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近世の女性相続と介護--柳谷慶子 =2007年刊行 [介護]

近世の女性相続と介護.jpg 近世の女性相続と介護 
著者1 柳谷慶子 /著   
出版年 2007.3 
出版者 吉川弘文館 
大きさ 22cm 
ISBN 978-4-642-03420-3 
新潟市立図書館収蔵 アルザ 一般 Map /361/ヤ/
内容紹介
江戸時代、公共領域から排除された女性は「家」の継承と運営にどう関わっていたのか。女性の武家相続と系図操作、女性知行、大名家の奥向、姉家督からその実情を考察する。また、家族介護における男性の役割の大きさに着目し、武士の介護休暇「看病断(ことわり)」や公的介護支援を追究。介護負担と相続の関係にも触れ、近世の女性と家族のあり方を解明する。
目次
相続および介護にみる女性と家族
第1部 「家」の相続・運営と女性(近世初頭の女性領主―盛岡藩八戸南部氏清心尼の家相続;女性による武家の相続―盛岡藩・仙台藩の事例から;大名および家臣家の女性知行―新庄藩を事例として;大名家の「奥」と改革―仙台藩伊達家を事例として ほか)
第2部 看病・介護をめぐる「家」と家族(近世の「家」と扶養・介護―『仙台孝義録』の分析から;介護をめぐる教説と教育;農民家族の扶養・介護と地域社会;武家社会の「看病断」について ほか)
著者紹介
柳谷慶子[ヤナギヤ ケイコ] 1955年秋田県生まれ。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修了。聖和学園短期大学教授。
内容紹介
第二部の介護に関しては、これまで見過ごされてきた高齢者介護という視角から、江戸時代の社会制度や家族の状況をとらえた論文6編を揃えている。ここでも実態に則した分析の結果、これまで見えていなかった江戸時代の家族問題を浮きださせ、あるいは、従来の安易な理解や評価に反省を迫っている。
以下、詳しく紹介する余裕がないので二つの点だけを挙げておこう。

一つは、18世紀後半に幕府が編集刊行し、諸藩もこれにならって作成した「孝義録」の再検討である。
「孝義録」は従来、主人に忠義を尽くし、親に孝行を励んだ庶民の行為を顕彰した記録として、ひろく儒教道徳の高揚を目指したものと評価されてきたが、著者が改めて「仙台孝義録」の内容を介護という視点から整理した結果、実は高齢者や病人の介護を含む事例が江戸後期には総件数の七割を越えていることを明らかにし、「孝義録」が家族内の福祉・介護役割を強化するためのイデオロギーとしても機能したであろうと主張している。

二つ目は、武家において家臣の老親など親族が病気で倒れた際に、当該の家臣が「看病断」と称する書類を提出して休暇をとるシステムが存在したことを、幕府の関係法令から明らかにした。さらにいくつかの藩についてその存在を指摘し、その運用の実態を、盛岡藩の記録や沼津藩の家臣の日記などによって観察している。これらから、老親の病気介護が建前上は武家の当主である男性の仕事とされていた点を指摘し、現代の家族介護がもっぱら女性の役割になっていることと比べ、介護役割の性別固定化は行われていなかったと推察している。

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