SSブログ

水力発電が日本を救う--竹村 公太郎 -2016.9 [経済]

81LbtI14MOL.jpg水力発電が日本を救う
副書名 今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる
著者名1 竹村 公太郎 /著  
出版者 東洋経済新報社
出版年 2016.9
ページ数 190p
大きさ 19cm
ISBN 978-4-492-76228-8
新潟市立図書館収蔵 中央 2階技術 Map /543.3/タケ/
内容紹介
既存のダムにちょっと手を加えるだけで、現在の水力発電の何倍もの潜在力を簡単に引き出せる! 世界でもまれな地形と気象で、日本はエネルギー大国になれる! 「水力のプロ」が持続可能な日本のための秘策を語る。
98頁
 【日本の発電電力量は、2010年度に1兆1495億kWhをピークに2018年度は1兆0512億kWhになっている。】
日本に1年間に降る雨や雪の位置エネルギーを、すべて水力発電で電力に変換させると7176億kWhになると試算されている。これは理論値である。現実には水力発電は900億kWh程度。
既存の多目的ダムの嵩上げと運用方法の変更で、343億kWhが増加できると試算されいる。(日本プロジェクト産業協議会JAPIC)
【合わせて1200億kWh程度、日本の10%を賄える。】
中小水力発電は1000億kWhほどは増やせると考えられている。

一〇〇年後の日本のために
  私はダム建設の専門家で、水力発電を心から愛する人間の一人だ。
 未来の日本のエネルギーを支えていくのは水力発電、そう考えている。
 このようなことを言っても、今さら水力発電かと思われる人が多い。確かに、現在の電力をめぐる実態を思えば、水力が時代遅れに見えるのはやむを得ない。
 私は、国上交通省の河川局で主にダムを造ってきた。三っの巨大ダム建設に従事し、人生の大半をダムづくりに費やしてきた。
 ダムは水を貯める装置で、水力発電と密接に関連している。水力発電のエンジニアや事業者とは随分と仕事上のお付き合いかあった。
 その過程で、水力発電のことを学び、様々な経験も積んできた。厳密には発電の専門家ではないか、水力発電の基礎的なインフラのダムの専門家であるし、水力発電の専門家の一人だと思っている。
 それで、国交省を退職して以来、あちこちの講演会で、水力発電を見直そうという話をしてきた。2010年三月11日の東日本大震災以前ではあるが、何度か、電力会社から有能な若い人が私のところへ来た。その人たちは、原子力がいかに有利か、水力が時代遅れなのか、こんこんと説いてくれたものだ。
 だが、彼らは誤解している。

 私には原子力を否定する気持ちも、火力を否定する気持ちもない。私には今日のエネルギー政策を云々するような資格はない。なにしろ、エネルギー全般に関して断定的なことを述べる素養を持ち合わせていない。
 ただ、言いたいのは、五〇年後、一〇〇年後、そして二〇〇年後の日本にとって、水力発電は必ず必要になるということだけだ。
 今は石油がある、原子力がある。そうしたエネルギーに頼るほうか価格の面でも、安定供給の面でも有利だろう。
 だか、石油などはI〇〇年後、。一〇〇年後に本当にあるだろうか。今と同じように安価で手に入るだろうか。現実の資源状況を見れば、私のような門外漢にも危ういことは分かる。
 そんな時代になったら、必ず、水力発電か必要になる。
 今、この時代に、私のようにダムを三つも造った人間はめったにいないだろう。日本の山奥で巨大ダムを次々に建設していたのは高度経済成長期、もう半世紀も前のことだ。
 現在はもう、巨大ダムを建設する時代ではない。寂しいか、どんどんとダム建設の経験者は少なくなっている。私のように人生をダム建設に費やしてきた人間はあまり残っていない。
 同様に、水力発電設備のエンジニアたちもいなくなりつつある。電力会社には、発電所を建設する土木技術者がもちろんいる。けれど、今の中心は、火力や原子力の発電所であり、水力発電の土木を知っている技術者はいなくなりつつある。
 水力発電所の建設には、川の地形に合わせる発想力が必要だ。過去の実例には頼れない場合が多く、自分たちの力で、何もないところから新しく造っていくことを求められる。過去の技術者たちには、そうした構想力のある先輩がいた。私は、それら先輩の背中を見て、迫ってきた。今の時代、そうした方々はいなくなりつつある。
 今この時期に、そうしたダムを含めた水力発電の経験やノウハウを、未来に繋いで残しておかなければならないと考えている。
 くり返しになるが、私か危惧するのは、現在のことではない。五〇年後、一〇〇年後、二00年後の日本のエネルギーなのだ。
 水力のプロの私は、純国産エネルギーである水力発電の価値を知っている。日本のダムは半永久的に使える。たとえ一〇〇年経っても、ダムは水を貯めている。ダム湖の水を電気に変換できる。
 しかも、ちょっと手を加えるだけで、現在の水力の何倍もの潜在力を簡単に引き出せる。
 この事実を、今、日本の人々に伝えることが、数少なくなった水力の専門家としての義務であると考えている。
   
【著者】竹村公太郎(たけむら こうたろう)
(特非)日本水フォーラム代表理事及び事務局長、人事院研修所客員教授、博士(工学)。1970年建設省入省。国土交通省河川局長などを経て現職。著書:シリーズ合計で30万部を超えるベストセラー3部作『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP研究所)、『水力発電が日本を救う』(東洋経済新報社)など多数。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

Facebook コメント