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中露の非ドル化--2021年6月15日   田中 宇 [経済]

数年、中国とロシアは決済の非ドル化を3段階で進めてきた。ワシントン・ポストによると、第1段階は、中露間の貿易におけるドル決済を減らしてゼロにしていき、人民元とルーブルの相互通貨決済に替えていった。第2段階は人民元の国際化を推進して世界の30か国との人民元決済の体制を作った。同時に中露は米国債やドルの保有量も減らした。2014年からはデジタル人民元の利用拡大を進めた。そして第3段階は今年、中露がイランなど他の非米諸国とも連携してSWIFTに替わる国際銀行間送金のシステムを作っていくことだ。
 (China and Russia announced a joint pledge to push back against dollar hegemony)
中共は、人々の消費を増やすためにデジタル人民元に「有効期限」を設けるかもしれない言われている。紙幣には有効期限などないから、中国の人々はデジタル元を敬遠している。デジタル元の利用が急拡大していくのかどうか怪しいところがある。しかし少なくとも、デジタル元を中国の法定通貨として正式に使用開始すると、一帯一路など非米諸国の政府機関や企業や個人がデジタル元を使用・備蓄できるようになり、アジア、アフリカ、中南米などでのデジタル元の利用が急増し、その分ドルの使用と備蓄が減り、ドルの基軸性=米国の覇権が低下する。米国が敵性諸国をSWIFT・送金情報システム(本部ベルギー)・から締め出してドル使用を禁じる制裁をやるほど、世界的にドルが敬遠されてデジタル元が使われ、ドルを使った制裁策が効かなくなる。デジタル人民元の出現は、覇権面で画期的だ。 
(China Will Use "Coercive Power" To Force Digital Yuan On Population)
デジタル元ー日本経済新聞;2019年12月3日02.jpg
そのような展開になっても、金融市場では、ドルの為替低下や米国債の金利上昇、バブル崩壊が起こらないかもしれない。為替や金利や株価は、金融市場での民間の需給と無関係に、米連銀など米欧日の中央銀行群によるQE策(通貨の過剰発行による買い支え)によって維持されている。QEが行き詰まるまで、ドルや米国債や米国中心の債券金融システムは崩壊しない。中国やロシアなど、世界の半分を占める非米諸国がドルや米国債を持たなくなっても、米欧側でQEが続いていたら、ドルや米国覇権の崩壊は起こらない。私はリーマン危機後のQEが数年で行き詰まると予測してきたが、10年以上経ってもQEが何とか続いている(行き詰まり感はかなりあるが)。 
(強まるインフレ、行き詰まるQE)
QEはまだしばらく続くかもしれないが、同時に、世界が米国側(ドル圏)と非米側(デジタル元圏)に2分される「通貨の2極化」も進みそうだ。ドル圏=米覇権の範囲は世界の半分に減っていく。通貨の2極化は、多極化の一つの形態である。インドやサウジアラビアなど、中国以外の非米諸国がデジタル通貨を作って国際化すると、通貨の多極化になる。ドル=米覇権の崩壊より先に多極化が進む。私はこれまで、ドルと米覇権の崩壊が先で、それが多極化につながるというシナリオを描いてきたが、順序が逆になるかもしれない(インフレ激化でQEが間もなく行き詰まり、多極化より先にドル崩壊になる可能性もある)。ドイツなどEUが対米従属をやめるとユーロも多極側に入る。日本は多分いないふりを続ける。
 (米国覇権が崩れ、多極型の世界体制ができる) 
(基軸通貨の多極化を提案した英中銀の意図)


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