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日本軍兵士 [明治以後・国内]

81yJxDfj3ML-.jpg日本軍兵士
アジア・太平洋戦争の現実
著者 吉田 裕 /ヨシダ ゆたか
出版者 中央公論新社
 中公新書 番号 2465
ページ数 6,228p 大きさ 18cm
 出版年 2017.12 
ISBN 978-4-12-102465-7
新潟市立図書館収蔵 中央ホンポート館1階新書 S/391.2/ヨシ/
内容紹介 高率の餓死、戦場での自殺と「処置」、特攻、物資欠乏…。勇猛と語られる日本兵が、凄惨な体験を強いられた戦争の現実とは。兵士の目線・立ち位置から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追う。
はじめ より  戦没者数は。日本だけで軍人・軍属が二三〇万人(日中戦争期を含む)、民間人が八〇万人、合計三一〇万人に達する。日露戦争の戦死者数九万人と比べてみるといかに大規模な戦争だったかが、よく理解できる。
 この戦争に関しては、すでに多くのことが論じられてきた。本書では従来の議論を踏まえた上で、切り口を大きく変えて次の三つの問題意識を重視しながら、凄惨な戦場の現実を歴史学の手法で描き出してみた。 それは、戦後歴史学を問い直すこと「兵士の目線」で「兵士の立ち位置」から戦場をとらえ直してみること、そして、「帝国陸海軍」の軍事的特性との関連を明らかにすることである。
 1990年代に侵略戦争の実態の解明が、戦争犯罪研究を中心にして急速に進んだ。ただ 「日本では、開戦に至る経緯と終戦およびその後の占領政策に関する研究が盛んで、・・・開戦と終戦の間、戦争そのものを取り上げる研究者は少ない。(元防衛大学教授の田中宏巳氏)」本書では、歴史学の立場から「戦史」を主題化してみたい。
 二つ目は、「兵士の目線」を重視し、「兵士の立ち位置」から、凄惨な戦場の現実、俳人であり、元兵士たった金子兜太カネコトウタのいう「死の現場」を再構成してみることである。 一つは、連合軍側の記録と旧軍関係史料を突き合わせる。 もう一つは「兵士の目線」を重視し、「死の現場」に焦点をあわせて戦場の現実を明らかにする。その際、兵士の身体をめぐる諸問題、すなわち、被服、糧食、体格の問題、メンタルな面も含めた健康や疾病の問題にも目を配りたい。 p.49元海軍軍医大尉の回想】敵潜水艦に撃沈された輸送船の乗員が海上浮流中、味方駆潜艇の対潜爆雷攻撃による水中衝撃で腸管破裂を生じ、既に腹膜炎を起しかけた患者を一度に十名あまり収容したことがある。〈中略〉開腹すると驚くべし、全員腸管が数ヶ所で破れている。その場所に特徴があり、〈中略〉この特徴から腹壁を介しての衝撃による損傷ではなく、肛門からの水圧が腸内に波及し、内部から腸壁を破ったのだと判る。
 三つ目の問題意識は、「帝国陸海軍」の軍事的特性が「現場」で戦う兵士たちにどのような負荷をかけたのかを具体的に明らかにすることである。「帝国陸海軍」の軍事思想の特質や天皇も含めた戦争指導のあり方、軍隊としての組織的特性などの問題もあわせて重視したい。
 この問題にこだわるのは、「死の現場」の問題をもう少し大きな歴史的文脈のなかに位置付けてみたいと思うからである。
日本軍兵士--p007.jpg

目次
序章 アジア・太平洋戦争の長期化
行き詰まる日中戦争
長期戦への対応の不備―歯科治療の場合
開戦
第一・二期――戦略的攻勢と対峙の時期  
第三期――戦略的守勢期 
第四期――絶望的抗戦期  
二〇〇〇万人を超えた犠牲者たち  
一九四四年以降の犠牲者が九割か

第1章 死にゆく兵士たち―絶望的抗戦期の実態1
1.膨大な戦病死と餓死
戦病死者の増大  
餓死者――類を見ない異常な高率
マラリアと栄養失調 
戦争栄養失調症――「生ける屍」の如く
精神神経症との強い関連

2.戦局悪化のなかの海没死と特攻
三五万人を超える海没死者
「八ノット船団」――拍車をかけた貨物船の劣化
圧抵傷と水中爆傷
「とつぜん発狂者が続出」
特攻死――過大な期待と現実 
特攻の破壊力

3.自殺と戦場での「処置」
自殺――世界で一番の高率  
インパール作戦と硫黄島防衛戦  
「処置」という名の殺害 
ガダルカナル島の戦い  
抵抗する兵土たち  
軍医の複雑な思い――自傷者の摘発
強奪、襲撃……

第2章 身体から見た戦争―絶望的抗戦期の実態2
1.兵士の体格・体力の低下 
徴兵のシステム  
現役徴集率の増大  
「昔日の皇軍の面影はさらにない」
知的障害者の苦悩 
結核の拡大――1個師団の兵力に相当
虫歯の蔓延、”荒療治”の対応

2.遅れる軍の対応―栄養不良と排除
給養の悪化と略奪の「手引き」
結核の温床――私的制裁と古参兵  
レントゲン検査の「両刃の剣」
一九四四年に始まった「集団智能検査」  
水準、機器、人数とも劣った歯科医療

3.病む兵士の心――恐怖・疲労・罪悪感
入隊前の環境
教育としての「刺突」
「戦争神経症」
精神医学者による調査
覚醒剤ヒロポンの多用 
「いつまで生きとるつもりか」
陸軍が使った「戦力増強剤」
休暇なき日本軍

4.被服・装備の劣悪化
「これが皇軍かと思わせるような恰好」  
鮫皮の軍靴の履き心地 
無鉄軍靴の登場  
孟宗竹による代用飯盒・代用水筒 
背嚢から背負袋へ

第3章 無残な死、その歴史的背景
1.異質な軍事思想
短期決戦、作戦至上主義
極端な精神主義 
米英軍の過小評価  
一九四三年中頃からの対米戦重視
戦車の脅威 
体当たり戦法の採用  
見直される検閲方針
2.;日本軍の根本的欠陥 
統帥権の独立と両総長の権限 
多元的・分権的な政治システム  
国務と統帥の統合の試み  
軍内改革の挫折  
罪とされない私的制裁  
軍紀の弛緩と退廃  
「皇軍たるの実を失いたるもの」

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