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ガザ地区沖で1990年代に発見された天然ガス田(通称ガザ・マリン)の存在 [ユーラシア・近東]

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ガザ地区沖で1990年代に発見された天然ガス田(通称ガザ・マリン)の存在です。
 『アラブニュース』は今年5月、「同地区(ガザ地区沖)の天然ガス埋蔵量は1.1兆立方フィート、あるいは320億立方メートルと推定される。これは20年間、毎年15億立方メートルの生産能力に相当する」と報じています。
 ガザ地区沖の天然ガス田の開発が進めば、天然ガスはエジプトに輸送され、欧州に送られることになります。ガス田が、ガザ地区のパレスチナ人が所有していると認められれば、その開発は、パレスチナ人に経済的な恩恵をもたらす可能性があります。
 パレスチナの経済専門家サミア・フーリエ氏によると、パレスチナは天然ガスパイプラインをイスラエルの都市アシュドッドへではなく、エジプトの都市エル・アリーシュに延長する予定です。
 この天然ガス田の権益をめぐって、イスラエル側、パレスチナ自治政府側が争っています。イスラエル側は、ガザ・マリンから天然ガスの抽出を行うには「イスラエルの承認が必要になる」、「ガス田を合法的に管理する権利を持つのは国家だけだ」などと主張しています。
 パレスチナ側は「『ガザ・マリン』ガス田は自分たちが所有している」と主張していますが、国家として認められていないパレスチナ自治政府が単独で天然ガスを採取することは認められません。パレスチナはイスラエルに対して開発を許可するよう要求したものの、拒否されています。
上記『アラブニュース』は、「この天然ガス採取プロジェクトは、2021年11月以降、深刻な財政危機に見舞われているパレスチナ自治政府にとって、不可欠といっていいほど戦略的に重要なものである」と述べています。
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  上記フーリエ氏は、ガザ・マリンが稼働した場合に得られる年間収入は7億ドルから8億ドルになり、10年以内には70億ドルから80億ドルの収入が得られると述べています。
 パレスチナ自治政府の高官は『アラブニュース』に対し、「天然ガスが採取されれば、パレスチナ自治政府の国庫にとって重要な収入源となり、今年末までに6億500万ドルに達する水不足を解消することができる」と語っています。
 エジプトがガス採取プロジェクトを監督すれば問題は解決することをイスラエル側も認めていますが、イスラエルが指を咥えて、「ガザ・マリン」ガス田の権益がパレスチナとエジプトで分けられることを見ているはずはありません。
 上記『アラブニュース』は、「パレスチナ投資基金(Palestinian Investment Fund)は2021年2月、エジプトガス公社(EGAS)の請負業者協会と、ガザ沖天然ガス田の開発で協力する契約を締結している」が、イスラエルとエジプトの高官による協議が行われ、「安全保障上の課題」などについて協議されたと見られている、と報じました。
 イスラエル側は、「ガス田の開発を武装組織ハマスが黙って見ているわけがないので、どのように開発を進めるのかが最大の問題」だ、などと主張しています。
 このイスラエルの主張には、聞き覚えがあります。米国が、ドイツとロシアの間をむすぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」には安全保障上の懸念があると言い立てて、横槍を入れ、稼働を阻止してきた経緯が重なります。
※イスラエル、ガザ地区沖の天然ガス採取めぐりパレスチナ自治政府と内密に協議中(アラブニュース、2023年5月6日)
 つまり、イスラエルがガザ地区からパレスチナ人を永久追放して占領し、自ら統治すれば、「ガザ・マリン」の天然ガスをエジプトではなく、自国に輸送し、その権益を独占することもできるのです。
 イスラエルにとっては、「永久追放文書」に示された計画は、パレスチナ人をガザ地区から追放して悲願の「入植」を達成して先住民族の権利の問題を永久に解消し、天然ガス田の権益を独占するという「一石二鳥」になるのです。

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