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室町は今日もハードボイルド 日本中世のアナーキーな世界--2021 [中世・国内]

91MaDN6y.jpg室町は今日もハードボイルド
日本中世のアナーキーな世界
著者 清水克行 しみず・かつゆき
出版社 ‏ : ‎ 新潮社
発売日 ‏ : ‎ 2021/6/17‏ : ‎ 256ページ
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4103541615
新潟市立図書館収蔵 新津館 /210.4/シ/


僧侶は武士を呪い殺し、農民は政界工作を企て、浮気された妻は相手の女を襲撃する――あなたたち、本当にご先祖様ですか?
数々の仰天エピソードから浮かび上がる中世の日本人は、実は凶暴でアナーキーだった!自力救済、信仰等を主題に、中世人の衝撃的な逸話の数々を紹介。『小説新潮』連載を加筆・修正。
著者
  清水克行  1971年生まれ。明治大学商学部教授。歴史番組の解説や時代考証なども務める

目次
はじめに
第1部 僧侶も農民も! 荒ぶる中世人
第1話 悪口のはなし
おまえのカアちゃん、でべそ
第2話 山賊・海賊のはなし
びわ湖無差別殺傷事件
第3話 職業意識のはなし
無敵の桶屋
第4話 ムラのはなし
“隠れ里”の一五〇年戦争
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第2部 細かくて大らかな中世人
第5話 枡のはなし
みんなちがって、みんないい
第6話 年号のはなし
改元フィーバー、列島を揺るがす
第7話 人身売買のはなし
餓身を助からんがため……
第8話 国家のはなし
ディストピアか、ユートピアか?
第3部 中世人、その愛のかたち
第9話 婚姻のはなし
ゲス不倫の対処法
第10話 人質のはなし
命より大切なもの
第11話 切腹のはなし
アイツだけは許さない
第12話 落書きのはなし
信仰のエクスタシー
第4部.jpg第4部 過激に信じる中世人
第13話 呪いのはなし
リアル デスノート
第14話 所有のはなし
アンダー・ザ・レインボー
第15話 荘園のはなし
ケガレ・クラスター
第16話 合理主義のはなし
神々のたそがれ
おわりに
参考文献




庶民たちは「村」や「町」を拠点にして、独自の活動を展開していた。そこでは幕府法、公家法、本所法 (荘園内の法)、村法など、独自の法秩序があり、幕府法が村法より優位とい一つことは必ずしもなく、それぞれ等価に併存していた。それを考えるなら、中世は、日本の歴史のなかでも前後に類がないほど〃分権〃や〃分散〃が進行したアナーキー (無秩序)な時代だったといえるだろう。 
さらにいえば、彼らは、自分の利害を守るために「自力」で暴力を行使することを、必ずしも〃悪〃とは考えていなかった。やられたらやり返す。場合によっては、やられてなくてもやり返す。
それは武士だけに限ったものではなく、僧侶や農民にまで通底するものであって、彼らは常日頃から刀を身に帯びて、往来を闊歩していた。
加えて、彼らは同じ仲間が蒙った損害を、みずからの痛みとして受け止め、万一、仲間が他の誰かによって傷つけられたときは、寺院や村をあげて集団で報復に乗り出す。それは、もう立派な戦闘行為という他ない。
リーダーの主導のもと社会が統御されることもなく、異質で多様な価値観が拮抗して、先行きが見えない物騒な時代 !!。しかし、それは考えようによっては、特定の「主役」や、予定調和の「筋書き」や、お説教じみた「教訓」のない、躍動的な群像劇の時代ともいえる。
また、彼らがまったく非常識で、非道徳的だったかといえば、そんなことはない。彼らには彼らなりの「常識」や、彼らなりの「道徳」があって、みなそれに従って行動していた。
それよりも優れていることすらある。中世を生きた人びとの最大の魅力は、同じ日本列島に住みながら彼らが私たちの「常識」や「道徳」から最も遠いところにいる存在であるという点にあり、彼らの社会を学ぶ面白さは、そんな私たちが安住している価値観を揺るがす破壊力にあるといえるだろう。
以下、本書では、日本中世の特徴を物語る一六のテーマを、それぞれ「自力救済」「多元性」「人びとのきずな」「信仰」を主題とする四部に構成してお話ししていきたい。

タグ:室町時代
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