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親切の人類史―ヒトはいかにして利他の心を獲得したか – 2022/12/20 [視座をホモサピエンス]

81NrLpIc.jpg親切の人類史―ヒトはいかにして利他の心を獲得したか 
著者 マイケル・E・マカロー (Michael E. McCullough)
翻訳 的場知之 (まとば・ともゆき)
出版社 ‏ : ‎ みすず書房
発売日 ‏ : ‎ 2022/12/20
単行本 ‏ : ‎ 464ページ
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4622095675


人間の「利他の心」の存在はどのように説明できるだろう? 
「利他行動」は生物学の難問の一つだ。ヒトをはじめ、他個体を利する行動をとる動物は実際に存在する。血縁や地域を超えた「完全な赤の他人」にまで援助の手を差し伸べる動物は人間以外にいない.
人間の利他性は、哲学、歴史学、文化人類学、社会科学、生物学などを中心に、さまざまな分野の専門家の興味を引く不思議なテーマだ。一筋縄ではいかない
 他者を思いやる寛大な個体の遺伝子は、狡猾な個体に出し抜かれて繁殖機会を奪われ、淘汰されてしまうのでは? 生物学者たちはこのことにおおいに悩み、利他行動を説明できる理論を求めて奮闘してきた。
利他性をテーマとする書籍の多くが、生物学的考察と人文学的考察とのどちらかに軸足を置いている。
人間の利他の心は、生物学だけで完全に説明することはできない。社会福祉制度や慈善活動などの人文学的考察だけで完全に説明することはできない。進化生物学と慈善の歴史という観点から挑みかかる。
著者によれば、一万年の人類史における「七つの大いなる苦難」を、人類がどう解決してきたかが説明のカギだという。
目次
第1章 思いやりの黄金時代  001頁
第2章 アダム・スミスの小指  015
第3章 進化の重力  043
第4章 すべては相対的(リラティブ)だ  061
第5章 ミスター・スポックへ、愛を込めて  085
第6章 大いなる報酬  123
第7章 孤児の時代  155
第8章 思いやりの時代  169
第9章 予防の時代  189
第10章 第一次貧困啓蒙時代  213
第11章 人道主義のビッグバン 243  
第12章 第二次貧困啓蒙時代   283
第13章 成果(インパクト)の時代  315
第14章 理性が導き出す思いやりの理由 343
謝辞
原注
参考文献
第1章 より
見知らめ他者への思いやりに関して、ヒトの右に出る者はいない。チンパンジーは、わたしたちと同じように親類縁者をすすんで助けるが、溺れる他個体を救うために増水した川に飛び込んだり、タンザ二アの恵まれないチンパンジー家庭に食糧を送ったり、チンパンジー介護施設で週末のポランテイアをしたりする個体は、一頭たりともいない。
科学的根拠に照らして、わたしたちの祖先は狂信的といっていいほどのよそもの嫌いで、困窮する他人にきれいな水や温かい食事、一夜を過ごせる場所を与えるどころか、槍と弓を向けてきた。
現代人が示す、他者に対する態度が、祖先とかけ離れているのはなぜだろう?完全な赤の他人の福祉への配慮は、動物界のどこにも似たものが見つからないどころか、ヒトという種の歴史の大半を通じて、影も形もなかった。正真正銘、一度きりのできごとなのだ。したがって、そこには特別な説明が必要になる。
ヒトがもって生まれた能力、すなわちわたしたちの特徴である信念や欲求、動機や情動、認知能力を無視し、それらが歴史上の数々の転機において大規模に発露した結果として、いまのわたしたちが誇る、他者を助ける傾向が形成されたという視点 
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原本
前半は進化的な視点から包括適応度理論(血縁淘汰),マルチレベル淘汰,直接互恵,(社会淘汰を含む)間接互恵からどこまで説明できるのかを扱い,後半では共感のサークルの拡大が理性の役割とともに歴史的に語られている。
国家による福祉の拡大を大きなテーマとして理性がからむモラルサークルの歴史を語る後半部分。
.古代の王は弱者救済が王権の強化に働く可能性に気づき,
さらに近代にはそれが社会の健全性や貿易を通じた国家の繁栄に役立つという認識につながる.
そしてさらに利他と福祉は自分と他者の立場の交換性ヘの気づきと自己の誠実性という意味のモラルの問題になっていく.その歴史が「理性こそが寛容と利他主義の価値を見つけてきた」という物語として語られている.

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