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病が分断するアメリカ--平体 由美/著 -- ⑵要約 [国家医学・帝国医療・看護学]

病が分断するアメリカ   公衆衛生と「自由」のジレンマ 
  平体 由美 (ヒラタイ ゆみ)/著
出版者 筑摩書房 ちくま新書 番号1 1744  ページ数 222頁
  出版年 2023.8
目次に沿って要旨・要約
はじめに
第1章 そもそも公衆衛生とは何か
 一般に国が豊かであれば、国民の健康度は高くなる。国民の所得が高ければ十分なカロリーと栄養バランスのいい食事がとれるし、税収が安定的に高まれば上下水道やごみ処理などのシステムを維持できるからだ。
 公衆衛生システムは、近代国家が整備してきたさまざまな制度と絡み合いながらそれぞれの国家や地域で充実してきた。年齢・居住地・収入を把握する人口管理、新しい病が発生した時の疫学調査研究、住民に行動変容を説得する広報・教育、そして行動制限を徹底させるための強制手段などが、公衆衛生システムを支えている。
(公衆衛生の三要素
;数を数えることの諸問題 ほか)
第2章 「自由の国」アメリカ―個人の選択と公衆衛生管理の相克
 平均寿命(2020年)は、日本84・62歳、カナダ81・75歳、イギリス80・9歳に対して、アメリカは77・28歳だ。1000人当り乳児死亡率(同)も、日本の1・8に対して、アメリカは5・4だ。また20歳以上の糖尿病患者の割合(2021年)は、日本6・6%、イギリス6・3%に対し、アメリカは10・7%だった。新型コロナ感染症(今年7月現在)では、アメリカの感染者数は1億人以上、死者は116万人と、いずれも世界一
 都市スラムに住む貧困層――黒人やヒスパニックについては・・疲労が蓄積し、安価な高カロリー低栄養食品で腹を満たす食事になりがちで、それによって肥満が増える。貧困層ほど肥満が多く、それは糖尿病や心疾患などの病気につながる。そして子どもの頃に形成された食習慣は、成長してからの健康度を左右する。
「アメリカの非都市部――西部山岳地帯やステップ地帯、南部農村地帯、北部のかつての工業地帯(ラストベルト)など――における貧困は、概して都市スラムの貧困以上に深刻である」
 ガスや電気を欠き、衛生上不可欠な清潔な水を得るのも困難で、全米で少なくとも140万人が屋内の水道設備(シンクやシャワー、水洗トイレ)を持たずに生活している。彼らが利用する井戸の23%で、健康被害が懸念されるヒ素、硝酸塩、ウランなどが検出されている。後進国状態である。
第3章 ワクチンと治療薬―科学と自然と選択肢
  1 疫学転換とワクチン
  2 天然痘ワクチンと19世紀アメリカ社会
  3 反ワクチンの戦い
  4 COVID-19下のワクチン開発と接種
第4章 病の社会格差―貧困層を直撃する社会制度
 国民皆保険制度がないアメリカでは、貧困層は基準を満たせば医療扶助制度メディケイドを利用でき、コロナに感染して1週間程度入院した場合、メディケイドでは自己負担額は1500㌦程度だが、
そうでない低所得層の無保険となりコロナ感染し1週間程度入院した場合なら7万㌦(約1029万円)をこえる。無保険者は2700万人ほど存在している。
 国民が払う税金の多くは軍事費(圧倒的な世界1位)に注ぎ込まれて軍産複合体を潤わせる一方、国民生活に不可欠な医療や公衆衛生の費用は削られる
この非都市部は、小麦やトウモロコシ、野菜、果物、食肉、水産などアメリカの食料生産を担っているだけでなく、加工工場のほとんども支えているという。また、天然資源の採掘や一次加工、製造業の一部もここが担っている。だからこの地域が衰退することは、アメリカが食と工業製品の生産地を失うことを意味する。
それはと、貧困や病気を「自己責任」といって突き放したところで、回り回ってその社会の維持すら困難にしてしまうということだ。 
第5章 社会の分断―「マスク着用」が象徴するもの
  1 「スペイン風邪」とマスク
  2 COVID-19下のマスク要請
  3 政治化するマスク着用

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