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ユーラシア乳文化論ー2013 [食から見る]

ユーラシア乳文化論L.jpgユーラシア乳文化論
平田 昌弘【著】
岩波書店(2013/03発売)

サイズ A5判/ページ数 450,/高さ 22cm
商品コード 9784000254175
価格 ¥10,780(本体¥9,800)

NDC分類 648.1

内容紹介

ユーラシア大陸各地のフィールドワークと文献調査によって、牧畜という生業の根底にある乳文化―家畜管理、搾乳、乳利用、乳加工、乳交易等々―について詳細に比較分析。ユーラシア大陸全域への乳文化の伝播・発達の歴史を論じ、その成果を以て牧畜論への言及を行う。20年に亘るユーラシア大陸全域に及ぶ調査に基づく、例を見ない壮大な研究成果。


目次
第1章 乳文化論と牧畜論
第2章 西アジア地域の乳文化
第3章 南アジア地域の乳文化
第4章 北アジア地域の乳文化
第5章 中央アジア地域の乳文化
第6章 チベット高原地域の乳文化
第7章 ヨーロッパ地域とコーカサス地域の乳文化
第8章 「ユーラシア大陸における乳文化の一元二極化」仮説の提起
第9章 乳加工体系・系列群分析の再考
終章 乳文化論から牧畜論へ


著者等紹介
平田昌弘[ヒラタ マサヒロ]
1967年福井生まれ。1991年東北大学農学部畜産学科卒、1999年京都大学博士号(農学)取得。2000年京都大学東南アジア研究センター研究員(日本学術振興会特別研究員)を経て、2004年から帯広畜産大学准教授。1993年~96年にはシリアにある国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)に準研究員(青年海外協力隊員)として派遣され、植生調査と牧畜研究に従事。以後一貫して、牧畜と乳文化とを追い求め、ユーラシア各地をフィールド調査(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ユーラシア乳文化論L.jpg

カスタマーレビュー = Shiho K=
同時代における、乳加工の豊かさ・多様さの貴重な記録 2013年5月13日

 わたしたちにとって身近な食品である牛乳、そしてチーズ、ヨーグルトなどの乳製品。本来は牛やヤギなど動物がその子のために出す乳を「横取り」し、さまざまに加工することによって、わたしたちの食卓に届けられる。

 筆者は、青年海外協力隊員として赴任したシリアの焼けつく砂漠で、遊牧民ベドウィンの酸乳で乾きを癒した体験を原点に、20年かけてアジアからヨーロッパにわたる広大なユーラシア大陸の各地でフィールドワークを行い、乳加工のプロセスを克明に記録、整理した。また、古文書をひもとき、そこに書かれた乳製品の再現を試み、紀元前8000年前に西アジアで始まったとされる家畜の乳しぼりと乳加工が、どのように伝わり、変わっていったのかという壮大な謎にも切り込んでいく。

 筆者は、そしてわたしたちは、かろうじて、間に合ったのかもしれない。世界各地で日々繰り返される伝統的な乳加工の多様さ、豊かさを本書は教えてくれる。フランス中南部ではカビによる熟成チーズ、コーカサスではヨーグルトが注意深く作られる一方、モンゴルでは発酵乳から蒸留酒が醸される。食いつなぐための、また好みの味を追求するための、人類の創意工夫。その、同時代における貴重な記録である。人が世代を越えてそこに傾けた情熱の深さを知れば、牛やヤギも横取りを許してくれるのではないか。

 文化が出会い、伝わるとき、何が取り入れられ、何がそぎ落とされるか、というプロセスに作用する要因は「文化伝播・変遷フィルター」と名付けられ、本書の着眼点となっている。グローバル経済という、巨大かつ強力な画一化の大波をどう乗り切るのか、波間に消えて行くのか、人々が手から手へと受け継いだ乳文化の多くが問われている。

 わたしたちが眠りにつくとき、世界のどこかでは薄暗い朝焼けの空の下で、だれかが乳をしぼり、白い乳と向き合っている。そんな世界の広がりを感じさせてくれる本だ。登場する幾多の乳製品の味は言及されていないが、伝統のわざが失われる前に、各地の乳文化の担い手たちと出会い、語り、味わってみたくなった。

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