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海洋国家薩摩-焼酎が語る鹿児島の歴史と文化-2013[中世から近世にかけては米焼酎] [農から見つめる]

海洋国家薩摩―焼酎が語る鹿児島の歴史と文化―
著者 松尾千歳 まつおちとし 
鹿児島純心女子短期大学の地域人間科学研究所 編、発行の「想林」第4号2013年3月発行より
https://k-junshin.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=687&file_id=22&file_no=1


著者の松尾千歳氏は、鹿児島大学法文学部非常勤講師(日本文化史担当)、株式会社島津興業(薩摩藩の島津家) 尚古集成館2019年館長。
この論文のサツマイモ焼酎の部分の要約・補充。


蒸留の技術は、数千年前に中近東で誕生したものといわれている。蒸留の技術は、中近東から東西へ広がり、西方ではウィスキー、ウォッカ、ジン、ブランデー、ラムなど、東方では中国の白酒(パイチュウ)、沖縄の泡盛、朝鮮の焼酎(ソジュ)、日本の焼酎など、それぞれの土地の気候・風土・文化の影響を受け、多種多様の蒸留酒を生み出してる。

  米や麦などの穀物を原料にお酒を造る場合、まず最初に行わなければいけないことは、その原料を糖化させることです。ウイスキーなど洋酒の場合は、麦芽を使って糖化しますが、日本を含むアジア地域では、基本的に「麹菌」を使ってその作業を進めていきます。


 南九州では気候が温暖で、日本酒、醸造酒の製造困難。日本酒の醸造に用いるきこうじ・黄麹菌が、南九州の温暖な気候では腐りやすい。コウジカビ(麹黴)は麹菌(きくきん)ともいい、学名はアスペルギルス (Aspergillus) 属で分類される。学名は、胞子・分生子がカトリックにおいて聖水を振りかける道具であるアスペルギルム(Aspergillum)に似ていることから命名。麹菌は、澱粉や蛋白質、脂質などを分解する酵素の生産、菌体外に分泌する。味噌や醤油、日本酒の醸造に用いられる麹菌は、胞子(分生子)がおおむね黄緑色なので、きこうじ・黄麹菌とよぶ。


 琉球・沖縄の泡盛では、胞子(分生子)が黒褐色をしている黒麹菌が用いられる。というより黒麹菌のみを使って沖縄だけが酒造りを行ってきた。黒麴菌には、もろみ造りを行う部屋、衣類が真っ黒になるという欠点がある。


 黒麹菌は酒の製造過程でクエン酸を大量に生成する。クエン酸はレモンや梅の酸味成分の不揮発性の有機酸であり。これが大量に含まれるため、ほかの麹菌に比べてもろみ(米麹に水と酵母を加えてアルコール発酵させる段階)の酸度を高くすることができる。空気中に浮遊する腐敗菌、雑菌による腐敗を抑えることができる。
 黄麹菌を使った日本酒造りでは乳酸菌が生成されますが、酸度が低いため、ときには乳酸菌を添加して雑菌の繁殖を防ぎます。しかし、黒麹菌の出してくれるクエン酸には及ばないので、日本酒造りは雑菌の少ない冬の時期に、それも作業場には基本的に関係者以外入れず、徹底した雑菌対策を施したうえで行われています。泡盛は年中醸す・造ることができる。

 クエン酸は不揮発性の有機酸だから、蒸溜すれば焼酎や泡盛には含まれない。焼酎や泡盛は酸っぱくならない。泡盛造りで求められるクエン酸生成量は麹酸度で3程度、焼酎の場合は5~7で高い。それで、焼酎に黒麹菌はクエン酸生成量の多い菌種が河内源一郎氏が選別育種した1910明治43年までは、利用できなかった。その菌を泡盛黒麹菌=学名アスペルギルス・アワモリ・ヴァル・カワチ=と名付けられまた。それから河内氏は1924大正13年に泡盛黒麹菌から新種の白い麹菌を発見し、河内白麹菌と名付けました。黒麹よりもアルコール収量が多く、甘口で味わいも軽快な酒ができます。

麹菌3種3.jpg
中世から近世にかけて南九州で広く飲まれていたのは米焼酎蒸した米を原料にし黄麹を利用し蒸溜でアルコール度数を20~30度まで揚げた米焼酎だった。京都付近で醸された日本酒は、気温が黄麹菌に適しジックリと醸し度数が高い醸造酒が仕上がるが、南九州・鹿児島では黄麹菌には温暖すぎ、菌の能力を十分発揮できない。
 ウィスキー、ウォッカ、ジン、ブランデー、中国の白酒(パイチュウ)、沖縄の泡盛、朝鮮の焼酎(ソジュ)といった世界の蒸留酒に比べ、米焼酎は低い度数だが、【焼酎がアルコール度数が低い醸造酒の日本酒の文化圏内で誕生したことを物語っている。また、アルコール度数の高い蒸留酒は、一般に食前酒として飲まれることが多いが、焼酎はお湯で割って、食事しながら飲むというのこれも食間に燗をした日本酒を飲むという日本酒文化が焼酎文化の根底にあることを示している。】(松尾千歳)
  このように、中世から近世にかけては、蒸した米を原料にし黄麹を利用し蒸溜でアルコール度数を20~30度まで揚げた米焼酎が飲まれていた。サツマイモ焼酎は何時頃出てきたのだろう?
続く

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