957年生。「人民共和連合」(Union Populaire Republicaine : 2007- )創設者、結党以来の党首。元フランス財務省財務上級監査官。HEC経営大学院、国立行政学院卒。1980-82年、在日フランス大使館経済担当官。2017年フランス大統領選挙公認候補、2019年ヨーロッパ議会議員選挙候補。

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