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ノート、「新型コロナ、なぜWHOはパンデミックを宣言しないのか」ナショナル ジオグラフィック日本版2020.03.03 [国家医学・帝国医療・看護学]

地球規模の健康危機は、段階的に広がる傾向がある。まず最初に起こるのが「アウトブレイク」だ。これは武漢のような地理的に狭い範囲内で、ある疾病が急増することを意味する。新型コロナウイルスが武漢から中国全土に広がったように、もしその病気が最初に急増したコミュニティの外に広がった場合、それは「エピデミック」となる。エピデミックが国境を越えて広がり、世界中で大勢の人々に影響を及ぼすようになったものが「パンデミック」の一般的な定義。「定義は完全に地理的なものです。重症度も、感染者数も関係ありません。考慮されるのは、ウイルスが世界中に広がっているかどうかという点です」


2009年のH1N1型インフルエンザ(豚インフルエンザ)のパンデミックから教訓を得て、パンデミックの判断では、どこでだれが感染しているのか、ということも考慮される。もし中国で新型コロナウイルスに感染した人が自分の国へ帰った場合、それは最終的にパンデミックを宣言するかどうかを決定する際の集計にはカウントされず、またその人からの感染者もカウントされない。2009年時からすでに人々は世界中で盛んに行き来しており、そのためH1N1型が実際よりも速く、多くの地域に拡大したように感じられてしまった。その後、このウイルスの致死率が高くないことが判明すると、WHOはパンデミックと宣言・表現し不必要に人々の不安を煽ったとして批判を浴びた。H1N1型は現在、季節性インフルエンザの1つとなり、毎年、ワクチンの接種が行われている。


エピデミックの初期においては、感染例の大半は、最初のアウトブレイクの発生源(今回の場合は中国)からやってきた旅行者にまで感染源をたどることができる。 しかし、国内感染が進むにつれて、接触の追跡は崩壊する。この転換点を迎えると、ウイルスは人々に気づかれないまま広がってゆき、コントロールは極めて困難になる。


「パンデミック」とは、法的な意味を持たない。単なる呼称であるとも言えるが、それなりの有用性もある。パンデミックという言葉によって、もはやウイルスの拡散を阻止できないと当局が認識し、学校の閉鎖や大規模な集会の中止などの拡大防止策に移行しなければならないことが明確になる。


こうした社会的な隔離は、家庭、地域社会、経済に大きな影響を与えるため、医療機関が安易に勧めることではない。「子供たちには教育が必要ですし、親は仕事に行かなければなりません。それに人には、外に出て楽しみたいという欲求があります。ですから、こうした対策はなるべくとりたくはありません。もしやるとすれば、どうしても必要な場合だけです」


WHOはすでにそれよりもずっと重大な宣言を出している。それが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」だ。この宣言が出された場合、WHOは法的拘束力をもって、加盟国がエピデミックにどのように対処すべきかについての勧告を発表でき、また財政的、政治的支援を動員できる。


また、WHO協力センターの国内・ 国際保健法研究所所長で米ジョージタウン大学教授のローレンス・ゴスティン氏は、「新型コロナウイルスの致死率はインフルエンザよりもはるかに高く、これがパンデミックに発展しうるという事実は、間違いなく懸念すべきことです」。


本当に致死率は高いのか??

ナショナル ジオグラフィックの「新型コロナ、インフルやエボラと比べた危険度は」2020.02.12 を見る。



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ささいなきっかけで、ある日、爆発的に広がる。伝染病はどのように世界に広がり、いかに人類を蹂躙したのか。地図と図版とともにやさしく解き明かす。




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