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「食べること」の進化史 ==石川 伸一/著 -- 光文社 -- 2019;05 [食から見る]

611CVeLRcVL.jpg「食べること」の進化史 
タイトル 培養肉・昆虫食・3Dフードプリンタ
著者 石川 伸一 /著  
出版者 光文社 光文社新書  1004
新書判/ページ数 290,16p/高さ 18cm
ISBN 978-4-334-04411-4
出版年 2019.5
県立図書館収蔵 /383/I76/

内容紹介

食の世界が今、激変している。分子調理、人工培養肉、インスタ映えする食事…。こうした技術や社会の影響を受けて、私たちと世界はどう変わっていくのか。気鋭の分子調理学者が、人間と食の密接なかかわりあいを描きだす。
私たちがふだん何気なく食べているごはんには、壮大な物語が眠っている。食材を生産、入手するための技術、社会が引き継いできた加工や調理の方法、文化や宗教などによる影響…。人間は太古の昔から長期間にわたって、「食べること」の試行錯誤を重ねてきた。その食の世界が今、激変してきている。分子調理、人工培養肉、完全食のソイレント、食のビッグデータ、インスタ映えする食事…。こうした技術や社会の影響を受けて、私たちと世界はどう変わっていくのだろうか。気鋭の分子調理学者が、アウストラロピテクス属の誕生からSFが現実化する未来までを見据え、人間と食の密接なかかわりあいを描きだす。

目次

序章 食から未来を考えるわけ
(なぜ「食の未来」を考えるのか;食がいかに私たちを変えてきたか;食の未来の見方)

第1章 「未来の料理」はどうなるか―料理の進化論
(過去―料理はこれまでどのように変わってきたか;現在―現在の料理の背景にあるもの;未来―未来の料理のかたち)

第2章 「未来の身体」はどうなるか―食と身体の進化論
(過去―食と人類の進化物語;現在―食と健康と病気;未来―食と身体の進化の未来図)

第3章 「未来の心」はどうなるか―食と心の進化論
(過去―人は食べる時、何を思ってきたか;現在―人は食に何を期待しているのか;未来―人は食に何を思い、何を求めていくのか)

第4章 「未来の環境」はどうなるか―食と環境の進化論
(過去―食の生産、キッチン、食卓の歴史;現在―食の生産、キッチン、食卓の今;未来―食の生産、キッチン、食卓のこれから)

著者紹介
石川伸一[イシカワ シンイチ]
1973年、福島県生まれ。98年、東北大学大学院農学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、北里大学助手・講師、カナダ・ゲルフ大学客員研究員(日本学術振興会海外特別研究員)などを経て、宮城大学食産業学部准教授。博士(農学)。専門は分子食品学、分子調理学、分子栄養学。おもな研究テーマは、鶏卵の機能性に関する研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

専門は分子食品学など。サイト『分子調理ラボ』で分子調理に関する情報を提供。著書に「必ず来る!大震災を生き抜くための食事学」がある。


詳しい目次
はじめに

序章 食から未来を考えるわけ

(1)なぜ「食の未来」を考えるのか

(2)食がいかに私たちを変えてきたか

(3)食の未来の見方


第1章 「未来の料理」はどうなるか ―料理の進化論―

【過去】料理はこれまでどのように変わってきたか

(1)料理の因数分解

(2)限られた食材、変わってきた調理法

(3)食材の拡散により誕生し、洗練され、融合する料理


【現在】現在の料理の背景にあるもの

(1)料理界における科学の勃興

(2)エビデンスに基づいた料理の解明と開発

(3)21世紀版「食材ハンター」


【未来】未来の料理のかたち

(1)「未来食」のヒントはここにある

(2)3Dフードプリンタの衝撃

(3)仮想と現実の狭間にある料理


第2章 「未来の身体」はどうなるか ―食と身体の進化論―

【過去】食と人類の進化物語

(1)食による祖先の自然選択

(2)肉に魅せられた人類

(3)大きな脳を可能にしたもの


【現在】食と健康と病気

(1)食べることと健康の因果関係

(2)肥満の進化生物学

(3)食欲の制御と暴走


【未来】食と身体の進化の未来図

(1)健康になるためのテクノロジー

(2)ヒトは未来食によってどう進化するのか

(3)脱身体化するヒト、脱人間化するヒト


第3章 「未来の心」はどうなるか ―食と心の進化論―

【過去】人は食べる時、何を思ってきたか

(1)食の思想、イデオロギー、アイデンティティ

(2)栄養思想、美食思想、ベジタリアニズム思想

(3)食のタブー


【現在】人は食に何を期待しているのか

(1)私はどうしてこの料理を選んだのか(人→食)

(2)自分を映す鏡としての食(食→人)

(3)食べることは、交わること(人→食→社会)


【未来】人は食に何を思い、何を求めていくのか

(1)食の価値観の未来

(2)食の芸術性の未来

(3)おいしさの未来


第4章 「未来の環境」はどうなるか ―食と環境の進化論―

【過去】食の生産、キッチン、食卓の歴史

(1)人と食べものの量的・質的変化の予測

(2)キッチンテクノロジーの歴史

(3)共食の歴史、意義


【現在】食の生産、キッチン、食卓の今

(1)農業のアップデート

(2)キッチンからみえる現在の風景

(3)食卓は、食事を共にする場なのか


【未来】食の生産、キッチン、食卓のこれから

(1)農業と農業への意識の未来

(2)キッチンのハイテク化と手で作ることの意味

(3)コミュニケーションの未来における食の役割


おわりに


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国民食の履歴書 =魚柄 仁之助 =2020.1 [食から見る]

91D7119GvLL.jpg国民食の履歴書?--カレー、マヨネーズ、ソース、餃子、肉じゃが

著者 魚柄仁之助[うおつかジンノスケ]??
出版年 2020.1
出版者 青弓社
A5判/ページ数 187p/高さ 21cm
ISBN 978-4-7872-2087-5
県立図書館収蔵 /383/U79/ 
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新潟市立図書館収蔵 中央・ホンポート館 二階 /383.8/ウオ/
内容紹介
文明開化期からの家庭雑誌・料理雑誌を渉猟して、レシピどおりに調理し、経験豊かな舌で味を吟味。その結果から通説の輸入史・生育史に疑問やダメ出しを投げかけて、意外な経歴を明らかにする食文化論。
子どもも大人も大好物のカレーのとろみがついたルーは、インド本場のサラッとした汁カレーがどうやって変わってできあがったのか。
イギリス・ウスター生まれのソース、フランス伝来のマヨネーズも、どんなルートをたどって現在の「和風調味料」に変身したのか。
中国大陸から渡ってきた餃子が「日本各地の餃子」に変身する過程を解明し、「おふくろの味」「手料理」神話の代表=肉じゃがの「戦前から食卓にのぼっていた」イメージを実証的にくつがえす。「肉じゃが」が初めて雑誌に登場したのは、敗戦後の1950年、しかもレシピではなく街レポでの紹介だったのだ!
「食の鑑識家」が明治の文明開化から現在までの家庭雑誌・料理雑誌を徹底的に渉猟してレシピどおりに実作して、食べて、経験豊かな舌で味を分析する。そして、通説とされている輸入史・生育歴に疑問やときにはダメ出しを加える。鑑識ぶりも、徹頭徹尾、実証主義。「カレー、餃子、肉じゃがの国民食トリオ」が生まれ育った歴史を知る格好の食文化論。

目次
第1章 日本のカレー(洋食調味料「御三家」と日本人;鮑のカレー ほか)
第2章 日本のマヨネーズ(和食のなかのマヨネーズ;敗戦後の規格外マヨネーズたち ほか)
第3章 日本のソース(ニッポンのソース道;醤油からソースを作る日本人 ほか)
第4章 日本の餃子(日本餃子の始まり;日本餃子「皮作り」の時代 ほか)
第5章 肉じゃがの歴史(「肉じゃが」という名前の誕生;肉じゃがと命名される前のじゃが芋のレシピ ほか)
著者等紹介
魚柄仁之助[うおつかジンノスケ] 1956年福岡県生まれ。食文化研究家。
著書に『刺し身とジンギスカン――捏造と熱望の日本食』『台所に敗戦はなかった――戦前・戦後をつなぐ日本食』『昭和珍道具図鑑――便利生活への欲望』(いずれも青弓社)、『食育のウソとホント――捏造される「和食の伝統」』『食のリテラシー』(ともにこぶし書房)、『食べかた上手だった日本人――よみがえる昭和モダン時代の知恵』『食ベ物の声を聴け!』(ともに岩波書店)、『冷蔵庫で食品を腐らす日本人――日本の食文化激変の50年史』(朝日新聞社)ほか多数。
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詳しい目次
まえがき
第1章日本のカレー
1 洋食調味料「御三家」と日本人
仁義なき日本のカレー・無手勝流
2 鮑のカレー
3 まずは漆椀のカレー、和食だけに……
カレー煮
カレー椀
4 油揚げライスカレー
5 身欠きニシンカレー
6 蓮根カレー
7 魚の骨のカレー
8 里芋と竹輪のカレー餡
9 カレー粉入り味噌汁
10 牛肉のカレー味噌焼き
11 生節のカレーライス
12 王者エスビーが放つ絶対的ニッポンカレー
13 ひもかわのカレーチャプスイ
14 カレーロークス・コロッケ
第2章日本のマヨネーズ
1 和食のなかのマヨネーズ
マヨネーズの規格ができるまで
2 敗戦後の規格外マヨネーズたち
大豆粉マヨネーズ
粉ミルクマヨネーズ
片栗粉マヨネーズ
小麦粉マヨネーズ
馬鈴薯マヨネーズ
油なしマヨネーズ
全卵使用のマヨネーズ
規格外マヨネーズのまとめ
3 マイナイソースと呼ばれていた頃の初期マヨネーズ
築地精養軒のマヨネーズ
村井弦斎夫人のマイナイソース
板垣伯爵夫人が主宰の料理講習会で教えたマイナイソース
東伏見宮妃殿下のマヨネーズ
満蒙開拓団女子訓練所で教えるマヨネーズ
「酢油ソース」と呼ばれたマヨネーズの作り方
『軍隊調理法』に書かれたマヨネーズの作り方
4 「わたし、失敗しないので」マヨネーズ
スピード・マヨネーズ
味噌マヨネーズ
バターマヨネーズ
二倍に増えるマヨネーズ
「わたし、失敗しないので」マヨネーズのまとめ
5 マヨネーズの広告集
キューピー印マヨネーズの広告
ダンス印マヨネーズソースの広告
タマゴマヨネーズとスポーツマン印マヨネーズの広告
メランジーの広告
粉末鶏卵の広告
「キューピーマヨネーズ」――節米とマヨネーズとの関係
第3章日本のソース
1 ニッポンのソース道
日本のソースとは新?油のことだった
和食はショーユで洋食はソースなのか?
ウスターソースの定義
2 ?油からソースを作る日本人
終戦直後の家庭でできるソース作り
調理の専門書でも「?油からソースを作る」とされていた
女子大学の先生も?油からソースを作ると教えていた
戦前にさかのぼってもソースのもとは?油だった
?油メーカーのソース製造
専門書に見るウスターソース製造法
何でも自家調達する軍隊のソース製造法
3 ソースを使った和食の実例とその証拠となるレシピ
洋食の日本化とウスターソースが「おソース」になった道のり
1鶏の洗いをソースで食べる
2馬鈴薯のソース漬け
3ソースカツ丼
4古沢庵のソース漬け
5ご飯にソースをかけただけの料理
6冷奴にウスターソース
7鯖の昆布巻き蒸しにソースをかける
8刺し身のグラビアページにソースの広告が……
9支那の餃子をソースで食べる
10あの八百善でもソースは新?油だった
11一九一五年(大正四年)、ソース煎餅は名物だった
4 日本「ソース」広告集
カップ焼きそば用粉末ソースの元祖か?
広告 ソースの素
ソース工場と?油蔵は造りが違う
フランス仕込みのブドウソース
家庭でできるソース製造法の本の広告
?油とソースが同列に並べられたヒゲタ?油の広告
まとめ――何にでも?油からソースどぼどぼへ
第4章日本の餃子
1 日本餃子の始まり
日本餃子の黎明期
1「かうづら」と訳されていた餃子
2ビターマンと名付けられた日本餃子
3家庭料理本に登場した餃子
4日本餃子の系図と都市伝説
5日本餃子と中国餃子との違い
2 日本餃子「皮作り」の時代
餃子の作り方(レシピ)は皮の作り方
「満州国」大使館員のご夫人指南の餃子
パンとお菓子の名店が作る餃子の皮はピンク色
3 「焼き餃子は戦後の日本で始められた」説を覆す資料画像
4 餃子の皮作りと包み方のイラスト比較
皮の作り方と包み方のイラスト
皮作りが餃子の命! がわかるイラスト
花嫁講座で教える餃子の作り方
戦後いち早く出版された料理本の餃子イラスト
包み方の図版比較
5 手作り皮の洋風餃子?
ラビオリは洋風餃子だった
焼き餃子専用鍋が売られていた
6 餃子のレシピは餡のレシピに
手作り皮と市販の皮のレシピ比較
家庭料理の定番になった餃子のレシピ
一つのレシピに手作り皮と市販の皮が載っていた
7 餃子の発展型
自由形の餃子二点
1桃とハムの揚げ餃子
2卵の餃子
鍋物の具としての餃子
餃子の皮で残り物処理料理を
餃子の皮がおやつに変身
ジャムのかわりにカレー味でインド風
餃子のソース焼き
8 ニッポンの餃子のまとめ
餃子はもともと中華料理
餃子作りは家族でおこなうレジャーになった
第5章肉じゃがの歴史
1 「肉じゃが」という名前の誕生
最古?の「肉じゃが」表記
料理本の料理名から時代が読める
料理本に「肉じゃが」表記を発見!
2 肉じゃがと命名される前のじゃが芋のレシピ
「馬鈴薯の煮やう」ビーフシチュー風肉じゃが
某軍艦の献立にあった海軍料理
「甘煮」(うまに)がのちの肉じゃがに
肉豆腐と肉じゃがが合体した料理
豚肉を使った肉じゃがの始まり
豚バラ肉じゃがの源流
『軍隊調理法』に「肉じゃが」はなかった
3 肉じゃがという料理名の裾野に広がる「いもとにく」料理
同一ページに肉じゃが「風」料理が三つ並んだ料理本
煮崩れない揚げ芋で作る肉じゃが
ひき肉を使った肉じゃが風煮込み
4 肉じゃが登場後の発展型
肉じゃがは煮崩れてなきゃ派のためのレシピもあった
二十世紀末、肉じゃがの立ち位置は?
5 「肉じゃがはおふくろの味」伝説を作った料理本の見出し
おふくろの味が恋しいとき
「だんなさまの好きないなか料理」にされた肉じゃが
食べ飽きないおふくろの味
肉じゃがは飲み屋料理という認識
おふくろの味好み
若向きの味にした和食……の肉じゃが
6 都市労働力を支えた郷愁と肉じゃが
「いも&にくの煮物」に見る郷土色
懐かしきおふくろの味のルーツはここにあった
いもがなぜ「懐かしい・おふくろの味」なのか
7 肉じゃが「おふくろの味」と「肉じゃが」論
「おふくろの味」が登場
肉じゃがには伝統も確立された定義もなかった
懐かしい味の「懐かしい」のは肉ではなくイモだった
おふくろの味を作ったおふくろの食生活はこうだった

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デーリィマンのご馳走= ユーラシアにまだ見ぬ乳製品を求めてー2017 [食から見る]

デーリィマンのご馳走= ユーラシアにまだ見ぬ乳製品を求めて
デーリィマンのご馳走=ユーラシアにまだ見ぬ乳製品を求めてoGaQL.jpg平田 昌弘【著】

出版社 デーリィマン社・ 札幌  (株)北海道協同組合通信社 ttp://www.dairyman.co.jp/
出版年月日等 2017.1
大きさ; 27cm、容量等 116p
ISBN 9784864530460
価格 1800円

内容紹介

ユーラシア各地の牧畜と乳文化を追い求め、フィールド調査を続ける著者、平田昌弘・帯広畜産大学准教授が、牧畜民ら固有の乳製品や加工技術を、自ら撮影した貴重な写真を交え、紹介・解説します。西はシリアから南ヨーロッパ、東はモンゴル、チベットからインド、東南アジアまで広がるユーラシア大陸。独自の製造法によるヨーグルトやチーズから、日本ではあまり目にしないサワークリームやバターオイル、それらを用いて作る料理はもちろん、乳菓子や馬乳酒といったユニークな乳製品が続々と登場します。また、古代アジアの文献に記されている、醍醐(だいご)、酪(らく)、酥・蘓(そ)といった、謎の乳製品の実体にも迫ります。乳製品加工関係者や酪農家の皆さんにお薦めの1冊です。

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ユーラシア乳文化論ー2013 [食から見る]

ユーラシア乳文化論L.jpgユーラシア乳文化論
平田 昌弘【著】
岩波書店(2013/03発売)

サイズ A5判/ページ数 450,/高さ 22cm
商品コード 9784000254175
価格 ¥10,780(本体¥9,800)

NDC分類 648.1

内容紹介

ユーラシア大陸各地のフィールドワークと文献調査によって、牧畜という生業の根底にある乳文化―家畜管理、搾乳、乳利用、乳加工、乳交易等々―について詳細に比較分析。ユーラシア大陸全域への乳文化の伝播・発達の歴史を論じ、その成果を以て牧畜論への言及を行う。20年に亘るユーラシア大陸全域に及ぶ調査に基づく、例を見ない壮大な研究成果。


目次
第1章 乳文化論と牧畜論
第2章 西アジア地域の乳文化
第3章 南アジア地域の乳文化
第4章 北アジア地域の乳文化
第5章 中央アジア地域の乳文化
第6章 チベット高原地域の乳文化
第7章 ヨーロッパ地域とコーカサス地域の乳文化
第8章 「ユーラシア大陸における乳文化の一元二極化」仮説の提起
第9章 乳加工体系・系列群分析の再考
終章 乳文化論から牧畜論へ


著者等紹介
平田昌弘[ヒラタ マサヒロ]
1967年福井生まれ。1991年東北大学農学部畜産学科卒、1999年京都大学博士号(農学)取得。2000年京都大学東南アジア研究センター研究員(日本学術振興会特別研究員)を経て、2004年から帯広畜産大学准教授。1993年~96年にはシリアにある国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)に準研究員(青年海外協力隊員)として派遣され、植生調査と牧畜研究に従事。以後一貫して、牧畜と乳文化とを追い求め、ユーラシア各地をフィールド調査(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ユーラシア乳文化論L.jpg

カスタマーレビュー = Shiho K=
同時代における、乳加工の豊かさ・多様さの貴重な記録 2013年5月13日

 わたしたちにとって身近な食品である牛乳、そしてチーズ、ヨーグルトなどの乳製品。本来は牛やヤギなど動物がその子のために出す乳を「横取り」し、さまざまに加工することによって、わたしたちの食卓に届けられる。

 筆者は、青年海外協力隊員として赴任したシリアの焼けつく砂漠で、遊牧民ベドウィンの酸乳で乾きを癒した体験を原点に、20年かけてアジアからヨーロッパにわたる広大なユーラシア大陸の各地でフィールドワークを行い、乳加工のプロセスを克明に記録、整理した。また、古文書をひもとき、そこに書かれた乳製品の再現を試み、紀元前8000年前に西アジアで始まったとされる家畜の乳しぼりと乳加工が、どのように伝わり、変わっていったのかという壮大な謎にも切り込んでいく。

 筆者は、そしてわたしたちは、かろうじて、間に合ったのかもしれない。世界各地で日々繰り返される伝統的な乳加工の多様さ、豊かさを本書は教えてくれる。フランス中南部ではカビによる熟成チーズ、コーカサスではヨーグルトが注意深く作られる一方、モンゴルでは発酵乳から蒸留酒が醸される。食いつなぐための、また好みの味を追求するための、人類の創意工夫。その、同時代における貴重な記録である。人が世代を越えてそこに傾けた情熱の深さを知れば、牛やヤギも横取りを許してくれるのではないか。

 文化が出会い、伝わるとき、何が取り入れられ、何がそぎ落とされるか、というプロセスに作用する要因は「文化伝播・変遷フィルター」と名付けられ、本書の着眼点となっている。グローバル経済という、巨大かつ強力な画一化の大波をどう乗り切るのか、波間に消えて行くのか、人々が手から手へと受け継いだ乳文化の多くが問われている。

 わたしたちが眠りにつくとき、世界のどこかでは薄暗い朝焼けの空の下で、だれかが乳をしぼり、白い乳と向き合っている。そんな世界の広がりを感じさせてくれる本だ。登場する幾多の乳製品の味は言及されていないが、伝統のわざが失われる前に、各地の乳文化の担い手たちと出会い、語り、味わってみたくなった。

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人とミルクの1万年ー2014 [食から見る]

人とミルクの1万年L.jpg人とミルクの1万

 岩波ジュニア新書
シリーズ番号1 790
著者名1 平田 昌弘 /著 
出版者 岩波書店
出版年 2014.11
ページ数 16,204p
大きさ 18cm
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館 自動書庫 NDC分類(9版) 648.1
ISBN 978-4-00-500790-5


内容紹介
 搾乳の発明と乳利用の開始は人に新しい生業をもたらした。自然環境に強く影響を受けつつ、ユーラシア大陸で多様に発達した乳文化について解説しながら、乳利用の約1万年にわたる発達史の全体像をまとめる。

氷河期が終わり、約1万年前、家畜の飼育が始まった。やがて“搾乳”の発明により、家畜のミルクに大きく依存する、牧畜という生活様式が西アジアで始まった。ミルクを保存食にするための工夫から、ヨーグルトやチーズ、バターなど乳製品も生まれた。ユーラシア大陸の各地に牧畜民をたずね歩いてきた人類学者が、読者を牧畜と乳文化の雄大な歴史へと案内する。

(カラー口絵2ページ)


目次
1章 動物のミルクは人類に何をもたらしてきたか
2章 人類はいつからミルクを利用してきたか
3章 ミルクの利用は西アジアの乾燥地で始まった
4章 都市文化がひらいた豊かな乳文化―インドを中心に
5章 ミルクで酒をつくる―寒く、乾燥した地域での乳加工
6章 ヨーロッパで開花した熟成チーズ
7章 ミルクを利用してこなかった人びと
8章 乳文化の一万年をたどり直す


著者等紹介
平田昌弘[ヒラタ マサヒロ]
1967年福井生まれ。1991年東北大学農学部畜産学科卒、1999年京都大学博士号(農学)取得。2000年京都大学東南アジア研究センター研究員(日本学術振興会特別研究員)を経て、2004年から帯広畜産大学准教授。1993年~96年にはシリアにある国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)に準研究員(青年海外協力隊員)として派遣され、植生調査と牧畜研究に従事。以後一貫して、牧畜と乳文化とを追い求め、ユーラシア各地をフィールド調査(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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家畜化という進化 原書名:Domesticated--2019 [食から見る]

家畜化という進化RL.jpg家畜化という進化 原書名:Domesticated

副書名 人間はいかに動物を変えたか
著者 リチャード・C.フランシス /[Richard C.Francis] 
訳者 西尾 香苗 [ニシオ カナエ] 
出版者 白揚社
出版年 2019.9
ページ数 558p
大きさ 20cm
ISBN-13: 978-4826902120
発売日: 2019/9/5
梱包サイズ: 19.6 x 14 x 3.4 cm
新潟市図書館収蔵 西川館 NDC分類(9版) 489
ISBN 978-4-8269-0212-0


内容紹介
 オオカミをイヌに、イノシシをブタに変えた「家畜化」。人間の作った世界で動物はどのように変わったのか。進化発生生物学やゲノム解析など最新科学を駆使し、文明誕生の鍵を握る家畜化という進化を読み解く。

ヒトの手で進化が加速する!

イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、トナカイ、ウマ、モルモット、マウスやラット――家畜化された動物には奇妙な共通点がある。同じ特徴を共有する人間もまた、自分自身を家畜化したのか?
家畜化のしくみを解き明かすことで、謎に満ちた人類と動物の進化の過程が見えてくる。進化発生生物学やゲノム解析など最新の科学知見を駆使し、家畜化という壮大な「進化実験」の全貌を読み解く力作。


■目次■

はじめに
第1章 キツネ
第2章 イヌ
第3章 ネコ
第4章 その他の捕食者
第5章 進化について考えてみよう
第6章 ブタ
第7章 ウシ
第8章 ヒツジとヤギ
第9章 トナカイ
第10 章 ラクダ
第11章 ウマ
第12章 齧歯類
第13章 人間──I 進化
第14章 人間──II 社会性
第15章 人新世
エピローグ
付録


著者について
リチャード・C・フランシス [Richard C.Francis]
ニューヨーク州立ストーニーブルック校で神経生物学と行動学の博士号を取得したのち、カリ

フォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学で進化神経生物学と性的発達の研究を行っ

た。現在はサイエンス・ライターとして活動している。著書に『エピジェネティクス 操られる

遺伝子』(ダイヤモンド社)がある。カリフォルニア在住。


西尾香苗[ニシオ カナエ]
京都大学理学部(生物系)卒業、同大学院理学研究科修士課程修了、同博士課程中退。生物系

翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか– 2014、カリスマフード-2017 [食から見る]

カリスマフード=肉・乳・米と日本人
体=カリスマフード―肉・乳・米と日本人8.jpg著者 畑中 三応子 /[ハタナカ ミオコ] 
出版者 春秋社
B6判/ページ数 294p
出版年 2017.1
ISBN 978-4-393-75124-4
価格 ¥2,052(本体¥1,900)

新潟市図書館収蔵 亀田館 NDC分類(9版) 383.81

一般件名 食生活-歴史
内容紹介
明治維新から150年。長いようで短かったこの期間で、日本ほど食生活を激変させた国は他にあっただろうか。肉・牛乳・米は、ときに奇跡の妙薬として特別なパワーを付与され、国の政策とも深くかかわってきた。私たちの健康信仰と変身願望に火をつけ、食卓を劇的に変えた張本人でもある。これら「カリスマフード」の受容のドラマから、変わりゆく時代、変わらない人間の精神史をたどる。
出版社内容情報
食べ物を超えたカリスマ的パワーを付与され、国の食料政策と深くか関わってきた肉・乳・米から、私たちの来し方をたどる。明治維新から150年。長いようで短いこの期間、日本ほど食生活を激変させた国は他にあっただろうか。欧米への憧れ、戦争と政治、メディアの変遷が食生活を目まぐるしく変化させてきた。なかでも、肉・牛乳・米は別格である。食べ物を超えたカリスマ的パワーを付与され、つねに国の食料政策と深くかかわってきた「カリスマフード」から、私たちの来し方をたどる。


目次
第1章 肉

(フランスの宮廷料理だったジビエがにわかにブーム;ジビエを食べて環境保全に貢献;日本人はずっと肉を食べていた ほか)
第2章 乳
(「牛乳は体に悪い」という言説;ヒートアップした牛乳論争;乳糖不耐症とアメリカの「陰謀論」 ほか)
第3章 米
(美容体操からダイエットへ;タレント・ダイエットと一品ダイエットの蔓延;「医学的に正しいダイエット」の台頭 ほか)


感想

第3章の米がとても良い。

115頁からの乳糖不耐性の話も「分解されずに大腸に運ばれた乳糖は、大腸内の腸内細菌に利用される。」「大腸内の乳酸菌などの有用細菌が利用すれば良いが、意外の菌が利用して酸やガスを発生する場合がある。」「大量で、下痢や腹痛、膨満感など起こる場合がある。」これが乳糖不耐性。

「哺乳類は授乳期には小腸内に乳頭分解酵素・ラクターゼの活性が高く分解され栄養素として吸収される。」「授乳期を終え離乳すると、哺乳類はラクターゼ・酵素の活性が低下する。」だから、乳糖不耐性の成体は哺乳類としては普通。

現生人類・ホモサピエンスは「北ヨーロッパ、アフリカ、中東の牧畜地域の人々は、9割以上が成人=離乳してもラクターゼの活性が高く」それ以外は、モンゴロイドは「かなりの割合で乳糖不耐」「遊牧生活で乳製品に依存した食生活を営んできたモンゴル人すら、乳糖不耐の出現率が高い」モンゴル人らモンゴロイドの遊牧民は、小麦などを求めることが合理的、だから攻めた?


著者等紹介
畑中 三応子[ハタナカ ミオコ]
1958年生まれ。編集者・ライター。編集プロダクション「オフィスSNOW」代表。『シェフ・シリーズ』と『暮らしの設計』(ともに中央公論新社)編集長を経て、プロ向けの専門技術書から超初心者向けのレシピブックまで幅広く料理本を手がけるかたわら、近現代の流行食を研究・執筆。著書に『ファッションフード、あります。――はやりの食べ物クロニクル 1970-2010』(紀伊國屋書店)、『体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか』(ベスト新書)、『ミュージアム・レストランガイド』(朝日新聞出版)、「七福神巡り――東京ご利益散歩」(平凡社)、『おやじレシピ』(オフィスSNOW名義、平凡社)、共著に『東京バスの旅』(文春新書)がある。

※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。


体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか
体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか8.jpg著者 畑中 三応子 /[ハタナカ ミオコ]  
出版者 ベストセラーズ
ベスト新書 番号441
新書判/ページ数 255p
出版年 2014.6
ISBN 978-4-584-12441-3
価格 ¥859(本体¥796)

新潟市図書館収蔵 船江館 NDC分類(9版) 498.583


内容紹介 日本では体にいい食べ物のブームが頻繁に起こっている。健康欲を軸に、体にいい食べ物と悪い食べ物はどのように生まれ、変わり、メディアはどのように扱ってきたのか、その興亡を跡づける。

目次
プロローグ―いつでも「体にいい」が食のキーワードだった
第1章 なぜ「体にいい食べ物」はコロコロ変わるのか?
第2章 「食べるな危険」はいつはじまったのか?
第3章 カリスマ・ダイエッター参上!
第4章 元気なアナタも半病人、健康食と健康法の一〇〇年
第5章 いつから食べ物は「クスリ」になったのか?
第6章 混乱する「アンチエイジング」情報
エピローグ―健康情報にふりまわされないために


書評   早川タダノリ @hayakawa2600
畑中三応子さんの『体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか』(KKベストセラーズ、2014年)読了。タイトル通り、戦前から現在までの「体にいい食べ物」とされたものの歴史。マクロビの石塚左玄を筆頭とする食養会人脈から、和食ナショナリズムまでをカバー。「健康法」本の作られ方とかおもしろい。


とくに「欧米型食生活」を排除した「日本の伝統的な食生活」なるものの異様なもちあげっぷりを活写するあたりは、たいへんに興味深かった。これは戦前もアレだが、戦後も・そして現在も進行している。メインストリームのものを中心にまとめられているが、これにスピ系もはいると膨大なものになろう。


いずれヒマになったら『壮快』『健康』誌に躍る「5円玉健康法」などの不思議な健康法の年表をつくろうと夢想していたが、やはり畑中さんみたいなプロにまかせようと、スッパリあきらめがついた。なんといっても本書では「おもいッきりテレビ」の栄枯盛衰まで射程に入っている。とてもかなわない。


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雑穀=畑作農耕論の地平-2003、雑穀=粉食文化論の可能性-2006 [食から見る]

雑穀 1=畑作農耕論の地平
編者 木村 茂光 /[キムラ シゲミツ] 
出版者 青木書店=<もの>から見る日本史
A5判: 21.2 x 14.4 x 2 cm/ページ数 218p

出版・発売日: 2003/06
ISBN-13: 978-4250203169
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館ほか NDC分類(9版) 616.6


内容紹介
水田の周囲に広がる豊かな実りの風景とそれに息づく生活文化。雑穀・畑作に関する研究とともに意義を確認、「雑穀」という語句の使われ方に着目しながら思想性を追及し、原始から現代までの農耕文化の多様性を概観する。

雑穀=畑作農耕論の地平6.jpg
内容一覧

雑穀の思想 木村 茂光/ 7-28頁
縄文・弥生時代の雑穀栽培 黒尾 和久/ 29-56頁
古代における雑穀栽培とその加工 伊佐治 康成/ 57-80頁
古代・中世の「野畠」と雑穀栽培 伊藤 寿和/ 99-122頁
中国・元代までの雑穀栽培 大沢 正昭/ 99-122頁
江戸農書にみる雑穀 徳永 光俊/ 123-142頁
近世九州の山村と焼畑 武井 弘一/ 143-160頁
近代における雑穀の民俗誌 増田 昭子/ 161-190頁
雑穀の現在 増田 昭子/ 191-216頁




雑穀=粉食文化論の可能性_.jpg雑穀 2=粉食文化論の可能性

編者 木村 茂光 /[キムラ シゲミツ] 
出版者 青木書店=<もの>から見る日本史

A5判: 21.2 x 14.4 x 2 cm/ページ数 230p

ISBN-13: 978-4250206146
発売日: 2006/5/1
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館2F20番書架 NDC分類(9版) 616.6


内容紹介
そうめんの起源から即席麵の誕生まで。日本を中心としたアジアのさまざまな粉食の歴史・地域的特色を探り、米=稲作文化論を相対化し、食物史全体のなかに位置づけ直す。


内容一覧
タイトル 著者名 頁
粉食文化研究の前進のために 木村 茂光/  9-18頁
日本古代の索餅について 木村 茂光/  19-35頁
日本古代の粥と粥食 木村 茂光/  37-51頁
中国古代の粉食 村上 陽子/  53-69頁
日本中世の粉食 盛本 昌広/  71-94頁
近世における粉食 原田 信男/  95-118頁
中国におけるソバ食について 中林 広一/  119-136頁
米穀消費の拡大と雑穀 大豆生田 稔/  137-161頁
韓国の粉食文化 朝倉 敏夫/  163-188頁
即席麵の歴史と現状 村田 英明/  189-227頁


編者等紹介
木村茂光[キムラ シゲミツ]
1946年生まれ。東京学芸大学教育学部教授。日本中世史

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていた)

タグ:雑穀・五穀
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稲の大東亜共栄圏―帝国日本の「緑の革命」--2012;09 [食から見る]

稲の大東亜共栄圏―帝国日本の「緑の革命」
藤原 辰史【著】
吉川弘文館

  歴史文化ライブラリー 352

サイズ B6判/ページ数 200p/

ISBN 978-4-642-05752-3

価格 ¥1,836(本体¥1,700)
(2012/09発売)


県立図書館収蔵    資料コード 0010012348944   NDC分類(9版) 616.21


目次
稲の大東亜共栄圏04.jpg稲も亦大和民族なり―プロローグ
「育種報国」の光と影―「富国」と天皇
「陸羽一三二号」の伝播―賢治の米の植民地
育種技師の自民族中心主義―永井威三郎と朝鮮
蓬莱米による「緑の革命」―磯永吉と台湾
品種改良による統治―「緑の革命」の先駆的形態
日本のエコロジカル・インペリアリズム―エピローグ


著者等紹介
藤原辰史[フジハラタツシ]
1976年、北海道に生まれ、島根県で育つ。1999年、京都大学総合人間学部卒業。2002年、京都大学大学院人間・環境学研究科中途退学。京都大学人文科学研究所助手を経て、京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史。著書に『ナチスのキッチン』(水声社、河合隼雄学芸賞、2012、2016=決定版、共和国)、『ナチス・ドイツの有機農業』(柏書房、日本ドイツ学会奨励賞、2005、2012=新装版)など


内容説明
稲の品種改良を行ない、植民地での増産を推進した「帝国」日本。台湾・朝鮮などでの農学者の軌跡から、コメの新品種による植民地支配の実態を解明。
現代の多国籍バイオ企業にも根づく生態学的帝国主義の歴史を、いま繙く。


【編集者の眼】
 稲の大東亜共栄圏―1).jpg ブランド米がもてはやされる現代の日本で、その品種改良の歴史を顧みる人は少なく、ましてや、かつての帝国日本が、コメによる植民地支配を行なっていたことなど想像すらできないでしょう。 本書は、話題作『ナチスのキッチン』の著者が、日本におけるコメの品種改良の歴史を繙き、その光と影の実態を明らかにした一冊です。
 冷害に強いコメをめざし稲の品種改良に取り組む農学者や育種技師は、やがて「育種報国」のスローガンのもと、台湾や朝鮮など大東亜共栄圏でコメの増産を推進します。こうした〈緑の革命〉も、やがて「稲も亦大和民族なり」という言葉や、「米食民族」対「パン食民族」という図式で、「大東亜戦争」や植民地支配を正当化していくことになります。
 著者が「生態学的帝国主義」と呼ぶ科学的征服の野望は過去のものではありません。それは多国籍企業による植物遺伝子の支配・独占などに姿を変えて、現代も世界を覆いつつあるのです。 (糸)

エピローグ「日本のエコロジカル・インペリアリズム」で、「二一世紀の帝国主義が、国家の枠を超えて、遺伝子操作技術をはじめとするバイオ・テクノロジーによって人間と人間以外の生物を同時に支配するという、新しい段階に突入することは間近に迫っているように思われる。医薬品産業と種子産業はしばしば同一の企業に担われている。古い時代の偶然が新しい時代に必然になることで、歴史は進展してきたからである」

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赤米のたどった道―もうひとつの日本のコメ-2016;関連 赤米の博物誌 [食から見る]

赤米のたどった道―もうひとつの日本のコメ
(著) 福嶋 紀子 (フクシマ ノリコ)

出版社名:吉川弘文館

判型:B6:8,228p

ISBN-13:978-4642082938

発行年月日:2016/05/01

価格: ¥3,024(税込)

新潟市図書館収蔵    中央・ホンポート館央 2階産業 20番書架   NDC分類(9版) 616.2


目次
赤米のたどった道-2016_.jpg序章 稲作と日本
1章 稲作と日本・アジア
2章 コメを取り巻く日本の歴史
3章 中世の赤米・大唐米
4章 稲作をめぐる勧農と収納
5章 荘園に広がる水田風景
6章 赤米の広がり
7章 農書の成立と赤米の盛衰
終章 食糧としてのコメ―食糧増産の命題


著者紹介

福嶋 紀子 (フクシマ ノリコ)
1958年,群馬県生まれ。1981年,法政大学文学部史学科卒業。1985年,東京都立大学大学院修士課程修了。2012年,中央大学博士号取得(論文博士)。現在,信州大学・松本大学非常勤講師 ※2016年4月現在【主要編著書】『中世後期の在地社会と荘園制』(同成社,2011)。「矢野荘散用状に見える大唐米について」『東寺文書にみる中世社会』(東京堂出版,1999)。「中世における大唐米の役割」『論集東国信濃の古代中世史』(岩田書院,2008)


内容紹介

日本に伝来した「大唐米」などの赤米は、水田不適な土地でも耕作でき、庶民の生活米として重宝されたが、食味が劣るため生産量は白米に圧倒される。現在のブランド米の特殊性にも触れ、赤米の盛衰を歴史的に位置づける。

日本に伝来した「大唐米」などの赤米は、水田不適な土地でも耕作でき、庶民の生活米として重宝されたが、食味が劣るため生産量は白米に圧倒される。現在のブランド米の特殊性にも触れ、赤米の盛衰を歴史的に位置づける。
古来「大唐米」などの赤米は庶民の生活米として重宝されたが、食味が劣るため白米に圧倒される。赤米の盛衰を歴史的に位置づける。

米は白い―。これは今では常識だが、古来日本では大陸伝来の「大唐米」や信州安曇野の「溢籾」などの赤米が、生活米として重宝された。水田不適な土地でも耕作できるなど、新田開発を側面から支えた庶民の赤米は、食味が劣るため、白米の普及とともに生産が減少していく。今日のブランド米の特殊性にも触れ、赤米の盛衰を歴史的に位置づける。

関連

赤米の博物誌

猪谷 富雄  (著), 小川 正巳  (著)

出版社: 大学教育出版

赤米の博物誌8.jpgA5版: 21.4 x 15.2 x 1.6 cm;183ページ
ISBN-13: 978-4887307919

発行年月日: 2007/12/20

価格: ¥2,376(本体¥2,200+税)

内容紹介
ロマンと謎に包まれた赤米の実体に迫る! 赤米に関する関連史料・文献を幅広く調べ、わが国における赤米の歴史と現況をあまねく述べる。
近年,赤米・紫黒米(黒米)に関心が集まってきている。本書では,近年の文献類とともに中世以降のわが国の赤米に関する史料を渉猟し,世間にあまり知られていない,興味深い話を数多く取り上げ,赤米をできるだけ科学的に多方面から探る。


●主要目次
第1章/赤米とは
第2章/わが国における赤米栽培の歴史
第3章/江戸時代における大唐米の利用法
第4章/江戸時代の本草学にみる赤米
第5章/小噺・昔話・民謡・小説などに見られる赤米
第6章/江戸時代における世界のイネの分類
第7章/近世以降の各地の赤米
第8章/残存した赤米他


小川 正巳
名古屋大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士。県立広島大学猪谷研究室において在来稲の研究等を行う。

猪谷富雄
京都大学大学院農学研究科修士課程修了。農学博士。県立広島大学生命環境学部教授。

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