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人類堆肥化計画--2020;1027刊行 [食から見る]

81WPGf6P3yL.jpg人類堆肥化計画
東 千茅(あづま・ちがや) 著
サイズ 46変判
創元社(2020/10/27発売)
ISBN 978-4422390048

新潟市立図書館収蔵 内野館 NDC分類(9版) 611.98

内容情報

潔癖文化に抑圧された腐爛の分解世界を、艶やかに解放する実践の書
――藤原辰史(歴史研究者)
東千茅氏は、私が文学でやりたかったことを背徳の里山でやりまくってる極悪人だ!――吉村萬壱(小説家)


一般に禁欲や清貧といった観念に結び付けられている里山を、人間を含む貪欲な多種たちの賑やかな吹き溜まりとして捉え直し、人間と異種たちとの結節点である堆肥を取り上げながら、現代社会におい釈・隠蔽されている「生の悦び」を基底から問い直す。本当に切実な問いと、根底を目指す思考とを、地についた生活に支えられた文章で表した、読む人に鮮烈な印象を与る第一著作。

 はじめに より
「堆肥がさまざまな亡骸の折り重なったものであるように、里山も、わたし個人も、何層もの営みや感情によって構成されている。さらに、堆肥盛りの底のどす黒い部分こそかよく生命を育むように、人問の腐った性根が里山には重要なのだとわたしは主張したい。つまり、ふつう里山に想定されかちな禁欲や善行ではなく、貪欲や悪行によってこそ、人間も多種の入り乱れるお祭り騒ぎに参加できるということである。
 わたしの見立てでは、人類はおしなべて腐っている。だか、現状の道徳的腐敗は生物学的腐敗に反している。あるいは、腐敗が足りていないと言うこともできる。いずれにせよ、わたしたちは堆肥に向かって腐っていかなければならない。人間(人の間)ではなく堆肥になってこそ、異種たちと共にあることができるのだから。」

「もとよりわたしは何者でもなく、何者かであろうとも思わない。当然、守るべき社会的立場など持ち合わせていない。しかし、だからこそ語りうる言葉があると思う。わたしは何の実績もない無名の落後者に違いないが、土の上では誰でも一匹の生き物なのであり、地位や肩書はかえって邪魔なものだ。わたしがつねに求めているのは、お行儀のいい言説ではなく、「ほんとうに切実な問いと、根底を目指す思考と、地についた方法」だけである。」

(あとがきより)
「もとよりわたしは何者でもなく、何者かであろうとも思わない。当然、守るべき社会的立場など持ち合わせていない。しかし、だからこそ語りうる言葉があると思う。わたしは何の実績もない無名の落後者に違いないが、土の上では誰でも一匹の生き物なのであり、地位や肩書はかえって邪魔なものだ。わたしがつねに求めているのは、お行儀のいい言説ではなく、「ほんとうに切実な問いと、根底を目指す思考と、地についた方法」だけである。」


目次

はじめに
登場生物


腐臭を放つ
腐敗の先の里山生活
腐っている里山
氷砂糖も欲しがる
一三八億年の蕩尽



堆肥へ
自己堆肥化願望
欣求壌土
生物学的腐敗と道徳的腐敗
腐爛生体



世界に逆らう
着陸する 
移り住む 
紛れ込む 
森下さんとのあれこれ



〈土〉への堕落 
生前堆肥 
伝染する堆肥男 
扉を開く 
寝転ぶ 
甘やかす 
同じ穴の貉たちを愛しぬく 
希望の闇のほうへ



おわりに


担当編集者より

本書の著者である東千茅さんは、まだ一冊の著作もない。彼は作家でも研究者でもなく、奈良の里山で自給自足の生活を営む若き農耕民である。そんな彼の紡ぐ言葉は地についた生活に支えられていて、ほかの誰にも似ていない。
『人類堆肥化計画』とは、人間を含めた異種生物が欲望をぶつけ合いながら生きる「お祭り騒ぎ」のことである。彼は本書の中で、禁欲や清貧の思想に結びつけられ易い既存の里山観や、「共生」という言葉に付随する牧歌的なイメージを徹底的に批判する。それは彼がこういった観念の中に、人間中心主義のエゴイズムを感じ取っているからだ。
東さんは、人間の偽善性や傲慢さに誰よりも敏感であるが、それが自分の中にも在ることを自覚しており、かつ、その事実を否定も誇示もなく見つめられる強さを持っている。はたから見れば彼の農耕生活は長閑に映るかもしれないが、繰り返しの日々の営みを通して、内なる〈自己〉や〈世界〉と壮絶な戦いを繰り広げているように思われる。
本書の原稿を読みながら、露悪的な物言いに戸惑いを覚える瞬間がありつつも、ある種のカタルシスを感じずにはいられなかった。それは、彼が自分自身を異種生物と同列に扱い、人間の存在は「何ら特別でない」と腹の底から認めていることで、読み手である私自身の「特別でなさ」も肯定されたように感じるからだと思う。
コロナウイルスという「異種生物」との共生を誰もが余儀なくされている今、東さんの「共生宣言」である本書から学び得るものは多いはずである。同時代を生きる人たちの、本書に対する感想を聴きたいと願っている。(AN)


著者について

東 千茅(あづま・ちがや)

農耕者、里山制作団体「つち式」主宰。一九九一年三月、大阪府生まれ。

二〇一五年、奈良県宇陀市大宇陀に移り住み、ほなみちゃん(稲)・ひだぎゅう(大豆)・ニック(鶏)たちと共に里山に棲息。二〇二〇年、棚田と連続する杉山を雑木山に育む

二百年計画「里山二二二〇」を開始する。著書に『つち式 二〇一七』(私家版 二〇一八)、「『つち式 二〇一七』著者解題」(『たぐいvol.1』亜紀書房、共著 二〇一九)。


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