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崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策ー2019その参 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策
荻野文隆編 F・アスリノ ほか
藤原書店
崩壊した「中国システム」とEUシステム、1縮2.jpg
出版社からのコメント
米ソ冷戦の崩壊からほぼ30年を経た2019年、アメリカを軸とした地球規模でのグローバル化の時代を経験してきた世界は今や、大きな方向転換を開始している。
米ソ冷戦の終結のあと進行したグローバル化の時代が終わり、国民経済の強化とともに、国民社会の主権と民主主義の奪還のための新たな時代に向かおうとしている。
そんな文脈の中で、フランソワ・アスリノの過去12年に及ぶ「人民共和連合」の運動は、フランス並びにヨーロッパ統合の現状を理解する上で極めて的確な分析を提供してくれる。
さらには、緊縮財政と消費増税というデフレ化政策によって破壊されてきた日本社会が、未だにその負のスパイラルからの脱却が全く見通せない現状の構造を理解する上でも多くの示唆を与えてくれるものである。
(荻野文隆)
筆者プロフィール
●荻野文隆(おぎの・ふみたか)
1953年生。東京学芸大学特任教授。フランス文学・思想。パリ第三大学文学博士。共著に『他者なき思想』『来るべき〈民主主義〉』(藤原書店)『多言語・多文化社会へのまなざし』(白帝社)『パリの街角で(音声ペンで学ぶフランス語入門)』(両風堂)他。訳書にトッド『世界の多様性』(藤原書店)他。
●フランソワ・アスリノ(Francois Asselineau)
1957年生。「人民共和連合」(Union Populaire Republicaine : 2007- )創設者、結党以来の党首。元フランス財務省財務上級監査官。HEC経営大学院、国立行政学院卒。1980-82年、在日フランス大使館経済担当官。2017年フランス大統領選挙公認候補、2019年ヨーロッパ議会議員選挙候補。

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崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策ー2019その弐 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

崩壊した「中国システム」とEUシステム6.jpg崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策

荻野文隆編 F・アスリノ ほか

藤原書店


目次


崩壊した「中国システム」とEUシステム――序にかえて 荻野文隆 13ー24頁


第Ⅰ部 主権と民主主義を奪回するために――フランスと日本の比較



 1 〈インタビュー〉フランスのEU離脱と日本への提言 フランソワ・アスリノ/聞き手=荻野文隆 27-50頁


 2 〈講演〉日本のデフレ脱却への道

  ――日本のデフレ20年とEUユーロ・システム下二〇年のフランス 1998~―― 荻野文隆 51-80頁


 3 〈講演〉ヨーロッパの多様性――EU・ユーロ体制の現状と展望 F・アスリノ 81-99頁


 4 〈講演〉アベノミクスはデフレからの脱出口を見つけるか? 田村秀男 100-110頁


 5 〈対談〉なぜ緊縮財政はいけないか?――日仏共通の課題 F・アスリノ/田村秀男 111-122頁


第Ⅱ部 日仏のデフレ化政策と闘う



 1 〈対談〉デフレ化政策と闘う民主主義 F・アスリノ/藤井 聡 125-143頁


 2 国民国家の底力――GDPシェアから見る日米欧の未来 藤井 聡(京都大学大学院教授) 144-150頁


 3 財政出動への方向転換を! 安藤 裕(自由民主党衆議院議員) 151-158頁


 4 なぜ、右も左も新自由主義なのか 中野剛志(評論家・政治思想) 159-167頁


 5 グローバリズムの制約を超えて 柴山桂太(京都大学准教授) 168-174頁


 6 ヨーロッパのニヒリズム、あるいはEUの思想的「自死」 浜崎洋介(文芸評論家) 175-182頁


 7 〈特別寄稿〉国家主権と国際協調――フランソワ・アスリノ氏との見解の一致 小沢一郎(衆議院議員) 183-190頁


第Ⅲ部 日本とフランスの再生にむけて――日本の政治家との対話



 1 〈対談〉日仏の真の独立を求めて

   山本太郎(れいわ新選組代表前参議院議員)+F・アスリノ 193-210頁


 2 〈対談〉ケインズを忘れたフランスと日本

   大塚耕平(国民民主党参議院議員)+F・アスリノ 211-229頁


 3 〈対談〉EUを背後で操るアメリカ

   菅 直人(立憲民主党衆議院議員)+F・アスリノ 230-244


 4 〈対談〉増大する移民とユーロ禍

   海江田万里(立憲民主党衆議院議員)+F・アスリノ 245-257頁


 5 フランソワ=アスリノ日本同行記

   及川健二(日仏共同テレビ局France10日本支局長・政治哲学者) 258-265頁


第Ⅳ部 フランスとドイツは消滅するか?


 1 〈対談〉EUユーロ・システム崩壊後のフランスの未来図

   F・アスリノ/E・トッド 269-330頁


 2 〈討論〉EUユーロ・システム下のドイツの現状と未来

   F・アスリノ/E・ユソン(ドイツ史)/C・ドローム(ジャーナリスト)/D・ケイラ(経済学)/V・ブルソー(経済学) 331?386頁


結び 荻野文隆



続く その参へ

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崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策ー2019その壱 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

崩壊した「中国システム」とEUシステムL.jpg崩壊した「中国システム」とEUシステム - 主権・民主主義・健全な経済政策

荻野文隆編 F・アスリノ 荻野文隆 田村秀男 藤井聡 安藤裕 中野剛志 柴山桂太 浜崎洋介 小沢一郎 山本太郎 大塚耕平 菅直人 海江田万里 及川健二 E・トッド E・ユソン C・ドローム D・ケイラ V・ブルソー

藤原書店


サイズ B6判/ページ数 400p/高さ 20cm

ISBN-13: 978-4865782356

発売日: 2019/11/26

価格 \3,960(本体\3,600)


NDC分類 332.35

Cコード C0033



2017年のフランス大統領選候補フランソワ・アスリノが、2018年10月に日本を訪問した記録。「日仏のデフレ化政策と闘う」「日本とフランスの再生にむけて」など4つのテーマに分け、インタビューや対談等を収録する。


デフレから脱却し、主権と民主主義を取り戻すために!!

EU/ユーロ体制下で経済活性と民主主義を喪失するフランスと、緊縮財政・消費増税による長期デフレ下で格差や貧困に苦しみながら、拡大する「中国システム」に巻き込まれ、いよいよ迷走する日本。

健全な経済と政治のために、東西の知が結集!!


【カバーソデ紹介】

 米ソ冷戦の崩壊からほぼ三〇年を経た二〇一九年、アメリカを軸とした地球規模でのグローバル化の時代を経験してきた世界は今や、大きな方向転換を開始している。米ソ冷戦の終結のあと進行したグローバル化の時代が終わり、国民経済の強化とともに、国民社会の主権と民主主義の奪還のための新たな時代に向かおうとしている。

 そんな文脈の中で、フランソワ・アスリノの過去一二年に及ぶ「人民共和連合」の運動は、フランス並びにヨーロッパ統合の現状を理解する上で極めて的確な分析を提供してくれる。さらには、緊縮財政と消費増税というデフレ化政策によって破壊されてきた日本社会が、未だにその負のスパイラルからの脱却が全く見通せない現状の構造を理解する上でも多くの示唆を与えてくれるものである。

(荻野文隆)

続く その弐へ



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家族システムの起源 1-2011ー邦訳・藤原書店・2016 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

家族システムの起源89.jpg家族システムの起源 1
原タイトル: L'ORIGINE DES SYSTEMES FAMILIAUX.Tome 1:L'EURASIE--2011
〔上〕
巻の書名 ユ-ラシア
各巻巻次
〔下〕
巻の書名 ユ-ラシア
各巻巻次
著者1 エマニュエル トッド /著, 石崎晴己 /監訳, 片桐友紀子 /〔ほか〕訳
出版年 2016.7
出版者 藤原書店
ページ数 上巻=417p:下巻=p420~937
大きさ 22cm
家族システムの起源  1〔上〕w8L.jpg上巻
ISBN 978-4-86578-072-7
新潟県立図書館収蔵 /362/To17/1-1 NDC分類(9版)362
内容紹介
「人類の歴史」像を覆す! 人類学者エマニュエル・トッドの集大成!
世界各地の多様な近代化の軌跡を伝統的な家族構造によって見事に解明し、まったく新しい歴史観と世界像を提示してきたエマニュエル・トッドが、遂に人類全体に共通した起源的な家族形態を特定する。「人類の歴史」像を覆す人類学者としての集大成! ユーラシアを扱う第1巻の上巻は中国、シベリア、日本、インド、東南アジアまで。
〔上〕家族システムの起源は、“核家族”である‐。長年、世界各地の家族構造を研究してきた著者が、家族類型の起源と分化について論述し、人類の歴史の姿を提示する。中国、日本、インド亜大陸などの地域を収録。
中国とその周縁部/日本/インド/東南アジア。伝統的な家族構造が多様な近代化の道筋をつけたと論証してきたトッドは、家族構造が不変のものではなく変遷するという方法の大転換を経て、家族構造の単一の起源が核家族であること、現在、先進的なヨーロッパや日本はその古代的な家族構造を保持しているということを発見した。図版多数。
■本書は、全く通常と異なる、ほとんど逆の、人類の歴史の姿を提示するものである。ユーラシアの周縁部に位置する、現在最も先進的である国々、とりわけ西欧圏が、家族構造としては最も古代的なものを持っているということを、示しているからである。
家族システムの起源  1〔上〕mL.jpg
■発展の最終局面におけるヨーロッパ人の成功の一部は、そうした古代的な家族構造はかえって変化や進歩を促進し助長する体のものであり、彼らヨーロッパ人はそうした家族構造を保持してきた、ということに由来するのである。
■このような逆説は、日本と中国の関係の中にも見出される。日本は経済的に中国に比べてひじょうに進んでいるが、家族構造としてはより古代的なものを持っているのである。今後は、家族システムの歴史のこうした新たな見方を踏まえた人類の社会・政治・宗教史の解釈を書くことが必要となる。
(「日本語版への序文」より)
目次
日本語版への序文
序説 人類の分裂から統一へ、もしくは核家族の謎
第1章 類型体系を求めて
第2章 概観―ユーラシアにおける双処居住、父方居住、母方居住
第3章 中国とその周縁部―中央アジアおよび北アジア
第4章 日本
第5章 インド亜大陸
第6章 東南アジア
下巻
ISBN 978-4-86578-077-2
家族システムの起源  1〔下〕oL.jpg新潟県立図書館収蔵 /362/To17/1-2 NDC分類(9版) 362
〔下〕
E・トッドによる世界史!
人類の起源的家族形態は核家族である、と見抜いたトッドは、ヨーロッパの繁栄の理由が、技術的・経済的発展を妨げる家族システムの変遷を経験しなかったからだと分析する。つまり、ヨーロッパは家族システムの面では、古い形態が残って起源的な形態に留まり続けているのである。
(下)ヨーロッパ/中東(古代・近年)
家族システムの起源は、“核家族”である‐。長年、世界各地の家族構造を研究してきた著者が、家族類型の起源と分化について論述し、人類の歴史の姿を提示する。中央および西ヨ-ロッパ、中東を収録。
■核家族が最も古い形態であるとするトッドの命題は、果たして世界の、少なくともヨーロッパの人類学界に衝撃を与えた。というのも、これまでのヨーロッパの常識は、大家族(例えば家父長に支配される)が最も古い形態であり、核家族とは、近代に近づく中で生まれて来たすぐれて近代的な家族形態である、というものだったからである。トッドの立論は、その先入見を引っくり返したわけである。
■これは、従来の学界の常識を転覆した、というアカデミズムの枠内での衝撃では済まない。最も先進的な近代性を体現するものであったはずの核家族が、最も「遅れた」原始的な家族類型である、ということになるからである。
(「訳者解説」より)
目次
第7章 ヨーロッパ―序論
第8章 父系制ヨーロッパ
第9章 中央および西ヨーロッパ―1記述
第10章 中央および西ヨーロッパ―2歴史的解釈
第11章 中東 近年
第12章 中東 古代―メソポタミアとエジプト
第2巻に向けて―差し当たりの結論
家族システムの起源  1〔下〕lL.jpg原註
訳者解説
訳語解説
参考文献
図表一覧
索引(地名・民族名/人名)
著者紹介
エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
1951年生まれ。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。著書に「最後の転落」「帝国以後」など。
●石崎晴己(いしざき・はるみ)
1940年生まれ。青山学院大学名誉教授。1969年早稲田大学大学院博士課程単位取得退学。専攻フランス文学・思想。
訳書に、ボスケッティ『知識人の覇権』(新評論、1987)、ブルデュー『構造と実践』(1991)『ホモ・アカデミクス』(共訳、1997)、トッド『新ヨーロッパ大全III』(II共訳、1992-1993)『移民の運命』(共訳、1999)『帝国以後』(2003)『文明の接近』(クルバージュとの共著、2008)『デモクラシー以後』(2009)『アラブ革命はなぜ起きたか』(2011)『最後の転落』(2013)『不均衡という病』(ル・ブラーズとの共著、2014)など多数。編著書に、『世界像革命』(2001)『サルトル 21世紀の思想家』(共編、思潮社、2007)『21世紀の知識人』(共編、2009)『トッド自身を語る』(2015年)(出版社名が明示されていないものは、いずれも藤原書店)など。
●片桐友紀子(かたぎり・ゆきこ)
1984年生まれ。青山学院大学フランス文学科卒業、同大学院修士前期課程修了。
●中野茂(なかの・しげる)
1966年生まれ。パリ第8大学博士課程修了(文学博士)、早稲田大学博士後期課程満期退学。早稲田大学高等学院教諭、早稲田大学非常勤講師。フランス文学・フランス語教育。
●東松秀雄(とうまつ・ひでお)
1952年生まれ。青山学院大学博士課程単位取得。青山学院大学講師。フランス文学。
●北垣潔(きたがき・きよし)
1965年生まれ。早稲田大学大学院満期退学・青山学院大学他講師。18世紀フランス文学。


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自由貿易は、民主主義を滅ぼす=E.トッド2009/ほか -- 藤原書店 -- 2010.12 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

自由貿易は、民主主義を滅ぼす=E.トッド/ほか著uhL.jpg自由貿易は、民主主義を滅ぼす

著者名1 E.トッド /ほか著  

著者名2 石崎 晴己 /編  

出版者 藤原書店

出版年 2010.12

ページ数 300p

大きさ 20cm

新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館 2階社会 /304/トツ/ NDC分類(9版) 304

ISBN 978-4-89434-774-8


内容紹介

自由貿易推進は、是か非か? 米ソ2大国の崩壊と衰退を予言したE・トッドが2009年10月に来日した際に行った講演や対談を収録。トッドについての論考なども掲載。

「自由貿易こそ経済危機の原因だと各国指導者は認めようとしない」「ドルは雲散霧消する」「中国が一党独裁のまま大国化すれば民主主義は不要になる」――米ソ二大国の崩壊と衰退を予言したトッドは、大国化する中国と世界経済危機の行方をどう見るか?


目次

タイトル 著者名 ページ

自由貿易は、民主主義を滅ぼす  E.トッド/述 7頁ー68

米ソ二大国の崩壊とその後  E.トッド/述 71頁ー104

世界経済危機とアメリカ帝国の崩壊  E.トッド/述 105頁ー147

「帝国以後」の世界  E.トッド/述 148頁ー180

日仏の政治・経済の危機をどうみるか  E.トッド/述 181頁ー206

歴史的転換点に立つ日本  E.トッド/述 207頁ー209

ヨーロッパと日本との文化的親近感  E.トッド/述 210頁ー213

世界の多様性と普遍性  E.トッド/述 217頁ー237

識字化と文明の接近  E.トッド/述 238頁ー242

なぜ、アジアで極端な少子化が進むのか  E.トッド/述 243頁ー246

トッドを読む  松原 隆一郎/著 249頁ー259

トッドを読む  冨山 太佳夫/著 260頁ー271

トッドを読む  平川 克美/著 272頁ー279


自由貿易は、民主主義を滅ぼす=E.トッド/ほか著L.jpg


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デモクラシー以後―協調的「保護主義」の提唱ー2008-邦訳・2009 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

デモクラシー以後―kL縮2.jpgデモクラシー以後―協調的「保護主義」の提唱 
原著 Après la démocratie, Gallimard, Paris, 2008
エマニュエル・トッド【著】 石崎 晴己【訳】
藤原書店(2009/06発売)

サイズ B6判/ページ数 370p/高さ 20cm
商品コード 9784894346888
価格 ¥3,520(本体¥3,200)


内容説明

米ソ2大国の崩壊を予言した人類学者の最新作。日本の将来への指針!世界経済と民主主義を阻害する「自由貿易」というドグマ。トックヴィルが見誤った民主主義の動因は識字化にあったが、今日、高等教育の普及がむしろ階層化を生み、「自由貿易」という支配層のドグマが、各国内の格差と内需縮小をもたらしている。若者・失業者・私企業労働者こそ、真っ先の犠牲者である。大恐慌の中で健全な保護主義を唱えた、ケインズの名論文「国家的自給」(1933年)収録。

本書では、サルコジ大統領誕生に体現されたフランス社会とデモクラシーの危機を分析し、「エリートが自由貿易体制に疑義を呈さないことが格差拡大、金融危機につながっている」と、需要を掘り起こし、ヨーロッパのデモクラシーを守る最後の手段として、均衡のとれた保護主義を提唱している。


目次

民主主義をめぐる普遍性と多様性
サルコジ局面
この空虚は宗教的な空虚である
教育の停滞と文化的悲観論
民主制から寡頭制へ
フランス人と不平等―人類学からの貢献
民族化か?
自由貿易は民主主義への阻害要因
階級闘争か?
人類学的土台の極めて緩慢な変化
デモクラシー以後
保護主義、ヨーロッパ民主主義の最後のチャンス

〈資料〉ケインズ「国家的自給」を読む (訳・解説=松川周二)

デモクラシー以後―L縮.jpg

詳しい目次

日本の読者へ 民主主義をめぐる普遍性と多様性

民主主義の危機/識字化による興隆と高等教育による衰退/イデオロギーの消滅と現実の直視/世界の普遍性と多様性/自由貿易という戦争、保護主義という協調


序 章 サルコジ局面


第1章 この空虚は宗教的な空虚である

政治的解体/裏切りの比較研究/最も重要なのは宗教的解体/無神論の困難/無信仰からイスラーム恐怖症へ


第2章 教育の停滞と文化的悲観論

教育の停滞と文化的悲観論/空虚vs空虚--国民共和主義vs単一思考/歴史の方向--一六九〇年から二〇〇八年までの長期間における教育水準/アメリカ・モデル/イギリスの楽観論/原因の確定は可能か?


第3章 民主制から寡頭制へ

教育による階層化とエリート層への拒絶--マーストリヒト条約/大衆識字化と民主制の出現/教育と革命/教育上の階層化の再開と寡頭制の誘惑/イデオロギー・ピラミッドの終焉/社会党の例--平等主義から戦闘的ナルシシズムへ/新人間の心理学--説明は後でいいから、まず確認だけしておこう


第4章 フランス人と不平等――人類学からの貢献

フランス人とアングロサクソン/権威主義的文化--ドイツ・ロシア・中国/フランスの地域別の多様性︱︱初めは暴力的で次いで穏当なものとなった複数政党制の土台/平等主義的価値システムはフランスで生き残るか?


第5章 民族化か?

フランスの場合--種族闘争から階級闘争へ/大都市郊外の暴動--フランス的危機/大統領選挙の最中に郊外の暴動が/アラン・フィンケルクロートと「反共和主義のポグロム」/民族化に反対する労働者と若者たち/選挙の後---社会経済的テーマの回帰


第6章 自由貿易は民主主義への阻害要因

フランス人は自由貿易反対/社会主義者たち、中国、そしてインド/二〇〇六年一一月、シラクはヨーロッパ保護主義をめぐる論争を凍結する


第7章 階級闘争か?

社会の総体、有権者の総体/教育と富の分離/支配集団の収縮とアトム化/給与についての自覚から階級意識へ/宗教的信仰なき階級意識は可能か?/ボボ神話/資本の陶酔/イスラームと中国の間に挟まれたわが国の指導階級/階級闘争か民族闘争か


第8章 人類学的土台の極めて緩慢な変化

出生率の変遷/ヨーロッパの出生率/減速/家族と国家/女性と不平等/人類学的基底の自律性と優位


第9章 デモクラシー以後

寡頭制的システムのポピュリズム局面/中産諸階級の闖入とポピュリズムの終焉/解決1 民族的共和国(白人の、キリスト教以後の)/民族的解決は挫折の可能性が高い/解決2 普通選挙の廃止


結 論 保護主義、ヨーロッパ民主主義の最後のチャンス

ヨーロッパの転用

訳 註


原 註

〈資料〉ケインズ「国家的自給」を読む (訳・解説=松川周二)

訳者解説

著者紹介

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文明の接近-2007-ー邦訳2008 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

文明の接近L.jpg文明の接近

副書名 「イスラームvs西洋」の虚構

原書名 原タイトル:Le rendez‐vous des civilisations-2007

著者名1 エマニュエル・トッド /[著]  

著者名2 ユセフ・クルバージュ /[著]  

著者名3 石崎 晴己 /訳・解説  

出版者 藤原書店

出版年 2008.2

ページ数 298p

大きさ 20cm

ISBN 978-4-89434-610-9

新潟市図書館収蔵 坂井輪館 /302/ト/ NDC分類(9版) 302.27

新潟県立図書館収蔵 /302/To17/


内容紹介 イスラム圏

 独自の人口学的手法により、イスラーム圏の現実と多様性に迫る。イスラーム諸国とキリスト教系の諸国との間に存在する差異は、本質的な、本性上の違いではなく、時間的ずれに由来する差異であることを示そうと試みる。


著者からのコメント

【日本の読者へ】


  ----この本がどのような論争のきっかけになって欲しいと、お考えなのですか。それから、日本の観点が重要であるのはどのような点においてなのですか。


 この本の目的は、人類がいくつかの部分に分割されているとする見方を拒否することであり、とりわけ本書は、現在定着しつつある、近代性とは西洋固有の事柄であるとする一種西洋主義イデオロギーともいうべきものと闘うものです。このイデオロギーはもちろん、西洋の対極にイスラームを置き、人類の中のイスラームという部分には、近代化の能力もなければ、民主主義を実現する能力もなく、発展の能力もないとするのです。

 それに対して本書は、イスラーム諸国とキリスト教系の諸国との間に存在する差異は、本質的な、本性上の違いではなく、時間的ずれに由来する差異であることを示そうと努めています。イスラーム諸国に大きな遅れがあることは明らかです。


 日本についてですが、日本は近代性の観念をヨーロッパの独占から救い出した国ですから、日本もしくは日本的観点はこの論争の中で重要な役割を果たします。ヨーロッパからは、日本という国は常軌を逸脱した存在と見られていました。日本の発展への努力は、一時は憫笑を誘ったものです。日本はヨーロッパ諸国と同じように移行期危機を経験しましたが、あくまでも外の国として扱われました。

 現在、現段階においては----この点は本書の中で記しましたが----日本の近代性に異議を唱えようとするものは誰一人いないでしょう。日本の近代性は単なる西洋化にすぎないと言う者は、いないでしょう。誰にとっても、日本は近代的でしかも日本的である、というのは明らかです。日本は日本のままであっても、なおかつ日本の民主主義的制度機構が存在すること、日本の科学技術能力の優れていることに、異議を唱える者はだれもいないでしょう。

  ----それではあなたは、日本人に何を期待されるのですか。

 日本に対する私の態度は常に同じです。つまり私個人としては、日本がもっと論争に介入して発言してくれるのが好ましいのです。だからと言って、発展という観点からは全体として非常に遅れているイスラーム圏を、日本と類似した存在として示そうという積りではありません。そんなことは全く考えられません。そうではなく、日本人は、論争に介入して、西洋人----つまり欧米人----に対して近代性は彼ら西洋人だけのものではないということを「思い起こさせる」のに、とりわけ絶好の立場にある、と思うのです。西洋以外にも、発展し、近代化する能力を有する大文化がいくつもあり、それは西洋の色あせたコピーであるに違いないなどと考えざるを得ないいわれは少しもないのです。


  ----あなたは日本とは特別な関わりがあるようにお見受けしますが。


 私が特別な関わりを持つ国というのは、実は二つあります(あくまでも個人的なレベルの話で、フィールド・リサーチや特殊な知識のレベルで関わりがあるわけではありません)。一つは日本で、これは私が行ったことのある国です。もう一つはイランで、私は行ったことはありませんが、大勢のイラン人と議論をするに至った経緯があります。

 日本とイランは非常に異なります。気質も違います。しかし私のフランス人としての観点からすると、この二つの文化は、非常に古い文化であり文明でありながら、近代化の過程を歩み始めた文明なのです。この類似にはしばしば心を打たれました。

(エマニュエル・トッド−Emmanuel Todd/歴史学者)

(聞き手=イザベル・フランドロワ)

"藤原書店PR誌『機』2008年2月号より抜粋"


出版社からのコメント

アメリカの終焉を謳い、世界的ベストセラーになった『帝国以後』の続編、緊急出版!

欧米のイスラーム脅威論の虚構を暴き、独自の人口学的手法により、イスラーム圏の現実と多様性に迫った画期的分析!


目次

序章 文明の衝突か、普遍的世界史か
第1章 歴史の動きの中におけるイスラーム諸国
識字化と出生率の低下
イスラーム圏における「世界の脱魔術化」か
第2章 移行期危機
第3章 アラブ家族と移行期危機
第4章 非アラブ圈のイスラーム女性ーー東アジアとサハラ以南のアフリカ
第5章 イスラーム世界の核心、アラブ圈
第6章 アラブ圈以外の大中東圈
第7章 共産主義以後
第8章 妻方居住のアジア
第9章 サハラ以南のアフリカ
結論
<附>インタビュー「平和にとってアメリカ介衆国はイランより危険である。」



著者紹介 エマニュエル・トッド 1951年生まれ。パリ政治学院卒業。ケンブリッジ大学歴史学博士。国立人口統計学研究所資料局長。

著者紹介 ユセフ・クルバージュ 1946年シリア生まれ。国立人口学研究所研究主任。イスラ-ム圏の人口動態研究の第一人者。

文明の接近EPL.jpg


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帝国以後=エマニュエル・トッド/2002 -- 邦訳・藤原書店- 2003.4 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

帝国以後=エマニュエル・トッド/[著]yL.jpg帝国以後

副書名 アメリカ・システムの崩壊
原書名 原タイトル:Après l'empire
著者名1 エマニュエル・トッド /[著]  
著者名2 石崎 晴己 /訳  
出版者 藤原書店
出版年 2003.4
ページ数 299p
大きさ 20cm
ISBN 4-89434-332-0
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館 2階社会 /319/ト/ NDC分類(9版) 319.53
一般件名 アメリカ合衆国-対外関係
内容紹介
イラク攻撃以後の世界秩序。世界の話題を独占中のホットな海外ベストセラー、待望の完訳。アメリカは“帝国”に非ず。ソ連崩壊を世界で最も早く予言した『新ヨーロッパ大全』のトッドが、ハンチントン、フクヤマ、チョムスキーらを逆手にとり、“EU露日VSアメリカ”という新構図、“新ユーラシア時代の到来”を予言。
目次
開幕
第1章 全世界的テロリズムの神話
第2章 民主主義の大いなる脅威
第3章 帝国の規模
第4章 貢納物の頼りなさ
第5章 普遍主義の後退
第6章 強者に立ち向かうか、弱者を攻めるか
第7章 ロシアの回復
第8章 ヨーロッパの独立
ゲームの終り
著者等紹介
■エマニュエル・トッド(Emmanuel TODD)■
1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。ケンブリッジ大学歴史学博士。パリ政治学院を卒業。2003年現在、フランス国立人口統計学研究所(INED)資料局長。。作家のポール・ニザンを祖父に持つ。L・アンリの著書を通じて歴史人口学に出会い、E・ル=ロワ=ラデュリの勧めでケンブリッジ大学に入学。家族制度研究の第一人者P・ラスレットの指導で、76年に博士論文『工業化以前のヨーロッパの7つの農民共同体』を提出。
同年、『最後の転落』で、弱冠25歳にして乳児死亡率の上昇を論拠に旧ソ連の崩壊を断言。その後の『第三惑星――家族構造とイデオロギー・システム』(1983)で、全く新しい「人類学的手法」による成果を呈示し賛否両論を巻き起こした。それと『世界の幼少期――家族構造と成長』(99年に2作は『世界の多様性』 (荻野文隆訳)として合本化)において、各地域における「家族構造」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関を鮮やかに示す、全く新しい歴史観と世界像を提示。

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大国の興亡=1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争--1993 [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

大国の興亡  原書名 The rise and fall of the great powers
副書名 1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争
 上巻  下巻
著者 ポール・ケネディ /著 
訳者 鈴木 主税 / 
出版者 草思社
出版年 1993.3
大きさ 20cm
版表示 決定版

新潟市図書館収蔵
所蔵館 所蔵場所 請求記号 
中央 自動書庫  /333/ケ/1 
豊栄 書庫 /332/ケ/1 

要旨(「BOOK」データベースより)

20世紀末の世界的大変化を見事に解読した画期的な労作。原注・参考文献・索引を付した決定版。
目次(「BOOK」データベースより)
上巻
第1部 産業革命以前の世界における戦略と経済

(西欧世界の興隆;覇権に手をのばしたハプスブルク家;財政、地理、そして戦争の勝利)
第2部 産業革命の時代の戦略と経済

(産業革命と世界の勢力のバランスの変化;二極世界の到来と「中級大国」の危機)
下巻
第2部 産業革命の時代の戦略と経済(二極世界の倒来と「中級大国」の危機)
第3部 現在から未来への戦略と経済(二極世界の安定と変動二十一世紀に向かって)


大国の興亡を経済、政治、社会といった様々な側面から分析した国際関係学の古典!上巻は中世から第一次世界大戦までを収録している。上巻では、殆どがヨーロッパの政治外交に紙面が割かれている。ヨーロッパ社会が他の地域よりも発展した理由をこの地域全てを統治するモノが現れなかったため、各国家が自由競争したことにあると本書では述べられていた。大国間で、ヘゲモニー国家が入れ替わる際のその社会の雰囲気を人口、経済力、軍事力といった定量的なデータからも、外交力、国民性、地理などの定性的な視点からも述べられており


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るーでる@柏葉 @rudel101
フランス革命の原因の一つに、ブルボン王朝の財政破綻があるのは有名だが、財政破綻の原因は、貴族や王妃の放蕩三昧というより、徴税制度が整っていなかったことのほうがより根本的。
  2012-07-03 15:38:0

収税吏などが高い利子を取って政府に前貸ししていたりするのだか、そもそも各段階でピンハネもしている(つまり、納税者は不当に高い税金を納めさせられる)

また、収税吏など、収税に携わる人間は税金から5%の手数料を取っており、国庫に納められる「前」に給与などの支払が高官によって行われ、さらにその高官も利子を取って君主に金を貸し付ける。

さらには、ネッケルの改革までは、包括的な財政収支という概念すらない。また、民間への支払いの約束も守られないことがあった。

こうしたなかでは、まとも金利でフランスに資金を融資しようとする銀行家がいる訳もなく、フランスへの融資にたっては、銀行家は高い金利を要求していた。


例えば、アメリカ独立戦争に際して、イギリスは3%の金利で戦費を調達しているが、フランスはその倍の6%で戦費調達を行わざるを得なかった。信用が段違いだったのだ。

こんな状態では、平時でさえ収入で支出を賄えず、毎年借金を重ね、信用はさらに低下……という恐るべきループにフランスは嵌まり込んでしまう。

こうした絶望的な財政がフランス革命の呼び水となったのである。……以上、ポール・ケネディの「大国の興亡」に基づいてお送りしました。

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銀の流通と中国・東南アジア [ユーラシア・米両大陸・アフリカ]

銀の流通と中国・東南アジア

The Circulation of  Silver in China and Southeast Asia銀の流通と中国・東南アジアL.jpg

【編】豊岡 康史[トヨオカ・ヤスフミ]大橋 厚子[オオハシ・アツコ]
山川出版社(千代田区)(2019/02発売)
サイズ A5判/ページ数 268p/高さ 21cm
商品コード 9784634672475
価格 ¥2,970(本体¥2,700)
NDC分類 565.13


内容説明
アヘン戦争直前、グローバルな銀の奔流に翻弄される中国と東南アジア。国際学術会議で展開された最新の経済史の議論を通じ、中国・東南アジアの近代の幕開けと世界経済の連環を読み解く。銀と世界経済史研究の最前線。
19世紀前半のアジアにおける銀流通の基礎的知識と、「中国銀の流出はアヘン戦争によるものなのか」といった、銀が経済・社会へ与えた影響に関する最新の研究成果を紹介した論集。

目次
第1部 中国
(アヘン戦争前夜の「不況」―「道光不況」論争の背景
;道光年間の中国におけるトロイの木馬―そして太平天国反乱期の銀とアヘンの流れに関する解釈
;十九世紀前半における外国銀と中国国内経済
;十九世紀中国における貨幣需要と銀供給)


第2部 東南アジア
(銀の流通に学ぶ十九世紀前半の東南アジア諸国家の動向―域外貿易を重視した概説
;近世ベトナムの経済と銀)


著者等紹介
豊岡康史[トヨオカ・ヤスフミ]
信州大学学術研究院(人文科学系)准教授

大橋厚子[オオハシ・アツコ]
名古屋大学大学院国際開発研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。


書評 雑記@史華堂
長らく世界で覇権を誇ってきた中国が、19世紀半ばになってなぜイギリス・フランス・アメリカなどの欧米列強諸国に取って代わられたのかという問題について、当時の国際通貨かつ中国での事実上の基軸通貨であった銀の流通事情からその背景を探ってみようというものです。加えて、当時の東南アジアについても考察しています。

上記のテーマについて問われると、真っ先に浮かぶ事件が1840年に勃発したアヘン戦争で、今でも教科書に必ず取り上げられるわけですが、アヘン戦争というのは実は中国の凋落の「結果」であって、覇権を失う原因ではないというのが今や共通認識です。中国のアヘン輸入も、確かに貿易赤字を生んでいたものの、中国の社会経済に深刻なダメージを与えるほどではなかったというのが通説?です。


となると、なぜ中国は覇権を失ったのか。もちろん欧米の軍事力、それを下支えする科学技術の蓄積が大きいのですが、経済の側面からその要因を探ってみると、1820年代に始まる中国の不況(年号を取って「道光不況」)に注目が集まっています。そしてこの不況は国際通貨たる銀の流通事情が大きく関わっていました。そこで本書では、当時の銀の流通実態がどのようなもので、それがなぜ中国経済に負の影響を与えたのか、という点で、視点の異なる論者が意見を戦わせています。


本書の出発点となっているのは、林満紅さんによる研究です(同氏の論考は残念ながら本書には未掲載)。それによると、中国で主に流通していた銀貨の供給元であるメキシコが独立する過程で政情が混乱して銀産出が落ち込み、中国への流入減少によって銀貨が高騰したこと(つまりデフレ)によると結論づけました。
 
ところが、このモデルについては実証面で問題があるとの批判があがりました。本書はその批判を中心に構成しています。
具体的に紹介すると、アレハンドラ・イリゴインさんは、メキシコの銀産出はそれほど減っていないとし、19世紀前半の中国では銀地金よりもスペイン領メキシコで鋳造されていた銀貨カルロス・ドルの方が地金換算で価値が高く流通していたため(つまりプレミアがついていた)、結果としてカルロス・ドルが中国へ流入し、地金の銀が大量に流出した結果、銀不足による高騰によって経済の停滞を招いたとしています。

一方リチャード・フォン・グランさんは、中国の不況はそもそも銀の流出が引き起こしたのではなく、各地で庶民が使用している銅銭の品質低下により価値が暴落し、それが庶民生活の購買力を大きく低下させた影響を重視します。
とまあ見解は三者三様でありまして、本書でも結論を急いでいないのですが、岸本美緒さんがこれらの議論を整理しつつ、実証的なデータを多く提示しながら、それぞれの議論をつなぐ論考を寄せています。(イリゴインさんの説にやや賛同しているように読み取れましたが。)

正しいかどうかはまだ検証が必要でしょうけれども、個人的には、イリゴインさんの指摘が銀流出の要因として考える際に非常に魅力的に映りました。
ほかにも興味深い論点がたくさんあったのですが、あまり長くなるのもなんなので、このへんで。いわゆる「グローバル・ヒストリー」の最前線に触れる機会として、専門外の方々にもチャレンジしてほしいと思います。

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