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麻薬マフィア対策 メキシコからの通信 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

 田中道子  エル・コレヒオ・デ・メヒコ大学院 教授


 メキシコというと、治安が悪く麻薬マフィアの縄帳り争いで殺偽が絶えないという印象が定着している。市民の自衛組織の指導者や、地方自治体と麻薬マフィアのつながりを指摘した記者の殺害など、ほとんど毎週のこと。
 世界一の麻薬市場米国と3152kmに及ぶ国境を接するメキシコは、主として南米やアジアから持ちち込まれた「物」の中継基地として機能してきた。第二次世界大戦に戦場での応急処置に必要なモルヒネ生産のために北部シナロア州で芥子栽培が推奨され、戦後も麻薬マフィアの影響下に芥子やマリファナの栽培が続いてきた。
(シナロア州 スペイン語: Estado de Sinaloa)
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 最近ではアジアなどで生産された鎮痛剤用一次加工物を、強力で有害な覚醒剤「フェンタニル Fentanyl」に仕上げる加工場が出来るようになり、さらに国内市場特に年少者の開拓に様々な手が使われている。(フェンタニルはヘロインよりも最大50倍、モルヒネよりも100倍強力とされている。2022年1年間だけで米国麻薬取締局DEAが押収したフェンタニルは4500キロ以上に上っている。)
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 マフィア間の対決を避けるべく、歴代PRI党(革命体制党)政権下で暗黙の棲み分けがなされてきた。二〇〇〇年に腐敗まみれのPRIに代わって国民の期待を担って政権に就いたPAN党(右派国家行動党)初代フォックス大統領もマフィアと談合し、「薬用」大麻加工販売の利権で富を得た。二〇〇六年PAN二代目大統領に就任したカルデロンは、選挙不正を隠蔽し、政権の正統性を保つために、不準備なまま対麻薬マフィア戦争宣言をしたが、実際はシナロア州を根拠地とする麻薬カルテルと組んで、その他のカルテルを掃討したに過ぎなかった。そのアレンジを主導したのが、カルデロン政権下で公安省長官か務め現在米国の法廷で判決を待っている、ヘナロ・ガルシア・ルナ。
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 反対派州知事はじめ地方自治体の中には、マフィアの援助で政権に就いた者もいる中で、武力による正面突破に加えて、マフィア予備軍の貧困層青少年向け社会政策・教育技術収得助成・文化スポーツ推進を重点に全国に展開してきたが、いまだに状況は困難だ、


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