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どうしてイスラーム教はわかりにくいの?--危険だと誤解を招く4つの理由-飯塚正人(宗教学者) [隣の異教]

どうしてイスラーム教はわかりにくいの?--危険だと誤解を招く4つの理由--宗教学者・飯塚正人 さん



まずひとつ目は「宗教会議がない」ので、「これが正統教義です」という統一の見解が決まらない。例えば、一般的にイスラーム教は一夫多妻制だと思われていますが、トルコやチュニジアなどではそうではありません。正統教義が決まっていないことはイスラーム教徒同士でも意見が割れる大きな要因にもなっています。


二つ目は「イスラーム教徒自身でさえイスラーム教のことをわかっていないことがある」ということ。エジプトやスーダンには、女性器の一部または全部を切除する女子割礼という風習があるのですが、彼らはこれをイスラームの教えだと信じて行っています。でも、実は割礼の儀式はイスラーム諸国のなかでもこの近辺でしか見られない。


三つ目は「政治が宗教を利用する」。イスラーム教と民主主義は共存できるはずですが、独裁政権の大統領や国家元首が民主化を拒む理由として「イスラーム教が禁じているから」と言ったりする。

四つ目は教徒以外の人たちが「イスラーム教徒の行動のすべてを、イスラームの教えの反映だと思い込んでしまう」ことです。

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イスラーム教は、犯罪を犯した人に対する「刑罰」と「敵対する異教徒に対する戦闘」だけ暴力が認められる。
イスラーム教は、もともと人口1万人程度の小さなまちメッカで生まれた宗教です。それが「敵対する異教徒に対する戦闘」でアラビア半島を統一して、中東や北アフリカにまで拡大した。カリフ制度のカリフ(指導者)の指導により、他国に攻めて行ってもいいことになっている。

ただ、1920年代にカリフ制度はイスラーム世界からなくなり、それ以降に行われている戦争はすべて、もともとの土地を取り返す防衛戦争という位置づけです。
イスラエルの紛争も、イスラーム教のパレスチナ人が支配していた土地にユダヤ教徒がやってきてイスラエルを建国したことに対する防衛戦争。現代のイスラーム教徒は歴史上支配したことのない土地を占領するために侵略戦争を起こすことはない。
ユダヤ教やキリスト教はイスラーム教より前にできたので先輩。ただ、「先輩たちが教えに対しての解釈を間違えてしまったので、神さまがあらためてイスラーム教をつくった」、「神さまはたった一人しかいないはずなのに、キリスト教では‟神さまに子ども(=イエス)がいる”と言っている。それはおかしいじゃないか」というのが彼らの立場です。そうした‟間違い”を正すために生まれたのが、イスラーム教だと言うんです。

ムハンマドの直系の子孫は9世紀に11代目で途絶えたが、11代目には隠し子がいた。その隠し子がいつか救世主として戻ってくるというのをイランをはじめとするシーア派の多くはいまも信じて待っているわけです。シーア派はムハンマドの子孫をリーダーにするべきだと考える人たちですが、
イスラーム教は、「この世が終わったあとに神の審判が下り、天国か地獄に行く」「いま使っているこの体をあの世でもそのまま使う」という考え方なので、火葬しない。
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石の叫びに耳を澄ます--中東和平の探索
板垣雄三 著  
平凡社
/1992年
新潟市立図書館収蔵 豊栄館
ユダヤ人を知ることからがスタート
わたしの恩師の本で、パレスチナ問題の構造について書かれたものです。この本を読むと、イスラエルを建国したユダヤ人がどんな風に生み出されて、なぜキリスト教世界で迫害され続けてきたのかがわかります。
パレスチナ問題の根源は、簡単に言ってしまうと現在にも通じる移民難民問題なんですよね。ヨーロッパは、20世紀にイスラエルを建国することで、ユダヤ人の移民難民問題を中東に押し付けましたが、それによって生まれたパレスチナ難民の問題は解決されないまま、70年後のいま、今度はシリア難民がヨーロッパに押し寄せています。ヨーロッパと中東との関係、そして、中東を理解するための最初の一冊になると思います。日本人が知らない話がたくさん載っています。

タグ:イスラーム
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