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親切は脳に効く – 2018/5/25刊行 [視座をホモサピエンス]

7198uop.jpg親切は脳に効く 
デイビッド・ハミルトン (著),
堀内久美子 (翻訳)
‏ : ‎ 265ページ
出版社 ‏ : ‎ サンマーク出版 (2018/5/25)
発売日 ‏ : ‎ 2018/5/25
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4763136121

本書を読めば、親切によって脳が変化することや、血管が拡張し、血圧が低下することをわかっていただけるだろう。親切はうつの克服に役立ち、老化の七つのプロセスを遅らせ、細胞レベルでの老化さえ防ぐこと、私たちはみな生まれつき親切であることもわかるだろう。人がなんといおうと、人間は生まれつき自己中心的なのではない。本当は、生まれながらに親切なのだ。
 親切の五つの副作用とは何だろうか ?  くわしいことはあとのお楽しみにして、手みじかにいっておこう。親切は人を幸せにし、心臓によく、老化を遅らせる。親切は人間関係を改善する。そしてどんどん拡散する。親切な行為をすると、この五つが一緒についてくるのだ。
本書ではこの五つの副作用それぞれに一章を充てている

目次より
第一の副作用――親切は、幸せをもたらす
第二の副作用――親切は、心臓と血管を強くする
  親切で、愛のホルモン「オキシトシン」が分泌される !
第三の副作用――親切は、老化を遅らせる
  あなたに忍び寄る七つの老化原因と、親切が効くすごいしくみ
第四の副作用――親切は、人間関係をよくする
  一番親切な人が生き残る「適者生存」の法則
  親切は、人間だけでなく動物との関係も深めてくれる
第五の副作用――親切は、伝染する
著者 デイビッド・ハミルトン
イギリス、スコットランド出身。グラスゴーのストラックライド大学で生物化学・医薬品化学を専攻し首席レベルで卒業後、有機化学で博士号を取得。大学3年生のとき量子力学の一分野である化学系の統計力学の試験で、満点という「オタク的偉業」を達成。博士号取得後、イギリスの大手製薬会社で心血管疾患とガンの新薬開発に4年間従事。退職後、国際救援慈善団体「スピリット・エイド」を共同で設立し、2年間理事を務める。職業教育カレッジで教えたり、グラスゴー大学で指導員を務めたりしながら執筆活動を開始し、今までに9冊の著書を刊行。

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アヘンからよむアジア史 [視座をホモサピエンス]

books-32506jpg.image.387x550.jpgアヘンからよむアジア史  
(4)著者名 内田知行・権寧俊 編  
(5)出版社 勉誠出版   
(6)備考 ISBN  978-4-585-32506-2
まえがき 内田知行
Ⅰ アヘンをめぐる近代アジアと西洋
アヘンをめぐるアジア三角貿易とアヘン戦争 権寧俊
オランダ領東インドとイギリス領マラヤにおけるアヘン問題 大久保翔平
【コラム】十八世紀以前のアジアにおけるアヘン 大久保翔平
フランス領インドシナのアヘン 関本紀子
【コラム】イギリス領インドとアヘン 杉本浄
Ⅱ 日本植民地・占領地のアヘン政策    ←詠みたい
植民地台湾のアヘンと国際アヘン問題 崔学松
植民地朝鮮におけるアヘン政策 権寧俊
関東州及び満洲国のアヘン政策 朴敬玉
蒙彊政権のアヘン 堀井弘一郎
【コラム】「満蒙」、「蒙疆」とはどこか? 堀井弘一郎
【コラム】東亜同文書院生の大旅行誌―一〇〇年前の学生フィールドワーク 関本紀子
裁かれた日本のアヘン・麻薬政策 小林元裕
Ⅲ 現代の薬物問題
現代日本の薬物問題 真殿仁美
【コラム】多様な視点が求められる日本の薬物防止教育 真殿仁美
中華人民共和国の薬物問題—国際社会における薬物を取り巻く動きが変化するなかで 真殿仁美
【コラム】ネットワーク化する中国の薬物犯罪組織—対岸の火事ではない 真殿仁美
【コラム】韓国芸能界の大麻問題 権寧俊 
【コラム】ベトナムの薬物汚染事情 関本紀子
現アフガニスタンのアヘン問題 内田知行
なぜ自然保護区は麻薬取引を助長するのか―中米コスタリカの事例から 武田淳
あとがき 内田知行

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出産や子育ての給付金では出生率は上がらない --世界中で少子化が止まらない理由 [視座をホモサピエンス]

ノルウェーの人口経済学者Vegard Skirbekkベーガール・スキルベック氏が解説
ヨーロッパでは1970年代に多くの国で出生率が人口置換水準(人口が増減せず均衡した状態になる出生率)を下回った。それ以降、欧州諸国の出生率は伸び悩んだまま現在に至る。ポルトガルやイタリアの出生率は1.3しかない。  【日本は1975年から】
インドでは2020年に、出生率が人口置換水準を下回った。韓国の合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率)は2017年以降1.1以下になり、世界最低になった。合計特殊出生率が人口置換水準を下回る国は、2020年時点で約100ヵ国にのぼる


各国政府は出生率を上向かせるために、子育ての補助金や出産一時金といった子供を産ませるための政策を躍起になって導入する。国連によると、出生率を向上させるための政策を実施する国は1976年時点でわずか9%だった。だが、2019年には28%にまで増えている。  【13か国⇒54ヶ国】 こうした制度は、家族生活の改善には効果が見込めても、往々にして出生率に一時的な変化以上のものをもたらさない。


出生率の低下は、生殖への自己決定権とジェンダー平等、教育などにおけるここ数十年の大きな進歩と軌を一にしている。いまは、身体に負担が少なく、長期間持続する避妊方法が存在する。女性の就労の機会も増加し、子供を産む、産まないに関する決定権も大きくなった。また、子育てにかかる費用の大きさや学校教育の長期化、宗教心の低下、多様な家族構成やライフスタイルへの寛容さも少子化が進む原因だろう。


出生率は、ひとりの女性が産む子供の数が2人を下回ると上昇しにくくなる。


============================


日本のひどすぎる少子化の原因は「非正規雇用者の増加」だ!




2016年に実施された日本国の調査によれば、18歳から34歳までの日本人のうち未婚男性の70%、未婚女性の60%に、交際相手がいないことがわかっている。
「出生率の低下、さらに未婚率の増加の背景には、『収入が不安定になっている』という経済的要因が第一に挙げられるのです」(米国 デューク大学のアン・アリソン教授)

日本の失業率は3%を切っている。しかし、それは臨時雇いやパートなどの不安定で低収入な就職口、つまり非正規雇用者ばかりが増えているだけであり、正規雇用者は減少している。この流れは、日本に限らず米国や他国でも同様だ。
日本のNPO法人「POSSE(ポッセ)」の調査によれば、非正規雇用者の平均月収は約18万~20万円。しかし大部分は、家賃や奨学金の返済、社会保障費や税金に費やされてしまうため、手元には生活費すらほとんど残らない。



テンプル大学ジャパンキャンパスのジェフ・キングストン教授によれば、日本人の約40%が非正規雇用だ。そして、30代前半の非正規雇用者のうち既婚者は約30%にとどまるが、正規雇用者の場合は56%にのぼる。

男性が一家の大黒柱とみなされる日本社会では、正社員ではない低収入の男性は、“望ましい”結婚相手にはなれないのだ。
女性が非正規雇用の場合は、正社員と異なり産休や育休制度がないため、産後に仕事を見つけるのが難しくなる。そうなると、やはり男性が正社員となり安定した収入を得なければ、結婚して子供をつくるのは難しい。


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気候適応の日本史ー2022.3刊ープロローグと目次 [視座をホモサピエンス]

気候適応の日本史   人新世をのりこえる視点
著者  中塚 武 /ナカツカたけし  出版者 吉川弘文館
プロローグ 続き
この数十年周期の気候変動、すなわちー〇年や二〇年かけて起こる気候変動こそが、人間社会に最も大きな影響を与えることがわかってきている
本書では、過去数千年問にわたり年単位の時間解像度で正確に明らかにされた気候変動のデータを駆使することで、さまざまな時間スケール (スピード)で起きた気候変動に対する歴史上の人々の適応のあり方を、その変動の周期ごとに詳細に明らかにする。
「気候変動、特にその変動の時間スケール (スピード)という観点から日本史を全面的にとらえなおすこと」が本書の第一の目的であり、読者の皆さんがこれまで馴れ親しんでこられた日本史の背景にある「隠された要因」を新鮮な驚きをもって発見してもらうことが、私の最大の望みである。
この本にはもう一つ別の大きなミッションがある。それは、「気候適応史研究を地球環境問題に対応するための新たな戦略としてとらえなおす」ということで、本書の副題「人新世をのりこえる視点」の意味である。

「現在とは根本的に違う未来」をつくることを目指して、「過去は現在とは違うが、未来も現在とは違う」のである。そうした視野でものを考える場合、歴史学や考古学は時空を超えて真に多様な社会を研究の対象にできるという意味で、現在とは違う未来を自由に構想するために不可欠な視点を提供してくれる可能性がある。
目次
古気候学と日本史の新たな出会い―プロローグ―――001
6165SaAqUNL.jpg地球温暖化と気候適応史の研究―――014
現代人に問われているもの―温暖化への対応―――014
古気候学の三つの任務と一つの可能性―――021
気候適応史の潜在的な役割―――028
人間にとって気候とは何か―――
(そもそも気候とは何か―――036
短期変動―日常生活を支配するもの―――043
長期変動―人類を運命づけたもの―――048
中期変動―未知のサイクルとその影響―――056
これまでの古気候復元とあるべき姿―――061
古気候データの世界と日本での急速な拡充
古気候学とは何か―これまでの経緯と近年の発展―――068
年輪気候学の特徴と日本における課題―――077
あらゆる周期の気候変動を復元する!―――086
長期~短期の気候変動と史資料の比較―――098
「長周期」変動への日本列島の人々の適応
水田稲作の伝来と列島内の伝播―縄文~弥生―――108
気候湿潤化と初期国家形成―弥生~古墳―――114
降水量の長期変動と遷都―古代―――119
大干ばつを契機とした荘園制への転換―平安―――124
小氷期の厳しい気候下での国土開発―江戸―――130
「中周期」変動への日本列島の人々の適応
数十年周期の変動が飢饉や紛争を生む―平安~江戸―――136
なぜ人間社会は数十年周期変動に脆弱なのか―一般/江戸―――154
数十年周期変動の振幅増大と時代の転換―弥生~江戸―――165
「短周期」変動への日本列島の人々の適応
領主と農民の意志決定の背景―室町―――174
生産力の向上への取り組み―江戸―――180
年単位の考古学研究の可能性―弥生~古墳―――189
気候と歴史の関係から何を学ぶか
気候変動と技術・制度革新の相同性―――204
なぜ気候適応に着目するのか―――212
気候適応の成功と失敗に学ぶ―――216
人新世をのりこえる知恵蔵としての歴史―エピローグ―――223
あとがき
参考文献

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クリの利用・・縄文時代-1万6000年前から [視座をホモサピエンス]

『日本考古学』第17号・2004.5.20発行 より 名久井文明氏の論文より

dongurikakuto.jpg

クリや「どんぐり」は、果皮を除かなければ、食べれない。
全国の縄紋時代以降の諸遺跡から果皮が除かれたクリ,「どんぐり」類が発掘されてる。
クリの場合には果皮が除かれた子葉の表面に深い皺シワが認められる。この皺はクリが果皮を除かれる前に十分に乾燥され、果皮の内部で子葉が収縮したために果皮との間に隙間ができた痕跡である。
出土遺物を見るとクリや「どんぐり」を乾燥させて備蓄し利用する文化が、縄紋時代の初期から 平安時代まで継続したように見える。(縄紋時代の初期・・一般的に1万6000±850年前と考えられている)
F3-2-3-15.jpg
杵キネで搗ツく 乾燥させてから備蓄したクリを食べる民俗例では、杵で搗ツいて果皮を破り,取りだした実を搗栗カチグリと呼んで煮て食べた。「どんぐり」についても同様に言うことができる。
「どんぐり」が殻斗カクトとつながっていた部分を「へそ」と呼ぶが、十分に乾燥された「どんぐり」を搗いた時に 果皮から分離する性質がある。「へそ」が,草創期から晩期までの各時期の遺跡から発見される。そして少数だが,縄紋時代の竪杵タテキネも発見されている。
2usukine.jpg
民俗例を考えると,このクリ「どんぐり」食文化は現代まで途切れ ることなく受け継がれている。民俗例では乾燥堅果類を備蓄する場所は炉・囲炉裏上空間だが,そ のことも縄紋時代以来受け継がれてきたことが考えられる。
続く

タグ:クリ
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人は感情によって進化したー2011.6 下 目次 [視座をホモサピエンス]

41SN8uBgt-L.jpg人は感情によって進化した

著者について
石川幹人(いしかわ まさと)
1959年東京生まれ。東京工業大学理学部卒業。
同大学院物理情報工学専攻、企業および国家プロジェクトの研究所をへて、現在明治大学情報コミュニケーション学部教授。
大学・大学院では、生物物理学・心理物理学を学び、企業では人工知能の開発に従事。遺伝子情報処理の研究で博士号(工学)を取得。専門は認知情報論および科学基礎論。
著訳書に、『心と認知の情報学』(単著/勁草書房)、『入門・マインドサイエンスの思想』(共編著/新曜社)、『心とは何か~心理学と諸科学との対話』(共編著/北大路書房)、『だまされ上手が生き残る~入門!進化心理学』(単著/光文社新書)、『ダーウィンの危険な思想』(共訳/青土社)などがある。 --T

目次 

はじめに
序章「野生の心」と「文明の心」
◆「感情」と「理性」は完全に分けられるものではない
◆「感情」が「思考」を方向づける
◆「感情」はジングルや草原で身につけた

第1章 恐怖と不安
◆「高所恐怖」も「閉所恐怖」も生まれつきもっている
◆「恐怖」が意識に臨戦態勢をとらせる
◆恐怖を克服すべき場合・残しておいたほうがいい場合
◆「不安」を解消するのによいテクニック

第2章 怒りと罪悪感
◆人もサルも「怒り」で上下関係を確立する
◆怒りは権利を守り、集団生活を発展させた
◆怒りが集団内の協力と平和を生み出した
◆集団間の競争が個人の能力の化を生んだ
◆「じぶんへの怒り」はどうして起こる?

第3章 愛情と友情
◆動物には子孫を生き残らせるための「愛情」と「冷酷さ」が同居する
◆子育てのために配偶者に愛情を示す
◆「友情」が集団内の協力をはぐくんだ
◆博愛の精神まではなかなかもてない
◆遺伝情報の欠陥で協力関係を築けない人もいる

第4章 好きと嫌い
◆食べ物の好き嫌いも生きのびるために必要たった
◆配偶者の好みは子どもを多く産み育てるのに有利かどうかから
◆得手不得手は集団内で必要とされる能力から始まった
◆学習と教育の始まり

第5章 嫉妬と後悔
◆配偶者への嫉妬は一夫一妻制を守るために役立った
◆集団内の嫉妬は利益を配分させるためだった
◆利益配分は現代でも重要な問題
◆「後悔」は失った配分を取り返す行動の源になった

第6章 自己呈示欲と承認
◆「欲求」と「感情」は同じもの
◆自己呈示欲求の目的は、じぶんの得意な技能を表明し集団に貢献すること
◆狩猟採集時代は集団に承認されるかどうかが死活問題たった
◆言語の起源は自己呈示だつたかもしれない
◆現代は自己呈示が集団への貢献につながったかどうかが不明確

第7章 楽しさと笑い
◆肯定的感情をもてない個体は淘汰されてしまう
◆「共感」が集団の協力を円滑にし、生き残らせた
◆笑いは楽しさを伝播させる効果が高い
◆共感能力は女性のほうが高い

第8章 悲しと希望
◆苦しみや悲しみが生き残りに果した役割
◆「同情」か「お金」かという問題の裏には野生と文明の対立がある
◆痛みは感情に近い
◆希望をもつことの功罪

第9章 信奉と懐疑心
◆信じることで集団の協力がうまくいった
◆じぶんを信じられない人が超常的なものを信じやすい
◆狩猟採集時代の小集団は互いに信用できる安心な集団だった
◆何を信じたらよいかわからなくなった現代
◆多様な考え方や情報を維持しつつ、懐疑心を育てる必要がある

第10章 驚きと好奇心
◆赤ちゃんの実験から、「驚き」は生まれつきの感情だとわかる
◆驚きが笑いに転化する
◆好奇心をはぐくむ遊びは進化のために重要たった
◆新しいことに挑戦する好奇心がなければ生きのびられない

第11章 名誉と道徳観
◆リーダーヘの尊敬と感謝など感情的な報酬が払われるよう進化した
◆集団の中での評判が生きのびるのに重要
◆現代社会では、集団の外の人々を敵と見るだけでは問題が起こる
◆地域の事情が特定の感情を失わせた可能性がある

第12章 幸福と無力感
◆幸福を感じる度合いは遺伝するal
◆幸福感は飽和する
◆意識は幸福を追求する
◆文明化するにつれて、幸福感は希薄になった
◆多様な集団に属し、多様な幸福を実現するのが未来のかたち

おわりに

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人は感情によって進化したー2011.6 上 [視座をホモサピエンス]

41SN8uBgt-L.jpg人は感情によって進化した
人類を生き残らせた心の仕組み
著者名1 石川 幹人 /[著]  
出版者 ディスカヴァー・トゥエンティワン
ディスカヴァー携書 番号 064

出版年 2011.6
ページ数 207p
大きさ 18cm
ISBN 978-4-7993-1024-3

新潟市立図書館収蔵   中央ホンポート2階 NDC分類(9版) 141.6

内容紹介 捕食者から逃げる「恐怖」、個体の上下関係を形成する「怒り」や「おびえ」、協力集団の維持に必要な「罪悪感」や「義理」。さまざまな具体例をもとに、感情の働きを明らかにし、感情が人間に備わった生物進化の歴史を考える。
われわれの祖先はジャングルで暮らしていた時代から、環境に適応するためにさまざまな感情を身につけてきた。「恐怖」「怒り」「愛情」「嫉妬」「楽しさ」「幸福」等々、感情から人類進化の秘密が見える。

感情の萌芽にあたる仕組みは、地球上に哺乳類が現れたころにはすでに、人類の祖先に備わっていたことでしょう。
感情は、生きのびるのに必要な機能として、生物進化の歴史をとおして、徐々に積み上がってきたのです。
捕食者から逃げる「恐怖」は比較的早い段階で、人類の祖先の動物の身につきました。
そして、個体の上下関係を形成する「怒り」や「おびえ」は、群れを形成するようになった段階で身につきました。
人間として進化した段階では、協力集団が築かれ、それを維持する役割を担う「罪悪感」や「義理」などの、複雑な感情が進化しました。
本書ではさまざまな具体例をもとに、感情の働きを明らかにします。
そして、感情が私たちに備わった生物進化の歴史を考えます。

人類が誕生してから、三〇〇万年近くが経過しています。親が子どもをもうけるまでに二〇年かかるとして、一〇万世代以上が経過したわけです。
いま生きている私たちは、一〇万組の親たちが、生き残りに成功しつづけてきた結果です。
私たちはいわば「勝者たちの末裔」なのですから、生き残るための多くの心の仕組みをもっていてしかるべきです。

また、私たちのうちの誰かふたりをとりあげ、はるか昔の親たちを調べれば、かならず同一人物がいます。
「人類はみなきょうだい」と言いますが、たとえではなく、ほんとうにそうなのです。ですから、私たちの心の働きの本質は、みんなかなり似かよっていると考えていいのです。
進化心理学は、こうした生物としての歴史をもとに、人間の心の働きの共通性や多様性を分析します。

本書では感情を切り口にして、「野生の心」がどのように進化してきたか、それを活用して「文明の心」を築くにはどうしたらよいか、を考えてきました。
人間理解の視野が広がってきたと、読者のみなさんが感じられたのならば、幸いです。

(おわりにより抜粋) --著者よりコメント --

著者について
石川幹人(いしかわ まさと)

1959年東京生まれ。東京工業大学理学部卒業。
同大学院物理情報工学専攻、企業および国家プロジェクトの研究所をへて、現在明治大学情報コミュニケーション学部教授。
大学・大学院では、生物物理学・心理物理学を学び、企業では人工知能の開発に従事。遺伝子情報処理の研究で博士号(工学)を取得。専門は認知情報論および科学基礎論。
著訳書に、『心と認知の情報学』(単著/勁草書房)、『入門・マインドサイエンスの思想』(共編著/新曜社)、
『心とは何か~心理学と諸科学との対話』(共編著/北大路書房)、『だまされ上手が生き残る~入門!進化心理学』(単著/光文社新書)、『ダーウィンの危険な思想』(共訳/青土社)などがある。 --T

目次 に続く


はじめに
序章「野生の心」と「文明の心」
◆「感情」と「理性」は完全に分けられるものではない
◆「感情」が「思考」を方向づける
◆「感情」はジングルや草原で身につけた

第1章 恐怖と不安
◆「高所恐怖」も「閉所恐怖」も生まれつきもっている
◆「恐怖」が意識に臨戦態勢をとらせる
◆恐怖を克服すべき場合・残しておいたほうがいい場合
◆「不安」を解消するのによいテクニック

第2章 怒りと罪悪感
◆人もサルも「怒り」で上下関係を確立する
◆怒りは権利を守り、集団生活を発展させた
◆怒りが集団内の協力と平和を生み出した
◆集団間の競争が個人の能力の化を生んだ
◆「じぶんへの怒り」はどうして起こる?

第3章 愛情と友情
◆動物には子孫を生き残らせるための「愛情」と「冷酷さ」が同居する
◆子育てのために配偶者に愛情を示す
◆「友情」が集団内の協力をはぐくんだ
◆博愛の精神まではなかなかもてない
◆遺伝情報の欠陥で協力関係を築けない人もいる

第4章 好きと嫌い
◆食べ物の好き嫌いも生きのびるために必要たった
◆配偶者の好みは子どもを多く産み育てるのに有利かどうかから
◆得手不得手は集団内で必要とされる能力から始まった
◆学習と教育の始まり

第5章 嫉妬と後悔
◆配偶者への嫉妬は一夫一妻制を守るために役立った
◆集団内の嫉妬は利益を配分させるためだった
◆利益配分は現代でも重要な問題
◆「後悔」は失った配分を取り返す行動の源になった

第6章 自己呈示欲と承認
◆「欲求」と「感情」は同じもの
◆自己呈示欲求の目的は、じぶんの得意な技能を表明し集団に貢献すること
◆狩猟採集時代は集団に承認されるかどうかが死活問題たった
◆言語の起源は自己呈示だつたかもしれない
◆現代は自己呈示が集団への貢献につながったかどうかが不明確

第7章 楽しさと笑い
◆肯定的感情をもてない個体は淘汰されてしまう
◆「共感」が集団の協力を円滑にし、生き残らせた
◆笑いは楽しさを伝播させる効果が高い
◆共感能力は女性のほうが高い

第8章 悲しと希望
◆苦しみや悲しみが生き残りに果した役割
◆「同情」か「お金」かという問題の裏には野生と文明の対立がある
◆痛みは感情に近い
◆希望をもつことの功罪

第9章 信奉と懐疑心
◆信じることで集団の協力がうまくいった
◆じぶんを信じられない人が超常的なものを信じやすい
◆狩猟採集時代の小集団は互いに信用できる安心な集団だった
◆何を信じたらよいかわからなくなった現代
◆多様な考え方や情報を維持しつつ、懐疑心を育てる必要がある

第10章 驚きと好奇心
◆赤ちゃんの実験から、「驚き」は生まれつきの感情だとわかる
◆驚きが笑いに転化する
◆好奇心をはぐくむ遊びは進化のために重要たった
◆新しいことに挑戦する好奇心がなければ生きのびられない

第11章 名誉と道徳観
◆リーダーヘの尊敬と感謝など感情的な報酬が払われるよう進化した
◆集団の中での評判が生きのびるのに重要
◆現代社会では、集団の外の人々を敵と見るだけでは問題が起こる
◆地域の事情が特定の感情を失わせた可能性がある

第12章 幸福と無力感
◆幸福を感じる度合いは遺伝するal
◆幸福感は飽和する
◆意識は幸福を追求する
◆文明化するにつれて、幸福感は希薄になった
◆多様な集団に属し、多様な幸福を実現するのが未来のかたち

おわりに



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進化政治学と平和 - 科学と理性に基づいた繁栄 [視座をホモサピエンス]

602636.jpg進化政治学と平和
- 科学と理性に基づいた繁栄
伊藤 隆太【著】
?芙蓉書房出版
発刊日 2022/4
サイズ A5判
ISBN?9784829508329

内容説明

気鋭の若手研究者が、戦争の原因(前著『進化政治学と国際政治理論』『進化政治学と戦争』)に次いで、進化政治学の視点で平和の原因を説明する。
なぜ人間はデフォルト状態ではしばしば欺瞞の罠(ワクチン陰謀論、宗教原理主義、社会正義運動、ポリティカル・コレクトネス等)に陥ってしまうのか?
?[→]人間本性の欠陥をコントロールする啓蒙が必要であることを示す「欺瞞の反啓蒙仮説」を提示
なぜ世界は平和に向かっているのか。人類は理性と科学の力で合理的に進歩してきた。
 [→] コンシリエンス(自然科学と社会科学の統合)の視点から進化政治学に基づいた新たなリベラリズム、「進化的リベラリズム」を提示
どうすれば道徳の進歩は可能になるのか?
[→] 人間本性の欠陥をコントロールすることが啓蒙の本質にあるとする「啓蒙の反実在論仮説」と人間本性の適応上の利点を軽視した啓蒙は失敗する可能性が高いとする「進化啓蒙仮説」を提示する。
目次
序 章 進化政治学に基づいたリベラリズム
第1章 進化政治学を再考する
第2章 政治学と人間本性――標準社会科学モデルと政治思想
第3章 修正ホッブズ仮説――進化的自然状態モデル
第4章 平和と繁栄の原因――進化的リベラリズム試論
第5章 進化的リベラリズムに対する批判――欺瞞の反啓蒙仮説
第6章 進化政治学と道徳――道徳の存在論テーゼと啓蒙の反実在論仮説
第7章 人間本性を踏まえた啓蒙――進化啓蒙仮説と人間行動モデル
終 章 理性と啓蒙を通じた繁栄
主要参考文献一覧


著者等紹介
伊藤隆太[イトウりゅうた]
研究分野は、国際政治学、国際関係理論、政治心理学、外交史、安全保障論、インド太平洋の国際関係と多岐にわたる。その他、思想・哲学(科学哲学、道徳哲学等)や自然科学(進化論、心理学、脳科学、生物学等)にも精通し、学際的な研究に従事
広島大学大学院人間社会科学研究科助教、博士(法学)。2009年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同大学大学院法学研究科前期および後期博士課程修了。同大学大学院研究員および助教、日本国際問題研究所研究員を経て今に至る。戦略研究学会編集委員・書評小委員会副委員長・大会委員、国際安全保障学会総務委員、コンシリエンス学会学会長。(本データは2021年10月当時のです)

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進化政治学と戦争―自然科学と社会科学の統合に向けて [視座をホモサピエンス]

591573.jpg進化政治学と戦争―

自然科学と社会科学の統合に向けて
伊藤 隆太【著】
 芙蓉書房出版
発刊日 2021/10
サイズ A5判/ページ数 350p/高さ 22cm
ISBN 9784829508213
NDC分類 311

内容説明

なぜ指導者はしばしば過信に陥り、非合理的な戦争を始めるのか?
なぜ人間は自己の命を犠牲にして、自爆テロを試みるのか?
なぜ第三世界の独裁者は瀬戸際外交の一環としてリスクを負ってでも核武装を目指すのか?
―こうした合理的アプローチでは説明できない逸脱事象の原因を「進化政治学」の視点で科学的に分析。既存の安全保障研究では見逃されていた興味深い知見を提供する。
目次
序章 進化政治学と社会科学の科学的発展
第1章 進化政治学を再考する
第2章 進化行動モデル―人間行動を理論化する
第3章 進化的リアリズム―進化政治学に基づいたリアリズム
第4章 戦争の原因とその進化―戦争適応仮説
第5章 戦争適応仮説に想定される批判
終章 人間本性を踏まえた平和と繁栄にむけて

著者等紹介
伊藤隆太[イトウりゅうた]
研究分野は、国際政治学、国際関係理論、政治心理学、外交史、安全保障論、インド太平洋の国際関係と多岐にわたる。その他、思想・哲学(科学哲学、道徳哲学等)や自然科学(進化論、心理学、脳科学、生物学等)にも精通し、学際的な研究に従事
広島大学大学院人間社会科学研究科助教、博士(法学)。2009年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同大学大学院法学研究科前期および後期博士課程修了。同大学大学院研究員および助教、日本国際問題研究所研究員を経て今に至る。戦略研究学会編集委員・書評小委員会副委員長・大会委員、国際安全保障学会総務委員、コンシリエンス学会学会長。(本データはこの書籍が刊行された2021年10月当時のです)

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進化政治学と国際政治理論 [視座をホモサピエンス]

497403.jpg進化政治学と国際政治理論 
副タイトル 人間の心と戦争をめぐる新たな分析アプローチ
伊藤 隆太 /著  
出版年 2020.2
出版者 芙蓉書房出版
ページ数 274p 大きさ 22cm
ISBN 978-4-8295-0783-4
県立図書館収蔵 NDC分類(9版) 319
内容紹介
気鋭の若手研究者が、科学哲学の科学的実在論、進化心理学、脳科学など諸分野の知見を総動員し、進化論的なパラダイムシフトを迫り、新たな進化政治学に基づいたリアリスト理論を構築する。
進化政治学(evolutionary political science)とは、1980年代の米国政治学界で生まれた概念。進化心理学を中心とする進化論的視点から政治現象を分析する手法で、欧米では最先端だが、外交史研究が主流な日本ではほぼ皆無ともいえる状況
“戦争と平和の問題に関心を寄せる国際政治学者にとっては、個々の進化政治学的知見を国際政治研究に組み入れるだけでなく、進化政治学という革新的なアプローチ自体がいかなる意義や論争をはらんでいるのか、こうした点を科学哲学の議論を踏まえつつ方法論に自覚的な形で再考することが必要とされている”(「まえがき」より)
進化論や脳科学といった自然科学の進展を受けて、こうした社会科学の「戦争は人間の本性とはかかわりがない」というセントラルドグマが〔標準社会科学モデル(standard social science model)と呼ばれるもの〕、実は逆に「非科学的」だったことが明らかになってきた。このことを体系的に主張しているのが進化政治学――進化論的知見を政治学に応用した学問――
本書では、こうした「戦争は人間の本性とはかかわりがない」という社会科学のセントラルドグマが誤りであるばかりでなく、実に危険なものであるという問題意識を抱いている。
目次
序章 進化政治学に基づいた国際政治研究
第1章 進化政治学とは何か―その理論的基盤
第2章 進化政治学を再考する―科学的実在論の視点からの一考察
第3章 国際政治理論はいかにして評価できるのか―新たな方法論的枠組みの構築に向けて
第4章 新たなリアリスト理論―進化政治学に基づいたリアリスト理論
第5章 ナショナリズムと戦争―ナショナリスト的神話モデル
第6章 過信と対外政策の失敗―楽観性バイアスモデル
第7章 怒りの衝動と国家の攻撃行動―怒りの報復モデル
終章 進化政治学に基づいた国際政治研究の展望
著者等紹介
伊藤隆太[イトウりゅうた]
研究分野は、国際政治学、国際関係理論、政治心理学、外交史、安全保障論、インド太平洋の国際関係と多岐にわたる。その他、思想・哲学(科学哲学、道徳哲学等)や自然科学(進化論、心理学、脳科学、生物学等)にも精通し、学際的な研究に従事
日本国際問題研究所研究員、博士(法学)。2009年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同大学大学院法学研究科前期および後期博士課程修了。同大学大学院法学研究科研究員および助教を経て、2019年より現職。慶應義塾大学法学部および海上自衛隊幹部学校で非常勤講師も務める。

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