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化学肥料の値上げが水稲作にも影響するー日刊IWJ No.3653号 [農から見つめる]

急激な化学肥料の値上げ率が、11月からの春肥価格まで続けば、次年度産の水稲作にも影響するということです。 小麦や野菜や果実ばかりか、米にも影響が及びます。  2020年を100とした指数で食料の消費者物価指数の推移を見た場合、2022年7月の時点で、食品全体はすでに104と値上がりしています。

米 窒素肥料の主要原料の硝酸アンモニウムは、ロシア産が世界市場の流通量の45%を占めていた。ウクライナ紛争でロシアは2022年2月2日から輸出を禁止した(2022年2月1日付連邦政府決定第82号)9月14日のロイター通信は、「世界的な食糧危機を防ぐために、国連はロシアに、農作物に必要な肥料の輸出、ロシアからウクライナの黒海のユジニ港にアンモニアを輸送していたパイプライン再開を交渉している」


 岸田文雄政権は、化学肥料の高騰に対して、9日、「下水汚泥」など国内資源の利用を拡大するよう農林水産省に指示しました。 人のし尿など、下水にはリンや窒素など化学肥料に代わる肥料の要素が多く含まれ、処理の過程で出る下水汚泥を発酵させるなどして「国産」肥料になるというのです。《江戸時代のように活用》
 この政府の下水汚泥利用について、OKシードプロジェクトの事務局長、印鑰智哉(いんやく ともや)さんは、フェイスブックへの9月12日の投稿で次のように警鐘を鳴らしています。
「化学肥料の原料は天然ガスや鉱石で、それはほぼすべて輸入に頼っている。その資源はロシア、中国、ベラルーシなど偏って存在し、世界最大の農業生産国、米国やブラジルでも原料を輸入に頼る。争奪戦になれば円安の日本では買い負けて入ってこない。
 下水の中には肥料として有効な窒素やリン酸が含まれる。それを取り出せば肥料として使えるということだが、しかし下水にはさまざまな有毒物質が含まれている。ヒ素やカドミウム、水銀などについては農水省も基準を設けている。でもそれだけではない。
 永遠の化学物質と言われる分解されないPFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)もまた含まれている可能性が高い。しかし、現在、農水省は下水汚泥を利用する際にPFASの規制を設定していない。(中略)
 PFASを摂取すればがん、不妊、糖尿病などの原因となり、医療費も膨大になる。PFASは永遠の化学物質だから放射性物質で汚染されたのと同様の問題にさらされることになる。メイン州は下水汚泥の使用を今年4月に禁止した。それを日本では国策として推進するのだろうか?」
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 PFASは、1940年代頃から普及していった化学物質で 水や油をはじく、熱に強い、薬品に強い、光を吸収しない等の特性を持ち、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤等に幅広く用いられてきてきました。
 特に有名なのは、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の2つと言われます
※【環境】化学物質PFASとは何か? ~マクドナルドやアマゾンが使用禁止を決めた背景やPFOAとの違い~(Sustainable Japan、2021年1月17日) https://sustainablejapan.jp/2021/01/17/pfas/58068
PFASの人体への侵入経路には、水と食品の2つがあります。
 水に関しては水道水からの侵入で、食品については農作物栽培での土壌からの侵入と食品の包装・容器から侵入する2つがあります。
 化学肥料の急激な値上がりによって、PFAS規制のないまま下水汚泥を使用する方向へ向かえば、まだ、ほとんど、知られていないPFASの曝露リスクを高める可能性があるのです。
 輸入に頼る重要な物質を他国に買い負けないように、急速に進む円安を食い止めることがまず必要です。
 化学肥料の原料となる天然ガスや鉱石がロシア、中国、ベラルーシに偏っているならば、こうした国々の紛争を停止させる方向へと外交的に働きかけ、制裁を解き、スムーズに輸入できる環境を整えることが、まずは政治の役割ではないでしょうか。

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