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イスラム入門 分断を乗り越えるための ③闘病の末に亡くなると天国へ [隣の異教]

分断を乗り越えるためのイスラム入門 著者:内藤正典【ナイトウまさのり】
幻冬舎新書 698
第1章 イスラムはパンデミックに強い・・085頁 闘病の末に亡くなると、天国が約束される・・  より


 もう一つ注目すべきは、イスラムにおける「死」のとらえ方です。ハディースには次のような一節があります。
アブー・フライラによると、預言者は「赤痢で死んだ者は殉教者であり、ペストで死んだ者も殉教者である」と言った。       (『ハディース イスラーム伝承集成《中》』882ページ、牧野信也訳、中央公論社)
アーイシャが神の使徒にペストについて尋ねたとき、彼は「それはアッラーが御心のままに送られる罰であるが、神はそれを信徒たち対する恵みの手段にもされる、ペストが発生したとき、アッラーが予め定められたことだけが起るということを確信して忍耐強く自分の国に留まる信者にはは、必ず殉教者と同じ報いを与えられるであろう」と答えた。     (『ハディース イスラーム伝承集成《中》』882~883ページ、牧野信也訳、中央公論社)
 闘病は「最後の審判で受ける罰の前借り」とされます。イスラムでは、この世界はいつか滅亡するという終末思想があります。そして、終末を迎えるとき、アッラーが死者を一人ずつ呼び出して、生前の善行と悪行を天秤にかけ、善行が重ければ楽園(天国)行き、悪行が重ければ火獄(地獄)行きとなります。これが最後の審判です。
 病気で苦しむことは「善行」とされているので、病気で苦しい思いをすると生前の悪行が帳消しになって来世で楽園(天国)に行ける可能性が高まるとムスリムは考えます。闘病が苦しいものであるほど、闘病それ自体が善行となる仕組みです。
 その結果、不幸にして命を落としたとしても、ハディースには明確に「殉教者」と書かれてます。殉教者には来世での楽園(天国)行きが約束されます。つまり、ペストであれ、コロナであれ、感染症で闘病の末に亡くなると、天国が約束されるというわけです。
 たとえ辛いことであっても、それを「神が予め定めたこと(定命)」として受け入れることは、「六信」といってムスリムが信じなければならないことの一つです。
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 日本であれ、西欧世界であれ、新型コロナによる闘病や死に対して、このようなポジティブな見方は存在しません。
 これは。災いに対するムスリムの強さと言ってよいでしょう。ムスリムは、苦境に際して、独自のレジリエンスをもっています。ここで言うレジリエンスとは、苦難に「立ち向かう」というつような強さのアピールではありません。苦境を可能なかぎりしなやかにかわしていくことです。
 ムスリムには、どんな苦しみであっても。運命をアッラーの手にゆだねることで、不必要に悩まないという思考回路ができていると言えます。西欧では、イスラムと言うと、怖い神が人間の意思や自由を制約していると思われがちですが、それはまったくの誤解です。アッラーは、信徒が彼(アッラー)との契約を破ったときには激しい怒りを示して罰しますが、守ろうと努力して果たせなかった場合には、限りない慈悲を示します。辛い目にあっとき、この慈悲は極限まで深ります。それが彼らのレジリエンスの基になっているのです。

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ジャニーさんに愛される息子に育てる法--2013 [メディア]


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ジャニーさんに愛される息子に育てる法
アイドルの掟 1
小菅宏/著
出版社名 竹書房
出版年月 2013年11月
ジャニー喜多川氏とジャニーズアイドルを最もよく知る著者による、究極のジャニーズ研究本。
目次
ジャニーズアイドルの掟は、あるのでしょうか?
ジャニー・H・喜多川の履歴書―謎が多い波乱万丈の半生記
序章 ジャニーズ大好き!の心理解剖
ジャニーさんに愛される息子に育てる法(顔(ジャニーズ・フェイス)
清潔感(クリーン)
笑顔(スマイル・フェイス)
性格(キャラクター)
親近感(フレンドリー)
運動能力(スポーツ・センス)
笑い(ユーモア・センス)
友情(フレンド・シップ)
家族愛(ファミリー・ラブ)
夢を抱く者(ドリーマー))
終章 多様化するジャニーズアイドルの行方―
  「本物のエンターテイナーは四十歳代から始まる」(ジャニー語録)
著者紹介
小菅 宏 (コスガ ヒロシ)  
作家。東京都出身。大学卒業後(株)集英社に入社。「週刊セブンティーン」創刊に参加し、ジャニー喜多川氏と知己を得る。「週刊プレイボーイ」・「月刊PLAYBOY」の副編集長を経て1990年独立。徹底した現場主義のドキュメント手法で、社会と人間の内実に迫る作家活動に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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タグ:観たいな
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警察の社会史 大日方 純夫/著 -- 岩波書店 -- 1993.3 [明治以後・国内]

警察の社会史   著者 大日方 純夫  オビナタ すみお  
出版者 岩波書店  岩波新書 新赤版 番号 271
出版年 1993.3
新書 大きさ 18cm ページ数 230p
ISBN 4-00-430271-4
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 日露戦争直後,東京市の警察署の八割が襲撃される日比谷焼打事件がおきた.だがわずか十数年後,関東大震災では「自警団」が登場し,民衆はすすんで「治安」に協力する.この変化は何を意味するのか.「民衆の警察化」が典型的に押し進められた大正デモクラシー時期を中心に,社会生活のすみずみにまで及んだ「行政警察」全体像を解明する
 
1950年生まれの日本近代史研究者が、1993年に刊行した20世紀前半、特に大正期の日本警察の社会史。明治政府は、ヨーロッパから大陸型の警察制度を導入し、東京府から独立した東京警視庁と、中央集権的な警察制度を創設した。その際、事後処理的な司法警察と並んで、予防的な行政警察が設けられ、特に後者は人民の「守役」として、民衆生活の広範な領域に介入した
 日清・日露戦争後の帝国主義期には、工業化を背景として、風俗や道路への規制に加えて、工場や衛生、海外渡航への積極的な介入が目立つようになり、警察権限は無限定に膨張してゆく。しかし大正期の民衆騒擾の頻発は、警察の転換の契機となる。藩閥政府の私兵的性格の強かった警察は、以後「警察の民衆化」を掲げると同時に、巡査の待遇を改善して貧民との遮断を図り、加えて「陛下の警察官」としての精神的統制を強化する。
 また同時に、「民衆の警察化」も目指され、「自警」が組織化されていくが、その問題性は関東大震災下での朝鮮人虐殺(警察も流言の流布に一役買っている)の際に露呈した。
 結果として1930年代には、警察は「民衆化」されずに戦時体制を支える「力の警察」へと向かい、自警団は権力の末端組織として編入された(その過程の解明は今後の課題)。戦後、GHQによって警察権限は縮小し、地方分権化されたが、戦後の過程で再びゆり戻しが起こっていることを、著者は憂慮している。戦前警察の歩みを社会変化と関連付けて論じた好著であるが、著者が「今後の望ましい警察のあり方」をどう考えているのかが気にはなる。戦後の日本警察については、永井良和『風俗営業取締り』(講談社メチエ、2002年)がある。
 
 日比谷焼き討ち事件を機に群衆に警察署や派出所が襲撃され、警視庁廃止論まで飛び交った時点から警察が民衆を取り込んでいく過程とその顛末を、資料を盛んに引用して示していく著作。過去において群衆に警察署が襲撃されたなんていうのが今の状態から考えるとまず信じられなかったが、そんな行為が信じられない位にまで馴致されていく過程が段階的に示されていく。それはいわゆるパブリック・リレーションズ、批判的に言うなら印象操作の連続で、草の根から警察に親しみを覚えさせたり警察に頼らせたりしていく手際がたくさん収録されている。
 挙句には地域ごとの自警団も青年団や商業会や婦人団体などの肝いりで作り上げていく。統治を広げていく人たちの目論見と統治される気持ちよさに嵌っていく人たちの心情が並行的に示される。そんな自警の動きは関東大震災の下で朝鮮人虐殺へと結びつくが裁判では厳罰をまぬかれ、戦時体制下の産業報国会・大政翼賛会へと民衆は気持ちをぶれさせずに警察との絆をつなげていく。
 
目次
序章 警察廃止をめぐる2つの事件
1 行政警察の論理と領域
2 変動する警察
3 「警察の民衆化」と「民衆の警察化」
4 「国民警察」のゆくえ
終章 戦後警察への軌跡

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1348年 気候不順と生存危機--《歴史の転換期》202頁 [視座をホモサピエンス]

1348年 気候不順と生存危機    シリーズ:歴史の転換期 5
著者:千葉敏之=編  長谷部史彦  井上周平  四日市康博  井黒忍  松浦史明 
刊行: 2023年7月
仕様: 四六  ・  280ページ
ISBN: 978-4-634-44505-5
新潟大学 附属図書館 収蔵
4章 元明交替の底流
 崩壊の兆し  202頁より

 中塚武は、人間社会が数十年周期の気候変動に対して脆弱であるとする説を提示する。それによれば、良好な気候条件のもとで人口と生活水準を高めた人間社会は、数十年周期の気候変動が生じ、環境収容力が縮小したにもかかわらず、生活水準の肥大化を制限することができずに危機への対応を誤り、飢饉や疫病、戦争などを引き起こし、社会の混乱と崩壊を導くという。さらにこうした状況が唐・明と並んで元にもあてはまると中塚は指摘する。一三○○年前後を境にして生じた数十年周期での気候変動とこれに対する人間社会の適応と不適応、あるいは過適応元明交替期の底流をなしていたことは間違いない。くわえて、気候変動とも密接な関係性を有する同時期の黄河の河道変移は、この底流に時に棹さし、時に逆行する、もう一筋の流れをかたちづくったのである。
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203頁
『黄河は西から流れきたりて、長江と淮河のあいだをかき乱す』
  淮河(わいが、ホワイホー)は、中華人民共和国を流れる川の一つで、長江・黄河に次ぐ第三の大河。 古くは「河」が黄河の固有名詞であったので、淮水と呼んだ。中国東部、黄河と揚子江の間を東に流れる川。河南省南端の桐柏山地に源を発し、安徽省を流れ、江蘇省の洪沢コウタク湖を経て大運河に注ぎ分流して黄海と揚子江に注ぐ。全長約1000キロ。昔から、河道がしばしば変わり、ことに一二世紀初め、黄河に河道を奪われてからは中・下流が土砂でふさがれて洪沢湖に流れ込み、しばしば水害をもたらした。一九五〇年から大治水工事が行なわれ、現在は安定した水路を復活。淮水。ホワイ川

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イスラム入門 分断を乗り越えるための ②「聖」と「俗」 [隣の異教]

分断を乗り越えるためのイスラム入門 著者:内藤正典【ナイトウまさのり】
幻冬舎新書 698
第4章 イスラムは「遅れている」のか?・085頁 イスラムには「聖」と「俗」を分ける発想がない・・  より
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 イスラムにはカトリックのような教会租織がないということです。教会を構成する位階のある聖職者もいません。国家から「教会」を切り離しなさいというのが世俗主義の基ですから、「教会」をもっていないムスリムは、国家から何を切り離せと言われているかがわからないのです。
 ピラミッド型の教会組織がないので、その頂点に立つ教皇もいません。カトリックで教皇は神の代理人になりますが、イスラムにはそのような人はいません。
 ムスリムに聞いてみればすぐにわかることですが、イスラムに教皇はいません。代わりに、全ムスリムを統率するカリフという地位はあります。ところが、このカリフという地位は1924年まではオスマン帝国に残っていたのですが、オスマン帝国の減亡とともに消えてしまいました。
  カリフとは神の使徒の代理人、つまりムハンマドの代理人ですから、存在してくれれば、すべてのムスリムを統率する地位となります。現在は空位なのですが、タリバン政権のアフガニスタンのように、ピュアなイスラムの国家としてやっていくと宣言している国では、リーダーがアミール・アル・ムーミニーン(イスラム信徒の長)を名乗ります。本来はカリフと同じ意味をもつ称号です。
 マスコミでは、「イスラム聖職者」と呼ばれる人が登場することがありますが、あれも間違いです。キリスト教のカトリックでは聖職者がいますが、彼らは現世の欲望を断って(本当に断っているかどうかは知らませんが)神に仕え、神に代わって、たとえば告解で「赦し」を与えるから「聖職者」と呼ばれます。
 しかし、イスラムにそういう人はいません。いるのは、『イスラムの先生』です。イスラムについて豊富な学識をもつ人という意味ですから、イスラム学者です。アラビア語ではウラマ-と言います。先生なので、別に欲望を断つ必要はありません。神に成り代わって人に赦しを与えることもできません。あくまで、先生ですから、ただの人間です。イスラムで禁じられた行為をした人に、イスラムの法解釈に従って、裁定(判決)を下すことはできます。そういう人を「イスラム法学者」と言うこともあります。
 ムスリムが世俗主義を理解できないのは、教会組織をもたないからだけではありません。より根本的な理由として、そもそもイスラムには「聖」と「俗」を分ける発想そのものがないからです。これを「聖俗不可分」と言います。
 超越的絶対者であるアッラーは、森羅万象を照らしているわけですから、人間社会の一部に「俗」な領域、つまり宗教から離れた領域を設定することができないということです。ムスリムにとっては、アッラーの意思が及ばない領域などを考えらえないでしょう。
 世俗主義(政教分離もその一部です)とは、人間がつくる社会や国家のなかの「公」の領域には「アッラーは手を突っ込むな」そのようなイデオロギーとイスラムは両立しません。

実際は、イスラム圏の国家のほとんどは世俗主義・・・105
 しかし、それはイスラムという宗教の本義の話であって、現実に今生きているムスリムが、世俗主義を拒否しているかと言えば、そうではありません。
 近代西欧のつくりあげた国家システムというものは、世界を支配しています。19世紀以来、圧倒的な力で世界を席巻しました。中東でも他のイスラム圏でも、現状の国家のほとんどは、世俗主義を受け入れています。
もし、受け入れないで、イスラム通りに国をつくるとすると、2021年8月以来のタリバン政権のアフガニスタンかそうですが、すべての法体系をイスラムに従わせなければなりません。
 アフガニスタンは、過去20年、アメリカの事実上の占領下で国家に世俗主義を導入してきましたから、法の体系をイスラムに戻すのは容易なことではありません。世俗的なルールに慣れでしまうと、その方か暮らしやすいと盛じる人は、ムスリムのあいだにも多いからです。
 ムスリムは西欧世界が「国家」と「教会」を分離したことは知っています。もはやキリスト教の規範が社会を縛れない、つまり「世俗分離」の世界だということも知っています。しかし、西欧がイスラム世界に対して、おまえたちも両者を分離しないと漣歩できないぞと主張してもそこは受け入れられません。
 それは先程も述べたように、第一に、教会のないイスラムには、国家から何を分離しろと言っているのか、理解できないからです。そして第二に、イスラムは信徒一人ひとりの行動の規範になっていて、公の場であろうと、私的な場であろうと、すべてをカバーします。たとえ、国が政教分離を受け入れても、個人としでのムスリムは、信仰はプライベートな空間だけにしようという発想をもちにくいのです。
 他方、ムスリムがアフガニスタンのタリパン政権やイランのイスラム体制を支持するかと言えば、それもなかなか難しいことです。


タグ:イスラーム
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どんなスピードでも自動車は危険だ [視座をホモサピエンス]

どんなスピードでも自動車は危険だ
著者 ラルフ・ネイダー   Ralph, Nader,
訳者 河本英三 
出版社 ダイヤモンド社
大きさ、容量等 295p ; 19cm
価格 480円
>調べた限り、国立国会図書館 に蔵書されていた。


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イスラム入門 分断を乗り越えるための ①ペスト流行への対応からみる新型コロナ対応 [隣の異教]

 流行地域からの緊急避難が行われたが、、イスラーム法学者の多くは流行地から逃げるべきではないし、また他地域から流行地域に入るべきでない。
・・・ハディース「預言者は『もしあなた方が或る土地にペストがはやっていることを聞いたならば、そこへ入るな。また、あなた方が居る土地にペストが起ったときはそこから出るな』と言った。」
(『ハディース イスラーム伝承集成《中》』881ページ、牧野信也訳、中央公論社)

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分断を乗り越えるためのイスラム入門
著者:内藤正典【ナイトウまさのり】

幻冬舎新書 698
第1章 イスラムはパンデミックに強い・・・・・・017頁
 預言者ムハンマドは新型コロナにも道を示していた・・・018  より


 新型コロナの感染が拡大し始めたころ、世界の各国は対応を迫られました。ごく初期の段階では“Stay Home”(スティホーム)ということが盛んに言われました。
 とりあえず「家にいろ」とはずいぶん原始的な対策だと感じたのですが、人の密集か感染を拡大させる以上、当然のことでした。
 そのころ、イスラム圏でも、宗教指導者や国家のリーダーたちが、みな、「家にいなさい」と言い出しました。WHOの勧告を素直に受け入れたというではありません。イスラムを創始したムハンマドの生前の言行を慣行(スンナ)として記したハディースの一節を引いて市民に感染拡大の抑止を訴えたのです。
 ステイホームやロックグウンと同じことをムハンマドが言っていたのです。1400年も前の発言ですが、今日、いくうかの系統の伝承が真正なものとして認められています。
 すべてのムスリムは、アッラー(神)の言葉そのものであるコーランと預言者ムハンマドのスンナに従わなければなりません。
 この二つはムスリムの行動規範の典拠であり、誰もその内容を否定できません。そもそも否定するならムスリムではありません.
 ここに示した一節は、イスラム世界のリーダーたちが国民向けに呼びかけた演説でも引用されました。
 トルコのエルドアン大統領は「政府に課せられた使命は、あらゆる措置を講じたうえで、アッラーにまかせることだ」と述べています(2020年3月18日)。
 ムハンマドの時代とは、ペストが新型コロナに代わっただけで、感染症という点は同じです。しかも、WHOもまた同じことを呼びかけていたのですから、ムスリムから見れば、アッラーはやっぱり偉大だ、神の使徒ムハンマドは。アッラーの教えを基に新型コロナについても道を示していたということになりました。
 ただし、ムスリムが実際にそれを守ったかと言えば、守っていないから感染が拡大する結果となったのも事実です。現実の世界では働かなければならないし、さまざまな楽しみのために人が集うことも簡単には止められません。預言者の言葉通りに行動しなかったとしても、互いを責めるような感覚はムスリムにはありません。政府の対策がうまくいかなかったとしても、政府を責める声も大きくなりませんでした。

タグ:イスラーム
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麻薬マフィア対策 メキシコからの通信 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

 田中道子  エル・コレヒオ・デ・メヒコ大学院 教授


 メキシコというと、治安が悪く麻薬マフィアの縄帳り争いで殺偽が絶えないという印象が定着している。市民の自衛組織の指導者や、地方自治体と麻薬マフィアのつながりを指摘した記者の殺害など、ほとんど毎週のこと。
 世界一の麻薬市場米国と3152kmに及ぶ国境を接するメキシコは、主として南米やアジアから持ちち込まれた「物」の中継基地として機能してきた。第二次世界大戦に戦場での応急処置に必要なモルヒネ生産のために北部シナロア州で芥子栽培が推奨され、戦後も麻薬マフィアの影響下に芥子やマリファナの栽培が続いてきた。
(シナロア州 スペイン語: Estado de Sinaloa)
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 最近ではアジアなどで生産された鎮痛剤用一次加工物を、強力で有害な覚醒剤「フェンタニル Fentanyl」に仕上げる加工場が出来るようになり、さらに国内市場特に年少者の開拓に様々な手が使われている。(フェンタニルはヘロインよりも最大50倍、モルヒネよりも100倍強力とされている。2022年1年間だけで米国麻薬取締局DEAが押収したフェンタニルは4500キロ以上に上っている。)
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 マフィア間の対決を避けるべく、歴代PRI党(革命体制党)政権下で暗黙の棲み分けがなされてきた。二〇〇〇年に腐敗まみれのPRIに代わって国民の期待を担って政権に就いたPAN党(右派国家行動党)初代フォックス大統領もマフィアと談合し、「薬用」大麻加工販売の利権で富を得た。二〇〇六年PAN二代目大統領に就任したカルデロンは、選挙不正を隠蔽し、政権の正統性を保つために、不準備なまま対麻薬マフィア戦争宣言をしたが、実際はシナロア州を根拠地とする麻薬カルテルと組んで、その他のカルテルを掃討したに過ぎなかった。そのアレンジを主導したのが、カルデロン政権下で公安省長官か務め現在米国の法廷で判決を待っている、ヘナロ・ガルシア・ルナ。
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 反対派州知事はじめ地方自治体の中には、マフィアの援助で政権に就いた者もいる中で、武力による正面突破に加えて、マフィア予備軍の貧困層青少年向け社会政策・教育技術収得助成・文化スポーツ推進を重点に全国に展開してきたが、いまだに状況は困難だ、


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病が分断するアメリカ--平体 由美/著 -- ⑵要約 [国家医学・帝国医療・看護学]

病が分断するアメリカ   公衆衛生と「自由」のジレンマ 
  平体 由美 (ヒラタイ ゆみ)/著
出版者 筑摩書房 ちくま新書 番号1 1744  ページ数 222頁
  出版年 2023.8
目次に沿って要旨・要約
はじめに
第1章 そもそも公衆衛生とは何か
 一般に国が豊かであれば、国民の健康度は高くなる。国民の所得が高ければ十分なカロリーと栄養バランスのいい食事がとれるし、税収が安定的に高まれば上下水道やごみ処理などのシステムを維持できるからだ。
 公衆衛生システムは、近代国家が整備してきたさまざまな制度と絡み合いながらそれぞれの国家や地域で充実してきた。年齢・居住地・収入を把握する人口管理、新しい病が発生した時の疫学調査研究、住民に行動変容を説得する広報・教育、そして行動制限を徹底させるための強制手段などが、公衆衛生システムを支えている。
(公衆衛生の三要素
;数を数えることの諸問題 ほか)
第2章 「自由の国」アメリカ―個人の選択と公衆衛生管理の相克
 平均寿命(2020年)は、日本84・62歳、カナダ81・75歳、イギリス80・9歳に対して、アメリカは77・28歳だ。1000人当り乳児死亡率(同)も、日本の1・8に対して、アメリカは5・4だ。また20歳以上の糖尿病患者の割合(2021年)は、日本6・6%、イギリス6・3%に対し、アメリカは10・7%だった。新型コロナ感染症(今年7月現在)では、アメリカの感染者数は1億人以上、死者は116万人と、いずれも世界一
 都市スラムに住む貧困層――黒人やヒスパニックについては・・疲労が蓄積し、安価な高カロリー低栄養食品で腹を満たす食事になりがちで、それによって肥満が増える。貧困層ほど肥満が多く、それは糖尿病や心疾患などの病気につながる。そして子どもの頃に形成された食習慣は、成長してからの健康度を左右する。
「アメリカの非都市部――西部山岳地帯やステップ地帯、南部農村地帯、北部のかつての工業地帯(ラストベルト)など――における貧困は、概して都市スラムの貧困以上に深刻である」
 ガスや電気を欠き、衛生上不可欠な清潔な水を得るのも困難で、全米で少なくとも140万人が屋内の水道設備(シンクやシャワー、水洗トイレ)を持たずに生活している。彼らが利用する井戸の23%で、健康被害が懸念されるヒ素、硝酸塩、ウランなどが検出されている。後進国状態である。
第3章 ワクチンと治療薬―科学と自然と選択肢
  1 疫学転換とワクチン
  2 天然痘ワクチンと19世紀アメリカ社会
  3 反ワクチンの戦い
  4 COVID-19下のワクチン開発と接種
第4章 病の社会格差―貧困層を直撃する社会制度
 国民皆保険制度がないアメリカでは、貧困層は基準を満たせば医療扶助制度メディケイドを利用でき、コロナに感染して1週間程度入院した場合、メディケイドでは自己負担額は1500㌦程度だが、
そうでない低所得層の無保険となりコロナ感染し1週間程度入院した場合なら7万㌦(約1029万円)をこえる。無保険者は2700万人ほど存在している。
 国民が払う税金の多くは軍事費(圧倒的な世界1位)に注ぎ込まれて軍産複合体を潤わせる一方、国民生活に不可欠な医療や公衆衛生の費用は削られる
この非都市部は、小麦やトウモロコシ、野菜、果物、食肉、水産などアメリカの食料生産を担っているだけでなく、加工工場のほとんども支えているという。また、天然資源の採掘や一次加工、製造業の一部もここが担っている。だからこの地域が衰退することは、アメリカが食と工業製品の生産地を失うことを意味する。
それはと、貧困や病気を「自己責任」といって突き放したところで、回り回ってその社会の維持すら困難にしてしまうということだ。 
第5章 社会の分断―「マスク着用」が象徴するもの
  1 「スペイン風邪」とマスク
  2 COVID-19下のマスク要請
  3 政治化するマスク着用

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病が分断するアメリカ--平体 由美/著 -- 筑摩書房 -- 2023.8 [国家医学・帝国医療・看護学]

病が分断するアメリカ   公衆衛生と「自由」のジレンマ 
  平体 由美 (ヒラタイ ゆみ)/著
出版者 筑摩書房 ちくま新書 番号1 1744  ページ数 222頁
  出版年 2023.8
ISBN 978-4-480-07571-0

新潟市立図書館収蔵 内野館 /498/ヒ/

著者紹介 平体 由美 (ヒラタイ ゆみ)
:1966年生まれ。東洋英和女学院大学国際社会学部教授・学部長。専門はアメリカ史・公衆衛生史。国際基督教大学大学院行政学研究科修了。学術博士。著書に『連邦制と社会改革――20世紀初頭アメリカ合衆国の児童労働規制』(世界思想社、2007年)、『医療化するアメリカ──身体管理の20世紀』(共編著、彩流社、2017年)、『社会科学からみるSDGs』(共編著、小鳥遊書房、2022年)などがある。

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内容紹介

 コロナ禍のアメリカは、迅速な疫学調査とワクチン開発がなされたにもかかわらず、世界で最悪の死者が出た。ワクチン接種に当初から反対が根強く、マスク着用では国が分断された。アメリカの公衆衛生が抱える深刻なジレンマ―国民の健康と自由な活動という背反する価値のどちらを優先するかをめぐって、どんな論争があったのか。20世紀初頭以来の公衆衛生史を繙きつつ、社会・地域・人種などの格差により分断されているアメリカの問題を探る。そうすることによって、日本社会が抱える諸問題との比較が可能になり、アメリカ社会の成功と失敗から学べることが見えてくる。

目次

はじめに

第1章 そもそも公衆衛生とは何か

(公衆衛生の三要素
;数を数えることの諸問題 
健康教育の光と影
行動制限の影響
/機構の整備と迎用
第2章 「自由の国」アメリカ―個人の選択と公衆衛生管理の相克
  1 アメリカの自由のイデオロギー
    「抑圧」が可能にした自由/自治・権力肥大化の回避・選択肢の存在
  2 公衆衛生政策に対抗する自由の「論理」
    慣れと読み替えの繰り返し/新しい病気の出現と繰り返される抵抗
  3 自由のイデオロギーと政治制度
    奴隷解放のロジック/通商権限と食肉検査法
  4 連邦と州の役割の相克ー州際通商を規制する連邦、住民の健康管理を統括する州
    一九世紀末の倹疫と隔離/COVIDー19と連邦政府/ニューヨーク州の対策
第3章 ワクチンと治療薬―科学と自然と選択肢
  1 疫学転換とワクチン
  2 天然痘ワクチンと19世紀アメリカ社会
    アメリカにおける種痘の広がり/大然痘ワクチンとはどのようなものだったか
  3 反ワクチンの戦い
    ジェイコプソン対マサチューセッツ判決(一九〇五)/二〇世紀の反ワクチンー
  4 COVID-19下のワクチン開発と接種
    飛行機の時代の感染症/前例のない速さで開発されたCOVIDー19ワクチン/COVIDー19ワクチン義務化をめぐる議論/黒人はなぜワクチン接種に消極的だったのか
第4章 病の社会格差―貧困層を直撃する社会制度
  1 国の豊かさと健康
  2 社会経済的地位と健康
    貧困と病/社会経済的地位(SES)への注目
  3 顧みられないフロンティア
    見過ごされる非都市部の貧困/非都市部の健康リスク
  4 COVID-19と社会経済的地位
    都市エッセンシャルワーカーの苦闘/非都市部の医療崩壊/公衆衛生に不都合な「自由」
第5章 社会の分断―「マスク着用」が象徴するもの
  1 「スペイン風邪」とマスク
    「スペイン風邪」/他者への配慮、自己防衛/反マスク連盟-マスクは効果なし、かえって不潔
  2 COVID-19下のマスク要請
    CDCの勧告/州政府の動向/反マスク法とレイシャル・プロファイリング
  3 政治化するマスク着用
    政治の分極化とマスク/マスクは緋文字か?
おわりに
    「物語」とコミュニケーション/公衆衛生システムが支えてきた健康
あとがき
主要参考文献
はじめに  要約に続く


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