ソグド人と東ユーラシアの文化交渉--2014 [ユーラシア・東西]
森部 豊【編】
出版社: 勉誠出版 (2014/8/15)
(アジア遊学175)
(アジア遊学175)
サイズ A5判/ページ数 275p/高さ 21cm
ISBN-13: 978-4585226413
発売日: 2014/8/15
内容説明
四世紀から十一世紀にかけて草原世界から中国東端にわたるユーラシア地域を移住しながら交易活動を行ったソグド人。その言語・文化・信仰や各地域における様相を、編纂史料のほか新出の石刻史料・出土文書史料・文物を用いた最新の研究成果で明らかにする。またその東方活動を通して中国史を相対化し、新たな東ユーラシア世界の歴史を構築する。
かつてオアシス都市に住んでいた歴史上の民族、ソグド人。
彼らはいかなる活動を行い、独自の文化を築いたのか。
四世紀から十一世紀にかけて草原世界から中国東端にわたるユーラシア地域を移住しながら交易活動を行ったソグド人の言語・文化・信仰や各地域における様相を、編纂史料のほか新出の石刻史料・出土文書史料・文物を用いた最新の研究成果で明らかにする。
またその東方活動を通して中国史を相対化し、新たな東ユーラシア世界史を構築する。
目次
総論 ソグド人と東ユーラシアの文化交渉―ソグド人の東方活動史研究序説 森部豊
[ソグド人の文化と思想(信仰)]
ソグド文字の縦書きは何時始まったか 吉田豊
中国におけるソグド姓の歴史 斉藤達也
唐代中国におけるソグド人と仏教 中田美絵
ソグド人の墓と葬具―中国とソグディアナ 影山悦子
[唐朝の中のソグド人]
『天聖令』と唐のソグド人 石見清裕
トゥルファンにおけるソグド人 荒川正晴
ソグド人と敦煌 赤木崇敏
長安・洛陽のソグド人 福島恵
北朝末〜唐初におけるソグド人軍府と軍団 山下将司
八世紀半ば〜十世紀の北中国政治史とソグド人 森部豊
[草原世界の中のソグド人]
突厥碑文から見るトルコ人とソグド人 鈴木宏節
突厥とソグド人―漢文石刻史料を用いて 齊藤茂雄
西突厥におけるソグド人 大澤孝
ソグドからウイグルへ 松井太
編者について
森部豊(もりべ・ゆたか)
関西大学文学部教授。専門は、唐・五代史、東ユーラシア史。
著書に『ソグド人の東方活動と東ユーラシア世界の歴史的展開』(関西大学出版部、2010年)、『安禄山―「安史の乱」を起こしたソグド人』(山川出版社、2013年)などがある。
新刊紹介 的確で奥深い内容を包含する中央アジア通史である 。 (伊藤一馬 )
周知の如く、ソグド人の活動範囲はユーラシア全域に亘るが、パミール以東※においてはオアシス地域や草原世界、さらには中華世界や東南アジア・海域アジア世界にまでその範囲を拡大、11世紀ごろまでその足跡を確認することができる。彼らの活動の広がりを反映するかのように、ソグド人の東方活動に関わる史料は多岐に亘っており、漢文編纂史料のほか、漢語・非漢語(ソグド語・古代トルコ語・チベット語など)の碑文・石刻・文書史料、さらには墓や葬具、壁画などの文物資料も多い。20世紀後半以降に新出史料の発見とともに研究が大きく進展し、このような多彩な史料の分析を通じて、広く一般に定着したイメージであろう「シルクロードのソグド商人」としての姿だけではなく、パミール以東各地におけるソグド人の政治・外交・軍事・文化的な重要性が次々と明らかにされている。
※パミール高原(パミールこうげん、英語:Pamir Mountains)あるいはパミル高原は、タジキスタン、アフガニスタン、中国などにまたがる平均標高5,000mに達する高原で、中国では葱嶺(そうれい)と呼ばれていた。「パミール」は、タジク語で「世界の屋根」を意味する .
本書の特徴は、ソグド人の有する様々な姿や顔が次々と現れる点にあろう。史料の多彩さゆえに、それぞれの史料から窺えるソグド人の姿や顔は個別的になりがちである。本書では、各論文でそれぞれにソグド人の面を描き出し、 それらを繋げることで「像」を結ぶことが可能となっている、
一般向けであるために専門性は抑えられているが、本書を通じて、読者はソグド人の様々な活動の実態について個別に理解を深めることができるだけではなく、 ソグド人の活動全体を俯瞰した歴史像を形成することも可能になるだろう。本書は、単にソグド人の東方活動を描くことだけではなく中国史の相対化も目的としている。
筆者は、一般にはソグド人と無縁と思われるであろう中国宋代史を専門としているが、宋代史においても、本書森部論文でも触れられる通り、唐末〜五代〜宋初の中国史の展開はソグド系の軍事集団を抜きにしては語ることはできないし、 また、松井論文で指摘されるように、宋代における中国をも含む東ユーラシアの交易活動の一端を担っていたのはウイグル化したソグド人であるなど、 ソグド人の活動やその影響は無視できないのである.
本書を通じて、 ソグド人の活動の広さや深さ、その重要性を改めて認識することができる。ソグド人が前近代ユーラシア史を動かす大きな原動力であったと言っても過言ではないだろう。本書は、前近代ユーラシア史に興味・関心を有する人々、あるいはその研究を志す人々にとって、必読の書と言えるのではないだろうか。
タグ:ソクド人
2019-12-21 11:00
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