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ヤコウガイの考古学--参照文献 先史琉球の生業と交易 -その下 [中世・国内]

ヤコウガイの考古学
【著】高梨修[タカナシオサム]
同成社(2005/05発売)


第7章 古代の琉球孤
終章 奄美諸島史のダイナミズム

参照文献 先史琉球の生業と交易 -奄美・沖縄の発掘調査から- 著者  : 木下, 尚子

  は、その上にて

夜光貝匙-小湊フワガネク遺跡o.jpg

総括 を、この下で扱う



240頁

奄美大島の6~8世紀のヤコウガイは、鳥外に搬出されていた可能性が高い。
(4)琉球史における6~8世祀の位置づけ 
 今回、共同研究の重点を生業と交易に置いたのは、以下の理由に拠っている。わたしたちは「琉球国(15世紀前半成立)の成立基盤はグスク時代(12~15世紀)に発展した農耕と対外交易にある」という認識に基づき、この二つの要素が先史時代からグスク時代にどのように変化したかを追うことで、島嶼国家の成立過程を先史時代に遡って理解しようとしたのである。

沖縄本島における農耕は、今のところ稲、大麦、小麦、粟、豆などの雑穀栽培として10世紀前後lこ始まったとみられる。また対外交易については、9世紀以降、ヤコウガイが螺鈿らでん素材として九州・西日本と交易されていたことが文献や工芸品、遺物から検証されている。つまりグスク時代を遡る時期、9~11世紀における農耕の開始とヤコウガイ交易が、グスク時代への発展の基礎を築いたと考えられるのである。


 では、それ以前の先史時代における交易と生業は、どうだったのだろう。交易では、今回の作業でヤコウガイが島外に運ばれていた可能性の高いことを指摘できた。農耕について高宮氏は、8世紀以前には奄美でも沖縄でも遺跡から栽培植物は検出されていないという。漁労活動について樋泉氏は、グスク時代を境に、その前後で明らかな変化が記められるという。すなわちグスク時代以前にはプダイ科が卓越するのに対し。グスク時代以降は漁獲量が減少し、ブダイ科の卓越もみられなくなる。黒住氏も、貝類採取活動についてグスク時代以前と以後に明瞭な差かあると指摘する。すなわちグスタ時代以前にはサンゴ礁の大型貝類が多く、以後には内湾・干潟の小型貝頬が多いという。黒住氏はさらに、8世紀以前において、グスク時代以後へのこうした変化の兆候は認められないとしている。ただ残念なことに、漁労にかんする9~10世紀の具体的な資料かまだ得られていない。これが11~12世紀にどう変化し、グスク時代の変化にどうつながっていくのかの解明も期待される。


 先史時代後半からグスク時代における交易と生業の変化は次のように整理されるだろう。6~8世紀には先史時代以来の採集経済か継続しているが、ヤコウガイを対象とする何らかの対外的な交易が始まっていた可能性が高く、9世紀には西日本とのヤコウガイ交易が確実に始まる。やや遅れて10~11世紀には冲縄で植物栽培が始まり、一部の住居形態に次の時代に向かう変化がみられ、漁労活動にも同様の変容か現れていた可能性かある。グスク時代(12~15世紀)になると漁労活動や住居形態は一斉に変化し、同時に対外交易も、交易相手に中国等を含んで国際的になる。琉球国以前の交易と生業の動向は、このように段階的な変化として把握できる。


 生業と交易を通してみた琉球列島の6~8世紀は、奄美ではヤコウガイを通して何らかの対外交易を行っていたか、日常生恬では先史時代以来の採集経済が依然継続し、10世紀以降の国家形成に向かう変化にはなお遠い段階にあった、と位置づけられる―今回の共同研究の結論である。

先史琉球の生業と交易 -総括2006年ー-241-縮.jpg

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ヤコウガイの考古学--参照文献 先史琉球の生業と交易 -奄美・沖縄の発掘調査から-その上 [中世・国内]

ヤコウガイの考古学
【著】高梨修[タカナシオサム]
同成社(2005/05発売)


第7章 古代の琉球孤
終章 奄美諸島史のダイナミズム

参照文献 先史琉球の生業と交易 -奄美・沖縄の発掘調査から- 著者  : 木下, 尚子

  


琉球列島は、日本列島の南部に連なる大小188島嶼の弧状列島である。沿岸を北上する黒潮のために気候は熱帯的で、島の周囲には北限のサンゴ礁が発達する。島には低く平らな石灰岩地形が卓越し、人々は地下からの湧水に頼った生活をしてきた。河川は小規模で、沖積平野は少ない。琉球国は、こうした環境において15世紀初めに成立した国家である。それは、全長1000kmに及ぶ海域を支配した海洋国家であり、大和中央部以外で成立した唯一の独立国家でもあった。亜熱帯の島嘆域において国家はどのように形成されたのか、  なぜ一島(沖縄本島)が先島諸島を含む長大な海域を支配しえたのか。本研究の起点はここにある。


多くの琉球史研究で明らかにされているように、琉球国の建国は、明の朝貢貿易において優遇されたことが最大の要因であり、建国の支柱は明らかに対外貿易であった。こうした貿易を実現させたのは、12世紀以降登場する按司とよばれる首長たちであり、その活躍する時代はグスク時代(12世紀から15世紀前半)として区分されている。金武正紀、當真嗣一によると、この時代の特徴は、1.稲作・麦作を中心とする農業社会であった、2。鉄器生産が活発であった、3.海外貿易が活発であった、4.奄美大島から先島諸島までが同一文化圏として統一された、である(金武ほか1986)。グスク時代のめざましい社会の進展は、その前代に発展要因が準備されていたからである。

しかしその前代、すなわち沖縄貝塚時代後期(以下沖縄後期)末(9世紀から11世紀)において、グスク時代につながる積極的状況は、畑作地である9~10世紀の遺跡が沖縄本島に一ヶ所知られる(那崎原遺跡)こと以外、よくわかっていない。また同後期後半(6世紀から8世紀)の状況も不明な部分が多い。沖縄後期後半から末期における土器の変化はゆるやかで、グスク時代 の土器様式への鮮やかな変化とは一線を画している。


農耕や交易で特徴づけられるグスク時代の状況は、変化の緩慢な沖縄後期からみると、突然のジャンプのように見えるのである。ただ後期後半の奄美諸島の遺跡からは、多種の鉄製品のほかに鞴羽口(ふいごはぐち、鞴とは、金属の製錬・精錬の際に用いる送風のための装置で、羽口はその送風口)がみつかっており、鉄生産や沖縄後期末の農耕の開始など、グスク時代へのジャンプカが前代においてゆっくりと準備されていたことを予測させてくれる。穏やかな準備と急激な変化が具体的にどのように進行したのか、本研究ではこのことを、遺跡の調査、環境復:原、生業の追究を通して明らかにしょうとしている。


本研究のもう一つの視点は交易である。表1は、紀元前3000年から紀元1500年間の琉球列島の歴史を、大和と中国の関係に注目して作成した模式的年表である。紀元前300年頃から紀元600年前後にかけて、大型貝類を需要・消費した大和と琉球列島の問に、連続した交易関係を認めることができる(木下1995)。しかしこうした経済関係も、その後大和に律令国家が成立するに伴い政治的関係に変化して冷却し、琉球列島は大和から遠ざかってしまう。その後大和との頻繁な関係が復活するのは、グスク時代初期(12世紀)である。つまり、交易においても7世紀から11世紀は空白なのである


 私はこの時期、琉球列島に出土する開元通宝(唐621年初鋳)に着目し、その分析から、琉球列島のヤコウガイが、7世紀以降唐で発達したヤコウガイ螺釦の原料として交易された可能性の高いことを示した(木下2000)。ヤコウガイは、9世紀を境に中国から日本に消費の中心が移動するので9世紀以降は大和に対する交易品となった可能性が高い。またホラガイも10世紀以降、日本向けの交易対象となっている(木下1996)。表1はこうした貝交易研究の成果を加えたものである。このようにみると、空白の7世紀から11世紀の経済活動にヤコウガイ交易を当てはめることが可能であり、これがグスク時代の海外貿易の開始と何らかの関係をもった可能性がでてくる。


 本研究は、大きくは琉球列島における国家形成過程の歴史的理解を目指すものであり、具体的には、金武・當真両氏によるグスク時代の特徴(農耕、鉄生産、海外貿易、広域支配)がどのように形成されたのかを、とくに農耕と交易に重点をおいて、追究することを目的とする。

先史琉球の生業と交易 --12p.jpg




 先史琉球の生業と交易 -総括2006年ー_239-縮.jpg

先史琉球の生業と交易 -総括2006年ー-241-縮.jpg




へ続く


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ヤコウガイの考古学--ものが語る歴史シリーズ=2005 [中世・国内]

ヤコウガイの考古学
【著】高梨修[タカナシオサム]

同成社(2005/05発売)

  ものが語る歴史シリーズ 10

A5判: 21.4 x 15.8 x 2.4 cm/ページ数 293p
ISBN-13: 978-4886213259
発売日: 2005/5/1
価格 ¥5,184(本体¥4,800)

新潟県立図書館収蔵 資料コード 0010005050543  NDC分類 210.2


内容説明
ヤコウガイは本州に生息しない貝にもかかわらず、古代より螺鈿の原材料として珍重されてきた。その供給地域はほとんど未詳とされてきたが、近年奄美大島の古代遺跡から大量に出土し注目されている。
本書は、古代~中世段階の琉球孤の国家境界領域を中心とした交易史を、これまでの沖縄中心史観から脱却し、奄美大島で確認されたヤコウガイの大量出土遺跡によって考古学的に明らかにしようとする野心的な試みの書である。

正倉院伝来の貝製品と貝殻 ―f14.jpg

著者紹介 1960年東京生まれ。法政大学大学院人文科学研究科日本史学専攻博士課程単位取得退学。発刊時・名瀬市立奄美博物館勤務。

ヤコウガイの考古学00_.jpg目次
序章 本書の課題
第1章 スセン当式土器の分類と編年
第2章 兼久式土器の分類と編年
第3章 奄美諸島の土器編年
第4章 小湊フワガネク遺跡群の発掘調査
第5章 ヤコウガイ交易
第6章 貝をめぐる交流史
第7章 古代の琉球孤
終章 奄美諸島史のダイナミズム

参照文献 先史琉球の生業と交易 -奄美・沖縄の発掘調査から- へ続く


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交流の考古学-2000=ヤコウガイ交易の考古学―奈良~平安時代並行期の奄美諸島、沖縄諸島;;続縄文から擦文文化成立期にかけての北海道・本州間の交流 [中世・国内]

交流の考古学
【編】小川 英文(OGAWA Hidefumi)
朝倉書店
 A5判/ページ数 302p/高さ 22cm
ISBN-13: 978-4254535358
発売日: 2000/05

価格 ¥5,616(本体¥5,200)


出版社内容情報
目に見える遺物から,目に見えない移動・交流を復元する試み。とくに交流のメカニズムや,社会の発展プロセスといった理論の領域にまで踏み込んだ。

〔内容〕交流とスタイル伝播/貝交易システムと情報の選択/共生関係の視角/他

【本書では、これまで日本考古学が踏み込まなかった想像の領域を、交流を視角として渉猟する理論的方法について論じるものである。モノという実体のうらに隠れて目には見えないが、実在したことが確実な社会の組織や構造を想定しながら、そのシステムの諸関係を検討することによって、想像領域を実体化させていく試みである。】総論より


目次
交流の考古学 0_.jpg総論 交流考古学の可能性―考古学の表象責任をめぐって
第1章 考古学資料における交流の読み方―民族学からのメッセージ
第2章 オセアニアの島嶼間交流
第3章 続縄文から擦文文化成立期にかけての北海道・本州間の交流―その交易システムの展開
第4章 フィリピンにおける交易時代研究の展開―長距離交易と複合社会の発展
第5章 カリンガ土器の変化過程
第6章 縄文時代の交換組織
第7章 「交流」の複元レシピ“欧米風”―欧米考古学における「交流」復元の方法論的比較、及び植物考古学(archaeobotany)による交換/交易復元の可能性
第8章 ヤコウガイ交易の考古学―奈良~平安時代並行期の奄美諸島、沖縄諸島における島嶼社会
第9章 狩猟採集社会と農耕社会の交流:相互関係の視角


【 スチュアート、松本論文は、アラスカからカナダにわたる極北圏に高い均質性を保持してきたと考えられているチューレ文化(A.D.1000年~1500年)を題材として、考古学における交流の議論の前提を再検討する論文である。従来提示されてきたチューレ文化の均質性は、銛頭の型式学を根拠にしており、その他の遺物や、地域的な生態条件、生業形態の差異は十分には考慮されてこなかった。本論ではイヌイトの多様な物質文化とチューレ文化の考古資料とを比較しながら、先史時代における交流のあり方を考古遺物のみで論じる危険性に注意を喚起している。結果としてホッダーのバリンゴ研究の結果が提示したように、特定の考古資料の分析結果を先史文化の性格として表象する考古学研究の枠組みに対する批判が展開されている。】

2. 考古学資料における交流の読み方―民族学からのメッセージ―
 2.1 交流について
 2.2 極北地帯チューレ文化における交流の検証
 2.3 考 察
 2.4 結 言

 【印東論文では、オセアニア考古学のコンテクストにおける交流モデルの比較検討が行われている。鉱物資源がないなど、自然環境に大きな制約がある珊瑚島に暮らす人々は、近隣の火山島との交流をもつことによって、巧みにその居住を継続してきた。このような交流は二方向的ではあるが、交換される物資の社会的重要性には珊瑚島と火山島とでは差がある。本稿では、単に珊瑚島と火山島との間の物資の移動(交換)を検証するのではなく、その交流の社会的意味が、珊瑚島と火山島とでは大きく異なっていることを、メラネシアとミクロネシアとの交流モデルの比較をとおして検討している。】
3. オセアニアの島嶼間交流
 3.1 はじめに
 3.2 メラネシアの「交流」
 3.3 ミクロネシアの交流:珊瑚島と火山島
 3.4 結 語

 【山浦論文は、続縄文から擦文文化成立期にかけての北海道・東北間における交易形態を、考古・文献資料をもちいながら検討したものである。東北の弥生時代から9世紀のヤマト朝廷の時代にかけて、狩猟採集社会蝦夷(エミシ)との交易関係を考古資料と文献資料で補いながら、記録に残った公式の交易(朝貢・饗給)をもとにして、そこには現われてこない非公式の交易活動の活発さを読み取ろうとしている。交易の考古学モデルにはレンフリューによる10の「交換モード」がもちいられている。】
4. 続縄文から擦文文化成立期にかけての北海道・本州間の交流
   ―その交易システムの展開―
 4.1 はじめに
 4.2 交易の諸相
 4.3 続縄文時代の交易
 4.4 擦文文化成立期の交易
 4.5 おわりに

【 田中論文は、長距離交易とレシーバー社会の統合化過程のメカニズムについて、これまで提示されてきた社会統合論、長距離交易と首長国の成立などの理論を検討している。フィリピン低地社会にみられる中国陶磁器など長距離交易によってもたらされた遺物が出土する集団墓や集落の資料をもとにしながら、世界システムに組み込まれる直前のフィリピン前近代の様相を首長制の発展プロセスとしてとらえたモデルが検討されている。】
5. フィリピンにおける交易時代研究の展開―長距離交易と複合社会の発展―
 5.1 はじめに
 5.2 ハッテラーの調査と研究
 5.3 西村の研究と調査
 5.4 ユンカーの調査と研究
 5.5 おわりに

【 小林論文では、土器属性の伝播についての民族考古学的研究をとおして、その地域的コンテクストを生かしながら、新たなモデルが提示されている。従来の縄文・弥生土器の文様の分析では、文様の類似が集団間の交流の度合いを反映するという前提にたって、スタイル属性の類似度から集団間の交流の度合いが論じられてきた。しかし土器製作の民族例をみると、集団間の交流度が必ずしもそのまま文様の類似性に反映されているわけではない。本稿ではフィリピン、ルソン島山岳地帯に生活するカリンガ族の土器文様と器形の属性について、土器製作村間の差異と時間的な変化を観察し、その要因を検討している。最後にその結果をふまえ、土器のスタイル属性の伝播についての「カリンガ・モデル」が提示されている。】
6. カリンガ土器の変化過程
 6.1 はじめに
 6.2 分析資料
 6.3 ギリ文様
 6.4 オカズ用土鍋の形
 6.5 水甕の赤彩文様と形
 6.6 土器の移動からみた2村の土器生産の変化
 6.7 考 察

【 古城論文は、縄文中期の東京における石器の交換組織が、石材産地から離れた場所に形成されていることを提示しながら、当該期の社会組織の様態に迫ろうとするものである。すでに古城によって発表されている同じ地域のチャートの交換組織についての研究成果(古城1999)と、今回とりあつかった石皿の交換組織とを比較検討することによって、石材産地から離れたこれらの供給の中心地は首長制等における再分配センターを想定できるものではなく、したがって階層制社会との直接的結びつきは否定されている。遺物の数量データをもとにした交換組織の復元の重要性を指摘し、このアプローチが拓く縄文社会研究への可能性が提示されている。】
7. 縄文時代の交換組織
 7.1 はじめに
 7.2 縄文時代の交換組織―これまでの研究―
 7.3 縄文中期における石皿の交換組織
 7.4 チャート・黒曜石交換圏との比較
 7.5 縄文時代の交換組織
 7.6 結 論

【 細谷論文では、農耕の日本列島への伝播と受容は、単に食料としてのコメという経済的側面の重要性のみに注目して導入が図られたわけではないということを前提としている。そこには大陸と日本における社会的、政治的諸関係をベースにしたさまざまな交流のあり方が想定される。このような問題へのアプローチのしかたとして農耕技術をひとつの情報としてとらえ、最近のレンフリューによって主導される認識考古学とホッダーを代表とする情況考古学(contextual archaeology)とを比較する。そしてこれらのアプローチの相違を明らかにしながら、農耕技術伝播を契機とした大陸と日本の交流のあり方への視角を探求している。】
8. 「交流」の復元レシピ“欧米風”―欧米考古学における「交流」復元の方法論的
   比較,及び植物考古学(archaeobotany)による交換/交易復元の可能性―
 8.1 はじめに
 8.2 欧米考古学における「交流」(物質の流通)復元法
 8.3 交換・交易の対象としての植物―植物考古学から考える「交流」―
 8.4 結語―日本考古学と欧米考古理論の「交流」について―


【 高梨論文は、奈良・平安時代併行期の奄美、沖縄諸島の「島嶼社会」の様相を、螺鈿細工にもちいられるヤコウガイの交易を視角として検討している。奈良・平安時代以来、日本における「周辺社会」に位置づけられている奄美、沖縄諸島では、長い間、階層社会の登場が遅れたものと解釈されてきた。そこには日本の中心からまなざした、歴史家、考古学者による「周辺史観」が反映していると指摘する。しかも奄美諸島は、そののち琉球王朝を形成する沖縄諸島からも周辺化され、日本と沖縄によって二重に周辺化されてきた。本論考では「周辺史観」を批判しながら、ヤコウガイの考古資料と交易にかんする文献資料とを検討し、奄美諸島社会が日本との交易をつうじて社会の統合度を高めていくプロセスをモデルとして提示している。奄美諸島が日本と沖縄によって二重に周辺化されてきたという指摘は、南西諸島の先史時代ばかりでなく、歴史へのまなざしの政治性を批判するものとして受け取らなくてはならない。】
9. ヤコウガイ交易の考古学―奈良~平安時代並行期の奄美諸島,沖縄諸島における
  島嶼社会―
 9.1 はじめに
 9.2 ヤコウガイ抄録
 9.3 ヤコウガイ大量出土遺跡
 9.4 浮かび上がる古代交易
 9.5 遠隔地交易をめぐる議論
 8.6 考古学モデルの構築
 9.7 結語―奄美諸島における歴史の回復―

【 小川論文は、東南アジア考古学における狩猟採集社会存続の問題解明のために提示された3つのモデルを検討し、狩猟採集社会と農耕社会との相互依存関係のモデルが拓く考古学の可能性を提示している。「周辺社会」、「非文明」とされる狩猟採集社会の存続について構築されたモデルは、考古学者の問題意識や時代状況によって大きく左右されてきた。本論稿では「カラハリ論争」が提起した、いまなお狩猟採集社会研究に強く残る、隔離モデルの残影としての「純粋性」の問題の所在を検討し、高梨論文が指摘する他者へのまなざしの政治性批判を展開している。】
10. 狩猟採集社会と農耕社会の交流:相互関係の視角
 10.1 はじめに
 10.2 東南アジア先史時代における考古学的コンテクストとはどのようなものなのか
 10.3 同時存在のモデルはどのように推移してきたか
 10.4 結論:同時存在の考古学が提示する可能性とはどのようなものなのか

 
編者 小川 英文 (OGAWA Hidefumi)
2019年7月現在 東京外国語大学 大学院総合国際学研究院/教授
早稲田大学文学研究科史学(考古)専攻博士後期課程 中退

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琉球からみた世界史--2011 [中世・国内]

琉球からみた世界史

編者 村井 章介 [ムライショウスケ]
東京大学大学院人文社会系研究科教授 
編者 三谷 博[ミタニヒロシ]
東京大学大学院総合文化研究科教授 


出版者 山川出版社
 A5判: 21.2 x 14.6 x 1.2 cm/ページ数 21,161p
ISBN-13: 978-4634523586
発売日: 2011/6/1
価格:本体3,200円 + 税

新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館 2階歴史12番書架   NDC分類(9版) 219.9

内容紹介
2007年の史学会第105回大会の公開シンポジウム「琉球からみた世界史」の成果を取りまとめ、現在の琉球史の研究状況を俯瞰。近代以前の琉球史のもつ世界史的意味を探り、さらに今後の課題を考える。

内容一覧
タイトル 著者名 ページ
1章 「キカイガシマ」海域の考古学―「境界領域」としての奄美群島 高梨 修/著 3-31頁
2章 古琉球をめぐる冊封関係と海域交流  村井 章介/著 32-57頁
3章 久米島と琉球国―久米島おもろの世界 吉成 直樹/著 58-73頁
4章 ラタナコーシン朝初期シャムにみる「朝貢」と地域秩序
  ―「まるで琉球のようだ」(伊藤博文 一八八八年一月二十三日)  小泉 順子/著 74-90頁
5章 鄭秉哲の唐旅・大和旅―皇帝と話をした琉球人  渡辺 美季/著 91-106頁
6章 琉球と朝鮮の儒教  澤井 啓一/著 107-120頁
7章 ペリー艦隊の琉球来航―西洋の衝撃と対応をめぐって 真栄平 房昭/著 121-136頁
8章 世界史からみた琉球処分―「近代」の定義をまじめに考える 與那覇 潤/著 137-158頁
おわりに-「近代から近世へ」の転換点に立って  村井 章介
目次
琉球からみた世界史L.jpg
1章 「キカイガシマ」海域の考古学-「境界領域」としての奄美群島
 はじめに
 1 ヤコウガイ大量出土遺跡(奄美大島)
 2 「カムィヤキ古窯跡群」(徳之島)
 3 「城久遺跡群」(喜界島)
 4 散乱する滑石製石鍋(大隅諸島)
 5 寺社に奉納された貿易陶磁器(トカラ列島)
 6 「キカイガシマ海域」の歴史的性格
2章 古琉球をめぐる冊封関係と海域交流
 はじめに
 1 冊封体制下の琉球
 2 『歴代宝案』から海域交流をかいまみる
 3 ヤマトとの私的関係から琉球中心の君臣秩序へ
 むすびにかえて-薩摩への従属化
3章 久米島と琉球国-久米島おもろの世界
 はじめに
 1 久米島と「やまと」
 2 中山への入貢と支配領域
 3 久米島と宮古,八重山
 おわりに
4章 ラタナコーシン朝初期シャムにみる「朝貢」と地域秩序
 -「まるで琉球のようだ」(伊藤博文 1888年1月23日)
 はじめに
 1 清朝への朝貢と交易
 2 冊封とシャム王権-二世王の事例
 3 シャムと周辺諸国-ベトナムとカンボジア
 おわりに-「まるで琉球のよう」だったのか
5章 鄭秉哲の唐旅・大和旅-皇帝と話をした琉球人
 はじめに
 1 久米村の鄭秉哲-そのキャリアと五度の唐旅
 2 日本における鄭秉哲-大和旅の諸相
 3 最後の唐旅-皇帝との会話
 おわりに
6章 琉球と朝鮮の儒教
 はじめに
 1 琉球儒教の特色
 2 朝鮮儒教の特色
 結語
7章 ペリー艦隊の琉球来航-西洋の衝撃と対応をめぐって
 はじめに
 1 ペリーの通商戦略
 2 琉球に対する認識
 3 琉球王府の外交
 4 外圧と民衆
 むすびにかえて
8章 世界史からみた琉球処分-「近代」の定義をまじめに考える
 はじめに-「近代」という厄介な主題
 1 近代=国民国家論再考
    -琉球処分はナショナリズムの論理で遂行されたのか?
 2 近代=主権国家論再考
    -琉球処分は必然的に朝貢体制を破壊したのか?
 3 西洋近代再考
    -そもそも近代とはいかなる体制なのか?
 4 東アジア(初期)近代再考
    -西洋との分岐はどこで生まれたのか?
 5 日本近代再考
    -日本史が世界史上で占める位置とは何か?
 おわりに-「近代から近世へ」の転換点に立って

タグ:琉球・沖縄
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古琉球--著者 伊波普猷・いはふゆう--岩波文庫 青N102-1 [中世・国内]

古琉球
著者 伊波普猷・いはふゆう 
著者 外間 守善 /校訂 
出版者 岩波書店
 岩波文庫 青N102-1;ページ数 487p
出版年 2000.12
ISBN-13: 978-4003810217

定価:¥1231

新潟市図書館収蔵  中央・ホンポート館  NDC分類(9版) 219.9

内容紹介
古琉球0岩波文庫 青N102-1_.jpg薩摩藩による支配に続く明治政府による沖縄人に対する不当な差別を目の当たりに見、骨身にしみて育った「沖縄学の父」伊波普猷(1876-1947)は、沖縄を識るために、「おもろ」に学び、歴史を探り、言語や民俗を確かめた.本書は沖縄学樹立の記念碑的作品であり、歌謡集『おもろさうし』とともに、沖縄を知るための必読の書.

目次
琉球人の祖先に就いて
琉球史の趨勢
沖縄人の最大欠点
進化論より見たる沖縄の廃藩置県
土塊石片録
浦添考
島尻といえる名称
阿麻和利考
琉球に於ける倭寇の史料
琉球文にて記せる最後の金石文〔ほか〕


古琉球・伊波普猷・いはふゆう2.jpg紹介-村井章介

「古琉球・こりゆうきゆう」とは「沖縄学の伊波普猷・いはふゆう・が造ったことぱで、一六〇九年(日本慶長一四年・民万暦三七年)に薩摩島津氏に征服される以前の琉球をさす。伊波の処女作にして代表作のタイトルも『古琉球』という〔伊洩二〇〇〇、原著は一九一一年初刊〕。
 古琉球の時代、琉球は日本の国家領域の外にあったそのころの日本を現在の日本と区別して学問的にとらえようとするとき、何とよべばよいか。現在でも使われることばに 「内地」「本土」があるが、いずれも「内」「本」を優位とする階層性を含意する点で、学問用語としては好ましくない。
 ここでヒントとなるのか、琉球人とアイヌが自身および「日本」をどうよんでいたかだ。琉球人は、自身の「国」をウチナー、「日本」をヤマトとよび、それぞれの人は「ウチナーンチュ」「ヤマトンチュ」といった。アイヌのばあいは人と「国」の関係が逆になって、自身を「アイヌ」(人の意)「日本」人をシサム(なまってシャモ)とよび、それぞれの「国」を「アイヌモシリ」「シサムモシリ」といった(モシリは「土地」の意)。



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世界史のなかの戦国日本--2012;04=「海から見た戦国日本」(1997年刊)の改題増補 [中世・国内]

世界史のなかの戦国日本
著者 村井章介[ムライ ショウスケ] 
出版者 筑摩書房
  ちくま学芸文庫 番号 ム5-1
「海から見た戦国日本」(1997年刊)の改題増補
文庫判: 14.8 x 10.6 x 0.4 cm/ページ数 315p
出版年 2012.4
ISBN:978-4-480-09444-5
定価:本体1,200円+税
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館1F文庫36番書架  NDC分類(9版) 210.47。

内容紹介
  世界史の流れの中から日本列島を眺めると、意外な景色が浮かび上がってくる!群雄割拠の中から織田・豊臣を経て徳川安定政権を生んだ戦国時代。しかし15、16世紀の日本では、商業圏の拡大という別の覇権争いが始まっていた。サハリン・沿海州貿易を手中に収めようと画策する蛎崎氏、東南アジアにまで及ぶ西南海貿易で富を築いた琉球王国とその座を狙う島津氏、南蛮貿易のためにおたずね者まで取り込む松浦氏、当時の世界基軸通貨=銀貨をめぐり暗躍する倭人ネットワーク…。地域史をより広い視点で理解する「グローバル・ヒストリー」の先鞭をつけた歴史学の名著。
版注記 「海から見た戦国日本」(1997年刊)の改題増補

[海から見た戦国日本]の内容紹介
世界史のなかの戦国日本5.jpg那覇を拠点に中継貿易で賑わう港市国家・琉球。津軽、松前から北へ広がる対露交易。そして明の世界秩序に挑戦し、朝鮮出兵を企てた豊臣秀吉…。日本史の一六世紀は、戦国の乱世から、織豊政権による全国統一を経て「徳川の平和」で幕を閉じる大変動期だった。では日本列島の外では、どのような事態が展開していたのだろうか。キリスト教や鉄砲の伝来、日本銀の交易ネットワークについてのエピソードを交えて、地域が世界に直接つながっていたボーダーレスな時代を描く。

目次
第1章 一六世紀、または世界史の成立
第2章 蝦夷地と和人地
第3章 古琉球の終焉
第4章 ヨーロッパの登場とアジア海域世界
第5章 日本銀と倭人ネットワーク
第6章 統一権力登場の世界史的意味
付章(増補) 島津史料からみた泗川の戦い―大名領国の近世化にふれて
  泗川の戦い 泗川(サチョン/しせん)の戦い  ,慶長2 (1597) 年,秀吉の二度目の朝鮮半島出兵で秀吉軍は明鮮連合軍に対し随所で籠城戦を展開した。朝鮮慶尚道(けいしょうどう)泗川城に籠こもる島津軍5千~6千と明・朝鮮連合軍5万の籠城戦。優勢な明・朝鮮連合軍は勝てず、これを機に
講和し,秀吉軍撤兵への足掛りとなった。

【解説: 橋本雄 】


著者等紹介
村井章介[ムライ ショウスケ]
1949年、大阪市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂所を経て、同大学院人文社会系研究科教授。文学博士。倭寇・貿易・海運・港町・漢詩・対外意識・政治思想などを扱いながら、日本列島周辺の9‐17世紀を、広い「地域史」や「世界史」の文脈のなかで読み替えようと試みている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

世界史のなかの戦国日本_泗川の戦いzu.jpg


タグ:琉球・沖縄
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中世日本の内と外--1999; 増補 中世日本の内と外--2013 [中世・国内]

中世日本の内と外

著者 村井章介[ムライ ショウスケ] 
出版者 筑摩書房
  ちくまプリマーブックス 番号128
B6判19cm;ページ数:208
出版年 1999/04/06
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館1F貸出カウンター自動書庫 NDC分類(9版) 210.4 
内容紹介 国や民族をこえて行き交う人々の集団は、時の権力にどのような影響を与えたのか。中世日本がたどった歩みを、朝鮮を中心にアジアの諸地域との比較を通じて読み解く。
 蒙古襲来が日本史に残した影響は大きく、かつ深い。しかしアジア的、あるいは世界史的視野からとらえなお中世日本の内と外、、.jpgすとどうなるか。天皇家が世界史上まれにみる長寿を保ちえたのはなぜか。足利義満は「日本国王」をどのように考えていたのか。中世の日本では国や民族をこえた人びとの集団が行き交っていた。そのことは時の権力にどのような影響を与えたのだろう。中世日本がたどった歩みを、朝鮮を中心にアジアの諸地域との比較を通じて意味づける。

この本の目次
第1章 自尊と憧憬―中世貴族の対外意識
第2章 陶磁器と銭貨と平氏政権―国境を往来する人ともの
第3章 鎌倉幕府と武人政権―日本と高麗
第4章 アジアの元寇―一国史的視点と世界史的視点
第5章 「日本国王」の成立―足利義満論
第6章 中世の倭人たち―国王使から海賊大将まで



増補 中世日本の内と外
著 村井章介[ムライ ショウスケ]
出版者 筑摩書房
シリーズ:ちくま学芸文庫  番号:ム-5-2

文庫判: 14.8 x 10.6 x 1.6 cm:ページ数:320

刊行日: 2013/03/06
ISBN-13: 978-4480095220
定価:本体1,200円+税

この本の内容

ボーダーレスな東アジアの歴史
国家間の争いなんておかまいなし。中世の東アジア人は海を自由に行き交い生計を立てていた。私たちの「内と外」の認識を歴史からたどる。
【解説: 榎本渉 】


「国境」という概念が定着する以前から、東アジア世界にもたしかに領土・領有意識はあった。しかしそれはあくまで権力者の都合によるもので、一般の民衆には大きな意味をなさなかった。日本と新羅の国交が断絶した9世紀、朝鮮半島南西部を拠点にした海上貿易のドン・張宝高は、日本に唐物の商品を運び、貴族からも大いに喜ばれた。また中国の仏教聖地を訪れるために遣唐使船に同乗した天台僧の円仁は、新羅人の船に乗って帰ってくる。日朝間の海域では「倭人」が活発な交易を行っていた。境界を軽々とまたぎ、生活していた東アジアの人びとに焦点をあて、境界観の歴史をたどる。


この本の目次
中世日本の内と外-増補2013、.jpg第1章 自尊と憧憬―中世貴族の対外意識
第2章 陶磁器と銭貨と平氏政権―国境を往来する人ともの
第3章 鎌倉幕府と武人政権―日本と高麗
第4章 アジアの元寇―一国史的視点と世界史的視点
第5章 「日本国王」の成立―足利義満論
第6章 中世の倭人たち―国王使から海賊大将まで


著者等紹介
村井章介[ムライ ショウスケ]
1949年、大阪市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂所を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授。日本列島周辺の9‐17世紀を、広い「地域史」や「世界史」の文脈のなかで読み替えようと試みている(この書籍が刊行された当時に掲載データ)






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辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 --2018;04 [中世・国内]

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦
著者 高野 秀行(たかの ひでゆき) 
著者  清水 克行(しみず かつゆき) 
出版者 集英社インターナショナル
B6判: 18.6 x 13.2 x 1.6 cm/ページ数 224p
出版年 2018.4
ISBN-13: 978-4797673531

価格 ¥1,620(本体¥1,500+税)

新潟市図書館収蔵 石山館、亀田館  NDC分類(9版) 204 


内容紹介
「面白い本を読んだら誰かと語り合いたい」から始まった辺境ノンフィクション作家と歴史家の読書合戦。意図的に歴史と文字を捨てた人々『ゾミア』、武士とヤクザが渾然として一体だった時代の『ギケイキ』、キリスト教伝道師をも棄教させた少数民族『ピダハン』…。古今東西の本を深く読み込み、縦横無尽に語り、通説に切り込む。読書の楽しさ、知的興奮、ここに極まれり!

 バットゥータ「大旅行記」から町田康「ギケイキ」まで。辺境ノンフィクション作家と歴史家の読書合戦。古今東西の本を深く読み込み、縦横無尽に語り、通説に切り込む。

目次
辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦L.jpg第1章 『ゾミア』―文明は誰のもの!?
第2章 『世界史のなかの戦国日本』―世界に開かれていた日本の辺境
第3章 『大旅行記』全八巻―イブン・バットゥータ三〇年の旅の壮大にして詳細な記録
第4章 『将門記』―天皇を名乗った反逆者のノンフィクション
第5章 『ギケイキ』―正義も悪もない時代のロードムービー的作品
第6章 『ピダハン』―あらゆる常識を超越する少数民族
第7章 『列島創世記』―無文字時代の「凝り」
第8章 『日本語スタンダードの歴史』―標準語は室町の昔から


【目次より抜粋】
第1章『ゾミア』
「文明から未開へ」逆転の歴史観
リーダーを生まず、文字を捨てるという知恵

第2章『世界史のなかの戦国日本』
倭寇の後継者・秀吉のマッチョなコンプレックス
グローバルヒストリーからこぼれ落ちる世界の広さ

第3章『大旅行記』全8巻
イスラムのパワーと慈善思想が可能にした大旅行
女好きの旅行家がたどり着いたリゾートアイランド

第4章『将門記』
日本史上最大の反乱を描く中立的ノンフィクション?
将門が見た夢を頼朝が見なかったのはなぜか

第5章『ギケイキ』
善悪を超えたピカレスクロマン
武士とヤクザが一体だった時代

第6章『ピダハン』
数もない、左右もない、呪術も神話もない
直接体験しか信じない人々に神の言葉を伝えられるか

第7章『列島創世記』
照葉樹林文化論をバッサリ否定
権力者はなぜモニュメント造営に走るのか

第8章『日本語スタンダードの歴史』
伊達政宗が「田舎者」を自覚した瞬間
「なにをいっているのかわからぬ」島津軍?

【著者プロフィール】
高野 秀行(たかの ひでゆき)
ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。『ワセダ三畳青春記』で酒飲み書店員大賞受賞、『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。著書に『謎のアジア納豆』『アヘン王国潜入記』『移民の宴』など多数。

清水 克行(しみず かつゆき)
歴史家。明治大学商学部教授。専門は日本中世史。1971年、東京都生まれ。「室町ブームの火付け役」と称され、大学の授業は毎年400人超の受講生が殺到。2016年~17年、讀賣新聞読書委員。著書に『喧嘩両成敗の誕生』、『日本神判史』、『耳鼻削ぎの日本史』など。

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中世武士の勤務評定―南北朝期の軍事行動と恩賞給付システム--2019;06 [中世・国内]

中世武士の勤務評定―南北朝期の軍事行動と恩賞給付システム
【著】松本 一夫[マツモトカズオ]
戎光祥出版(えびすこうしょうしゅっぱん=https://www.ebisukosyo.co.jp/
 18.8 x 13 x 1.2 cm: 192ページ
ISBN-13: 978-4864033275
発売日: 2019/6/14
価格 ¥1,944(本体¥1,800)

NDC分類 210.45
Cコード C0021
 
内容紹介
戦場であげた武功は、将軍や守護からどのように評価されたのか?軍勢催促状・着到状・軍忠状・挙状・感状・充行状などから浮かび上がる武功の現実!

南北朝期の武士の組織内における評価体系を徹底解説いたします。当時、戦場であげた個々の武将による武功は、上司にあたる将軍や守護からどのようなプロセスで評価されたのか、軍勢催促状・着到状・軍忠状・挙状・感状・充行状などを丹念に分析し、複雑な恩賞給与システムの全貌を明らかにいたします。さらに、戦闘方式や兵粮等、南北朝期の合戦の実態にも迫ります。


軍勢催促状とは    中世の戦闘単位は、惣領・そうりょうと呼ばれる武家の当主とその一族( 家子いえのこ)、これに従う郎党(等)や郎従・ろうじゅう、あるいは若党・わかとう などから構成されており、合戦が近づくと上級大将から惣領宛てに速やかに参陣するよう命じる文書が発せられた。これを軍勢催促状・ぐんぜいさいそくじょうという。
  天皇が出せば綸旨・りんじ、上皇では宣旨せんじ(朝廷が出す命令書の一種)を出している。将軍の場合は主に御判御教書・ごはんみきょうじょ が用いられた。


目次
【目次】
中世武士の勤務評定0_.jpg第一部 参陣から恩賞給付までの流れ
 第一章 参陣から軍功認定まで
  1.参陣要請をうける――軍勢催促状
  2.参陣する――着到状
  3.軍功を認めてもらう――軍忠状
 第二章 恩賞を受けるまでの複雑なプロセス
  1.上官の推薦をもらう――挙状
  2.大将から褒められる――感状
  3.あらためて恩賞を申請する――申状
  4.ようやく所領が与えられる――充行状

第二部 軍勢催促・軍功認定・恩賞給付の再検討
 第一章 軍勢催促をめぐる諸問題
  1.催促をする相手
  2.催促を受けた武士の対応
  3.催促のなかみ
  4.書状による軍勢催促
 第二章 軍奉行・侍所による実検手続き
  1.軍奉行・侍所とは
  2.実検の手続き
 第三章 軍忠状の形式と提出先の問題
  1.二型式の軍忠状とその意味
  2.提出先の異なる軍忠状のもつ意味
 第四章 恩賞申請と給付の問題
  1.恩賞申請と戦線の維持
  2.さまざまな形での恩賞給付

第三部 南北朝期の戦闘の実像に迫る
 第一章 合戦の結果をも左右した兵粮
  1.兵粮の重要性
  2.兵粮調達の方法と戦場における食
 第二章 南北朝期の戦闘の実態
  1.武器と戦闘のあり方
  2.戦闘に関わる人々
  3.陣所と城郭
  4.合戦の諸相



著者等紹介
松本一夫[マツモトカズオ]
1959年、栃木県宇都宮市生まれ。1982年、慶應義塾大学文学部卒業。2001年、博士(史学)。現在、栃木県立上三川高等学校長(※書籍に掲載されている紹介情報です。

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