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『関東大震災と民衆犯罪ーー立件された114件の記録から』ー目次 [明治以後・国内]

 関東大震災と民衆犯罪ーー立件された114件の記録から
著 佐藤冬樹(さとう・ふゆき)
 筑摩書房  (筑摩選書 262)
判型:四六判 ページ数:320 
ISBN:978-4-480-01780-2
今までほとんどなかった関東大震災時の民衆犯罪の実態を、そのほとんどが有罪となっている、主題とした本。1923年の事件記録・資料を通して、検察が立件・起訴した600人以上の被告のプロフィールを分析。

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【目次】
 本書の第1部では、朝鮮人虐殺事件の経緯 とその背景を概観した上で、自警団に関する基本的な知見を検証する。
はじめに
第1部 関東大震災下の国家と民衆
1 軍・官・民一体のエスノサイド
 エスノサイド (ethnocide).[独自の文化と独自の言語を楽しみ、発展させ、伝達する権利を否定されていること]
第1章では、朝鮮人虐殺事件に対する権力機構 (政府・軍隊・警察・地方政府・新聞社)の関与と、トップエリートが「事実の真相」をどのように改竄したかを見ていく。
〔1〕自警団の結成と警察の役割
    (1) 警察がデマを広めた
  (2) 人びとがデマに動かされた
〔2〕治安エリートの「暴動」妄想と戒厳令下の虐殺
    (1) エリートパニックと戒厳令
  (2) 戒厳軍による大量殺戮
    (3) 軍隊が虐殺の「見本」をみせた
〔3〕県庁と県警の失態
〔4〕掌を返した治安当局
    (1) パートナーから役人犯へ
  (2)「事実の真相」を作りかえる
    
2 自警団、その組織と活動実践
  第2章では、自警団の結成状況、結成範囲、消防組や在郷軍人会との関係、「警備」活動の実際などを、定量的・定性的に明らかにする。     「彼らは、相手が日本人とわかった後もしばしば暴行を加え、『同胞殺し』を避けようとしなかった。すべてを『誤認』襲撃とみなすと民衆犯罪の本質が見えなくなる」(p.158 )
〔1〕自警団の広がりと組織構成
    (1) 自警団の結成状況
  (2) 自警団の規模と結成範囲
    (3) 中核を担った消防組
〔2〕自警団の活動内容
    (1) 自警団の武装状況
  (2) 「警備」活動の実態
3 エスノサイドの背景 〔1〕全国で結成された「民衆警察」
  第3章では、警察による「民衆の警察化」政策と近代日本が初めて直面した外国人労働者「問題」の二つに着目して、エスノサイドの背景を探っていく。朝鮮人、中国人虐殺事件が起こる条件は、すでに震災以前から準備されていた。また、第2章、第3章を通して、消防組が虐殺事件の主犯となった事実とその背景を浮き彫りにする。 
  (1) 警察活動のキャンペーン
    (2) 警察の下部組織を新設する
    (3) 警察と消防と自警団
〔2〕外国人労働者「問題」の発生
     (1) 震災前までの在留朝鮮人の動向
     (2) 震災前後までの移入規制政策
     (3) 朝鮮人労働者の排斥、抗争事件の頻発


第2部 刑事事件化した民衆犯罪の動向
  第2部は全体の本編に相当する。ここでは検察が起訴した朝鮮人襲撃事件と日本人襲撃事件を、ひとつひとつ見ていった。
     (1) 典拠とした資料とその特徴
     (2) 刑事事件化した民衆犯罪の傾向と問題点
     (3) 刑事事件化した民衆犯罪の発生状況
1 朝鮮人襲撃事件にみる自警団の情動
第1章では、朝鮮人襲撃事件を態様別に分類、整理した上で、その殺伐とした特徴と自警団の情動を浮き彫りにする。
〔1〕朝鮮人襲撃事件の発生状況
〔2〕朝鮮人被害者のプロフィール
〔3〕朝鮮人襲撃事件の態様
     (1) 検問中•警戒中に遭遇して襲撃
     (2) 逃亡した人を捕縛して惨殺
     (3) 住居や勤務先、宿泊先を襲撃
     (4) 警察署や軍隊への移送途上を襲撃
     (5) 派出所や警察署を襲撃
     (6) 負傷した人、捕縛された人を殺害
     (7) 政府が捏造したタイプ
〔4〕「報復」行為としてのエスノサイド
     (1)自警団の犯罪、四つの特徴
     (2)「原始的な復讐心」の発露
2 日本人襲撃事件の実態と被害者像
  第2章では、日本人襲撃事件を同じく態様別に分類した上で、日本人の被害は必ずしも「朝鮮人と間違えた」結果ではなかったこと、被害者の多くは「発音不明瞭なる」地方出身者やろう者ではなく、若い勤め人と学生だったことを明示する。
〔1〕日本人襲撃事件の発生状況
〔2〕日本人襲撃事件の経緯と態様
     (1)「朝鮮人に似た人」を襲う
     (2) 訊問・取調を経て襲う
     (3) 日本人殺しの必然性
〔3〕日本人被害者に関する伝承と史実
      (1) 日本人の被害を併記するという問題
   (2) 地方紙による「誤認」被害報道
〔4〕日本人被害者のプロフィール
3 自警団員裁判の実態と加害者像の再検証
  第3章では、自警団員被告の即時放免を主張した「関東自警同盟」の文書をもとに自警団員裁判の実態をふり返った上で、上記の刑事事件被告四五〇〜六二五人 (判明分)のプロフィールを分析する。これは加害者像に関する初めての実証的なアプロ—チとなる。
〔1〕先行研究の加害者像に対する疑問
〔2〕自警団員裁判という「猿芝居」
〔3〕加害者のプロフィール
   (1) 消防組員、在郷軍人、青年団員の割合
     (2)「ふつうの地元民」の犯罪
   (3)「在来産業」従業者主犯説の意義


第3部 沖縄出身者と自警団
  第3部では、出版社社員、大学予科生、製紙労働者、紡績労働者といったさまざまな沖縄出身者の震災経験を検証する。

1 沖縄出身者襲撃伝承とその特徴
2 関東大震災、ふたつの体験記
〔1〕襲撃伝承の原点──比嘉春潮「年月とともに」
〔2〕勤勉な自警団員──宮良當壯「遭震惨記」
〔3〕比嘉の沈黙、宮良の無責任
3 沖縄出身製紙労働者の震災経験
〔1〕雪崩を打って上京する
〔2〕「木下組」朝鮮人組夫の虐殺
〔3〕伊江村出身者と自警団事件
〔4〕襲撃伝承が生まれるまで
4 沖縄における伝承の形成と定着
〔1〕紡績女工の悲劇
〔2〕「方言」撲滅教育と「沖縄語」話者の処刑
巻末資料
結びに代えて
索引

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