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温暖化が進み供給不足を起こす恐れがある「植物界の犬」白菜やキャベツのルーツはどこ?㊤ [農から見つめる]



 十字花植物のアブラナ科植物は3,700種以上338属以上が知られ、アブラナ属は「植物界の犬」と呼ばれるほど変種が多く、昔から生物学者や栽培農家を驚嘆、困惑させてきた。でんぷんが豊富な根菜、巨大な房を付けるブロッコリーにカリフラワー、アフリカから米国へ渡り、南部料理の定番となったコラードグリーン。

そしてカブやチンゲンサイ、ハクサイ、コマツナなどバラエティに富んだアジアの青菜。ビタミンやその他の栄養を豊富に含むアブラナ属の野菜は世界中で売られている。

また食用油として広く使用されているキャノーラ油は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)から作られる。

これらは元をたどればアブラナ属のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)またはヤセイカンラン(Brassica oleracea)というたった2種の野草から生まれた変種だ。

白菜や-ブラッヂカ・ラバ.jpg
ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)
 アブラナ属の多くは寒冷気候に適しており、温暖化が進みこうした植物は深刻な供給不足を起こす恐れがある。たとえば韓国の研究者は、国民食であるキムチに使うハクサイが、暑さと干ばつの両方に弱いという研究結果を発表した。
商用由・キャノーラ油の原料は世界中で栽培されているセイヨウアブラナで(世界の食糧供給にはこちらのほうが影響は大きいかもしれない)低温に合わなければ、花芽を形成し種子・油種ができない。
 気温が上昇し、干ばつや洪水が増え、既に一部の地域では作物の収穫量が打撃を受けている。これまで数十年にわたって減少してきた世界の飢餓人口は、再び増加傾向にある。
19世紀にアイルランドのジャガイモ飢饉を引き起こしたジャガイモの疫病への耐性をつけるために、原産地に野生するイモの遺伝子を使った品種が開発されたことがある。原産地に生育する原種は遺伝的に多様だから、病気に強く、味が良く、干ばつや暑さに強い品種を開発するために、原産地で新たな遺伝子が探される。
アブラナ属は、特徴の多様性が、原産地の特定を困難にしている。飼い犬が野良犬化するように、栽培されているアブラナ属の植物も簡単に「フェンスを飛び越えて」野生に戻ってしまう。黄色い花を咲かせるアブラナ属の植物は、沿岸の草地や道端、畑など、世界のいたるところに生えている。日本にはイヌガラシ、ナズナ、エゾスズシロなど野生種、欧州から麦類に混じって伝わったアブラナ奈良時代に伝来したカラシナが河原や空き地、路傍等に生育して交雑している。
 西ヨーロッパから東アジアにかけて、自分たちの土地こそアブラナ属の原産地だと考える人は多く、チャールズ・ダーウィンも、イングランドの海岸に自生するものがヤセイカンランの祖先ではないかと考えていた。
今後、地球温暖化が加速すると、これらの野菜は暑さや干ばつ、病気など、かつてない危機に直面する可能性がある。原産地に生育する原種は、他とは比較にならないほど遺伝的に多様だ。これを利用して、気候変動に強い新たな品種を開発すれば、来るべき食糧難への備えとなるだろうと、原産地・原種探しに注力される。
新たな研究が、4月30日付で学術誌『Molecular Biology and Evolution』で公表された。世界中のシードバンク(種子の保存施設)やその他世界中に存在する種子コレクションから集められた400点以上のサンプルを使ってゲノムの一部を解析し、そのDNAデータと言語学者や考古学者の助けも借りてカブなどアブラナ属の作物に関する古い文献や、古代集落の遺跡で見つかった遺物も調べた。
「一つの物語を様々な側面から調べる、探偵のような仕事でした」
総合した結果、ブラッシカ・ラパは、パキスタンとの国境に近いアフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈周辺が原産であることが示された。3500~6000年前に、この地方で最初に栽培化された野菜がカブだった。後に、品種改良によってターサイ、チンゲンサイ、ラピニなどの葉物野菜や、食用油の原料となる種子、インド料理に使われる香辛料用の変種が現れる。
ヤセイカンラン(Brassica oleracea)に関する同様の研究は、200点以上のサンプルを分析した結果、ギリシャとトルコに挟まれたエーゲ海とその周辺に浮かぶ島々が原産地である可能性が高いとされた。
続く

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