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人種戦争という寓話ー黄禍論とアジア主義ー2017年刊 [移民・難民]


858-2.jpg人種戦争という寓話 
黄禍論とアジア主義
著者  廣部 泉 /ひろべ いずみ  
出版年 2017.1
出版者 名古屋大学出版会
大きさ 22cm  ページ数 4,241,47p
SBN 978-4-8158-0858-7
県立図書館収蔵   NDC分類(9版) 316.8
内容紹介
欧州発のアジア連合脅威論は、西海岸に押し寄せる移民への視線と結びつき、アメリカを「黄禍」の不安に陥れた。ジャーナリズムを介して増幅していく人種主義的言説は、鏡像たるアジア主義と作用し合い、日米関係にいかなる影響を及ぼしたのか。丹念な資料調査により描き出した力作。
欧米に広く見られた黄禍論的言説と、広い意味でのアジア主義は、相互に作用し合いながら、どのように日米関係に影響を与えてきたのか。1890年代半ばからアジア太平洋戦争終結に至る半世紀の歴史を検討する。
書評
戦前・戦中アメリカ国内で黄禍論がどのように湧き上がったか、又、日本がアジア主義を唱えた事で、黄禍論がどのように極大化したかを、メディア等の記述から分析しアメリカの政策決定に与えた影響を探る。
黄禍論とアジア主義というコインの裏表。日中戦争期に入っても、欧米が日中の提携という「黄禍」を警戒していたという点は面白い。「半アジア」のソ連なども含め、「人種」問題は黒人やユダヤ人だけではない。タブー化せずに研究を深める必要がある。
黄禍論とアジア主義は表裏一体の思想。前者に触発された後者が生まれ、またそれが前者を増幅させていくというグローバルな思想史の一端が描かれている。その意義は個別の思想体系や国別の思想史では漏れてしまいがちな思想の往来を捉えたところにある
著者紹介
廣部 泉(広部 泉、ひろべ いずみ)
1965年福井県生まれ。ハーバード大学大学院博士課程修了。明治大学政治経済学部教授。Ph.D.(歴史学、ハーバード大学)。著書に「グルー」など。
目 次
序 章
第1章 日清戦争と日露戦争  —— 日本脅威論の形成
     はじめに
     ピアソンの予測
     ヴィルヘルム2世とトゥル将軍
     近衛篤麿の同人種同盟論
     日露戦争前夜
     日露戦争
     日本側の困惑
     続く黄禍論
     西海岸への移民が刺激した想像力
     止まない日本脅威論
     相互作用
     おわりに
第2章 第一次世界大戦とパリ講和会議—— 人種平等条項の挫折
     はじめに
     第一次世界大戦と日本の対中要求
     西原借款
     アジア主義関連出版物の反響
     第一次世界大戦の終結
    「英米本位の平和主義を排す」
     パリ講和会議での人種差別撤廃要求
     世界各地の反応
     日本のアジア主義の海外進出と米英の警戒
     アメリカにおける人種主義の展開
     バクーでの東洋諸民族大会
     ゆれるイギリス側の評価
     ワシントン海軍軍縮会議
     おわりに
第3章 排日移民法と全亜細亜民族会議 —— 黄禍論とアジア主義の鏡像関係
     はじめに
     排日移民法案通過
     孫文の大アジア主義演説
     移民法とアジア主義に対する異なった見方
     全亜細亜協会
     汎ヨーロッパ主義
     太平洋問題調査会
     もう1つの汎アジア主義
     第2回全亜細亜民族会議
     状況の改善と鬱積する不満
     おわりに
第4章 満洲事変から盧溝橋事件前夜まで—— 盛り上がるアジア主義運動
     はじめに
     満洲事変の勃発
     汎アジア主義的発言相次ぐ
     大亜細亜協会の起源
     連盟脱退と大亜細亜協会の設立
     中国の懸念
     広東や新京での動き
     専門家たちの見解
     アジア民族青年代表大会
     オランダが抱いた恐怖
     第3回全亜細亜民族会議
     世界の反応
     天羽声明
     日本の領土的野心と西洋の威信
     継続するオランダの懸念
     英国外務省筋からの警告
     中国人の懸念とアメリカ人の反応
     アジア主義の沈静化
     限られた悲観論
     おわりに
第5章 日中戦争という矛盾—— 日本の対外政策へのアジア主義の侵入
     はじめに
     日中共栄の後退とアジア・モンロー主義の現実化
     続く植民地主義批判
     田中上奏文の亡霊
     天津租界封鎖と反英運動の昂揚
     被害者としての認識
     蘭印への野心
    『我が闘争』
    「日満支」三国の提携とアジア主義の完成
     南部仏印進駐から真珠湾攻撃へ
     おわりに
第6章 真珠湾攻撃の衝撃—— 米国の戦争政策への人種主義の関与
     はじめに
     欧米人の驚き
     日系人強制収容
     白人の威信
    「アジアの守護者」
     英国の中国軽視とアメリカ
     白人の懸念
     中国寝返りの懸念
     戦後構想と東西文明対立的発想
     英国の無関心と米国の苛立ち
     排華移民法修正
     大東亜会議とカイロ会談
     戦後の中国に対する懸念
     大東亜各国大使会議
     おわりに
終 章
 あとがき

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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